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蛊真人  作者: 魏臣栋
魔头乱世
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第一百四十節:马鸿运

凡人(ぼんじん)蛊仙(こせん)(はか)る——成功(せいこう)可能性(かのうせい)(いず)(ほど)あろうか?


(たと)方源(ほうげん)五转巅峰(ごてんてんぽう)(いえど)も、(せん)(ぼん)(へだ)たりを凌駕(りょうが)するのは容易(ようい)ではない。


方源(ほうげん)前世(ぜんせ)において蛊仙(こせん)であったが(ゆえ)に、()絶対的(ぜったいてき)()理解(りかい)する(ふか)さにおいて、(かれ)(なら)凡人(ぼんじん)(おそ)らく一人(ひとり)もいないであろう。


(さいわ)い、方源(ほうげん)計画(けいかく)孤軍奮闘(こぐんふんとう)ではない。(かれ)八十八角真陽楼(はちじゅうはっかくしんようろう)(ちから)()りる算段(さんだん)である。前世(ぜんせ)貴重(きちょう)経験(けいけん)光明(こうみょう)道標(どうひょう)(しめ)し、琅琊地霊(ろうあちれい)から()情報(じょうほう)が、計画(けいかく)確度(かくど)(さら)(たか)めている。


()くして、仙蛊(せんこ)江山如故(こうざんじょこ)』を(はか)()可能性(かのうせい)は、二割(にわり)まで向上(こうじょう)したのである!


二割(にわり)可能性(かのうせい)は、蕩魂山(とうこんざん)救済(きゅうさい)する(みっ)つの方案(ほうあん)(なか)で、(すで)(もっと)(たか)いのである。


和稀泥仙蛊(わしにせんこ)対抗(たいこう)できるのは、仙蛊(せんこ)のみである。


五百年(ごひゃくねん)()える遠見卓識(えんけんたくしき)()り、方源(ほうげん)()る、現在(げんざい)蕩魂山(とうこんざん)(すく)()仙蛊(せんこ)は、(みっ)つしかない。


第一(だいいち)は、土道(どどう)六转(ろくてん)化石蛊(かせきこ)である。()()現在(げんざい)西漠(せいばく)六转蛊仙(ろくてんこせん)孫醋(そんす)手中(しゅちゅう)にある。


第二(だいに)は、同様(どうよう)土道(どどう)六转(ろくてん)仙蛊(せんこ)で、東山再起(とうさんさいき)名付(なづ)けられている。東海(とうかい)海市福地(かいしふくち)(なか)収蔵(しゅうぞう)されている。


第三(だいさん)は、宙道(ちゅうどう)六转(ろくてん)仙蛊(せんこ)江山如故(こうざんじょこ)である。()()(いま)誕生(たんじょう)しておらず、自然形成(しぜんけいせい)ではない。()(あるじ)太白云生(たいはくうんせい)は、目前(もくぜん)北原(ほくげん)五转蛊師(ごてんこし)()ぎない。


化石蛊(かせきこ)(うば)()ろうとすれば、方源(ほうげん)十年(じゅうねん)以上(いじょう)蛊仙(こせん)として()孫醋(そんす)対峙(たいじ)せねばならない。


()東山再起蛊(とうさんさいきこ)(ねら)うならば、事態(じたい)(さら)悪化(あっか)する。方源(ほうげん)数多(あまた)蛊仙(こせん)監視(かんし)(もと)()かれるのだ。一介(いっかい)凡人(ぼんじん)身分(みぶん)仙蛊(せんこ)奪取(だっしゅ)するとは、黄金(おうごん)(かか)えた子供(こども)闇市(やみいち)(ある)くようなものだ。


(ゆえ)に、江山如故蛊(こうざんじょここ)に関する第三(だいさん)方案(ほうあん)こそが、(もっと)危険(きけん)(すく)なく、成功(せいこう)可能性(かのうせい)(もっと)(たか)いのである。


(たと)太白云生(たいはくうんせい)蛊仙(こせん)()ったとて、(かれ)新米(しんまい)蛊仙(こせん)()ぎず、仙境(せんきょう)仙力(せんりょく)本質(ほんしつ)には()()れていない。


()のような相手(あいて)は、ベテランの孫醋(そんす)や、海市福地(かいしふくち)蛊仙(こせん)たちより(はる)かに対処(たいしょ)(やす)い。


……


北原歴(ほくげんれき)十二月(じゅうにがつ)


風雪(ふうせつ)次第(しだい)(はげ)しさを()し、その頻度(ひんど)()(つづ)けている。たとえ風雪(ふうせつ)()んでも、()(しろ)(かがや)(しも)北原(ほくげん)全体(ぜんたい)(おお)()くす。(たと)太陽(たいよう)(のぼ)っても、かつての灼熱(しゃくねつ)陽光(ようこう)は、(いま)(ちから)()(よわ)々(よわ)しく(うつ)るのみだ。


十年(じゅうねん)一度(いちど)大吹雪(おおふぶき)(おとず)れる()が、刻一刻(こくいっこく)(ちか)づいている。


天川(てんせん)暖沼谷(だんしょうこく)


族長(ぞくちょう)、こちらが丙字号元泉(へいじごうげんせん)でございます」


馬由良(ばゆうりょう)心配(しんぱい)そうに()()がった(いずみ)(そこ)()し、馬英傑(ばえいけつ)説明(せつめい)した。


馬英傑(ばえいけつ)(まゆ)(ふか)(きざ)まれた。


丙字号元泉(へいじごうげんせん)は、暖沼谷(だんしょうこく)(のこ)された()つの元泉(げんせん)(うち)最後(さいご)一泉(いっせん)であった。


(いま)()れが干涸(かんこ)びた(こと)で、馬家(ばか)(ささ)える元泉(げんせん)甲字号(こうじごう)乙字号(おつじごう)二泉(にせん)のみとなった。()れは馬家部族(ばかぶぞく)にとっては悪報(あくほう)でしかない。


北原(ほくげん)元泉(げんせん)は、南疆(なんきょう)(など)()のそれとは根本(こんぽん)から(こと)なる。


北原(ほくげん)(いずみ)は、水量(すいりょう)(すく)なく、泉口(せんこう)(せま)く、噴出(ふんしゅつ)激烈(げきれつ)にして、基盤(きばん)(もろ)く、持続時間(じぞくじかん)(もっと)(みじか)い。


東泉(とうせん)(りょう)豊富(ほうふ)南泉(なんせん)は潺々(せんせん)と(なが)れ、北泉(ほくせん)激烈(げきれつ)西泉(せいせん)精髄(せいずい)なり。


南疆(なんきょう)では、中小規模(ちゅうしょうきぼ)部族(ぶぞく)一口(ひとくち)元泉(げんせん)十数年間(じゅうすうねんかん)連続(れんぞく)使用(しよう)できる。南疆(なんきょう)元泉(げんせん)は、過剰開発(かじょうかいはつ)さえしなければ、持続的(じぞくてき)利用(りよう)可能(かのう)で、(ほそ)(なが)(なが)(つづ)けるのである。


(しか)北原(ほくげん)(まった)(こと)なる。


北原(ほくげん)元泉(げんせん)瞬時(しゅんじ)形成(けいせい)されるが、消散(しょうさん)するのも同様(どうよう)(はや)い。(くわ)えて北原(ほくげん)戦火(せんか)()えず、中小規模(ちゅうしょうきぼ)部族(ぶぞく)でさえ、(すく)なくとも(さん)(よん)(こう)元泉(げんせん)がなければ維持(いじ)できないのである。


馬英傑(ばえいけつ)部族(ぶぞく)(もど)った(あと)馬家(ばか)(あら)たな族長(ぞくちょう)となった。馬家(ばか)(ちょう)大勢力(だいせいりょく)への躍進(やくしん)失敗(しっぱい)し、(いま)小規模部族(しょうきぼぶぞく)転落(てんらく)している。広大(こうだい)暖沼谷(だんしょうこく)でさえ、空虚(くうきょ)(かん)じられるほどである。


馬家(ばか)には食糧(しょくりょう)(みず)十分(じゅうぶん)(そな)えられており、準備(じゅんび)周到(しゅうとう)だ。


しかし元泉(げんせん)通貨(つうか)であるばかりか、蛊師(こし)修行(しゅぎょう)不可欠(ふかけつ)重要資源(じゅうようしげん)でもある。一旦(いったん)大吹雪(おおふぶき)(おとず)れれば、暖沼谷(だんしょうこく)(ごと)場所(ばしょ)最後(さいご)避難所(ひなんじょ)()すのである。


獣群(じゅうぐん)だけでなく、(ほか)蛊師(こし)たちも棲息(せいそく)のために(おとず)れてくる。


地主(じぬし)である馬家(ばか)は、風雪(ふうせつ)災害(さいがい)()えるだけでなく、()れら外部者(がいぶしゃ)との交渉(こうしょう)(せま)られている。元泉(げんせん)産出(さんしゅつ)する元石(げんせき)は、蛊師(こし)戦力(せんりょく)(ささ)える大黒柱(だいこくばし)である。(いま)馬家(ばか)三本(さんぼん)ある大黒柱(だいこくばし)(ひと)つが(くず)れた。弱体化(じゃくたいか)した馬家(ばか)基盤(きばん)は、三割(さんわり)しか(のこ)っていない。丙字号元泉(へいじごうげんせん)干涸(かんこ)びにより、基盤(きばん)瞬時(しゅんじ)一割(いちわり)(うしな)われてしまったのである。


(しか)(かく)難題(なんだい)直面(ちょくめん)して、馬英傑(ばえいけつ)とて有効(ゆうこう)対策(たいさく)()()わせていない。


()(かれ)が『江如故(こうじょこ)』の()一匹(いっぴき)でも()っていれば、(ただ)ちに丙字号元泉(へいじごうげんせん)原状(げんじょう)(もど)し、()問題(もんだい)即座(そくざ)解決(かいけつ)できたであろう。だが馬英傑(ばえいけつ)は、()れを()()わせてはいない。


族長様(ぞくちょうさま)元泉(げんせん)本当(ほんとう)にそこまで重要(じゅうよう)なのですか?」


(もど)(みち)で、費才(ひさい)質問(しつもん)した。


(かれ)一族(いちぞく)(もど)った(あと)馬英傑(ばえいけつ)(いのち)恩人(おんじん)として奴隷(どれい)身分(みぶん)()かれ、(いま)では自由人(じゆうじん)となっていた。


同時(どうじ)に、相変(あいか)わらず馬英傑(ばえいけつ)側近(そっきん)として(つか)(つづ)けている。


馬英傑(ばえいけつ)(まゆ)をひそめ、(うれ)(ぶか)(うなず)いた。「元泉(げんせん)()れれば、蛊師(こし)への影響(えいきょう)(はか)()れない。蛊師(こし)部族(ぶぞく)大黒柱(だいこくばし)だ。()馬家(ばか)蛊師(こし)(ちから)()りて、吹雪(ふぶき)災害(さいがい)(ふせ)必要(ひつよう)がある。雪害(せつがい)()ぎた(あと)は、蛊師(こし)戦力(せんりょく)(あたら)しい資源(しげん)(うば)()い、部族(ぶぞく)発展(はってん)させねばならないのだ……」


「ふーん…」


費才(ひさい)(ある)きながら()()けた。「じゃあ、(あたら)しい元泉(げんせん)(さが)すことってできないんですか?つまり、あの…()暖沼谷(だんしょうこく)って(ひろ)いんですから、もしかしたら三つ以外(いがい)にも元泉(げんせん)(ねむ)ってるかもしれないじゃないですか」


費才(ひさい)言葉(ことば)には、楽天(らくてん)的な精神(せいしん)(あふ)れていた。


馬英傑(ばえいけつ)苦笑(くしょう)して(こた)えた。「北原(ほくげん)元泉(げんせん)(たし)かに短期間(たんきかん)形成(けいせい)される。暖沼谷(だんしょうこく)(なか)に、第四(だいよん)元泉(げんせん)存在(そんざい)する可能性(かのうせい)()いではあるまい。だが、()確率(かくりつ)(きわ)めて(ひく)く、(ほとん)不可能(ふかのう)(ひと)しい。(おぼ)えておけ、十年(じゅうねん)周期(しゅうき)大吹雪(おおふぶき)(おとず)れる(たび)に、北原(ほくげん)各地(かくち)元泉(げんせん)は次々(つぎつぎ)と干涸(かんこ)び、枯死(こし)してしまう。雪害(せつがい)(おさ)まった(あと)になれば、(あたら)しい元泉(げんせん)雨後(うご)(たけのこ)(ごと)()()る。()(とき)こそ、北原(ほくげん)(いた)(ところ)(ゆた)かな水草(すいそう)(しげ)り、百里(ひゃくり)(ごと)元泉(げんせん)()くであろう。()れこそが、各部族(かくぶぞく)獣群(けものむれ)発展(はってん)する最良(さいりょう)機会(きかい)となるのだ。」


成程(なるほど)……」


費才(ひさい)(ようや)理解(りかい)した。(かれ)()れまで(なが)きに(わた)って()きてきたが、(いま)だに世事(せじ)(うと)く、(かく)した状況(じょうきょう)には不慣(ふな)れであった。


「あっ!」


突然(とつぜん)(かれ)悲鳴(ひめい)()げ、道端(みちばた)から(ころ)()ちた。


二人(ふたり)(ある)いていたのは崖際(がけぎわ)(みち)だった。(さいわ)い、絶壁(ぜっぺき)ではなく(ゆる)やかな斜面(しゃめん)である。費才(ひさい)(あし)(すべ)らせ、その傾斜(けいしゃ)(ころ)がり()ちながら、()()ない惨叫(さんきょう)(はっ)(つづ)けた。


()間抜(まぬ)けが……」


馬英傑(ばえいけつ)費才(ひさい)連発(れんぱつ)する戯画(ぎが)(てき)悲鳴(ひめい)(わら)いを(こぼ)し、強張(こわば)っていた(まゆ)(すこ)(ゆる)めた。


()方向音痴(ほうこうおんち)め、(いま)(みち)さえ(ある)けなくなったのか?(はや)此方(こっち)()()がって()い……ん!?」


馬英傑(ばえいけつ)突然(とつぜん)言葉(ことば)途切(とぎ)らせ、双眼(そうがん)見開(みひら)いた。(しん)(がた)光景(こうけい)(かれ)眼前(がんぜん)(ひろ)がっていた――緩斜面(かんしゃめん)に、(あたら)しい元泉(げんせん)()()でているのである!


()元泉口(げんせんこう)は、元々(もともと)一枚(いちまい)岩盤(がんばん)(おお)われていた。


(しか)()岩盤(がんばん)は、(ころ)()ちて()費才(ひさい)()()ばした(ため)()しのけられてしまった。岩盤(がんばん)(した)(かく)されていた元泉(げんせん)は、()うして(はじ)めて()()()たのである。


(あき)らかに、()れは最近(さいきん)形成(けいせい)された元泉(げんせん)であった。()らずんば、戦前(せんぜん)馬家(ばか)による探査(たんさ)発見(はっけん)されなかった(はず)がない。


()元泉(げんせん)水量(すいりょう)膨大(ぼうだい)で、ほんの(みじか)時間(じかん)百個(ひゃっこ)()える元石(げんせき)(いずみ)(とも)()()がり、周囲(しゅうい)地面(じめん)()(そそ)いだ。


「こ、()れは…(しん)元泉(げんせん)だ!甲字号元泉(こうじごうげんせん)凌駕(りょうが)する規模(きぼ)ではないか!」


馬英傑(ばえいけつ)有頂天(うちょうてん)となった。歓喜(かんき)(あま)り、目頭(めがしら)さえ(すこ)(あつ)くなった。「()れが所謂(いわゆる)(わざわい)(てん)じて(ふく)()す』というものか?長生天(ちょうせいてん)よ、(かなら)ずや先祖(せんぞ)加護(かご)相違(そうい)ない!」


「族、族長様(ぞくちょうさま)!ついて()ました!」


その(とき)費才(ひさい)(いた)さに(かお)(ゆが)めながら()(のぼ)って()て、(あたら)しい(いずみ)()にすると同様(どうよう)()見開(みひろ)げた。「おかしいな、此処(ここ)突然(とつぜん)(いずみ)()くなんて?」


馬英傑(ばえいけつ)哄笑(こうしょう)()らした。「費才(ひさい)貴様(きさま)(てん)(わたくし)(さず)けた幸運(こううん)(ほし)だ。今日(きょう)から貴様(きさま)()(あらた)める。『費才(ひさい)』——『無駄(むだ)材木(ざいもく)』という不吉(ふきつ)()()()るがいい。()馬英傑(ばえいけつ)(そば)に、(なん)無駄(むだ)なものがあってはならぬ。今日(こんにち)より貴様(きさま)は『鴻運(こううん)』と名乗(なの)れ。費鴻運(ひこううん)だ!()れは()馬家(ばか)幸運(こううん)(めぐ)り、(わざわい)(てん)じて(ふく)となる前兆(ぜんちょう)であろう!」


(しか)馬英傑(ばえいけつ)(よろこ)びは(なが)(つづ)きしなかった。(なな)日後(かご)黒家軍(こくかぐん)此処(ここ)到着(とうちゃく)し、暖沼谷(だんしょうこく)包囲(ほうい)したのである。


黒家軍(こくかぐん)駐屯(ちゅうとん)した()(よる)暖沼谷(だんしょうこく)()つの元泉(げんせん)同時(どうじ)黒水(こくすい)()し、完全(かんぜん)汚染(おせん)された。


一本(いっぽん)降伏勧告状(こうふくかんこくじょう)が、(のち)馬英傑(ばえいけつ)()(とど)けられた。


馬英傑(ばえいけつ)予想(よそう)だにしなかった——黒楼蘭(こくろうらん)(すで)最終的(さいしゅうてき)勝利(しょうり)(おさ)めたにも(かか)わらず、(いま)自分(じぶん)見逃(みのが)そうとしないとは!


蛊虫(こちゅう)汚染(おせん)された元泉(げんせん)は、最早(もはや)元石(げんせき)産出(さんしゅつ)できず、(すべ)てが廃棄(はいき)同然(どうぜん)となった。元石(げんせき)在庫(ざいこ)(のこ)っているものの、馬家(ばか)暖沼谷(だんしょうこく)()(つづ)ける可能性(かのうせい)完全(かんぜん)()たれてしまった。


黒楼蘭(こくろうらん)(かく)些細(ささい)(うら)みも(わす)れぬとは(おも)わなかった!(かれ)手紙(てがみ)の中で、()馬家(ばか)降伏(こうふく)要求(ようきゅう)している。()れは巨陽仙尊(きょようせんそん)当年(とうねん)(さだ)めた規矩(きく)(そむ)くものではない!(ゆる)せん、(じつ)(にく)らしい!」


馬英傑(ばえいけつ)両拳(りょうこぶし)(にぎ)()め、(いか)りと(うら)み、無力感(むりょくかん)絶望感(ぜつぼうかん)胸中(きょうちゅう)渦巻(うずま)いていた。


黒楼蘭(こくろうらん)黒暴君(こくぼうくん)(ごう)し、(つね)暴虐(ぼうぎゃく)粗野(そや)である。(おそ)らくは(さき)大戦(たいせん)により、()馬家(ばか)(たい)畏怖(いふ)(ねん)(いだ)いたのだろう。(ただ)巨陽先祖(きょようせんそ)(さだ)めし規矩(きく)(はば)まれ、馬家(ばか)(みずか)らの眼前(がんぜん)()き、継続(けいぞく)して抑圧(よくあつ)せんとしている。」


馬由良(ばゆうりょう)椅子(いす)(くず)()わり、(ひく)(しず)んだ(こえ)分析(ぶんせき)した。


一息(ひといき)()いて、馬由良(ばゆうりょう)(つづ)けた。「(じつ)()れも(わる)くはない。馬家(ばか)黒楼蘭(こくろうらん)帰順(きじゅん)すれば、我々(われわれ)も王庭福地(おうていふくち)(はい)ることができる。」


馬英傑(ばえいけつ)(くび)()った。「()れこそが黒楼蘭(こくろうらん)陰険(いんけん)思惑(おもわく)である。馬家(ばか)(たし)かに王庭(おうてい)(はい)れるだろうが、(ほか)(もの)はどうなる?()うが、現在(げんざい)部族(ぶぞく)(なか)で、()(せい)とする親族(しんぞく)(いか)幾何(いくばく)いるのか?」


馬由良(ばゆうりょう)顔色(かおいろ)蒼白(そうはく)になった。「百三十人余(ひゃくさんじゅうにんあま)りしかおりません。」


()(とお)りだ。」


馬英傑(ばえいけつ)(おも)(ぐる)しい表情(ひょうじょう)(うなず)いた。「()馬家(ばか)発展(はってん)拡大(かくだい)する(ため)には、外部者(がいぶしゃ)(まね)()れ、(さか)んに縁組(えんぐみ)し、(おお)子孫(しそん)(もう)けねばならない。(しか)黒楼蘭(こくろうらん)(ひと)たび命令(めいれい)(くだ)せば、我々(われわれ)が外部者(がいぶしゃ)を受け()れることを(きん)じ、(はな)はだしきに(いた)っては族内通婚(ぞくないつうこん)のみを(ゆる)すことさえあり()る。()(とき)になれば、馬家(ばか)拡大(かくだい)()たしていつの()になるやら……」


馬由良(ばゆうりょう)顔色(かおいろ)(さら)(あお)ざめた。


(かれ)問題(もんだい)の深刻さ(しんこくさ)を(さと)ったのである。


政治(せいじ)(きたな)いものだ。他民族(たみんぞく)との婚姻(こんいん)(きん)じるなど造作(ぞうさ)もない。黒楼蘭(こくろうらん)黄金家族(おうごんかぞく)血脈(けつみゃく)純潔(じゅんけつ)(まも)るという大義名分(たいぎめいぶん)さえあれば、堂々(どうどう)と馬家(ばか)拡大(かくだい)(おさ)()めるのだ。


「では、我々(われわれ)は如何(いか)にすべきでしょうか?」


馬由良(ばゆうりょう)方針(ほうしん)見失(みうしな)った。


馬英傑(ばえいけつ)(しば)沈黙(ちんもく)した(あと)(つい)覚悟(かくご)()め、()()(しば)って()(はな)った。「我々(われわれ)は外部(がいぶ)(もの)全員(ぜんいん)()(せい)(たま)わり、本家(ほんけ)として(むか)()れるのだ!」


族長様(ぞくちょうさま)()うなさいますと、()馬家(ばか)黄金(おうごん)血脈(けつみゃく)は、(おそ)らく(ほん)(とう)に……」


馬由良(ばゆうりょう)躊躇(ちゅうちょ)した。


「我々(われわれ)は一手(いって)()っておかねばならない。黄金(おうごん)血脈(けつみゃく)は、()馬家(ばか)(ほこ)りだ。(けっ)して(けが)されはしない。状況(じょうきょう)好転(こうてん)した(あかつき)には、()れら外部者(がいぶしゃ)追放(ついほう)し、馬姓(ばせい)剥奪(はくだつ)すればよい。」


馬英傑(ばえいけつ)()()った。


馬由良(ばゆうりょう)安堵(あんど)(いき)()き、(おもむ)ろに(うなず)いて族長(ぞくちょう)策略(さくりゃく)(みと)めた。










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