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蛊真人  作者: 魏臣栋
魔头乱世
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第一百二十四節:穿越而已仍自奋

泥濘(でいねい)沼地(しょうち)艱難(かんなん)辛苦(しんく)しながら(すす)馬家(ばか)大軍(たいぐん)であったが、その士気(しき)(たか)(たも)たれていた。


窦家(とうけ)大軍(たいぐん)併合(へいごう)した(よろこ)びと、大勝(たいしょう)興奮(こうふん)が、()(へい)たちの(かお)(のこ)っている。


(うま)()(すわ)り、馬英傑(ばえいけつ)満足(まんぞく)げに(まわ)りの将兵(しょうへい)見渡(みわた)していた。そこへ偵察蛊師(ていさつこし)最新(さいしん)戦報(せんぽう)(とど)けに()た。


(かれ)()れを(ひら)いて()(とお)した:


黒家(こくけ)劉家(りゅうか)両軍(りょうぐん)開戦(かいせん)初戦(しょせん)相打(あいう)ちに()わり、現在(げんざい)対峙(たいじ)して膠着状態(こうちゃくじょうたい)にある」


耶律軍(やりつぐん)七路(しちろ)連合軍(れんごうぐん)による夜襲(やしゅう)()け、耶律桑(やりつそう)孤軍奮闘(こぐんふんとう)す。実力(じつりょく)(すぐ)れてはいるものの、六名(ろくめい)五转強者(ごてんきょうじゃ)連破(れんぱ)したが、依然(いぜん)として劣勢(れっせい)(くつがえ)すには(いた)らず。現在(げんざい)耶律(やりつ)残軍(ざんぐん)青岸地区(せいがんちく)敗走(はいそう)(ちゅう)。」


鼠王(そおう)江暴牙(こうぼうが)楊家(ようか)要請(ようせい)承諾(しょうだく)正式(せいしき)楊家連合軍(ようかれんごうぐん)への参加(さんか)宣言(せんげん)。」


努爾軍(ぬあるぐん)征伐(せいばつ)継続(けいぞく)せず、休養生息(きゅうようせいそく)(てっ)し、野生豹群(やせいひょうぐん)捕獲(ほかく)全力(ぜんりょく)(そそ)ぐ。」


……


()戦報(せんぽう)()にした馬英傑(ばえいけつ)は、(かお)(かがや)かせ、心中(しんちゅう)(ひそ)かに(よろこ)んだ。「黒楼蘭(こくろうらん)劉文武(りゅうぶんぶ)(ほん)大会(たいかい)王庭(おうてい)最有力候補(さいゆうりょくこうほ)であったのに、予想(よそう)だにせず早期(そうき)衝突(しょうとつ)し、良い具合(ぐあい)相打(あいな)ちとなった。耶律桑(やりつそう)仙蛊(せんこ)()以来(いらい)自身(じしん)武力(ぶりょく)過信(かしん)していたが、此度(こたび)七軍(しちぐん)同時攻撃(どうじこうげき)()けた背景(はいけ)には、大雪山(だいせつざん)暗躍(あんやく)があるのかもしれぬ。」


馬家(ばか)超級世族(ちょうきゅうせいぞく)への昇格(しょうかく)目指(めざ)し、八十八角真陽楼(はちじゅうはっかくしんようろう)(ねら)魔道蛊仙(まどうこせん)(ひそ)かに結託(けったく)していた。馬英傑(ばえいけつ)馬家(ばか)(わか)族長(ぞくちょう)として、()内情(ないじょう)熟知(じゅくち)していた。


北原(ほくげん)巨大(きょだい)棋盤(きばん)(ごと)く、蛊仙(こせん)()()棋士(きし)である。


正道(せいどう)蛊仙(こせん)のみならず、魔道(まどう)蛊仙(こせん)たちも各々(おのおの)の(こま)(はぐく)んでいる。黄金(おうごん)血脈(けつみゃく)()部族(ぶぞく)は、より()生存(せいぞん)する(ため)に、(すす)んで魔道蛊仙(まどうこせん)()()む。王庭福地(おうていふくち)争奪戦(そうだつせん)(やぶ)れた(あと)此等(これら)部族(ぶぞく)は往々(おうおう)にして魔道蛊仙(まどうこせん)たちの福地(ふくち)(のが)れ、雪災(せつさい)()けるのである。


仙蛊(せんこ)()(がた)し。


耶律家(やりつけ)太上家老(たいじょうかろう)仙蛊(せんこ)耶律桑(やりつそう)(たく)したのは、()棋盤(きばん)(なか)()けを(とう)じたに(ひと)しい。


巨陽仙尊(きょようせんそん)(さだ)めた規矩(きく)(したが)えば、(たと)仙蛊(せんこ)王庭争奪戦(おうていそうだつせん)凡人(ぼんじん)(うば)われようと、蛊仙(こせん)後悔(こうかい)してはならない。


一旦(いったん)(たか)()けに()以上(いじょう)相応(ふさわ)しい危険(きけん)覚悟(かくご)せねばならぬ。


(まさ)耶律桑(やりつそう)()宿(やど)仙蛊(せんこ)こそが、蛊仙(こせん)たちの垂涎(すいぜん)(まと)となり、七路(しちろ)大軍(たいぐん)(あん)煽動(せんどう)して耶律家軍(やりつけぐん)包囲攻撃(ほういこうげき)させた所以(ゆえん)なのである。


鼠王(そおう)楊家(ようか)(くわ)わったということは、鼠王(そおう)鷹王(ようおう)楊破纓(ようはえい)()()んだことを意味(いみ)する。元々(もとも)見込(みこ)(うす)かった楊家(ようか)が、王庭(おうてい)(あるじ)(あらそ)(あたら)しい注目株(ちゅうもくかぶ)()った。しかし楊家(ようか)基盤(きばん)は、()馬家(ばか)には(とお)(およ)ばず、鼠王(そおう)(また)()ちのめされた()である。脅威(きょうい)(せい)はさして(たか)くあるまい。」


努爾圖(ぬあると)豹王(ひょうおう)(しょう)されているが、配下(はいか)豹群(ひょうぐん)死傷惨重(ししょうさんちょう)である。(かれ)背後(はいご)にいる蛊仙(こせん)救援(きゅうえん)(もと)めず、(みずか)野生(やせい)豹群(ひょうぐん)搜刮(そうかつ)しているのは、(すこ)奇怪(きかい)だ……」


()(そう)じて()えば、情勢(じょうせい)()馬家(ばか)にとって一片大好(いっぺんたいこう)である。(つぎ)相手(あいて)は、実力(じつりょく)が我々(われわれ)より(よわ)い。我々(われわれ)が一路連勝(いちろれんしょう)(つづ)け、不断(ふだん)併吞(へいどん)し、不断(ふだん)壮大(そうだい)すれば、王庭(おうてい)入主(にゅうしゅ)する希望(きぼう)は益々(ますます)(おお)きくなる!」


()れを(おも)い、馬英傑(ばえいけつ)(おも)わず双拳(そうけん)(にぎ)()め、一対(いっつい)虎目(こもく)(ひか)りを(はな)った。男児(だんじ)雄心壮志(ゆうしんそうし)が、()えず(かれ)鼓動(こどう)し、豊功偉業(ほうこういぎょう)建立(こんりゅう)せしめようとする。


(しか)して同時(どうじ)に、士気(しき)振奮(しんぷん)している大軍(たいぐん)(なか)に、一人(ひとり)(ちい)さな(おんな)()馬車(ばしゃ)(かく)れて、嘤嘤(えいえい)()いていた。


小雲(しょううん)さん、どうか()()んでください。お父様(とうさま)のことは、本当(ほんとう)にお()(どく)です。ですが、(すこ)しでいいから(なに)()べなくちゃ、(たお)れちゃいますよ。」


(ちい)さな(おんな)()(そば)で、焦燥(しょうそう)()られた費才(ひさい)は、口ベタながらも懸命(けんめい)(なぐさ)めようとした。


()()いている少女(しょうじょ)は、(ほか)でもない趙憐雲(ちょうれいうん)であった。


彼女(かのじょ)(ちち)趙家(ちょうけ)族長(ぞくちょう)は、つい(さき)ほどの大戦(たいせん)(いのち)()とした。


自分(じぶん)溺愛(できあい)してくれた(ちち)庇護(ひご)(うしな)い、趙憐雲(ちょうれいうん)(またた)く間に()れつな()となった。(ちち)()くなったその(よる)に、継母(けいぼ)(あたら)しい趙家(ちょうけ)族長(ぞくちょう)再嫁(さいか)し、趙憐雲(ちょうれいうん)地位(ちい)一気(いっき)転落(てんらく)したのである。


大戦(たいせん)には(かなら)死者(ししゃ)()るものだ。よくあることさ。(おれ)親父(おやじ)(ひと)(ころ)されたんだからな。」


費才(ひさい)趙憐雲(ちょうれいうん)(なお)()(つづ)けるのを()て、(さら)(なぐさ)めようと(つづ)けた。


趙憐雲(ちょうれいうん)はすすり()きながら、突然(とつぜん)(かお)()げ、()()らした(あか)()費才(ひさい)(にら)()けた。(いま)(いか)りが(おさ)まらず、(あし)(かれ)()った。「この()()け!(ひと)(なぐさ)める言葉(ことば)さえ満足(まんぞく)()えないなんて!」


彼女(かのじょ)(こころ)(かな)しみは(いつわ)りではなかった。()不尽(ふじん)()世界(せかい)(ほう)()されてから、まだ()(あさ)いが、(ちち)愛情(あいじょう)(まこと)()(あふ)れていた。(こころ)(そこ)から()()がる(あい)は、彼女(かのじょ)感謝(かんしゃ)(ねん)と、()(たよ)りから(じょ)々(じょ)に(ひろ)がる敬愛(けいあい)(じょう)(いだ)かせた。


しかし(いま)(ちち)戦場(せんじょう)(いな)()とし、彼女(かのじょ)(またた)く間に孤苦伶仃(ここれいてい)一人(ひとり)となってしまった。


「お嬢様(じょうさま)此処(ここ)(かく)れていたのですね、随分(ずいぶん)(さが)しましたよ!早速(さっそく)(わたし)について()てください。お母様(かあさま)がお()びです。」


()(とき)車両(しゃりょう)入口(いりぐち)(すだれ)()()がり、(ろう)いた乳母(うば)(あらわ)れた。彼女(かのじょ)趙憐雲(ちょうれいうん)(ほそ)(うで)(つか)んで()()せた。


趙憐雲(ちょうれいうん)力一杯(ちからいっぱい)抵抗(ていこう)し、(さけ)んだ。「(わたし)(はは)はとっくに()んでる!あの人は(はは)じゃない!()かない!」


()れは貴方(あなた)()()きにはさせぬ!」


老乳母(ろううば)()ややかに(わら)い、趙憐雲(ちょうれいうん)無理矢理(むりやり)車外(しゃがい)()()()そうとした。


彼女(かのじょ)以前(いぜん)趙憐雲(ちょうれいうん)(つか)え、散々(さんざん)(もてあそ)ばれていた乳母(うば)であった。(いま)趙憐雲(ちょうれいうん)(みじ)めな(さま)()て、()(むね)(なか)には復讐(ふくしゅう)快感(かいかん)渦巻(うずま)いていた。


小雲(しょううん)さんを(はな)せ!」


費才(ひさい)怒号(どごう)すると、一撃(いちげき)老乳母(ろううば)()(たお)した。


老乳母(ろううば)()一撃(いちげき)により車両(しゃりょう)から(ころ)()した。()()がると、(むらさき)()()がった()ぶたを()さえ、金切声(かなきりごえ)()げて(さけ)んだ。「よくも(わたし)(なぐ)ったな!()下僕(げぼく)めが平民(へいみん)である(わたし)(なぐ)るとは!いい度胸(どきょう)だ!(だれ)許可(きょか)した!?(かなら)(うった)えてやる、貴様(きさま)()わりだ!規矩(きく)(したが)えば、(すじ)()かれ(かわ)()がれ、死体(したい)(さら)(もの)にされるまで、干物(ひもの)になるまで(さら)()げられるのだ!」


老乳母(ろううば)(いか)りは頂点(てん)(たっ)していた。逆立(さかだ)った(かみ)陰険(いんけん)眼差(まなざ)しが、彼女(かのじょ)(あし)バタバタの(ふる)めんどりの(ごと)()せていた。


(しか)()(さけ)(ごえ)は、(まわ)りの(もの)たちの注目(ちゅうもく)(あつ)めるには十分(じゅうぶん)であった。


費才(ひさい)両拳(りょうけん)(かた)(にぎ)りしめ、(いか)りに()えて老乳母(ろううば)(にら)みつけ、()物狂(ものぐる)いで背後(はいご)趙憐雲(ちょうれいうん)(まも)った。


趙憐雲(ちょうれいうん)費才(ひさい)(うで)()()ばし、車両(しゃりょう)段階(だんかい)()()がった。涙痕(るいこん)(のこ)(はく)(なん)(かお)に、老乳母(ろううば)()けて冷笑(れいしょう)()かべた。「(なに)貴様(きさま)費才(ひさい)(つみ)(おとしい)れるつもりか?()いぞ、(たい)いに結構(けっこう)だ!(うった)えてみろ、だが規矩(きく)(したが)えば、()()主人(しゅじん)()()って賠償(ばいしょう)要求(ようきゅう)せねばなるまい。(しか)らば、少族长(しょうぞくちょう)(ところ)()くが()い。費才(ひさい)馬英傑様(ばえいけつさま)奴隷長(どれいちょう)であるぞ!」


(なに)だと!?」


老乳母(ろううば)大驚(おおよろこ)びした。金切声(かなきりごえ)はぴたりと()み、心中(しんちゅう)(いか)りは(しお)()(ごと)()()った。(のこ)されたのは()(がた)惶恐(きょうこう)のみであった。


()小僧(こぞう)が、()()けた阿呆(あほう)(ごと)きが、まさか馬英傑様(ばえいけつさま)側近奴隷(そっきんどれい)だと()うのか?それも馬英傑様(ばえいけつさま)起居(ききょ)(つかさど)奴隷長(どれいちょう)だと?」


(いぬ)(なぐ)るにも主人(しゅじん)(かお)()よ。」


老乳母(ろううば)凡人(ぼんじん)ではあるが、身分(みぶん)奴隷(どれい)より一階級(いっかいきゅう)(うえ)である。しかし費才(ひさい)馬英傑(ばえいけつ)奴隷長(どれいちょう)である以上(いじょう)(はなし)(べつ)である。


()彼女(かのじょ)()(かつ)(かえり)みず告発(こくはつ)すれば、(ぎゃく)趙家(ちょうけ)族母(ぞくぼ)生贄(いけにえ)にされるのが(おつ)(やま)であろう!


驚愕(きょうがく)した(のち)(かお)(うしな)った老乳母(ろううば)は、表情(ひょうじょう)(くも)らせて趙憐雲(ちょうれいうん)(にら)みつけた。「小娘(こうご)馬英傑少族长(ばえいけつしょうぞくちょう)奴隷長(どれいちょう)貴様(きさま)(まも)れると(おも)うな。貴様(きさま)趙家(ちょうけ)(もの)()して趙家(ちょうけ)(おに)となるのだ。()(はは)とやらは(げん)趙家(ちょうけ)族母(ぞくぼ)(さま)である。()()け、族母様(ぞくぼさま)(すで)貴様(きさま)縁組(えんぐみ)()められた。潘家(はんか)大公子(たいこうし)(とつ)がせるのである。()()(つつし)んでおれ!」


(なに)ですって!?」趙憐雲(ちょうれいうん)(おも)わず(こえ)()げた。


潘家(はんか)大公子(たいこうし)(とつ)ぐとは、(きみ)幸運(こううん)だと(おも)いなさい。」老乳母(ろううば)陰笑(いんしょう)()(かえ)した。


趙憐雲(ちょうれいうん)全身(ぜんしん)(ちから)()け、車内(しゃない)床板(ゆかいた)(くず)()ちた。


小雲(しょううん)さん!」費才(ひさい)(あわ)てて彼女(かのじょ)(ささ)えようとした。


()有様(ありさま)()にした老乳母(ろううば)心中(しんちゅう)痛快(つうかい)この(うえ)なく、得意然(とくいぜん)として(きびす)(かえ)した。彼女(かのじょ)趙家(ちょうけ)族母(ぞくぼ)復命(ふくめい)する必要(ひつよう)があった。


趙憐雲(ちょうれいうん)無表情(むひょうじょう)のまま、巨大(きょだい)衝撃(しょうげき)一時(いちじ)(こころ)()した(ごと)く、費才(ひさい)自分(じぶん)車内(しゃない)(かか)()れるに(まか)せきりであった。三日(みっか)もの(あいだ)彼女(かのじょ)車内(しゃない)(すみ)(すく)()がり、一語(いちご)(はつ)せず、微動(びどう)だにしなかった。


費才(ひさい)苦心惨憺(くしんさんたん)して(なぐさ)めようとしたが効果(こうか)()く、()()彼女(かのじょ)()(もの)()(もの)口移(くちうつ)しで(あた)えた。


趙憐雲(ちょうれいうん)傀儡(くぐつ)(ごと)く、費才(ひさい)世話(せわ)(まか)せきりであった。


費才(ひさい)(つね)彼女(かのじょ)()()える(わけ)にはいかず、馬英傑(ばえいけつ)()()される(たび)に、()ぐに()()けねばならなかった。


突然(とつぜん)劇変(げきへん)冷徹(れいてつ)現実(げんじつ)は、趙憐雲(ちょうれいうん)心中(しんちゅう)存在(そんざい)した、異世界(いせかい)から()(もの)としての(きょ)ろな(おご)りを木端微塵(こっぱみじん)()(くだ)いた。


彼女(かのじょ)(にわ)かに、(てっ)(てい)的に(さと)った――仮令(たとえ)異世界人(いせかいじん)(いえ)ども、所詮(しょせん)()程度(ていど)のものだ。何故(なぜ)(もと)世界(せかい)平凡(へいぼん)だった(もの)が、()世界(せかい)()たからと()って、風雲(ふううん)()使()できると(おも)()がれるのか?


()して女子(じょし)たるもの、北原(ほくげん)()っては(あやつ)られる運命(うんめい)()り、()まれながら政略結婚(せいりゃくけっこん)品物(しなもの)なのである。北原(ほくげん)女性(じょせい)男子(だんし)依附(いふ)するしかなく、男子(だんし)()縁組(えんぐみ)(こば)むことはできない。()れは巨陽仙尊(きょようせんそん)(さだ)めた規矩(きく)なのである。


兄弟(きょうだい)手足(てあし)(ごと)く、(おんな)衣類(いるい)(ごと)し」。


()れは巨陽仙尊(きょようせんそん)口癖(くちぐせ)であり、(かれ)一手(いって)(つく)()げた北原(ほくげん)男女差別(だんじょさべつ)は、(いま)趙憐雲(ちょうれいうん)(もっと)痛恨(つうこん)する対象(たいしょう)となっていた!


道理(どうり)蘇仙夜奔(そせんやほん)物語(ものがたり)が、()(ほど)までに人々(ひとびと)の(こころ)浸透(しんとう)し、北原(ほくげん)少女(しょうじょ)たちが(きそ)って(なら)おうとする(わけ)だ。受身(うけみ)運命(うんめい)翻弄(ほんろう)されるよりは、(みずか)(すす)んで幸福(こうふく)()(もと)う方が()い。(たと)()行為(こうい)未知(みち)危険(きけん)()ちていようとも!」


()れを(おも)(いた)り、趙憐雲(ちょうれいうん)現在(げんざい)過酷(かこく)生存環境(せいぞんかんきょう)への認識(にんしき)を、(さら)深層(しんそう)へと(きざ)()んだのである。


魏家(ぎけ)大公子(たいこうし)は、有名(ゆうめい)役立(やく)たずだ。(ぶた)(ごと)()(ふと)り、(かお)(じゅう)痘痕(あばた)だらけ、修行(しゅぎょう)一转巅峰(いってんてんぽう)()まり。()(うえ)色好(いろご)みで薄情(はくじょう)(まった)くの能無(のうな)し。()無能(むのう)(ゆえ)に、魏家(ぎけ)(おとうと)少族长(しょうぞくちょう)指名(しめい)した(ほど)だ。」


此方(こなた)()んでも、()豚畜生(ぶたちくしょう)とは縁組(えんぐみ)せん!(しか)れど、如何(いか)にせん?此方(こなた)(ただ)凡人(ぼんじん)十三歳(じゅうさんさい)()たず開竅(かいきょう)(いま)だ。修業(しゅぎょう)する(すべ)()ければ、()素質(そしつ)さえ()いかもしれぬ。()して此方(こなた)(ちち)(かたき)竇鰐(とうがく)という五转蛊師(ごてんこし)(いま)馬家(ばか)(くだ)り、連合軍(れんごうぐん)高官(こうかん)となっている!」


(だれ)(たよ)れば良い?何処(いずこ)(むか)えば良い?」


迷惘(めいもう)彷徨(ほうこう)恐怖(きょうふ)趙憐雲(ちょうれいうん)(こころ)充満(じゅうまん)していた。


四日目(よっかめ)(あかつき)費才(ひさい)車両(しゃりょう)(すだれ)(かか)げ、食事(しょくじ)清水(しみず)()車内(しゃない)(もぐ)()んだ。黎明(れいめい)(ひかり)も、途端(とたん)趙憐雲(ちょうれいうん)(かお)()らした。


趙憐雲(ちょうれいうん)目覚(めざ)め、()れぼったい(まぶた)(おもむ)ろに(ひら)いた。


(めし)()って()たの?」


彼女(かのじょ)費才(ひさい)()から()(もの)(つか)()り、狼吞虎嚥(ろうどんこえん)(いきお)いで()(はじ)めた。


小雲(しょううん)さん、()くなったんですか!」


費才(ひさい)驚喜(きょうき)(こえ)()げた。


「ええ、考えがまとまったわ。(ひと)()てにするより自分(じぶん)()てにする。婚約(こんやく)はあるけど、(すく)なくとも十六歳(じゅうろくさい)になるまで執行(しっこう)されない。(わたし)にはまだ時間(じかん)があるんだから!」


趙憐雲(ちょうれいうん)(ひとみ)炯炯(けいけい)(ひか)(かがや)いていた。


「えっ、小雲(しょううん)さん、縁組(えんぐみ)()()れたくないんですか?」


費才(ひさい)愕然(がくぜん)とした。(かれ)印象(いんしょう)では、北原(ほくげん)女性(じょせい)一旦(いったん)縁談(えんだん)()まれば、(したが)うしかないものだった。


趙憐雲(ちょうれいうん)(おお)きく白目(しろめ)()け、当然(とうぜん)(ごと)口調(くちょう)()った。「ふん、此方(こなた)凡人(ぼんじん)じゃないんだから、絶対(ぜったい)()れないわ!でも(いま)部族(ぶぞく)(もど)れないから、当分(とうぶん)此処(ここ)()まわせてもらうわ。(たよ)りにしているからね、費才(ひさい)。」


問題(もんだい)ないよ!」


費才(ひさい)(むね)をポンポンと(たた)き、間抜(まぬ)けな()みを()かべた。


趙憐雲(ちょうれいうん)(むね)(あたた)くなるのを(かん)じ、口調(くちょう)(やわ)らかくして(たず)ねた。「費才(ひさい)貴方(あなた)父上(ちちうえ)戦場(せんじょう)()くなったの?」


「そうだよ、()んじゃった。あの(ころ)随分(ずいぶん)(かな)しかったな。でも北原(ほくげん)じゃ、(ひと)()ぬのは()たり(まえ)のことさ。親父(おやじ)戦死(せんし)するのは、(おとこ)(ほま)れなんだ。」


費才(ひさい)呵呵(かか)(わら)いながら()った。


()たして(せい)(おう)となり、(はい)(ぞく)となる!絢爛(けんらん)たる王座(おうざ)(した)には、(よろず)白骨(はっこつ)()()められている。」


趙憐雲(ちょうれいうん)心中(しんちゅう)感慨(かんがい)無量(むりょう)であったが、(つづ)けて(のろ)うように()った。「ふざけるな、此方(こなた)()んな世界(せかい)()ばされるなんて!(からだ)(そだ)ちきらぬ(うち)に、婚約者(こんやくしゃ)まで()められるなんて、まっとうにやってられないわ!」


……


一通(いっつう)手紙(てがみ)が、方源(ほうげん)面前(めんぜん)()かれていた。


()特異(とくい)書簡(しょかん)敵方(てきがた)大将(たいしょう)()()るもので、公然(こうぜん)(はっ)せられ、(いま)狽君子孫(はいくんしそん)孫湿寒(そんしつかん)によって(もたら)されたのである。


方源(ほうげん)手紙(てがみ)(ひろ)げて()ると、それは常飚(じょうひょう)(みずか)らの(ふで)になるものだった。()ぎし()(なつ)かしむ内容(ないよう)ばかりだが、(しか)(なが)ら各々(おのおの)(こと)なる主君(しゅくん)(つか)える()となった。死闘(しとう)(まえ)に、狼王(ろうおう)陣営(じんえい)(そと)での会談(かいだん)(まね)き、旧交(きゅうこう)(あたた)めたいと。()(おり)には常極右(じょうきょくう)同席(どうせき)するので、貴方(あなた)親子(おやこ)対面(たいめん)(かな)うだろうと(しる)されていた。


()計略(けいりゃく)だ。」


方源(ほうげん)()()えると、心中(しんちゅう)(ひや)やかに(わら)い、手紙(てがみ)()いた。


()(とき)孫湿寒(そんしつかん)(ほほ)()みながら()った。「異獣狼群(いじゅうろうぐん)五转潜魂獣衣蛊(ごてんせんこんじゅういこ)は、(すで)到着(とうちゃく)しております。(しか)連合軍(れんごうぐん)諸将(しょしょう)は、()手紙(てがみ)(ため)躊躇(ちゅうちょ)しております。どうか狼王様(ろうおうさま)には大義(たいぎ)(ため)(しん)(ほろ)ぼし、潔白(けっぱく)(あか)(いただ)きたい。(しか)らずんば、()異獣狼群(いじゅうろうぐん)(おそ)らく……」











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