表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
蛊真人  作者: 魏臣栋
魔头乱世
530/563

第一百二十五節:为他整理容貌

劉家(りゅうか)防線(ぼうせん)営帳(えいちょう)(なか)


母上(ははうえ)父上(ちちうえ)究竟(くっきょう)どのような(かた)なのでしょうか?」


常極右(つねきょくう)表情(ひょうじょう)躊躇(ちゅうちょ)()かべ、(くちびる)をしばらく(ふる)わせた(あと)、ようやく(むね)(おく)(もっと)()いただしたかった言葉(ことば)(くち)にした。


(かれ)常山陰(じょうざんいん)一度(いちど)面会(めんかい)したことがなかった。当時(とうじ)常山陰(じょうざんいん)(はは)劇毒(げきどく)(おか)され、常山陰(じょうざんいん)哈突骨(はっとつこつ)死闘(しとう)()(ひろ)げていた(とき)常極右(つねきょくう)()胎内(たいない)にいる未出生(みしゅっせい)嬰児(えいじ)()ぎなかった。


(かれ)(はは)である倪雪彤(げいせつとう)は、愁眉(しゅうび)(ふか)くして嘆息(たんそく)し、(ふか)愛情(あいじょう)懐古(かいこ)(ねん)()めた口調(くちょう)(かた)(はじ)めた。


()()よ、貴方(あなた)(こころ)(うご)いたのか?(いま)の我々(われわれ)の立場(たちば)(わす)れてはならない。父上(ちちうえ)のことは(うれ)いなくてよい。(かれ)北原(ほくげん)伝説(でんせつ)当時(とうじ)(ひと)りで哈突骨(はっとつこつ)馬賊団(ばぞくだん)()()たし、(たみ)(がい)(のぞ)いた大英雄(だいえいゆう)なのだから。」


常極右(つねきょくう)(はは)言葉(ことば)(さえぎ)った。「母上(ははうえ)、その(はなし)はもう()()きたよ。物心(ものごころ)ついた(とき)から、ずっと(おな)(はなし)ばかり()かされて(そだ)ってきた。どこへ()き、(なに)をしようと、(かなら)(だれ)かが『()ろ、流石(さすが)常山陰(つねさんいん)息子(むすこ)だ』と()う。父上(ちちうえ)(てん)(かけ)(わし)のようで、(そら)(たか)()い、大地(だいち)巨大(きょだい)(かげ)()としている。あと数日(すうじつ)もすれば()えるというのに、(むね)(なか)七転八倒(しちてんばっとう)で……ただ一度(いちど)でいいから、本当(ほんとう)父上(ちちうえ)(はなし)()きたいんだ……」


常極右(つねきょくう)言葉(ことば)(まっと)うされる(まえ)に、陣営(じんえい)入口(いりぐち)(まく)()()がり、精悍(せいかん)たる気魄(きはく)(するど)威風(いふう)(はな)中年(ちゅうねん)(おとこ)()()んできた。


()れこそ常家(つねけ)現当主(げんとうしゅ)であり、常山陰(つねさんいん)義兄弟(ぎけいてい)であった、四转高阶(してんこうきゅう)風道(ふうどう)強者(きょうじゃ)常飚(つねひょう)その(ひと)である。


義父様(ぎふさま)、ご機嫌(きげん)よう。」


常極右(つねきょくう)(あわ)てて(うやうや)しく(れい)()った。


()()よ、()ずは(そと)()っていてくれ。母上(ははうえ)(はな)しがある。」


常飚(つねひょう)(おだ)やかな(こえ)()(はな)った。


(かしこ)まりました。」


常極右(つねきょくう)()()陣営(じんえい)(あと)にした。


入口(いりぐち)(まく)()ろされ、護衛(ごえい)見張(みは)られた陣営内(じんえいない)には、常飚(つねひょう)倪雪彤(げいせつとう)二人(ふたり)だけが(のこ)された。


夫君(ふくん)!」


倪雪彤(げいせつとう)常飚(つねひょう)(むね)()()み、(よわ)々(よわ)しく無力(むりょく)(なみだ)(なが)した。


「はあ、此度(こたび)本当(ほんとう)(つら)(おも)いをさせたな。」


常飚(つねひょう)倪雪彤(げいせつとう)()()めながら、愛妻(あいさい)(つや)やかな黒髪(くろかみ)(やさ)しく()でた。同時(どうじ)蛊虫(こちゅう)()って(おと)(そと)()れぬよう遮断(しゃだん)した。


倪雪彤(げいせつとう)(こえ)(ころ)して()()がりながら()った。「右児(うじ)がまた常山陰(つねさんいん)のことを(たず)ねてきたの。(わたし)(なん)(こた)えれば良いの?()かるでしょう、さっき(わたし)衝動(しょうどう)()られて、本当(ほんとう)のことを(はな)してしまいそうになったの。(かれ)常山陰(つねさんいん)実子(じっし)なんかではなく、(わたし)たち二人(ふたり)(あい)結晶(けっしょう)だってことを!」


常飚(つねひょう)身体(からだ)(ふる)わせた。(かれ)(こころ)同様(どうよう)に、もがき(くる)しんでいたのではないか?


(かれ)(ひく)(おも)(こえ)()った。「全て(すべて)は此方(こなた)無能(むのう)(いた)すところだ!(むかし)(わたくし)たちは(おさな)なじみだった。常山陰(つねさんいん)(よこ)から()()み、貴女(きみ)(うつく)しさに()(くら)まし、(わたくし)たちの婚礼(こんれい)当日(とうじ)貴女(きみ)(うば)()った。(わたくし)(かれ)(てき)ではなかった。()()(ひそ)かに貴女(きみ)()(つづ)け、常極右(つねきょくう)()まれた。しかし一度(いちど)(かれ)()まれ、血脈(けつみゃく)検査(けんさ)されれば、真実(しんじつ)発覚(はっかく)して万事休(ばんじきゅう)す。()(ゆえ)(わたくし)哈突骨(はっとつこつ)(はか)り、(つい)には常山陰(つねさんいん)(おとしい)れたのだ。」


「その()、私は常山陰(つねさんいん)義兄弟(ぎきょうだい)として、貴女(きみ)(めと)り、常極右(つねきょくう)養子(ようし)(むか)えた。()れまで部族(ぶぞく)状況(じょうきょう)(きび)しかったが、(わたくし)たちにとって(もっと)幸福(こうふく)充実(じゅうじつ)した日々(ひび)であった。常極右(つねきょくう)無事(ぶじ)少族长(しょうぞくちょう)()てることができた。(しか)るに(ゆえ)に、貴女(きみ)()秘密(ひみつ)(けっ)して(くち)(がい)してはならないのだ。」


一旦(いったん)()秘密(ひみつ)(ばく)られれば、常飚(つねひょう)倪雪彤(げいせつとう)衆矢(しゅうし)(まと)となり、「不義(ふぎ)(おとこ)陰険(いんけん)(おんな)」との汚名(おめい)()せられ、一生(いっしょう)(あたま)()げられなくなる。(さら)には一族(いちぞく)強者(きょうじゃ)(おとし)れ、私利(しり)私欲(しよく)(ため)大局(たいきょく)(かえり)みず、()罪業(ざいごう)(きわ)めて(おも)いと()わざるを()ない!


常極右(つねきょくう)もまた、人々(ひとびと)に軽蔑(けいべつ)される「私生児(しせいじ)」となってしまう。(かれ)少族长(しょうぞくちょう)地位(ちい)も、常飚(つねひょう)族長(ぞくちょう)()も、(あや)うく()らぎ、野心家(やしんか)たちの謀略(ぼうりゃく)(さら)されること必定(ひつじょう)である。


正道(せいどう)には正道(せいどう)規則(きそく)がある。


常飚(つねひょう)はこれまで、()(あに)(つま)である倪雪彤(げいせつとう)世話(せわ)し、義子(ぎし)常極右(つねきょくう)(じつ)()のように(そだ)ててきた。()(よう)義侠心(ぎきょうしん)は人々(ひとびと)を感服(かんぷく)させ、()(よう)美德(びとく)賞賛(しょうさん)されてきた。


(まさ)()(ゆえ)に、常飚(つねひょう)(かす)かな優勢(ゆうせい)常家(つねけ)(あたら)しい族長(ぞくちょう)となったのである。


一旦(いったん)()真実(しんじつ)(さら)()されれば、(かれ)は全て(すべて)を(うしな)う。部族内(ぶぞくない)蠢動(しゅんどう)する野心家(やしんか)たちが(かれ)見逃(みのが)すはずもない。常山陰(つねさんいん)(まね)()れようとする劉文武(りゅうぶんぶ)も、(わず)かでも可能性(かのうせい)があれば(かれ)(ゆる)さないだろう。


()(とき)(かれ)唯一(ゆいいつ)活路(かつろ)は、倪雪彤(げいせつとう)(とも)に、実子(じっし)である常極右(つねきょくう)()れて()()ちし、魔道蛊師(まどうこし)となることである。正道(せいどう)から唾棄(だき)され、部族(ぶぞく)から追撃(ついげき)()ける運命(うんめい)(おちい)るのだ。


何故(なぜ)……何故(なぜ)なのです!長生天(ちょうせいてん)何故(なぜ)私達(わたしたち)()うも(あつか)うのですか!私達(わたしたち)本当(ほんとう)(あい)()っているのに、何故(なぜ)()うも悲惨(ひさん)境遇(きょうぐう)(おちい)らねばならないのですか!常山陰(つねさんいん)こそが(しん)凶悪犯(きょうあくはん)であり悪党(あくとう)なのに、何故(なぜ)(かれ)だけが称賛(しょうさん)されるのですか。私達(わたしたち)(いつわ)りの仮面(かめん)(もと)()き、(みずか)らの息子(むすこ)さえ(あざむ)(つづ)けねばならないのですか!」


倪雪彤(げいせつとう)(なみだ)(あふ)れさせ、(はげ)しく()(さけ)んだ。彼女(かのじょ)感情(かんじょう)極度(きょくど)(たか)ぶっていた。


()数日間(すうじつかん)彼女(かのじょ)心理的負担(しんりてきふたん)限界(げんかい)(たっ)していた。


常山陰(つねさんいん)」が再登場(さいとうじょう)して以来(いらい)彼女(かのじょ)(ねむ)れぬ(よる)(かさ)ね、過去(かこ)悪夢(あくむ)(ふたた)(よみがえ)り、(ふか)(なや)みと憂慮(ゆうりょ)(そこ)(しず)んでいた。


「ねえ、劉家(りゅうけ)盟主(めいしゅ)常山陰(つねさんいん)(まね)()れようとしてるんでしょう?もし常山陰(つねさんいん)承知(しょうち)したら、私達(わたしたち)また以前(いぜん)(よう)生活(せいかつ)(もど)されちゃうの?常山陰(つねさんいん)(いま)復讐(ふくしゅう)公言(こうげん)して(まわ)ってるけど、あの(とき)私達(わたしたち)共謀(きょうぼう)して(かれ)(わな)にはめたって気付(きづ)いたのかしら?もし(かれ)本当(ほんとう)部族(ぶぞく)(もど)ってきたら、私達(わたしたち)どうすればいいの?」


最愛(さいあい)(ひと)(むね)()かれた倪雪彤(げいせつとう)は、(くび)(あお)()け、次々(つぎつぎ)に疑問(ぎもん)()げかけた。


大丈夫(だいじょうぶ)大丈夫(だいじょうぶ)。そんな深刻(しんこく)(かんが)えすぎないで。」


常飚(つねひょう)は、生涯(しょうがい)最愛(さいあい)女性(じょせい)(やさ)しく(なぐさ)めた。


第一(だいいち)常山陰(つねさんいん)私達(わたしたち)真犯人(しんはんにん)だと気付(きづ)いてはいないはずだ。もし気付(きづ)いていたら、(かれ)性格(せいかく)から()って、とっくに公表(こうひょう)して私達(わたしたち)名誉(めいよ)()()としているだろう。(かれ)常家(つねけ)内通者(ないつうしゃ)がいると(うたが)ってはいるが、()たして(だれ)なのかは確定(かくてい)できていないのだ。」


劉家(りゅうか)盟主(めいしゅ)(たし)かに常山陰(つねさんいん)(まね)()れたいと考え(かんが)ているのは事実(じじつ)だ。(かれ)(なん)()っても狼王(ろうおう)奴道大師(ぬどうたいし)なのだから、(かれ)助力(じょりょく)()たがらない大軍(たいぐん)盟主(めいしゅ)などいるはずがない。しかし劉文武(りゅうぶんぶ)公子(こうし)(けっ)して凡庸(ぼんよう)人物(じんぶつ)ではない。(かれ)心中明鏡(しんちゅうめいきょう)(ごと)く、招攬(しょうらん)成功(せいこう)(のぞ)(うす)いことを(さと)り、()計略(けいりゃく)最大(さいだい)目的(もくてく)離間策(りかんさく)であり、狼王(ろうおう)戦意(せんい)(にぶ)らせることにあると理解(りかい)している。」


「考え(かんが)てみてくれ。常山陰(つねさんいん)常極右(つねきょくう)真実(しんじつ)出生(しゅっせい)()らず、(かれ)(じつ)息子(むすこ)(しん)()んでいる。父親(ちちおや)として、(かれ)はどう(おも)うだろうか?()れは()(みず)よりも()いという親子(おやこ)(じょう)だ。常極右(つねきょくう)自分(じぶん)狼群(おおかみむれ)(ころ)される可能性(かのうせい)(おも)()かべた(とき)将来(しょうらい)大戦(たいせん)(かれ)全力(ぜんりょく)()くすと思うか?」


「そうだったの……」


倪雪彤(げいせつとう)()言葉(ことば)()き、(おもむ)ろに冷静(れいせい)を取り(とりもど)した。


「もう大丈夫(だいじょうぶ)だ、心配(しんぱい)するな。(なん)でも(わたし)()()つ。」


常飚(つねひょう)(やさ)しい笑顔(えがお)()かべ、倪雪彤(げいせつとう)背中(せなか)(かる)()でた。


陣営(じんえい)(なか)には、(おだ)やかで(あたた)かい空気(くうき)()ちていた。


しかし、()のような時間(じかん)が、()たしてあとどれほど(つづ)くというのか?


常飚(つねひょう)も、倪雪彤(げいせつとう)も、心中(しんちゅう)には(まった)確信(かくしん)()てなかった。


ドン!


一筋(ひとすじ)(かげ)が、大蜥屋蛊(だいしおくこ)(まど)()(やぶ)り、真横(まよこ)(ほう)()されて()った。


狈君子孫湿寒(はいくんしそんしつかん)地面(じめん)(たお)()み、(はな)(あお)眼腫(はなじ)()()がりながら()()がった。驚愕(きょうがく)憤怒(ふんぬ)怨毒(えんどく)恐慌(きょうこう)()()じった(かれ)は、即座(そくざ)(こえ)()らして(さけ)()した。「狼王(ろうおう)()()した!狼王(ろうおう)此方(こなた)()()した!反逆(はんぎゃく)する()だ!人殺(ひとごろ)しを(はたら)くつもりだ!(たす)けてくれ!(たす)けて!」


孫湿寒(そんしつかん)黒楼蘭(こくろうらん)側近(そっきん)として()られる存在(そんざい)であり、()救難(きゅうなん)(さけ)(ごえ)瞬時(しゅんじ)(おお)くの蛊師(こし)(あつ)めさせた。


方源(ほうげん)(ひや)やかに(はな)(わら)い、(まど)から()()すと、孫湿寒(そんしつかん)目掛(めが)けて(さら)一蹴(いっしゅう)()らわした。


孫湿寒(そんしつかん)()()蛊虫(こちゅう)(もよお)すことを(おそ)れ、回避(かいひ)する(ほか)()かった。


(しか)方源(ほうげん)()(のが)さず(わざ)()え、右拳(みぎこぶし)横払(よこはら)いにして、孫湿寒(そんしつかん)鼻梁(びりょう)見事(みごと)()()えた。


孫湿寒(そんしつかん)悲鳴(ひめい)()げ、()()がった途端(とたん)(ふたた)地面(じめん)(たお)()んだ。顔中(かおじゅう)()まみれで、鼻梁(びりょう)方源(ほうげん)()(ぷた)つに()られ、前歯(まえば)二本(にほん)()()ち、無残(むざん)(きわ)まりない姿(すがた)であった。


(しか)騒動(そうどう)()()けて()()けた蛊師(こし)たちは、誰一人(だれひとり)として()()さず、(むし)内心(ないしん)ほっと一息(ひといき)ついていた。


方源(ほうげん)孫湿寒(そんしつかん)も、蛊虫(こちゅう)(もよお)してはいなかった。()れでは規約(きやく)違反(いはん)には()たらず、最悪(さいあく)でも口論(こうろん)程度(ていど)(あつか)いで()む。


(ひと)(ひと)(とも)生活(せいかつ)すれば、(すこ)しの摩擦(まさつ)対立(たいりつ)(かなら)(しょう)じるもの。(たが)いに口論(こうろん)()じることも、(ごく)自然(しぜん)なことである。(ただ)蛊虫(こちゅう)()っての内闘(ないとう)さえ()こさなければ、毒誓(どくせい)違反(いはん)には該当(がいとう)しないのだ。


常山陰(つねさんいん)貴様(きさま)(あま)りにも傍若無人(ぼうじゃくぶじん)だ!妻子(さいし)敵陣(てきじん)()()りにしておきながら、此方(こなた)好意(こうい)忠告(ちゅうこく)しただけで、()じきって逆上(ぎゃくじょう)し、暴力(ぼうりょく)()るうとは!(こころ)(やま)しいところがあるからこそだろうが!」


孫湿寒(そんしつかん)()()がり、(みみ)(つんざ)くような甲高(かんだか)(こえ)(さけ)(つづ)けた。


()言葉(ことば)に、周囲(しゅうい)蛊師(こし)たちは(おも)わず(ささや)()(はじ)めた。常山陰(つねさんいん)常家(つねけ)関係(かんけい)周知(しゅうち)事実(じじつ)であり、()数日間(すうじつかん)黒家軍(こくかぐん)(ない)(うわさ)()えなかった。


孫湿寒(そんしつかん)()けてくる、得意(とくい)げで陰険(いんけん)眼差(まなざ)しを()にし、方源(ほうげん)(あざ)けるように(わら)った。返事(へんじ)など一切(いっさい)せず、()ぐに(こぶし)()りかざした。


ドン、ドン、ドン!


方源(ほうげん)一撃(いちげき)一撃(いちげみ)激烈(げきれつ)無比(むひ)で、孫湿寒(そんしつかん)には(すこ)しの(ちから)基礎(きそ)()ったものの、方源(ほうげん)力道(りきどう)(そそ)いだ莫大(ばくだい)投資(とうし)には到底(とうてい)(およ)ばなかった。


数回(すうかい)(ふせ)()った(のち)(かれ)(ふたた)方源(ほうげん)()(たお)され、地面(じめん)()()かれて乱拳(らんけん)(あめ)()びせられた。


狼王(ろうおう)流石(さす)ですな、奴道大師(ぬどうだいし)(いえ)ども、力道(りきどう)素養(そよう)相当(そうとう)なものだ。」


周囲(しゅうい)(もの)どもは驚異(きょうい)(こえ)()げた。


「良い(なぐ)(かた)だ。狽君子(はいくんし)のあの下衆(げす)め、とっくに(なぐ)りたかったんだ。」


(また)大軍(たいぐん)高官(こうかん)らも(ひそ)かに快哉(かいさい)(さけ)んだ。


常山陰(つねさんいん)此方(こなた)(あま)()るなよ!」


孫湿寒(そんしつかん)は散々(さんざん)(なぐ)られた挙句(あげく)全身(ぜんしん)(いた)みに()ち、(あたま)朦朧(もうろう)としていたが、内心(ないしん)には巨大(きょだい)(いか)りと恥辱(ちじょく)渦巻(うずま)いていた。


「まだ(くち)()けるだけの(ちから)(のこ)っているとはな。」


方源(ほうげん)(ひや)やかに(はな)(わら)い、(ふたた)(こぶし)()るった。()(かえ)しの殴打(おうだ)容赦(ようしゃ)なかった。


孫湿寒(そんしつかん)顔面(がんめん)(なぐ)(つぶ)され、(くち)から鮮血(せんけつ)()き、前歯(まえば)(すべ)()()ち、奥歯(おくば)もぐらつき(はじ)めていた。「狼王(ろうおう)凶暴(きょうぼう)さには(おそ)()るわ……」


孫湿寒(そんしつかん)(いえ)ども四转強者(してんきょうじゃ)のはずだが、(まった)反撃(はんげき)できずに()たれている。(じつ)にふがいない。」


馬鹿(ばか)()え!(やつ)毒誓(どくせい)(まも)り、蛊虫(こちゅう)(もよお)すことを(おそ)れているのだ。(しん)接近戦(せっきんせん)なら、奴道大師(ぬどうだいし)である狼王(ろうおう)孫湿寒(そんしつかん)圧倒(あっとう)されるだろうに。」


周囲(しゅうい)議論(ぎろん)(こえ)次第(しだい)(おお)きくなっていった。常山陰(つねさんいん)でも孫湿寒(そんしつかん)でも、どちらも地位(ちい)(たか)権力(けんりょく)のある大物(おおもの)である。(いま)、彼ら(かれら)が意外(いがい)にも素手(すで)(なぐ)()っている。()(さま)光景(こうけい)(じつ)(めずら)しく、人々(ひとびと)は()(かがや)かせて()つめている。


孫湿寒(そんしつかん)はかすかに耳元(みみもと)議論(ぎろん)(こえ)()きつけた。巨大(きょだい)恥辱感(ちじょくかん)が、(かれ)にもう(すこ)しで()()いしばらせそうになった。(ただ)し、(かれ)()(ほとん)(のこ)っていなかった。


(かれ)当然(とうぜん)反抗(はんこう)したかったが、(ちから)技量(ぎりょう)方源(ほうげん)には(かな)わなかった。地面(じめん)()さえつけられ、(はげ)しく(なぐ)られるしかなかった。


(こら)えよ、絶対(ぜったい)(こら)えねば!()蛊虫(こちゅう)(もよお)せば、此方(こなた)完敗(かんぱい)()まったも同然(どうぜん)だ。(ただ)盟主(めいしゅ)到来(とうらい)するまで()(しの)げば、(かれ)公正(こうせい)(さば)き、常山陰(つねさんいん)()(もの)()せてくれるはずだ!!」


孫湿寒(そんしつかん)(こころ)の中で(くる)ったように(さけ)(つづ)けていた。


盟主(めいしゅ)()られた!」


盟主様(めいしゅさま)、ご機嫌(きげん)よう!」


見物(けんぶつ)群衆(ぐんしゅう)一時(いちじ)騒然(そうぜん)となり、(あわ)てて(みち)()けた。


黒楼蘭(こくろうらん)浩激流(こうげきりゅう)らを(したが)えて現場(げんば)到着(とうちゃく)した。()光景(こうけい)()にすると、黒楼蘭(こくろうらん)(ふか)(まゆ)をひそめ、(ひや)やかな(こえ)方源(ほうげん)()じった。「()れは一体(いったい)どういうことだ?」


孫湿寒(そんしつかん)全身(ぜんしん)(ふる)え、どこからか()()(ちから)で、もがきながら()()がり、(さけ)んだ:「盟主(めいしゅ)よ、どうか(わたし)のために公正(こうせい)()(おこな)ってください…」


どさっ。


(かれ)()()わる(まえ)に、方源(ほうげん)(あたま)()まれた。()一撃(いちげき)非常(ひじょう)強烈(きょうれつ)で、孫湿寒(そんしつかん)(かお)全體(ぜんたい)(つち)()もれてしまった。


黒楼蘭(こくろうらん)(きび)しく(さけ)んだ:「()めろ!狼王(ろうおう)(なに)をしているんだ?!」


「た、はん!たはん……」孫湿寒(そんしつかん)(さけ)んだが、(くち)(つち)()まっていて、言葉(ことば)がはっきりしなかった。


方源(ほうげん)(ひや)やかに嘲笑(あざわら)い、足下(あしもと)に力を()め、公然(こうぜん)三度(みたび)()みつけ、孫湿寒(そんしつかん)(さけ)(ごえ)完全(かんぜん)土中(どちゅう)()()んだ。孫湿寒(そんしつかん)(くち)(はな)(ふさ)がれ、頭部(とうぶ)にも重撃(じゅうげき)()け、目眩(めまい)がし、強烈(きょうれつ)窒息感(ちっそくかん)(おそ)われ、四肢(しし)(くる)ったように(あば)れさせたが、方源(ほうげん)絶大(ぜつだい)(ちから)には(かな)わなかった。


黒楼蘭(こくろうらん)顔色(かおいろ)は、(すみ)のように()(くろ)になった。


方源(ほうげん)刃物(はもの)のような眼光(がんこう)で、冷徹(れいてつ)(かれ)と、背後(はいご)(ひか)える蛊師強者(こしきょうじゃ)たちを(にら)みつけながら()(はな)った。「此方(こなた)(なに)をしているか、(いま)だに()えておらぬのか?無論(むろん)(かれ)(なぐ)(つづ)けているのだ。」


黒楼蘭(こくろうらん)方源(ほうげん)(にら)みつけ、(ひく)(かつ)した。「狼王(ろうおう)本日(ほんじつ)()(こと)()かりを説明(せつめい)せよ。何故(なぜ)(かれ)(なぐ)るのだ?!まさか本気(ほんき)(てき)(つう)じて反逆(はんぎゃく)する()なのか?」


方源(ほうげん)軽蔑(けいべつ)()じりに冷笑(れいしょう)し、悠々(ゆうゆう)として()った。「黒家(こくけ)族長(ぞくちょう)(おこ)るには(およ)ばん。()此方(こなた)反逆(はんぎゃく)する()なら、わざわざ()のように大々(だいだいてき)(さわ)()てる必要(ひつよう)()ろうか?」


そう()うと、(かれ)(あし)(はな)した。


孫湿寒(そんしつかん)(おさ)えが()くなると、即座(そくざ)仰向(あおむ)けに(ころ)がり、風箱(ふうそう)(ごと)(あえ)ぎながら、必死(ひっし)新鮮(しんせん)空気(くうき)()()んだ。


しかし方源(ほうげん)()ぐに(ふたた)()みつけ、今度(こんど)(かれ)右頬(みぎほお)靴底(くつぞこ)()さえつけた。


孫湿寒(そんしつかん)両手(りょうて)必死(ひっし)方源(ほうげん)(すね)()()げようとしたが、(すで)力尽(ちからつ)きて(うで)(よわ)々(よわ)しかった。衆人環視(しゅうじんかんし)(なか)(かれ)顔面(がんめん)()まれるままとなり、(おお)半生(はんしょう)かけて(きず)()げた名声(めいせい)完全(かんぜん)()()ちた。


方源(ほうげん)悠然(ゆうぜん)言葉(ことば)(つづ)けた。「(てき)(つう)じて反逆(はんぎゃく)する(かんが)えは毛頭(もうとう)ないが、(つま)()に対する陰謀(いんぼう)暗算(あんざん)にも(あずか)りたくない。(きた)大戦(たいせん)では、(みずか)全力(ぜんりょく)()くし、役目(やくめ)()たす。()(とき)()彼等(かれら)()()()かり、戦場(せんじょう)()るとすれば、それもまた(ほま)れであろう。」


狼王(ろうおう)たる此方(こなた)黒家軍(こくかぐん)()わった以上(いじょう)男女(だんじょ)(じょう)(なが)されて立場(たちば)()るがすつもりはない。(ただ)し――」


此処(ここ)(かれ)(かす)かに(あたま)()げ、傲然(ごうぜん)(わら)った。「貴様(きさま)らが(うたが)おうと、()れは貴様(きさま)らの都合(つごう)であって、此方(こなた)(かか)わりはない。()異獣狼群(いじゅうろうぐん)(など)支援(しえん)()られれば、()れは此方(こなた)戦功(せんこう)(かん)(しゅ)したもの、公平(こうへい)取引(とりひき)である。此方(こなた)貴様(きさま)らに()りなど一切(いっさい)ない。」


黒家(こくけ)族長(ぞくちょう)()此方(こなた)(うたが)うなら、異獣狼群(いじゅうろうぐん)()()さえ、此方(こなた)指揮(しき)(まか)せなければ()い。将来(しょうらい)大戦(たいせん)において、狼王(ろうおう)()()けて保証(ほしょう)するが、相変(あいか)わらず全力(ぜんりょく)()くす(まで)である。」



貴様(きさま)……!」


黒楼蘭(こくろうらん)心中(しんちゅう)(おお)いに(いか)った。


方源(ほうげん)(かす)かにも(かれ)(おど)しに(くっ)することなく、(ぎゃく)矛先(ほこさき)(てん)じて直接(ちょくせつ)彼等(かれら)(おど)(かえ)した。


貴様(きさま)らが(うたが)うのは勝手(かって)だが、異獣狼群(いじゅうろうぐん)(わた)さなくとも良い。しかし、()大戦(たいせん)(やぶ)れれば、()れは貴様(きさま)らの責任(せきにん)だ。』


黒楼蘭(こくろうらん)()たして(わた)さないでいられるだろうか?(かれ)大力真武体(だいりきしんぶたい)であり、(たと)暗度仙蛊(あんどせんこ)(ちから)()りて(じょ)(おさ)()んでいても、(ようや)制御(せいぎょ)()かなくなりつつあった。力道上(りきどうじょう)仙蛊(せんこ)()ければ、蛊仙(こせん)昇格(しょうかく)することは不可能(ふかのう)なのである。


()以上(いじょう)に、(いま)狼王(ろうおう)衆人(しゅうじん)面前(めんぜん)大騒動(おおそうどう)()こした以上(いじょう)()(けん)(だれ)もが()るところとなった。()異獣狼群(いじゅうろうぐん)(わた)さなければ、全軍(ぜんぐん)上下(じょうげ)はどう(おも)うだろう?(おそ)らくは『黒楼蘭(こくろうらん)狼王(ろうおう)(いだ)きながら活用(かつよう)せず』と見做(みな)されるだろう。『(うたが)わしきは使(つか)わず、使(つか)うは(うたが)わず』。()大戦(たいせん)不利(ふり)(おちい)れば、(みな)(かれ)怨嗟(えんさ)するに(ちが)いない。


()いぞ、狼王(ろうおう)大層(たいそう)結構(けっこう)振舞(ふるま)いよ。」


黒楼蘭(こくろうらん)()には(ひえ)たい(ひかり)(あふ)れ、(いか)りが頂点(ちょうてん)(たっ)すると嘲笑(あざわら)うように(わら)()した。「無論(むろん)狼王(ろうおう)忠誠心(ちゅうせいしん)は重々(じゅうじゅう)承知(しょうち)している。(しか)孫湿寒(そんしつかん)散散(さんざん)(なぐ)()けたのは(なん)(わけ)だ?(かれ)貴様(きさま)戦友(せんゆう)であろう。大敵(たいてき)目前(もくぜん)に、公然(こうぜん)内紛(ないふん)()こすとは、(なん)了見(りょうけん)だ?」


「ふふふ……」


方源(ほうげん)(かろ)(かた)(すく)めた。「全て(すべて)此方(こなた)不手際(ふてぎわ)でござる。孫湿寒(そんしつかん)(もう)すものは、(じつ)無様(ぶさま)面相(めんそう)でしてな、()れば()(ほど)(むね)くそが(わる)くなる。(ゆえ)(ひと)(なぐ)()けて容貌(ようぼう)(ととの)えて(つか)わした次第(しだい)()たして幾分(いくぶん)()()えが()くなったと自負(じふ)しておる。()れは()(まで)まで私事(しじ)(おこな)い、()()めは全て(すべて)此方(こた)(かぶ)る。規矩(きく)(したが)い、孫湿寒(そんしつかん)一万戦功(いちまんせんこう)賠償(ばいしょう)する。異存(いぞん)なし、(つぐな)って()せよう。」


()言葉(ことば)()いた孫湿寒(そんしつかん)逆上(ぎゃくじょう)し、其場(そのば)鮮血(せんけつ)()()して気絶(きぜつ)した。


()言葉(ことば)()()すと、即座(そくざ)蛊師強者(こしきょうじゃ)一人(ひとり)(わら)いを(きん)()なかった。


(じつ)痛快(つうかい)だ!


以前(いぜん)から孫湿寒(そんしつかん)(ごと)き、表面(ひょうめん)(つくろ)奸佞(かんねい)小人物(しょうじんぶつ)不快(ふかい)(かん)じている(もの)(おお)かった。


方源(ほうげん)此度(こたび)()()したことで、彼等(かれら)鬱憤(うっぷん)()らすことが出来(でき)た。


太白云生(たいはくうんせい)でさえ、方源(ほうげん)()()賞賛(しょうさん)()()かべた。()常山陰(つねさんいん)は、(すこ)手厳(てきび)しいが、身内(みうち)()()さず、立場(たちば)大義(たいぎ)(まも)り、最低限(さいていげん)(せん)(たも)っている。(しん)性情(せいじょう)(うしな)わないと(かん)じた。


黒楼蘭(こくろうらん)顔色(かおいろ)一層(いっそう)(くら)くなった。


孫湿寒(そんしつかん)(かれ)配下(はいか)である。方源(ほうげん)衆人(しゅうじん)面前(めんぜん)孫湿寒(そんしつかん)(なぐ)ることは、(すなわ)(かれ)(かお)(なぐ)ることを意味(いみ)する。


方源(ほうげん)言葉(ことば)(じつ)(かろ)やかだ。しかし(かれ)戦功(せんこう)(いま)()りばかりではないか!


だが黒楼蘭(こくろうらん)(ほか)にどういう()()るというのか?


劉家軍(りゅうかぐん)対処(たいしょ)する(ため)には、(かれ)(まさ)狼王(ろうおう)(ちから)(たよ)らねばならないのだ!


狼王(ろうおう)(おど)すのも、元々(もとも)と(かれ)親族(しんぞく)殺害(さつがい)(つみ)()わせ、名声(めいせい)()として、黒楼蘭(こくろうらん)(あやつ)(やす)くする(ため)であった。


しかし(いま)(おど)しが効果(こうか)()以上(いじょう)黒楼蘭(こくろうらん)(えら)べる(みち)唯一(ゆいいつ)つだけ、(すなわ)妥協(だきょう)することである。











評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ