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蛊真人  作者: 魏臣栋
魔头乱世
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第一百三十八節:胜局已定

方源(ほうげん)(しめ)した恐怖(きょうふ)実力(じつりょく)は、馬家軍(ばかぐん)(うえ)から(した)まで、()てしなき抑圧(よくあつ)(かん)(おぼ)えさせた。


絶望(ぜつぼう)が、彼等(かれら)(こころ)(なか)急速(きゅうそく)蔓延(まんえん)していく!


(いま)鼠王(そおう)()てにするしかない。鼠群(そぐん)のみが狼群(ろうぐん)対抗(たいこう)できるのだ!」


馬尚峰(ばしょうほう)顔色(かおいろ)鉄青(てっせい)で、馬尊(ばそん)()(かれ)氷窟(ひょうくつ)()とす(ごと)くであった。しかし馬家(ばか)族長(ぞくちょう)として、(かれ)(すで)()()(うしな)い、()()視線(しせん)江暴牙(こうぼうが)方向(ほうこう)()けた。


(しか)()(またた)(あと)馬尚峰(ばしょうほう)眼中(がんちゅう)(わず)かに(のこ)されていた希望(きぼう)も、跡形(あとかた)もなく()()った。


(なん)鼠王(そおう)()()していたのである!


(てん)よ、()狼王(ろうおう)(まさ)()(もの)だ!鷹王(ようおう)馬王(ばおう)成龍(せいりゅう)成虎(せいこ)邬夜(うや)までもが直接(ちょくせつ)()()られた。(いま)()ぐに()()さなければ、()(いのち)(たす)かると思うのか?」


江暴牙(こうぼうが)()(はし)りながら、七穴(しちけつ)より血煙(ちけむり)噴出(ふんしゅつ)させていた。


仕方(しかた)がなかった。(かれ)毒誓(どくせい)(はっ)して馬家軍(ばかぐん)帰順(きじゅん)していたのだ。(いま)(じん)(だっ)する以上(いじょう)誓約(せいやく)反噬(はんせい)(まぬが)れぬ。


しかし(たと)反噬(はんせい)(さいな)まれようとも、江暴牙(こうぼうが)撤退(てったい)せざるを()なかった!


方源(ほうげん)(おそ)るべき(たたか)いぶりは、(かれ)(のこ)(すく)ない戦意(せんい)()(っぱ)微塵(みじん)()(くだ)いていた。


鼠王(そおう)()ぐに(もど)りやがれ!!」


馬尚峰(ばしょうほう)絶叫(ぜっきょう)した。


だが江暴牙(こうぼうが)黙頭(もくとう)狂奔(きょうほん)(かす)りも反応(はんのう)しなかった。


(かれ)七穴(しちけつ)から()()()しながら、一路(いちろ)()()()らし、比類(ひるい)なき決意(けつい)(しめ)していた!


(かれ)逃亡(とうぼう)周囲(しゅうい)(もの)()()み、(またた)()大勢(おおぜい)馬家蛊師(ばかこし)撤退(てったい)開始(かいし)大量(たいりょう)部族編成部隊(ぶぞくへんせいぶたい)戦場(せんじょう)から離脱(りだつ)した。


外部(がいぶ)(もの)には(たよ)れないものだな!」


馬尚峰(ばしょうほう)(ぷっと)一声(いっせい)大口(おおぐち)鮮血(せんけつ)()()し、()(あと)両眼(りょうがん)暗転(あんてん)し、其場(そのば)()(うしな)った。


馬家(ばか)潰滅(かいめつ)決定的(けっていてき)となり、大局(たいきょく)(すで)(さだ)まった!


雪人精兵(せつじんせいへい)存在(そんざい)しても、もはや狂瀾(きょうらん)()(かえ)すことは不可能(ふかのう)であった。


蛊師強者(こしきょうじゃ)たちも、次々(つぎつぎ)と撤退(てったい)していった。


(あや)うく封印(ふういん)(やぶ)り、真身(しんしん)(たたかう)ところだった。(あぶ)ない(ところ)だった!」


戦圏内(せんけんない)で、()()ない包囲攻撃(ほういこうげき)()(つづ)けてきた黒楼蘭(こくろうらん)は、(いき)()らしながらも、()体中(からだじゅう)(きず)()い、真元(しんげん)激減(げきげん)していた。しかし双眸(そうぼう)凶芒(きょうぼう)(かえ)って一層(いっそう)(するど)さを()していた。


(かれ)命令(めいれい)一下(いっか)黒家軍(こくかぐん)容赦(ようしゃ)なき追撃(ついげき)展開(てんかい)した。


多く(ひと)(ころ)せば(ころ)(ほど)()られる戦功(せんこう)()える。()れは愚か(おろかもの)でさえ理解(りかい)できる道理(どうり)である。


功名(こうみょう)利禄(りろく)が、黒家(こくか)(うえ)(した)刺激(しげき)し、(あた)かも残忍(ざんにん)餓狼(がろう)(ごと)存在(そんざい)()させた。


当初(とうしょ)各隊(かくたい)精兵(せいへい)陣頭(じんとう)(なら)んでいたが、()もなく黒家(こくか)精鋭部隊(せいえいぶたい)追撃(ついげき)から帰還(きかん)敵方(てきがた)精兵(せいへい)釘付(くぎづ)けにした。馬家軍(ばかぐん)(つい)完全(かんぜん)潰走(かいそう)(はじ)め、無数(むすう)兵士(へいし)四方(しほう)()()りに()(まど)った。


方源(ほうげん)(みずか)(うご)かず、周囲(しゅうい)狼群(ろうぐん)身辺(しんぺん)()()せて防衛線(ぼうえいせん)(きず)いた。


内臓(ないぞう)大出血(だいしゅっけつ)魂魄(こんぱく)五百人魂(ごひゃくにんこん)レベルまで弱体化(じゃくたいか)している……」


方源(ほうげん)自身(じしん)身体(からだ)点検(てんけん)し、口内(こうない)(ひろ)がる()()(しず)かに()()んだ。幾度(いくど)もの目眩(めまい)()()なく(おそ)ってくる。


二本(にほん)黄銅腕(おうどううで)(かす)かに消失(しょうしつ)した。『四臂地王(しひちおう)』の殺招(さっしょう)による後遺症(こういしょう)は、(かれ)予想(よそう)以上(いじょう)深刻(しんこく)であった。


以前(いぜん)数回(すうかい)試験(しけん)では、(いず)れも軽微(けいび)(ため)しに(とど)めていた。今回(こんかい)極限(きょくげん)まで駆動(くどう)し、理論上(りろんじょう)持続時間(じぞくじかん)さえ()えて(はじ)めて問題(もんだい)露見(ろけん)した。(あん)(じょう)実践(じっせん)真知(しんち)()むというものだ。」


殺招(さっしょう)とは、蛊虫(こちゅう)絶妙(ぜつみょう)な組み(くみあ)わせに(ほか)ならない。


しかし、(ひと)つの殺招(さっしょう)構想(こうそう)されたからとて、(すなわ)完成品(かんせいひん)という(わけ)では(けっ)してないのである。


不断(ふだん)実践(じっせん)()()ない調整(ちょうせい)()(はじ)めて、完成(かんせい)された殺招(さっしょう)形成(けいせい)される。()完善(かんぜん)()過程(かてい)は、(なが)歳月(さいげつ)(よう)し、数世代(すうせだい)(ある)いは十数世代(じゅうすうせだい)(わた)不断(ふだん)推敲(すいこう)調整(ちょうせい)必要(ひつよう)となる場合(ばあい)さえある。


四臂地王(しひちおう)は、方源(ほうげん)前世(ぜんせ)五百年(ごひゃくねん)経験(けいけん)一瞬(いっしゅん)(ひらめ)きを(もと)構想(こうそう)した結果(けっか)()ぎない。元来(がんらい)拙速(せっそく)かつ実験的(じっけんてき)性質(せいしつ)()びていたのである。


方源(ほうげん)瞬時(しゅんじ)理解(りかい)した——(かく)深刻(しんこく)後遺症(こういしょう)が、何処(いず)段階(だんかい)から(しょう)じたのかを。


原因(げんいん)五转(ごてん)土霸王蛊(どはおうこ)にある。本来(ほんらい)()殺招(さっしょう)地上戦(ちじょうせん)前提(ぜんてい)として設計(せっけい)されている。大地(だいち)()時間(じかん)(なが)ければ(なが)(ほど)後遺症(こういしょう)軽微(けいび)になる。(しか)此度(こたび)激闘(げきとう)では、(ほとん)(すべ)てが飛行状態(ひこうじょうたい)であった。(ゆえ)に、()問題(もんだい)露呈(ろてい)したのである。」


四臂地王(しひちおう)殺招(さっしょう)には、()(おお)くの欠陥(けっかん)存在(そんざい)するようだ。今日(きょう)一戦(いっせん)(つう)じて、飛行(ひこう)猪突猛進(ちょとつもうしん)()よりも(はる)かに利便(りべん)で、(てき)への脅威(きょうい)格段(かくだん)(おお)きいことが()かった。()()(すで)飛行分野(ひこうぶんや)大師級(たいしきゅう)造詣(ぞうけい)(ゆう)する以上(いじょう)()優位性(ゆういせい)(おお)いに()かすべきである。」


(かれ)飛行(ひこう)放棄(ほうき)する()()く、()(ゆえ)四臂地王(しひちおう)殺招(さっしょう)には大規模(だいきぼ)修正(しゅうせい)(ほどこ)さねばならない。


方源(ほうげん)()いた夜狼皇(やろうこう)背中(せなか)()わり、黒家軍(こくかぐん)縦横無尽(じゅうおうむじん)追撃(ついげき)()(ひろ)げる(さま)(なが)めつつ、(しず)かに思索(しさく)(ふか)めた。


(ゆる)せん……(じつ)警戒心(けいかいしん)(つよ)く、寸分(すんぶん)(すき)(あた)えて(もら)えぬとは!」


殺し(ごろしや)無名(むめい)遠方(えんぽう)潜伏(せんぷく)し、(きば)()らしながら方源(ほうげん)(うかが)っていた。


元来(がんらい)(かれ)狼王(ろうおう)追撃(ついげき)()()られ、警戒心(けいかいしん)(ゆる)んだ(すき)()いて奇襲(きしゅう)仕掛(しか)けようと考え(かんがえ)ていた。


()狼王(ろうおう)暗殺(あんさつ)成功(せいこう)すれば、戦局(せんきょく)はまだ挽回(ばんかい)余地(よち)があり、馬家(ばか)にも再起(さいき)機会(きかい)(おとず)れるはずだった。


しかし方源(ほうげん)(かす)かな(すき)(あた)えず、(あた)かも(かれ)(たくら)みを見透(みす)かしているかのようであった。


無名(むめい)(さら)片時(かたとき)静観(せいかん)したが、周辺(しゅうへん)黒家(こくか)強者(きょうじゃ)たちの(うご)きが次第(しだい)頻繁(ひんぱん)になるに()え、悄然(しょうぜん)撤退(てったい)するより(ほか)なかった。


馬家軍(ばかぐん)潰走(かいそう)(かさ)ねる(なか)逃亡(とうぼう)途上(とじょう)族長(ぞくちょう)馬尚峰(ばしょうほう)正気(しょうき)()(もど)した。


(かれ)(いま)未練(みれん)がましく、防衛線(ぼうえいせん)()()んだ(あと)()防衛線(ぼうえいせん)()(どころ)として固守(こしゅ)(はか)ろうと(こころ)みた。


(しか)太白云生(たいはくうんせい)山如故蛊(さんじょここ)が、(かれ)計画(けいかく)水泡(すいほう)()した。黒家軍(こくかぐん)防衛線(ぼうえいせん)突破(とっぱ)潘平(はんぺい)単刀蛊(たんとうこ)()り、混戦(こんせん)(なか)幸運(こううん)にも馬尚峰(ばしょうほう)首級(しゅきゅう)()げた。


馬家(ばか)族長(ぞくちょう)()せば、馬家上下一同(ばかじょうかいちどう)戦意(せんい)完全(かんぜん)喪失(そうしつ)した。


陶家(とうか)楊家(ようか)祁連家(きれんか)相次(あいつ)いで投降(とうこう)降伏者(こうふくしゃ)受入(うけい)過程(かてい)において、黒家(こくか)大半(たいはん)注意(ちゅうい)()(がた)()()られる結果(けっか)となった。


(はや)()げて!もっと(はや)く、もっと(はや)く!」


車内(しゃない)趙憐雲(ちょうれんうん)(あせ)りに()られて催促(さいそく)した。


費才(ひさい)馬車(ばしゃ)御者(ぎょしゃ)として、(うま)鞭打(むちう)つために全身全霊(ぜんしんぜんれい)(そそ)いだ。車輪(しゃりん)二輪(にりん)後方(こうほう)疾走(しっそう)する(ごと)回転(かいてん)した。


費才(ひさい)馬英傑(ばえいけつ)側近侍従長(そっきんじじゅうちょう)として、馬家(ばか)(わか)族長(ぞくちょう)日常起居(にちじょうききょ)(つかさど)り、当然(とうぜん)(ごと)従軍(じゅうぐん)していた。趙憐雲(ちょうれんうん)()()なく、(かれ)(そば)()(したが)(ほか)なかった。


馬家軍(ばかぐん)潰走(かいそう)すると、()二人(ふたり)及び(および)(ほか)凡人達(ぼんじんたち)(また)逃亡(とうぼう)余儀(よぎ)なくされた。


(しか)(なが)ら、()(うま)脚力(きゃくりょく)(たよ)馬車(ばしゃ)速度(そくど)は、蛊師(こし)たちの(あし)には(とお)(およ)ばない。逃亡(とうぼう)開始(かいし)早々(そうそう)、彼等(かれら)蛊師(こし)たちに(はる)(おく)れを()ってしまった。


(ただ)し、費才(ひさい)趙憐雲(ちょうれんうん)凡人(ぼんじん)であるが(ゆえ)に、(かえ)って馬家(ばか)追撃(ついげき)する大軍(たいぐん)二人(ふたり)見逃(みのが)結果(けっか)となった。


凡人(ぼんじん)殺害(さつがい)して()られる戦功(せんこう)は、()るに()らない微々(びび)たるものなのである。


無論(むろん)機嫌(きげん)(わる)蛊師(こし)や、生来(せいらい)殺伐(さつばつ)(この)(もの)、あるいは凡人(ぼんじん)区別(くべつ)せぬ野狼(やろう)遭遇(そうぐう)すれば、通り()かりに一撃(いちげき)二撃(にげき)を「(ほどこ)して」もらうだけで、二人(ふたり)(しかばね)()()もなく(たお)れていたかもしれない。


しかし費才(ひさい)趙憐雲(ちょうれんうん)運勢(うんせい)()く、()のような状況(じょうきょう)遭遇(そうぐう)しないばかりか、数多(あまた)蛊師(こし)眼前(がんぜん)を、一路(いちろ)逃亡(とうぼう)して見事(みごと)戦場(せんじょう)から脱出(だっしゅう)することに成功(せいこう)したのである。


二人(ふたり)文字通(もじどお)(いのち)がけで()(つづ)けた。


(くるま)()老馬(ろうば)(あわ)()いて疲労困憊(ひろうこんぱい)(つい)草地(くさち)(たお)()した。


馬車(ばしゃ)(また)転覆(てんぷく)し、粉々(こなごな)に破砕(はさい)された。


費才(ひさい)趙憐雲(ちょうれんうん)は、無残(むざん)姿(すがた)馬車(ばしゃ)残骸(ざんがい)から()()てきた。両者(りょうしゃ)ともの()(きず)()っていたが、草葉(くさば)柔軟性(じゅうなんせい)致命傷(ちめいしょう)(まぬが)れさせていた。


()れから、我々(われわれ)は何処(いずこ)()かえば()いのでしょう?」


追手(おって)蛊師(こし)もいない。()てしない天地(てんち)()に、費才(ひさい)途方(とほう)()れた。


趙憐雲(ちょうれんうん)(あら)(いき)(ととの)えるだけで、(くち)(ひら)こうとしなかった。彼女(かのじょ)もまた(あわ)てと無力感(むりょくかん)(おそ)われている。


狼王常山陰(ろうおうじょうざんいん)……()()に、(かく)強烈(きょうれつ)変態(へんたい)がいるなんて!ったく、あんたがそんだけ(つよ)いって最初(さいしょ)から()かってたら、姉さん(ねえさん)わざわざ親父(おやじ)説得(せっとく)して馬家(ばか)(たよ)りきったりしなかったわよ。」


方源(ほうげん)万軍(ばんぐん)(なか)縦横無尽(じゅうおうむじん)()(めぐ)恐怖(きょうふ)姿(すがた)(おも)()かべるだけで、趙憐雲(ちょうれんうん)心身(しんしん)(おも)わず(ふる)()がったのである。


戦場(せんじょう)()った(ちち)(おも)い、転転(てんてん)漂泊(ひょうはく)境遇(きょうぐう)非情(ひじょう)残酷(ざんこく)運命(うんめい)に、趙憐雲(ちょうれんうん)(かな)しみが込み(ごみあ)がり、(おも)わず嗚咽(おえつ)()らした。


小雲(しょううん)()かないで、()かないで。(わたし)がいるから、大丈夫(だいじょうぶ)だよ」


費才(ひさい)(あわ)てて(なぐさ)めた。


趙憐雲(ちょうれんうん)(ひざ)(あいだ)(かお)(うず)め、()(ごえ)一層(いっそう)(おお)きくした。


費才(ひさい)(あわ)てふためき、懸命(けんめい)(なぐさ)め、(あやま)(つづ)けたが、言葉(ことば)(つたな)くて()()わなかった。


趙憐雲(ちょうれんうん)はしばらく()いた(あと)突然(とつぜん)(かお)()げて(さけ)んだ。「(あやま)ったって()(やく)にも()たないわ!あたしは本当(ほんとう)不運(ふうん)ね、どうしてこんな世界(せかい)()るはめになったの!(いま)や私たちは絶体絶命(ぜったいぜつめい)よ。()(もの)()(もの)もない。(よる)になれば、戦場(せんじょう)血生臭(ちなまぐさ)(にお)いが次々(つぎつぎ)と野獣(やじゅう)()()せ、餌食(えじき)(もと)めてくる。私たちは(おそ)かれ(はや)かれ、餓死(がし)するか、渇死(かっし)するか、あるいは直接(ちょくせつ)凍死(とうし)するしかないわ!」


「えっ?そ、それじゃあ、俺たち…どうすりゃいいんだ?」


費才(ひさい)(たす)けを(もと)めるような眼差(まなざ)しで趙憐雲(ちょうれんうん)()つめた。


趙憐雲(ちょうれんうん)は大きく白目(しろめ)()き、激怒(げきど)して怒鳴(どな)りつけた。「あんた本当(ほんとう)役立(やくた)たずね!あんたの方が年上(としうえ)でしょ、一度(いちど)だって自分(じぶん)で良い方法(ほうほう)考え(かんがえ)られないの!いつも(わたし)(たよ)ってばかりで、(わたし)東方余亮(とうほうよりょう)でも(おも)ってるの?!?」


費才(ひさい)(ののし)られてうつむき、自分(じぶん)足先(あさき)ばかり()ていたが、突然(とつぜん)(かお)()()(かがや)かせた。「わ、(わたし)、良い方法(ほうほう)(おも)いついたよ。」


「へえ?どんな方法(ほうほう)?」


趙憐雲(ちょうれんうん)(おどろ)いて(まゆ)()げた。この間抜(まぬ)けが方法(ほうほう)(おも)いつくとは?


(おれ)(おも)うに、(うま)さえ一頭(いっとう)()(はい)れば、戦場(せんじょう)から(とお)ざかれる。血生臭(ちなまぐさ)気配(けはい)がなくなれば、野獣(やじゅう)たちも()けられるはずだ」


趙憐雲(ちょうれんうん)激怒(げきど)し、費才(ひさい)(すね)()()げた。「馬鹿(ばか)なこと()わないで!(わたし)()からないと(おも)ってるの?この大馬鹿者(おおばかもの)!これが良い方法(ほうほう)って?(わたし)だって(うま)()しいんだよ。あんたにそれが()(はい)るわけないでしょ!」


費才(ひさい)趙憐雲(ちょうれんうん)()られて、その()()()がった。


突然(とつぜん)(かれ)前方(ぜんぽう)指差(ゆびさ)して(さけ)んだ。「()て!あそこに(うま)()たぞ!」


趙憐雲(ちょうれんうん)()(かえ)って()ると、(おどろ)いて(こえ)()げた。「ちくしょう、まさか本当(ほんとう)野馬(のうま)(あら)われるなんて!」


しかし、彼女(かのじょ)はすぐにまた(われ)(かえ)った。「(じつ)()うと、北原(ほくげん)には野馬(のうま)(すく)ないわけじゃない。でも、(わたし)たちに()けてるのは、野馬(のうま)(つか)まえ、調教(ちょうきょう)する手段(しゅだん)なのよ。費才(ひさい)(なに)かいい方法(ほうほう)ある?」


費才(ひさい)は「あっ」と(こえ)()げ、まだ(まえ)()したまま(さけ)んだ。「()て!あの(うま)背中(せなか)(ひと)()ってる!」


趙憐雲(ちょうれんうん)()()らして()ると、(たし)かに一人(ひとり)人影(ひとかげ)があった。


(うま)二人(ふたり)(ちか)づくにつれ、趙憐雲(ちょうれんうん)(ひとみ)見開(みひら)かれ、(うま)背中(せなか)負傷者(ふしょうしゃ)正体(しょうたい)()()った。「馬英傑(ばえいけつ)だ!」


……


兄上(あにうえ)(まこと)にお目出度(めでた)きことです!此度(こたび)(たたか)いにおいて黒家(こくか)大勝(たいしょう)し、仮令(たと)馬家(ばか)蛊仙(こせん)後援(こうえん)あろうとも、最早(もはや)挽回(ばんかい)余地(よち)はございません。」


終始(しゅうし)大戦(たいせん)行方(ゆくえ)見守(みまも)ってきた黒柏(こくはく)は、偵察蛊(ていさつこ)(つう)じて黒家軍(こくかぐん)戦場(せんじょう)整理(せいり)開始(かいし)したのを確認(かくにん)し、最早(もはや)内心(ないしん)激動(げきどう)(おさ)()れず、(かたわ)らにいる黒城(こくじょう)()かって祝意(しゅくい)(あらわ)した。


黒城(こくじょう)は淡々(たんたん)とした()みを()かべて(おう)じた。「同慶(どうけい)(いた)りです。黒楼蘭(こくろうらん)若造(わかぞう)も、どうやら私共(わたくしども)期待(きたい)裏切(うらぎ)らなかったようですね。さて、馬家(ばか)支援(しえん)していた魔道蛊仙(まどうこせん)正体(しょうたい)判明(はんめい)しました。大雪山(だいせつざん)第六支峰(だいろくしほう)雪松子(せっしょうし)です。」


黒柏(こくはく)表情(ひょうじょう)(またた)くうちに(けわ)しくなった。「ふん、(やつ)でしたか。()しあの(とき)(やつ)横槍(よこやり)()れて()ず、木鶏蛊(もっけいこ)(うば)()うことにならなければ、仙蛊(せんこ)束縛(そくばく)(やぶ)って()()ることもなく、とっくに木鶏蛊(もっけいこ)()()れていたはずです。」


黒城(こくじょう)()みを()かべて(なぐさ)めた。「賢弟(けんてい)、ご心配(しんぱい)なく。此度(こたび)八十八角真陽楼(はちじゅうはっかくしんようろう)利用(りよう)して木鶏蛊(もっけいこ)獲得(かくとく)できれば、同様(どうよう)()い。()(こと)多磨(たま)なるとは()え、一旦(いったん)木鶏仙蛊(もっけいせんこ)()にすれば、(きみ)一躍(いちやく)して蛊仙(こせん)(なか)強者(きょうじゃ)となれるだろう。」


慚愧(ざんき)慚愧(ざんき)!」


黒柏(こくはく)()言葉(ことば)()き、(あわ)てて黒城(こくじょう)(ふか)一礼(いちれい)し、誠実(せいじつ)()った。「兄長(けいちょう)のご指導(しどう)とご支援(しえん)()ければ、(わたし)黒柏(こくはく)雪松子(せっしょうし)(ごと)財力(ざいりょく)を持つことなどできません。兄長(けいちょう)(じつ)睿智(えいち)英明(えいめい)です。(おお)きな仙元石(せんげんせき)(とう)じ、(ひと)感動(かんどう)させました。(さら)狼群(ろうぐん)蓄積(ちくせき)し、一気(いっき)援助(えんじょ)するというやり(かた)で、雪松子(せっしょうし)完全(かんぜん)不意(ふい)()きました。()れで、雪松子(せっしょうし)(つづ)けて援助(えんじょ)しようとしても、対象(たいしょう)()くなってしまいました。」


「ははは。」


黒城(こくじょう)(ほが)らかに(わら)い、感嘆(かんたん)して()った。「投資(とうし)()くして、何処(いずこ)収益(しゅうえき)()られようか?」


(しば)()()き、(つづ)けて()べた。「(さいわ)此度(こたび)王庭争奪戦(おうていそうだつせん)では、(ほか)(ちょう)大規模部族(だいきぼぶぞく)本格(ほんかく)的に出手(しゅしゅ)しなかった。以前(いぜん)譚碧雅女仙(たんへきがじょせん)からの通達(つうたつ)もあり、馬家(ばか)大雪山(だいせつざん)密接(みっせつ)関係(かんけい)()(あく)していた。(さら)に、狼王常山陰(ろうおうじょうざんいん)出色(しゅっしょく)後輩(こうはい)で、驚異的(きょういてき)活躍(かつやく)()せ、今大会(こんたいかい)(もっと)(かがや)存在(そんざい)となり、北原(ほくげん)同世代(どうせだい)圧倒(あっとう)した。」


黒柏(こくはく)(ふか)共感(きょうかん)しながら(うなず)いた。「常山陰(じょうざんいん)については(くわ)しく調査(ちょうさ)した。常家(じょうか)出身(しゅっしん)で、名声(めいせい)(とどろ)いており、我々(われわれ)蛊仙(こせん)(みみ)にも(とど)いている。その(そのご)十数年間(じゅうすうねんかん)神秘(しんぴ)的に失踪(しっそう)していたが、(あき)らかに(なに)かしらの奇遇(きぐう)()ったのだろう。現在(げんざい)奴力双修(ぬりきそうしゅう)で、先程(さきほど)殺招(さっしょう)()たが、後遺症(こういしょう)(すく)なくないが、(たし)かに(おもむき)がある。」


方源(ほうげん)負傷(ふしょう)周囲(しゅうい)(もの)(あざむ)けても、蛊仙(こせん)()をごまかすことはできない。


黒城(こくじょう)(しば)沈黙(ちんもく)した(のち)()った。「(かれ)蛊仙(こせん)(たまご)だ。()黒家(こくか)(むか)()れよう。王庭福地(おうていふくち)(あし)()()れた(あと)(くわ)しく観察(かんさ)するつもりだ。もし(かれ)帰順(きじゅん)し、忠誠(ちゅうせい)(ささ)げる意志(いし)があれば、将来(しょうらい)、我々(われわれ)黒家(こくか)外姓(がいせい)太上家老(たいじょうかろう)になれるかもしれない。」


黒柏(こくはく)(わら)って()った。「蛊仙(こせん)になるのはいかに困難(こんなん)か、兄貴(あにき)(かれ)()(かぶ)()ぎですよ。(わたし)()うには、太白云生(たいはくうんせい)(わる)くありません。(かれ)黒家(こくか)帰順(きじゅん)するよう説得(せっとく)できます。」


「うん……ただ、(すこ)年齢(ねんれい)()()ぎているな。」


黒城(こくじょう)はうなずいた。


彼等(かれら)蛊仙(こせん)()には、膨大(ぼうだい)黒家連合軍(こくかれんごうぐん)(なか)でも、常山陰(じょうざんいん)太白云生(たいはくうんせい)のみが視野(しや)(はい)るのであった。













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