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蛊真人  作者: 魏臣栋
魔头乱世
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第一百三十四節:五转巅峰!

常飚(じょうひょう)戦場(せんじょう)()つを()て、馬家(ばか)()ぐに女性強者(じょせいきょうじゃ)一人(ひとり)()()した。


()(もの)()奚雪(けいせつ)(しょう)し、四转巅峰(してんてんぽう)修為(しゅうい)を持つ著名(ちょめい)氷道(ひょうどう)強者(きょうじゃ)である。五转(ごてん)漫天飛雪蛊(まんてんひせつこ)(ゆう)し、一度(いちど)発動(はつどう)すれば、鵞毛大雪(がもうたいせつ)猛烈(もうれつ)()()ち、数千歩(すうせんぽ)範囲(はんい)寒冷(かんれい)氷雪領域(ひょうせつりょういき)()する。


常飚(じょうひょう)()(もの)()て、心中(しんちゅう)で「しまった」と(さけ)んだ。


(たと)全盛期(ぜんせいき)であっても、此女(このじょ)対峙(たいじ)するには細心(さいしん)注意(ちゅうい)(よう)した。(いま)(きず)()っている()では、尚更(なおさら)(かな)わない。


両者(りょうしゃ)交手(こうしゅ)すると、奚雪(けいせつ)攻勢(こうせい)(するど)く、常飚(じょうひょう)回避(かいひ)と引き()ばしを(しゅ)とした。かくして、不可避(ふかひ)的に劣勢(れっせい)()たされることとなった。


大戦(たいせん)続行(ぞっこう)し、(とき)経過(けいか)(とも)に、四转蛊師(してんこし)敗北(はいぼく)相次(あいつ)いだ。(きず)()って退(しりぞ)(もの)(てき)()()って(たお)れる(もの)(あと)()たない。


双方(そうほう)ともに被害(ひがい)()しつつ、全体(ぜんたい)として()れば互角(ごかく)局面(きょくめん)(てい)していた。


次第(しだい)に、両陣営(りょうじんえい)王帳(おうちょう)(ひか)える四转蛊師(してんこし)(かず)(とぼ)しくなり、もはや自由(じゆう)(うご)かせる状態(じょうたい)ではなかった。


古家(こか)族長(ぞくちょう)此度(こたび)貴君(きくん)出番(でばん)だ。」


黒楼蘭(こくろうらん)視線(しせん)王帳(おうちょう)一角(いっかく)(うつ)した。最期(さいご)まで端坐(たんざ)(つづ)けていた一人(ひとり)(おとこ)()けて。


古家(こか)族長(ぞくちょう)古国龍(ここくりゅう)土道蛊師(どどうこし)であり、かつて(いし)()()げて(やま)()し、黒家軍(こくかぐん)巨大(きょだい)脅威(きょうい)をもたらしたことがある。当時(とうじ)黒楼蘭(こくろうらん)さえも撤兵(てっぺい)(おも)(めぐ)らせる(ほど)であった。しかし最終的(さいしゅうてき)には太白云生(たいはくうんせい)()()け、黒家軍(こくかぐん)勝利(しょうり)(みちび)いた。古家(こか)敗戦(はいせん)し、黒家軍(こくかぐん)編入(へんにゅう)されることとなったのである。


古国龍(ここくりゅう)戦場(せんじょう)(あらわ)れたことで、馬家軍(ばかぐん)(おお)きく動揺(どうよう)した。


()れは最初(さいしょ)五转强者(ごてんきょうじゃ)出撃(しゅつげき)であった。馬尚峰(ばしょうほう)(ただ)ちに(おう)じ、成家(せいか)族長(ぞくちょう)成龍(せいりゅう)派遣(はけん)した。


()(もの)変化道(へんかどう)五转强者(ごてんきょうじゃ)であり、成虎(せいこ)実兄(じっけい)である。


成龍(せいりゅう)登場(とうじょう)()て、古国龍(ここくりゅう)(かろ)一礼(いちれい)し、丁寧(ていねい)()った。「成家(せいか)族長(ぞくちょう)殿(どの)でしたか。どうかご教授(きょうじゅ)(ねが)います。」


成龍(せいりゅう)呵呵(かか)(わら)い、「とんでもない。古家(こか)族長(ぞくちょう)殿(どの)教授(きょうじゅ)などできましょうか。ただ試合(しあい)()わしましょう。」と(こた)えた。


両者(りょうしゃ)(ほこさき)()わすや、その気勢(きせい)浩大(こうだい)で、(またた)く間に(ほか)(たたか)いを圧倒(あっとう)し、(すべ)ての視界(しかい)焦点(しょうてん)となった。


古国龍(ここくりゅう)攻防(こうぼう)兼備(けんび)で、重厚(じゅうこう)かつ沈着(ちんちゃく)とした(たたか)いぶりを()せた。一方(いっぽう)成龍(せいりゅう)悠然(ゆうぜん)として縦横無尽(じゅうおうむじん)激烈(げきれつ)ながらも余裕(よゆう)のある風格(ふうかく)であった。


両者(りょうしゃ)十二合(じゅうにごう)(たたか)()えた(ころ)黒楼蘭(こくろうらん)(さら)五转强者(ごてんきょうじゃ)羅伯軍(らはくぐん)派遣(はけん)した。


羅伯軍(らはくぐん)は元々(もともと)劉文武(りゅうぶんぶ)帰順(きじゅん)していたが、劉家(りゅうか)黒家(こくけ)(やぶ)れた(あと)黒家大軍(こくかたいぐん)高層(こうそう)一員(いちいん)となっていた。


馬家(ばか)(ただ)ちに一名(いちめい)五转强者(ごてんきょうじゃ)()()けて応戦(おうせん)した。


五转强者(ごてんきょうじゃ)陣容(じんよう)(かん)して()えば、馬家(ばか)(けっ)して()けを()らない。以前(いぜん)努爾軍(ぬーるぐん)陶家(とうか)併合(へいごう)し、楊家(ようか)努爾(ぬーる)撃破(げきは)耶律(やりつ)楊家(ようか)打倒(だとう)したが、最終的(さいしゅうてき)には馬家(ばか)耶律軍(やりつぐん)(やぶ)り、最終勝利者(さいしゅうしょうりしゃ)となった。()のようないくさ(いくさいく)さを()て、馬家大軍(ばかたいぐん)(なか)には大規模部族(だいきぼぶぞく)(すく)なからず存在(そんざい)する。祁連(きれん)成家(せいか)趙家(ちょうか)呂家(りょか)陶家(とうか)楊家(ようか)など、数多(あまた)強力(きょうりょく)勢力(せいりょく)(よう)しているのである。


同時(どうじ)に、江暴牙(こうぼうが)楊破缨(ようはえい)馬尊(ばそん)という三人(さんにん)奴道大師(ぬどうたいし)(よう)している!


五转蛊師(ごてんこし)たちは、(おお)くが高位(こうい)()め、四转蛊師(してんこし)のような殺気(さっき)()った態度(たいど)とは(こと)なり、(はる)かに余裕(よゆう)があり(した)しみやすい物腰(ものごし)である。彼等(かれら)()()(とき)も、三分(さんぶ)(ちから)(のこ)し、二分(にぶ)(なさ)けを()むことが(おお)い。


一旦(いったん)彼等(かれら)死亡(しぼう)すれば、()部族(ぶぞく)指導者(しどうしゃ)(うしな)い、黒家(こくか)あるいは馬家(ばか)併合(へいごう)される運命(うんめい)にある。


(たと)敵対関係(てきたいかんけい)にあっても、彼等(かれら)(しん)(こころ)()せるのは自族(じぞく)利益(りえき)である。毒誓盟約(どくせいめいやく)(しば)られてはいるが、暗黙(あんもく)了解(りょうかい)存在(そんざい)する。


方源(ほうげん)(やす)らかに端坐(たんざ)し、(しず)かに()れを()つめていた。


(かれ)四转巅峰(してんてんぽう)実力(じつりょく)しか(しめ)していないが、本質(ほんしつ)(てき)には奴道大師(ぬどうたいし)であり、戦局(せんきょく)左右(さゆう)する(かぎ)となる人物(じんぶつ)である。(ゆえ)()地位(ちい)特異(とくい)で、五转(ごてん)族長(ぞくちょう)たちよりも(たか)見做(みな)されている。


巨陽仙尊(きょようせんそん)(じつ)(おお)なる手並(てな)み、(たえ)なる計略(けいりゃく)でござる!」


(みずか)王庭争奪戦(おうていそうだつせん)参加(さんか)する(なか)方源(ほうげん)心中(しんちゅう)(かん)(がい)(つの)一方(いっぽう)であった。


巨陽仙尊(きょようせんそん)後人(こうじん)(ため)継承(けいしょう)(のこ)し、八十八角真陽楼(はちじゅうはっかくしんようろう)建立(こんりゅう)すると同時(どうじ)に「王庭争奪戦(おうていそうだつせん)」の伝統(でんとう)(さだ)めた。()れは(じつ)巧妙(こうみょう)(きわ)まる思惑(おもわく)であり、心遣(こころづか)いの(いた)()くした(さく)()えよう。


八十八角真陽楼(はちじゅうはっかくしんようろう)()うまでもなく、()王庭争奪戦(おうていそうだつせん)(ひと)()ってみても、()挙行(きょこう)(たび)ごとに、(ひと)つの粛清(しゅくせい)なのである。黄金部族(おうごんぶぞく)他族(たぞく)併合(へいごう)し、(おの)()(つよ)めてきた。


同時(どうじ)に、物資(ぶっし)集中(しゅうちゅう)戦時中(せんじちゅう)発達(はったつ)した戦功経済(せんこうけいざい)形成(けいせい)し、一種(いっしゅ)(いびつ)繁栄(はんえい)をもたらした。さらに戦争賠償(せんそうばいしょう)(つう)じての技術交流(ぎじゅつこうりゅう)は、黄金部族(おうごんぶぞく)基盤(きばん)(おお)きく強化(きょうか)した。


(さら)重要(じゅうよう)なのは、優勝劣敗(ゆうしょうれっぱい)原理(げんり)である。蛊師(こし)たちを生死(せいし)(さかい)()たせることで思考(しこう)刺激(しげき)し、奮起(ふんき)させて(つよ)(しゃ)へと成長(せいちょう)させ、黄金部族(おうごんぶぞく)のために蛊仙(こせん)種子(たね)選別(せんべつ)するのである。


巨陽仙尊(きょようせんそん)は、もはや()()()りはしないが、その影響力(えいきょうりょく)依然(いぜん)として北原(ほくげん)全体(ぜんたい)支配(しはい)(つづ)けている。


仙尊様(せんそんさま)(くら)べれば、現在(げんざい)()()(あり)(ごと)(ちい)さき存在(そんざい)()ぎぬ。(しか)此度(こたび)王庭争奪戦(おうていそうだつせん)(めぐ)まれたからこそ、()実力(じつりょく)(かく)飛躍的(ひやくてき)向上(こうじょう)できたのである……」


方源(ほうげん)()(よう)(おも)(めぐ)らせながら、(かす)かに心神(しんしん)空竅(くうこう)へと(うつ)した。


空竅(くうこう)(なか)には、(あたら)しい蛊虫(こちゅう)数匹(すうひき)()えていた。()(おお)くは四转(してん)一匹(いっぽう)三转(さんてん)(さら)五转(ごてん)修羅尸蛊(しゅらしこ)五转(ごてん)土霸王蛊(どはおうこ)(かく)一匹(いっぴき)ずつ存在(そんざい)する。


三頭六臂(さんとうろっぴ)」の殺招(さっしょう)から()(ひらめ)きを、(みずか)らの蓄積(ちくせき)した知識(ちしき)構想(こうそう)(むす)()け、方源(ほうげん)(いく)つかの成果(せいか)研鑽(けんさん)してきた。


(かれ)()れらの成果(せいか)(ひと)つの殺招(さっしょう)凝縮(ぎょうしゅく)した。(みずか)ら「四臂地王(しひちおう)」と名付(なづ)ける。


()殺招(さっしょう)発動(はつどう)すれば、(からだ)両側(りょうがわ)から(あたら)しい(うで)一対(いっつい)()()る。四本(よんほん)(うで)(そろ)って(うご)(とき)、その戦闘力(せんとうりょく)爆発的(ばくはつてき)上昇(じょうしょう)し、劉家三兄弟(りゅうけさんきょうだい)の「三頭六臂(さんとうろっぴ)」の大殺招(だいさっしょう)匹敵(ひってき)するのである!


「しかし『三頭六臂(さんとうろっぴ)』と(くら)べれば、()が『四臂地王(しひちおう)』の形態(けいたい)持続時間(じぞくじかん)(みじか)く、大地(だいち)()みしめてこそ全戦力(ぜんせんりょく)発揮(はっき)できる。一旦(いったん)空中(くうちゅう)()かべば、戦力(せんりょく)半減(はんげん)してしまう。」


()殺招(さっしょう)は、方源(ほうげん)草創期(そうそうき)考案(こうあん)した未完成(みかんせい)(わざ)()ぎない。戦闘(せんとう)による検証(けんしょう)()て、(あたら)しい蛊虫(こちゅう)追加(ついか)し、不必要(ふひつよう)(きゅう)()()()えるか、(ある)いは直接(ちょくせつ)削除(さくじょ)することで、(はじ)めて徐々(じょじょ)に完成形(かんせいけい)へと(ちか)づくのである。


旭日(きょくじつ)次第(しだい)(たか)(のぼ)るが、此度(こたび)暴風雪災(ぼうふうせつさい)(おとず)れに(さい)しては、普段(ふだん)猛烈(もうれつ)熱量(ねつりょう)(はな)陽光(ようこう)でさえ、(つめ)たく無力(むりょく)(うつ)る。


戦場(せんじょう)()(てん)じれば、殺気(さっき)沸騰(ふっとう)し、(ようや)極点(きょくてん)まで蓄積(ちくせき)されつつあった。


数十(すうじゅう)戦圏(せんけん)で、(いろ)とりどりの焰火(えんか)炸裂(さくれつ)し、拮抗(きっこう)した(たたか)いが(つづ)いていた。


黒家(こくか)王帳(おうちょう)(のこ)蛊師(こし)は、最早(もはや)寥々(りょうりょう)たる(かず)となった。戦闘中(せんとうちゅう)(もの)撤退(てったい)して休養中(きゅうようちゅう)の者、(ある)いは戦場(せんじょう)(たお)れた者——生き(のこ)りは(すく)なかった。


しかし全体(ぜんたい)として()れば、黒家軍(こくかぐん)(かす)かな優位(ゆうい)(たも)っていた。


黒楼蘭(こくろうらん)最初(さいしょ)から黒柏(こくはく)黒城(こくじょう)という二人(ふたり)蛊仙(こせん)強力(きょうりょく)支援(しえん)()けていたのに(たい)し、馬家軍(ばかぐん)雪松子(せっしょうし)救援(きゅうえん)要請(ようせい)したのは、此度(こたび)大戦(たいせん)(いた)ってからであった。


「ふん、馬家(ばか)雑魚(ざこ)(ども)存外(ぞんがい)にしぶといな。」


黒楼蘭(こくろうらん)()ややかに(はな)()らし、(ひとみ)には凶悪(きょうあく)(ひかり)宿(やど)っていた。次第(しだい)(かん)(さわ)るほどであった。


黒楼蘭(こくろうらん)方源(ほうげん)視線(しせん)()け、発言(はつげん)せんとした刹那(せつな)馬家陣営(ばかじんえい)から三方向(さんほうこう)獣群(じゅうぐん)(はし)()した。


左翼(さよく)には万馬(ばんば)奔騰(ほんとう)し、(ひづめ)大地(だいち)()(おと)は、(とお)(ひび)(かみなり)(ごと)(うな)(つづ)ける!


右翼(うよく)には無数(むすう)鼠群(そぐん)がびっしりと密集(みっしゅう)し、(しの)(おと)のような窸窣(しそく)が、()(もの)心胆(しんたん)(さむ)からしめる。中軍(ちゅうぐん)では、鷹群(ようぐん)扶搖直上(ふようちょくじょう)し、(のぼ)りゆく黒雲(こくうん)(ごと)く、(てん)(おお)わんとする気象(きしょう)さえ()びている!


馬王(ばおう)馬尊(ばそん)鼠王(そおう)江暴牙(こうぼうが)鷹王(ようおう)楊破缨(ようはえい)——()三人(みたり)奴道大師(ぬどうたいし)同時(どうじ)()()したのである。


獣群(じゅうぐん)殺到(さっとう)するや、瞬時(しゅんじ)にして大多数(だいたすう)戦団(せんだん)粉砕(ふんさい)し、霧散(むさん)させた。


(じつ)馬尚峰(ばしょうほう)は、挑戦状(ちょうせんじょう)(めん)馬家(ばか)(すこ)劣勢(れっせい)しているのを()て、奴道大師(ぬどうたいし)(めん)での優位性(ゆういせい)()かし、黒家軍(こくかぐん)圧倒的(あっとうてき)(せい)して、不利(ふり)戦局(せんきょく)()えようと(かんが)えていたのである。


三方向(さんほうこう)からの獣群(じゅうぐん)同時攻撃(どうじこうげき)直面(ちょくめん)し、黒楼蘭(こくろうらん)瞬時(しゅんじ)緊張(きんちょう)した。(かれ)方源(ほうげん)()()つめながら()った。「狼王(ろうおう)(いま)こそ貴様(きさま)出番(でばん)だ!」


方源(ほうげん)(かる)(うなず)き、悠然(ゆうぜん)座席(ざせき)から()()がった。


(ゆる)やかに(ある)きながら双頭鉄犀(そうとうてっさい)頭部(とうぶ)まで(すす)み、高所(こうしょ)から三路(さんろ)獣群(じゅうぐん)見下(みお)ろした。()れらは(ひと)つとして獰猛(どうもう)凶悪(きょうあく)ではなく、規模(きぼ)浩大(こうだい)であった。


何路(なにろ)奴道大師(ぬどうたいし)()ってみても、(みな)(かれ)(おな)造詣(ぞうけい)()ち、奴道(ぬどう)方面(ほうめん)では(けっ)して(かれ)()けを()らない強敵(きょうてき)ばかりなのである。


(はる)かに、彼等(かれら)(ゆう)する奴道蛊虫(ぬどうこちゅう)は、方源(ほうげん)狼群(ろうぐん)支配(しはい)する()よりも、(さら)多岐(たき)(わた)り、(すぐ)れたものばかりであった。


力道的戦力(りきどうてきせんりょく)(あら)わにできない状況(じょうきょう)では、方源(ほうげん)両拳(りょうけん)をもって四手(ししゅ)(かな)わず、(さき)二度(にど)交戦(こうせん)では、狼群(ろうぐん)三方向(さんほうこう)獣群(じゅうぐん)()され気味(ぎみ)で、惨憺(さんたん)たる被害(ひがい)()けた。馬家(ばか)()優位性(ゆういせい)()かし、獣群(じゅうぐん)殿(しんがり)(つと)めさせることで、二度(にど)(わた)無事(ぶじ)防衛線(ぼうえいせん)撤退(てったい)できたのである。


(しか)()(とき)方源(ほうげん)()ややかに(わら)い、胸中(きょうちゅう)には昂然(こうぜん)たる戦意(せんい)(たぎ)っていた。


(たし)かに(かれ)奴道蛊虫(ぬどうこちゅう)は、三人(みたり)奴道大師(ぬどうたいし)のものには(すこ)(およ)ばない。だが此度(こたび)(たたか)いの(まえ)に、黒家(こくけ)蛊仙(こせん)たちからの(おお)きな支援(しえん)()け、狼群(ろうぐん)規模(きぼ)十数倍(じゅうすうばい)膨張(ぼうちょう)していたのだ。


此等(これら)狼群(ろうぐん)は、(すべ)大軍(たいぐん)(なか)(ひそ)み、蛊虫(こちゅう)(ちから)利用(りよう)して(てき)察知(さっち)されないようにしていた。


狼王(ろうおう)よ!楊破缨(ようはえい)此処(ここ)()り。(たたか)勇気(ゆうき)はあるか?」


蒼穹(そうきゅう)(なか)楊破缨(ようはえい)巨鷹(きょよう)()()ち、英姿(えいし)颯爽(さっそう)として、()()(てん)()戦槍(せんそう)(ごと)(りん)としていた。


(かれ)主動的(しゅどうてき)挑戦(ちょうせん)(もう)()んだのは、方源(ほうげん)狼群(ろうぐん)牽制(けんせい)しようという思惑(おもわく)からであった。


鷹群(ようぐん)高所(こうしょ)から狼群(ろうぐん)攻撃(こうげき)できるため、非常(ひじょう)有利(ゆうり)立場(たちば)にあった。


「ははは、老楊(ろうよう)よ、手加減(てかげん)してやれよ。(なん)()っても常山陰(じょうざんいん)兄弟(きょうだい)は、我々(われわれ)と(おな)奴道大師(ぬどうたいし)なのだからな。面子(めんつ)くらい(たも)ってやらなきゃな。」


右翼(うよく)からは、鼠王(そおう)のからかうような(わら)(ごえ)(つた)わってきた。


一方(いっぽう)左翼(さよく)馬群(ばぐん)(なか)では、無口(むくち)馬尊(ばそん)(だま)ったまま突進(とっしん)(つづ)けていた。(かれ)周囲(しゅうい)には大勢(おおぜい)蛊師強者(こしきょうじゃ)騎馬(きば)()り、()安全(あんぜん)(まも)っている。


奴道大師(ぬどうたいし)というものは、(みずか)戦場(せんじょう)(のぞ)んで獣群(じゅうぐん)指揮(しき)してこそ、十二分(じゅうにぶん)戦力(せんりょく)発揮(はっき)できるのである。


三人(みたり)大師(たいし)(そろ)って出陣(しゅつじん)し、(おの)()危険(きけん)(さら)しながら獣群(じゅうぐん)(ひき)いて出撃(しゅつげき)する。()れは(あた)三発(さんぱつ)重拳(じゅうけん)(ごと)く、(すこ)しでも防御(ぼうぎょ)(あやま)れば、黒家軍(こくかぐん)茫然自失(ぼうぜんじしつ)し、大局(たいきょく)崩壊(ほうかい)して挽回(ばんかい)不能(ふのう)となる可能性(かのうせい)(たか)い。


(なん)()っても、戦場(せんじょう)には予測(よそく)不能(ふのう)変数(へんすう)充満(じゅうまん)している。(よわ)きが(つよ)きに()戦例(せんれい)枚挙(まいきょ)(いとま)()い。まして現状(げんじょう)黒家軍(こくかぐん)()める優位(ゆうい)は、微々(びび)たるものに()ぎないのだから。


山陰老弟(さんいんろうてい)……」


黒楼蘭(こくろうらん)(おも)わず憂色(ゆうしょく)()かべた。狼群(ろうぐん)規模(きぼ)爆発的(ばくはつてき)拡大(かくだい)し、三路(さんろ)獣群(じゅうぐん)完全(かんぜん)凌駕(りょうが)しているが、(かれ)方源(ほうげん)制御能力(せいぎょのうりょく)不足(ふそく)するのではないかと危惧(きぐ)していた。(なん)()っても、方源(ほうげん)()(ほど)規模(きぼ)狼群(ろうぐん)(あやつ)った前例(ぜんれい)()いのだ。


(たと)操作(そうさ)(あやま)らなくとも、自軍(じぐん)陣脚(じんきゃく)(みだ)結果(けっか)になり()ねない。たとえ制御(せいぎょ)できたとしても、狼王(ろうおう)四转巅峰(してんてんぽう)真元(しんげん)で、()たして(どれ)ほど()つだろうか?


方源(ほうげん)鉄犀(てっさい)頭部(とうぶ)()ち、黒楼蘭(こくろうらん)()()けたまま沈黙(ちんもく)(つらぬ)いている。


三路(さんろ)獣群(じゅうぐん)浩浩蕩蕩(こうこうとうとう)(おそ)()たり、天上(てんじょう)地上(ちじょう)から挟撃(きょうげき)すべく目前(もくぜん)(せま)っているのに、狼王(ろうおう)(いま)微動(びどう)だにしない。黒楼蘭(こくろうらん)心中(しんちゅう)には不安(ふあん)(つの)り、「山陰老弟(さんいんろうてい)(はや)()()て!」と(うなが)した。


方源(ほうげん)依然(いぜん)として沈黙(ちんもく)(つづ)け、()こえていないかのようであった。


三方向(さんほうこう)から怒涛(どとう)のように()()せる獣群(じゅうぐん)は、もはや二百歩(にひゃっぽ)(はな)れておらず、瞬時(しゅんじ)にして到達(とうたつ)しようとしている。黒家軍(こくかぐん)陣列(じんれつ)()(うご)き、黒楼蘭(こくろうらん)焦燥(しょうそう)(こえ)()げた。「常山陰(じょうざんいん)老弟(ろうてい)!!」


その(とき)方源(ほうげん)仰向(あおむ)けに(ほが)らかに(わら)一声(いっせい)、「好機(こうき)到来(とうらい)だ!(てき)獣群(じゅうぐん)をもって()れを(あっ)せんと全力(ぜんりょく)(かたむ)けているが、()れが(みずか)死地(しち)(おちい)るとは()づいていない。楼蘭盟主(ろうらんめいしゅ)貴君(きくん)(しゅく)(ふく)(おく)ろう。」


(なん)祝福(しゅくふく)だ?」


此度(こたび)(たたか)いは(すで)勝利(しょうり)し、大局(たいきょく)(さだ)まった。盟主(めいしゅ)王庭(おうてい)()るのは、もはや(うご)かし(がた)(さだ)めとなった。」


方源(ほうげん)は淡々(たんたん)と()べた。



黒楼蘭(こくろうらん)(おも)わず()見開(みは)り、咆哮(ほうこう)()らさんばかりであった。「ちくしょう! ()(わけ)()からぬ自信(じしん)一体(いったい)どこから()いてくるんだ! (はや)狼群(ろうぐん)指揮(しき)しろよ、(いま)呑気(のんき)(はな)している場合(ばあい)じゃない、(てき)はもう目前(もくぜん)まで(せま)って()ているんだぞ!」


しかし(つぎ)瞬間(しゅんかん)(かれ)両目(りょうめ)(さら)()()し、眼球(がんきゅう)(うら)から(だれ)かが(こぶし)(なぐ)()けたかの(ごと)(はげ)しく膨張(ぼうちょう)した。何故(なぜ)なら、方源(ほうげん)気息(きそく)驚異的(きょういてき)変化(へんか)()(はじ)めたのを(かん)()ったからである。


四转巅峰(してんてんぽう)から五转初階(ごてんしょかい)へ……


五转初階(ごてんしょかい)から五转中階(ごてんちゅうかい)へ……


五转中階(ごてんちゅうかい)から五转高階(ごてんこうかい)へ……


(さら)五转高階(ごてんこうかい)から五转巅峰(ごてんてんぽう)へと(たっ)した!


(つい)()(とき)方源(ほうげん)(ゆる)やかに斂息蛊(れんそくこ)遮蔽(しゃへい)()き、もはや(みずか)らの真実(しんじつ)修為(しゅうい)圧抑(あつよく)することはなかった。


五转巅峰(ごてんてんぽう) —— (にせ)りなき実力(じつりょく)


狼王常山陰(ろうおうじょうざんいん)は、(じつ)五转巅峰(ごてんてんぽう)奴道大師(ぬどうたいし)であったのか!


黒楼蘭(こくろうらん)方源(ほうげん)背影(はいえい)凝視(ぎょうし)し、呆然(ぼうぜん)としきり。王帳(おうちょう)(ちか)くの蛊師護衛(こしごえい)たちも、次々(つぎつぎ)に震撼(しんかん)驚愕(きょうがく)眼差(まなざ)しを()けてきた。


衆人(しゅうじん)視線(しせん)(そそ)がれる(なか)方源(ほうげん)鷹揚蛊(ようようこ)駆動(くどう)寬大(かんだい)(わし)(つばさ)(かれ)徐徐(じょじょ)空中(くうちゅう)へと()かび()がらせた。


半空(はんくう)にて、(かれ)(てん)(あお)ぎて長嘯(ちょうしょう)すること──


五转攻倍蛊(ごてんこうばいこ)狼嚎蛊(ろうこうこ)


(おおかみ)嚎叫(こうきょう)(てん)()き、三路(さんろ)獣群(じゅうぐん)嘶鳴(しめい)圧倒(あっとう)した。


ウォォン、ウォォン、ウォォン……


(なが)()()狼嚎(ろうこう)()()ると、(つづ)いて群狼(ぐんろう)応和(おうわ)(こえ)()()がった。








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