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蛊真人  作者: 魏臣栋
魔头乱世
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第一百三十節:“父子”相见

劉文武(りゅうぶんぶ)敗北(はいぼく)した。


その結果(けっか)(こころ)から納得(なっとく)できず、無念(むねん)であったが、(うご)かしがたい現実(げんじつ)(かれ)(ねが)い通り(どおり)には()わらない。


劉文武(りゅうぶんぶ)歐陽碧桑(おうようへきそう)墨獅狂(ぼくしきょう)三人(みたり)はそれぞれ飛行手段(ひこうしゅだん)()っていたが、飛行技術(ひこうぎじゅつ)熟達度(じゅくたつど)においては、(あき)らかに方源(ほうげん)には(とお)(およ)ばなかった。


空中(くうちゅう)地上(ちじょう)では(たたか)いの条件(じょうけん)(まった)(こと)なる。空中(くうちゅう)では自由(じゆう)()(まわ)り、上下左右(じょうげさゆう)東西南北(とうざいなんぼく)のあらゆる方向(ほうこう)縦横(じゅうおう)回避(かいひ)し、移動(いどう)することができる。一方(いっぽう)地上(ちじょう)では(うご)ける範囲(はんい)(かぎ)られ、回避行動(かいひこうどう)選択肢(せんたくし)(すく)ない。


劉家(りゅうか)三兄弟(きょうだい)がどれほど包囲(ほうい)追撃(ついげき)(こころ)みても、方源(ほうげん)(たい)しては(まった)効果(こうか)がなかった。


それに(たい)し、方源(ほうげん)(うま)回避(かいひ)しながら同時(どうじ)狼軍(ろうぐん)指揮(しき)し、劉家軍(りゅうかぐん)(たい)して大規模(だいきぼ)殺戮(さつりく)(つづ)けていた。


劉文武(りゅうぶんぶ)三人(みたり)()()方源(ほうげん)追撃(ついげき)断念(だんねん)し、低階(ていかい)蛊師(こし)たちの支援(しえん)(てん)じ、狼群(おおかみむれ)殲滅(せんめつ)(はか)った。


しかし、これこそ黒楼蘭(こくろうらん)方源(ほうげん)らが()(のぞ)んでいた展開(てんかい)であった!


狼王(ろうおう)異獣狼群(いじゅうろうぐん)(いのち)代償(だいしょう)として劉家(りゅうか)三兄弟(きょうだい)貴重(きちょう)真元(しんげん)消耗(しょうもう)させる――これは(きわ)めて(わり)()う、方源(ほうげん)有利(ゆうり)対消耗戦術(たいしょうもうせんじゅつ)なのである。


蛊師(こし)という存在(そんざい)は、(せん)へと昇格(しょうかく)しない(かぎ)り、その真元(しんげん)には(かなら)限界(げんかい)存在(そんざい)する。一旦(いったん)真元(しんげん)使()(はた)せば、戦闘力(せんとうりょく)急激(きゅうげき)低下(ていか)し、(そこ)()くまで()()むのだ。


(おおかみ)潮流(ちょうりゅう)()()せてやまず、劉家(りゅうか)三兄弟(きょうだい)(おおかみ)(ほふ)れば(ほふ)るほど、(かれ)らの真元(しんげん)(さら)(はげ)しく消耗(しょうもう)していった。


狼群(ろうぐん)規模(きぼ)膨大(ぼうだい)で、()()なく()()せ、劉家(りゅうか)三兄弟(きょうだい)()(つか)れて()(ふる)え、真元(しんげん)(そこ)()いた。


真元(しんげん)温存(おんそん)しなければならなくなった(かれ)らは、もはや(おも)(どお)りに(たたか)うことなどできなかった。黒家(こくけ)高層戦力(こうそうせんりょく)は、(つい)意気天(いきてん)()(いきお)いで(かれ)らを圧倒(あっとう)した。


黒楼蘭(こくろうらん)此方(こなた)今日(きょう)(やぶ)れたのは貴様(きさま)()によるものでは()い。太白云生(たいはくうんせい)方源(ほうげん)にこそ(やぶ)れたのだ!」


劉文武(りゅうぶんぶ)鬢髪(びんぱつ)(みだ)れ、傷痕(きずあと)だらけで、往日(おうじつ)風采(ふうさい)(かげ)(かたち)()く、無念(むねん)咆哮(ほうこう)(はっ)した。


(かれ)心中(しんちゅう)(かんが)えていた――三兄弟(きょうだい)殺招(さっしょう)三頭六臂(さんとうろっぴ)」は、戦闘力(せんとうりょく)(きわ)めて(つよ)く、戦場(せんじょう)全体(ぜんたい)圧倒(あっとう)できる。もしあの(とき)方源(ほうげん)標的(ひょうてき)にし、絶対的(ぜったいてき)速度(そくど)(たよ)りに、確実(かくじつ)方源(ほうげん)()()たせていたなら、狼群(ろうぐん)崩壊(ほうかい)し、黒家軍(こくかぐん)大勝(たいしょう)できたはずだ。


(しか)太白云生(たいはくうんせい)五转治療蛊(ごてんちりょうこ)人如故(じんじょこ)」の効果(こうか)(じつ)超絶(ちょうぜつ)で、(かれ)らの殺招(さっしょう)効果(こうか)大幅(おおはば)減衰(げんすい)させてしまったのである。


(おそ)きに(しっ)した挽回策(ばんかいさく)として狼王(ろうおう)追撃(ついげき)した(かれ)らは、奴道大師(ぬどうたいし)である常山陰(じょうざんいん)が、(さら)飛行大師(ひこうたいし)でもあるという衝撃(しょうげき)事実(じじつ)直面(ちょくめん)絶望(ぜつぼう)した。


三兄弟(きょうだい)()()くことも(かな)わず、為す(なすすべ)もなく戦局(せんきょく)悪化(あっか)するのを呆然(ぼうぜん)()つめるだけだった。最終的(さいしゅうてき)劉家軍(りゅうかぐん)大潰走(だいかいそう)し、黒家(こくけ)()ちに()って追撃(ついげき)死傷者(ししょうしゃ)数多(あまた)(のぼ)り、降伏(こうふく)する(もの)(あと)()たなかった。


盟主(めいしゅ)である劉文武(りゅうぶんぶ)らも、真元(しんげん)使()()たした(すえ)全員(ぜんいん)生捕(いけど)りにされた。


黒家(こくけ)劉家(りゅうか)長年(ながねん)対立(たいりつ)(つづ)けており、両雄(りょうゆう)緊張関係(きんちょうかんけい)北原(ほくげん)周知(しゅうち)事実(じじつ)であった。しかし黒楼蘭(こくろうらん)劉文武(りゅうぶんぶ)らを(とら)えながらも処刑(しょけい)はせず、英明(えいめい)にも劉家(りゅうか)から莫大(ばくだい)戦争賠償(せんそうばいしょう)を引き()選択(せんたく)をしたのである。


劉文武(りゅうぶんぶ)劉家(りゅうか)蛊仙(こせん)後継候補(こうけいこうほ)一人(ひとり)であった。(かれ)殺害(さつがい)することは、此度(こたび)王庭争奪戦(おうていそうだつせん)における暗黙(あんもく)のルールを(おか)行為(こうい)となる。


(さら)重要(じゅうよう)(てん)は、()(たたか)いで黒家(こくけ)辛勝(しんしょう)したものの、自身(じしん)甚大(じんだい)被害(ひがい)(こうむ)っていた。もし劉文武(りゅうぶんぶ)賠償交渉(ばいしょうこうしょう)重要(じゅうよう)切札(きりふだ)として利用(りよう)できなければ、通常(つうじょう)戦争賠償(せんそうばいしょう)だけでは、黒家連合軍(こくれんごうぐん)戦力(せんりょく)回復(かいふく)するのは困難(こんなん)である。これは(いま)後の王庭争奪戦(おうていそうだつせん)にとって(きわ)めて不利(ふり)状況(じょうきょう)()わざるを()ない。


三日後(みっかご)劉家(りゅうか)(むか)えの使者(ししゃ)到着(とうちゃく)し、劉家部族(りゅうかぶぞく)および()れに帰順(きじゅん)した家族(かぞく)を全て(すべ)て福地(ふくち)()(かえ)った。


一方(いっぽう)(きず)つき(つか)()てた黒家軍(こくかぐん)現地(げんち)駐屯(ちゅうとん)し、降伏兵(こうふくへい)再編(さいへん)新同盟(しんどうめい)結成(けっせい)戦功(せんこう)査定(さてい)物資(ぶっし)配布(はいふ)(おこな)い、戦果(せんか)消化(しょうか)(つと)めた。


大蜥屋蛊(だいしおくこ)(なか)方源(ほうげん)蒲团(ふとん)結跏趺坐(けっかふざ)し、瞑目(めいもく)して修練(しゅうれん)(はげ)んでいた。


四转(してん)狼魂蛊(ろうこんこ)が、(かれ)心念(しんねん)一动(いちどう)(したが)い、体外(たいがい)召喚(しょうかん)された。


狼魂蛊(ろうこんこ)親指(おやゆび)ほどの大き(おおき)さで、狼型(おおかみがた)灰色(はいいろ)の小さ(ちいさ)な布人形(ぬのにんぎょう)のようであり、空中(くうちゅう)浮遊(ふゆう)して、全身(ぜんしん)幽蓝色(ゆうらんしょく)(かがや)きを(まと)っている。


方源(ほうげん)空窍(くうきょう)(なか)にある真元海(しんげんかい)(すこ)()り、狼魂蛊(ろうこんこ)真元(しんげん)(そそ)がれると、急速(きゅうそく)膨張(ぼうちょう)した。


ウオォン!


狼魂蛊(ろうこんこ)膨張(ぼうちょう)して巨大化(きょだいか)し、(ぞう)ほどの大き(おおき)さを持つ純灰色(じゅんはいいろ)狼魂(ろうこん)へと変貌(へんぼう)した。


(つづ)いて、狼魂(ろうこん)(くち)()け、無音(むおん)咆哮(ほうこう)(はっ)しながら方源(ほうげん)身体(しんたい)突進(とっしん)した。


方源(ほうげん)(かす)かに(わら)った。千人級(せんにんきゅう)(たましい)が、そんじょそこらの衝撃(しょうげき)()るがされると思う(おも)うか?狼魂(ろうこん)直接(ちょくせつ)その千人魂(せんにんこん)激突(げきとつ)するや、(またた)く間に(いきお)いを(うし)ない、千人魂(せんにんこん)完璧(かんぺい)()さえ()まれてしまった。


(ふた)つの(たましい)(はげ)しく(たぎ)り、魂霧(こんむ)形成(けいせい)した。しばらくして、千人魂(せんにんこん)狼魂(ろうこん)融合(ゆうごう)し、(ふたた)姿(すがた)(あらわ)した。


(いま)千人魂(せんにんこん)頭頂(とうちょう)には細長(ほそなが)(おおかみ)(みみ)()え、全身(ぜんしん)輪郭(りんかく)方源(ほうげん)肉体(にくたい)より一層(いっそう)(するど)く、(はな)(たか)()()がっていた。ただし、(こし)まで(とど)長髪(ちょうはつ)や、(おおかみ)(ひとみ)()(いま)(あらわ)れていなかった。


王庭争奪戦(おうていそうだつせん)(はじ)まって以来(いらい)()れは毎日(まいにち)狼魂蛊(ろうこんこ)消耗(しょうもう)し、(みずか)らの魂魄(こんぱく)(きた)(つづ)けてきた。(いま)では(しょう)なりとはいえ成果(せいか)(あら)われ、(やく)三割(さんわり)狼人魂(ろうじんこん)へと変容(へんよう)している。」


一旦(いったん)完全(かんぜん)狼人魂(ろうじんこん)転化(てんか)すれば、(かれ)狼群(ろうぐん)統率能力(とうそつのうりょく)(ふたた)質的変化(しつてきへんか)()げるだろう。制御(せいぎょ)できる狼群(ろうぐん)(かず)爆発的(ばくはつてき)増加(ぞうか)するのみならず、手足(てあし)(ごと)自在(じざい)(あやつ)ることが可能(かのう)となる。


激戦(げきせん)後の魂魄疲労度(こんぱくひろうど)も、(おお)きく軽減(けいげん)されるはずだ。


(ただ)し、()進捗(しんちょく)では、狼人魂(ろうじんこん)完全(かんぜん)(きた)()げる(ころ)には、王庭争奪戦(おうていそうだつせん)(すで)終結(しゅうけつ)しているだろう。四转(してん)狼魂蛊(ろうこんこ)しか()たぬ此方(こなた)では、魂魄鍛錬(こんぱくたんれん)効率(こうりつ)(あま)りにも(ひく)すぎる。」


方源(ほうげん)嘆息(たんそく)した。


五转(ごてん)狼魂蛊(ろうこんこ)であれば、方源(ほうげん)現状(げんじょう)相応(ふさわ)しい効率(こうりつ)()むのだが、四转(してん)では、巨漢(きょかん)小刀(こがたな)大樹(たいじゅ)()るようなものだ。


(じつ)()えば、方源(ほうげん)魂魄修行(こんぱくしゅぎょう)速度(そくど)(すで)驚異的(きょういてき)(はや)い。


普通(ふつう)蛊師(こし)ならば、(すく)なくとも二十~三十年(にじゅうさんじゅうねん)はかけて、(はじ)めて(かれ)水準(すいじゅん)到達(とうたつ)できる。(たと)天才的(てんさいてき)蛊師(こし)で、一族(いちぞく)支援(しえん)()けたとしても、東方余亮(とうほうよりょう)のように、十年程度(じゅうねんていど)短縮(たんしゅく)するのが(かぎ)(やま)である。


方源(ほうげん)蕩魂山(とうこんざん)(ゆう)しているため、魂魄(こんぱく)素養(そよう)目覚(めざ)ましい(はや)さで向上(こうじょう)し、(すで)眼光(がんこう)()えてしまっている。


()(わたし)()盗天(とうてん)継承(けいしょう)(とお)り、落魄谷(らくはくこく)()にできれば……」


方源(ほうげん)思考(しこう)()らぎ、(おも)わず夢想(むそう)してしまった。


しかし、しばしすると(かれ)思考(しこう)収束(しゅうそく)させた。



狐仙福地(こせんふくち)(なか)では、蕩魂山(とうこんざん)濁泥(だくでい)侵食(しんしょく)され(つづ)け、(いま)山体(さんたい)(なか)以下(いか)まで縮小(しゅくしょう)している。


(かれ)最優先課題(さいゆうせんかだい)は、蕩魂山(とうこんざん)(すく)うことだ。落魄谷(らくはくこく)探索(たんさく)は、王庭争奪戦(おうていそうだつせん)終結(しゅうけつ)するまで()たねばならない。


方源(ほうげん)修行中(しゅぎょうちゅう)のこと、常飆(じょうひょう)倪雪彤(げいせつとう)常極右(じょうきょくう)(ひき)いて大蜥屋蛊(だいしおくこ)門前(もんぜん)到着(とうちゃく)した。


常飆(じょうひょう)(もう)します。狼王(ろうおう)(さま)にお()にかかります」


常飆(じょうひょう)(ひく)(こえ)(うやうや)しく()べた。(もん)両側(りょうがわ)に淡々(たんたん)とした表情(ひょうじょう)()二人(ふたり)三转蛊師(してんこし)一人(ひとり)(こた)えた。「狼王様(ろうおうさま)修行中(しゅぎょうちゅう)。我々(われわれ)が屋內(おくない)(つう)じることはできぬ。()つがよい」


「はは、少々(しょうしょう)お()ちするのは当然(とうぜん)でございます」


常飆(じょうひょう)(わら)いながら、心中(しんちゅう)無念(むねん)さと凄涼(せいりょう)さを必死(ひっし)(かく)そうとした。


(かれ)常山陰(じょうざんいん)(あいだ)には因縁浅(いんねんあさ)からぬ因縁(いんねん)があった。当然(とうぜん)ながら黒家(こくけ)帰順(きじゅん)したいわけなどない。本来(ほんらい)劉家(りゅうか)()こうと考え(かんが)ていたが、劉家(りゅうか)常家(じょうけ)(たい)苗字(みょうじ)()てて劉家(りゅうか)直接編入(ちょくせつへんにゅう)するよう(もと)めた。この要求(ようきゅう)常家(じょうけ)家老衆(かろうしゅう)には到底(とうてい)受け()(がた)いものだった。


常家(じょうけ)大規模部族(だいきぼぶぞく)である。一旦(いったん)苗字(みょうじ)放棄(ほうき)すれば、即座(そくざ)劉家(りゅうか)(もの)となり、常家(じょうけ)実質的(じっしつてき)消滅(しょうめつ)意味(いみ)する。


(くわ)えて黒楼蘭(こくろうらん)劉文武(りゅうぶんぶ)生捕(いけど)りにしたことで、此度(こたび)最大功労者(さいだいこうろうしゃ)である常山陰(じょうざんいん)への懐柔策(かいじゅうさく)とし、戦後講和条件(せんごこうわじょうけん)(なか)常家(じょうけ)帰順(きじゅん)に関する具体案(ぐたいあん)()()んでいたのである。


かくして常家(じょうけ)は、劉家(りゅうか)黒家(こくけ)取引(とりひき)における犠牲(ぎせい)となった。もし黒家(こくけ)帰順(きじゅう)しなければ、常家(じょうけ)黒家軍(こくかぐん)討伐(とうばつ)()ける運命(うんめい)にある。二大家族(にだいかぞく)(はさ)まれ、常家(じょうけ)()()黒楼蘭(こくろうらん)屈服(くっぷく)し、黒家(こくけ)捕虜(ほりょ)となるしかなかった。


常山陰(じょうざんいん)常家(じょうけ)因縁(いんねん)は、(いま)周知(しゅうち)事実(じじつ)である。黒楼蘭(こくろうらん)常家(じょうけ)全員(ぜんいん)(とら)えると、(かれ)らを方源(ほうげん)処分(しょぶん)(まか)せた。


この()らせを()けた方源(ほうげん)は、黒楼蘭(こくろうらん)感謝(かんしゃ)()(ひょう)したが、(じつ)(まった)()にかけていなかった。


(かれ)常山陰(じょうざんいん)という身分(みぶん)()りて、()()ましているに()ぎない。()(かた)って王庭福地(おうていふくち)潜入(せんにゅう)したのであり、狼王(ろうおう)個人的(こじんてき)恩怨(えんおん)は、(かれ)(なん)(かか)わりもないのである。


しかし、軽率(けいそつ)処置(しょち)は、現在(げんざい)(かれ)立場(たちば)にふさわしくなく、疑念(ぎねん)(まね)(おそ)れがある。方源(ほうげん)本日(ほんじつ)常家(じょうけ)現族長(げんぞくちょう)である常飆(じょうひょう)らを()()した。


常飆(じょうひょう)夕方(ゆうがた)から真夜中(まよなか)まで、ひたすら()(つづ)けた。


この時刻(じこく)北原(ほくげん)(よる)(きび)しい(さむ)さに(つつ)まれている。常飆(じょうひょう)三人(みたり)蛊虫(こちゅう)没収(ぼっしゅう)されていたため、真元(しんげん)はあっても、酷寒(こっかん)()える(すべ)がなかった。夜風(よかぜ)()かれ、三人(みたり)(ふる)()がっていた。


常飆(じょうひょう)平静(へいせい)(よそお)っていたが、倪雪彤(げいせつとう)はやましいところがあるらしく、内心(ないしん)(うれ)いを(かく)()れなかった。常極右(じょうきょくう)(わか)血気盛(けっきさか)んである。(はな)()()にし、全身(ぜんしん)(ふる)わせながらも、()(かがや)き、表情(ひょうじょう)(ふる)()っていた。


(かれ)(ちい)さい(ころ)から「狼王(ろうおう)常山陰(じょうざんいん)」の()()いて(そだ)ってきたのである。


人々(ひとびと)は(かれ)を「英雄(えいゆう)()」と()び、()まれながらにして唯一無二(ゆいいつむに)光環(こうかん)(あた)えられた。これは(なや)みをもたらし、(ほこ)りをもたらし、厄介(やっかい)をもたらし、そして機会(きかい)ももたらした。


(はじ)めて狼王(ろうおう)常山陰(じょうざんいん)江湖(こうこ)再登場(さいとうじょう)し、()んでいないばかりか、常家(じょうけ)への復讐(ふくしゅう)(たくら)んでいると()った(とき)(かれ)心境(しんきょう)複雑(ふくざつ)(きわ)まりなかった。実父(じっぷ)(たたか)わねばならないと()った(とき)、その闘志(とうし)(つよ)()らいだ。


以前(いぜん)面会(めんかい)要請(ようせい)に、常山陰(じょうざんいん)(こた)えず、()わりに孫湿寒(そんしつかん)徹底的(てっていてき)()()えた。このことで常極右(じょうきょくう)失望(しつぼう)すると同時(どうじ)に、敬服(けいふく)(ねん)(いだ)いた。劉家(りゅうか)敗北(はいぼく)し、自身(じしん)捕虜(ほりょ)となったことで、(かれ)内心(ないしん)(おお)きく安堵(あんど)した——ついに(ちち)(たたか)わずに()むのだ!


劉家(りゅうか)大敗(たいはい)した(いま)常極右(じょうきょくう)(つい)実父(じっぷ)である常山陰(じょうざんいん)(じか)対面(たいめん)することになる。その(むね)激昂(げきこう)していた。


(たと)屋外(おくがい)放置(ほうち)され、厳寒(げんかん)(さら)されようとも、(かれ)(こころ)(あつ)さは()()せることはなかった。


(わたし)にすべてを(さず)けた(ちち)よ、貴方(あなた)()たしてどのような人物(じんぶつ)なのか?」


好奇(こうき)同時(どうじ)に、かすかな困惑(こんわく)(あわ)てた気持(きも)ちも(いだ)いていた。


三匹(さんびき)狼魂蛊(ろうこんこ)消費(しょうひ)した(あと)方源(ほうげん)(まぶた)()いた。


部屋(へや)(あたた)かく、窓外(そうがい)からはびゅうびゅうと()(すさ)寒風(かんぷう)(おと)(かす)かに()こえてくる。


方源(ほうげん)常飆(じょうひょう)らに威圧(いあつ)(くわ)える意図(いと)()たせていたが、此刻(こくさ)くほどの時間(じかん)()てば十分(じゅうぶん)だろうと判断(はんだん)した。(かれ)伝音(でんおん)(そと)(つた)えると同時(どうじ)に、大蜥屋蛊(だいしおくこ)(あやつ)って()(ぐち)()(はな)った。


狼王様(ろうおうさま)修行(しゅぎょう)終了(しゅうりょう)し、御三方(みかた)召見(しょうけん)される。」


門前(もんぜん)護衛蛊師(ごえいこし)伝音(でんおん)()け、無表情(むひょうじょう)()げた。


常飆(じょうひょう)(いき)()んだ。胸中(きょうちゅう)不安(ふあん)渦巻(うずま)き、()(さき)(あし)()()れたが、その(あゆ)みは(きわ)めて(おも)(しず)んでいた。


()狼王(ろうおう)真相(しんそう)見破(みやぶ)ったなら、(かれ)()して(ほうむ)(はか)もなく、(さら)には名誉(めいよ)(うし)なうだろう。(たと)狼王(ろうおう)真相(しんそう)究明(きゅうめい)しなくとも、復讐(ふくしゅう)固執(こしつ)するなら、常家全族(じょうけぜんぞく)(ほふ)()くすも、(かれ)の一(ひと(こと))に()ぎない。


(ひと)刀俎(とうしょ)()(われ)魚肉(ぎょにく)()る。現世(げんせ)有様(ありさま)()くの(ごと)無念(むねん)である!


方源(ほうげん)眼前(がんぜん)(ひざまず)三人(みたり)仔細(しさい)(なが)(まわ)した。


常飚(じょうひょう)(まゆ)(ひく)()れ、()()(しば)ってうつむいた。倪雪彤(げいせつとう)顔面(がんめん)蒼白(そうはく)で、全身(ぜんしん)(ふる)わせている。常極右(じょうきょくう)(いた)っては、(いき)(あら)く、時折(ときおり)こっそりと常山陰(じょうざんいん)(ぬす)()ては、(はげ)しく(こころ)(おど)らせていた。


方源(ほうげん)(かろ)(わら)った。


その(わら)(ごえ)三人(みたり)(みみ)(とど)くと、(かれ)らは全員(ぜんいん)身体(からだ)(ふる)わせた。


常飚(じょうひょう)()()じ、(こころ)奈落(ならく)(そこ)(しず)み、方源(ほうげん)宣告(せんこく)()つばかりだった。


倪雪彤(げいせつとう)(くず)()ちそうになり、常極右(じょうきょくう)一層(いっそう)興奮(こうふん)した——これが(ちち)(わら)(ごえ)だ!(かれ)はその(わら)(ごえ)(あたた)かな(ちから)()められていると(かん)じたのである。





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