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蛊真人  作者: 魏臣栋
魔头乱世
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第一百二十節:风云急变少猛将

北原暦(ほくげんれき)六月中旬(ろくがつちゅうじゅん)


盛夏(せいか)(こう)であるに(かか)わらず、十年雪(じゅうねんゆき)気配(けはい)(すで)濃厚(のうこう)であった。天候(てんこう)曇天(どんてん)がちで、寒風(かんぷう)()(すさ)び、霜気(そうき)日増(ひま)しに(つよ)まっている。


北原全土(ほくげんぜんど)(ひろ)がる王庭争奪戦(おうていそうだつせん)は、(まさ)(たけなわ)(むか)えていた。


鏡湖(きょうこ)戦線(せんせん)では、馬家軍(ばかぐん)宋家連合軍(そうかれんごうぐん)(たたか)いが勃発(ぼっぱつ)馬家(ばか)圧倒的(あっとうてき)優位(ゆうい)()ち、宋家(そうけ)二道(にどう)(およ)防衛線(ぼうえいせん)連破(れんぱ)した。


()(あいだ)宋家連合(そうかれんごう)盟主(めいしゅ)宋清吟(そうせいぎん)(みずか)先頭(せんとう)()って反攻(はんこう)指揮(しき)し、馬家軍(ばかぐん)埋伏(まいふく)()って一線(いっせん)退(しりぞ)かざるを()なかった。


(しか)(のち)馬家(ばか)奴道大師(ぬどうたいし)馬尊(ばそん)出手(しゅっしゅ)。切り(きりふだ)天馬群(てんばぐん)投入(とうにゅう)し、空中(くうちゅう)宋清吟(そうせいぎん)包囲攻撃(ほういこうげき)して()()った。宋家軍(そうけぐん)指導者(しどうしゃ)(うしな)い、(さら)馬家(ばか)仕掛(しか)けた離間策(りかんさく)(はま)り、(つい)完全(かんぜん)瓦解(がかい)した。


馬家(ばか)大半(たいはん)部族(ぶぞく)併呑(へいどん)し、(のこ)(すく)なき残党(ざんとう)四散(しさん)して()(まど)った。


()一戦(いっせん)により、北原(ほくげん)随一(ずいいち)飛行大師(ひこうたいし)として名高(なだか)かった五转初階(ごてんしょかい)水仙(すいせん)宋清吟(そうせいぎん)墜落(ついらく)()()奴道大師(ぬどうたいし)馬尊(ばそん)威名(いめい)(たか)める(いしずえ)()った。


馬尊(ばそん)(しめ)した実力(じつりょく)は人々(ひとびと)を驚嘆(きょうたん)させ、一部(いちぶ)では「北原(ほくげん)随一(ずいいち)奴道大師(ぬどうたいし)」との称号(しょうごう)(ささや)かれ(はじ)めた。


猛丘(もうきゅう)戦線(せんせん)では、努爾圖(ぬあると)江暴牙(こうぼうが)激戦(げきせん)()(ひろ)げられた。


努爾圖(ぬあると)元来(がんらい)奴道蛊師(ぬどうこし)ではなく、中途(ちゅうと)から転向(てんこう)した半畳(はんじょう)出身(しゅっしん)であった。(しか)るに(かれ)(ひき)いる(ひょう)()れは、古参(こさん)奴道大師(ぬどうたいし)である江暴牙(こうぼうが)圧倒(あっとう)し、(つい)(これ)撃破(げきは)してみせた。


()一戦果(いっせんか)のみで、努爾圖(ぬあると)北原(ほくげん)奴道大師(ぬどうたいし)(れつ)(おど)()て、江暴牙(こうぼうが)楊破纓(ようはえい)馬尊(ばそん)常山陰(じょうざんいん)(なら)び「五獣王(ごじゅうおう)」と(しょう)されるようになった。


(しか)努爾圖(ぬあると)成名戦(せいめいせん)()()げたものの、()代償(だいしょう)(すく)なくなかった。


江暴牙(こうぼうが)反撃(はんげき)により、努爾大軍(ぬあるたいぐん)甚大(じんだい)被害(ひがい)(こうむ)った。戦後(せんご)敵軍(てきぐん)残党(ざんとう)併合(へいごう)し、戦争賠償(せんそうばいしょう)()たが、軍勢(ぐんぜい)拡大(かくだい)頓挫(とんざ)してしまった。


鼠王(そおう)江暴牙(こうぼうが)(かろ)うじて(のが)れ、残兵(ざんぺい)収容(しゅうよう)した。元々(もともと)六十万余(ろくじゅうまんよ)(ねずみ)大群(たいぐん)は、三万(さんまん)()らずにまで激減(げきげん)していた。


()くの(ごと)敗軍(はいぐん)(しょう)(いえ)ども、(かれ)依然(いぜん)として各勢力(かくせいりょく)垂涎(すいぜん)(まと)となった。(すで)十数(じゅうすう)勢力(せいりょく)から招聘状(しょうへいじょう)(とど)いているのである。


一方(いっぽう)(どく)(かく)()()では、耶律桑(やりつそう)仙蛊(せんこ)加護(かご)()五转巅峰(ごてんてんぽう)火道(かどう)(きわ)めた(つよ)(だい)個人(こじん)戦力(せんりょく)(もっ)て、群雄(ぐんゆう)圧倒(あっとう)し、最後(さいご)障壁(しょうへき)排除(はいじょ)して、見事(みごと)(どく)(かく)()()制覇(せいは)()()げた。


(しか)るに、耶律軍(やりつぐん)燎原(りょうげん)(ほのお)(ごと)周辺(しゅうへん)拡大(かくだい)しようとした()(とき)七路(しちろ)大軍(たいぐん)()せずして連合(れんごう)し、挟撃(きょうげき)開始(かいし)した。


()七路軍(しちろぐん)は、(いず)れも(すく)なからず十数万(じゅうすうまん)兵力(へいりょく)(ゆう)し、超弩級世族(ちょうどきゅうせいぞく)ではないものの、有名(ゆうめい)蛊師(こし)強者(つわもの)(よう)していた。


七路軍(しちろぐん)連合(れんごう)した()(いきお)(まこと)猛烈(もうれつ)であり、局面(きょくめん)打開(だかい)したばかりで(おお)いなる活躍(かつやく)()していた耶律軍(やりつぐん)は、危局(ききょく)(おちい)ったのである。


一方(いっぽう)黒家軍(こくけぐん)大敵(たいてき)直面(ちょくめん)し、(みずか)らの(こと)()(いっ)(ぱい)であった。


劉家(りゅうか)劉文武(りゅうぶんぶ)(みずか)大軍(たいぐん)(ひき)い、黒家(こくけ)日増(ひま)しに(せま)りつつあった!


元来(がんらい)古国龍(ここくりゅう)劉文武(りゅうぶんぶ)救援(きゅうえん)要請(ようせい)したのを()け、劉文武(りゅうぶんぶ)書簡(しょかん)()んで欣喜(きんき)した。()れが得難(えがた)好機(こうき)であると(さと)ったのである。古国龍側(ここくりゅうがわ)()(しの)げば、劉家軍(りゅうかけぐん)黒家(こくけ)背後(はいご)から挟撃(きょうげき)仕掛(しか)けることで、優位(ゆうい)()ち、初手(しょて)から黒家(こくけ)()(どう)(てき)立場(たちば)()()むことが(かなら)可能(かのう)であった。


(しか)結果(けっか)は、()(なが)れの(はや)さを物語(ものがた)るように(うご)いた。劉家軍(りゅうかけぐん)行軍(こうぐん)半途(はんと)()いた(ころ)戦報(せんぽう)(とど)き、古家軍(こけぐん)敗北(はいぼく)()()黒家(こくけ)帰順(きじゅん)したと()らされた。(しこう)して()一切(いっさい)を引き()こした(かぎ)となる人物(じんぶつ)が、太白雲生(たいはくうんせい)であったのである。


劉文武(りゅうぶんぶ)()(しら)せを()け、驚愕(きょうがく)()()なかった。


太白雲生(たいはくうんせい)(ごと)伝説的(でんせつてき)人物(じんぶつ)が、(みずか)(すす)んで(あら)われ、黒楼蘭(こくろうらん)(たす)けに(おもむ)くなんて!


黒楼蘭(こくろうらん)()一人物(ひとじんぶつ)()たことは、千軍万馬(せんぐんばんば)()にしたに(ひと)しい!


劉文武(りゅうぶんぶ)()ぐに(さと)った——()れは黒家(こくけ)蛊仙(こせん)背後(はいご)()()いているのだと。


巨陽仙尊(きょようせんそん)(さだ)められた規矩(きく)(のっと)れば、王庭争奪戦(おうていそうだつせん)において蛊仙(こせん)一定(いってい)範囲(はんい)(ない)凡人(ぼんじん)援助(えんじょ)提供(ていきょう)できる。(ただ)し、()援助(えんじょ)には上限(じょうげん)(もう)けられており、(すく)なくとも蛊仙(こせん)(みずか)らが直接(ちょくせつ)出手(しゅっしゅ)するのは絶対(ぜったい)(きん)じられている。


耶律桑(やりつそう)()仙蛊(せんこ)も、書簡(しょかん)()けて黒楼蘭(こくろうらん)支援(しえん)する太白雲生(たいはくうんせい)出現(しゅつげん)も、全て(すべて)蛊仙(こせん)仕業(しわざ)なのである。


劉文武(りゅうぶんぶ)当然(とうぜん)(かれ)背後(はいご)支持(しじ)する蛊仙(こせん)援助(えんじょ)(もと)める権利(けんり)(ゆう)している。


黒楼蘭(こくろうらん)太白雲生(たいはくうんせい)()にしたことは、劉文武(りゅうぶんぶ)から()れば、狼王(ろうおう)常山陰(じょうざんいん)()るよりも(おそ)ろしいことだった!


太白雲生(たいはくうんせい)声望(せいぼう)(きわ)めて(たか)く、正道(せいどう)魔道(まどう)()わず、(おお)くの(もの)()恩恵(おんけい)(あずか)っている。()れら(おん)()けた(もの)(うち)(わず)一部(いちぶ)でも報恩(ほうおん)(こころざ)しを()てば、()(ちから)(おそ)るべきものとなる。


(さら)に、一旦(いったん)黒家(こくけ)勢力(せいりょく)拡大(かくだい)すれば、離散(りさん)しながら依然(いぜん)观望(かんぼう)(つづ)ける魔道蛊師(まどうこし)たちは、王庭(おうてい)()りの希望(きぼう)()自発的(じはつてき)帰順(きじゅん)するだろう。


太白雲生(たいはくうんせい)存在(そんざい)が、(かれ)らを一層(いっそう)黒楼蘭(こくろうらん)(かたむ)けさせる。


(かく)(よう)にして黒家(こくけ)雪達磨(ゆきだるま)(ごと)強大(きょうだい)()し、(とき)経過(けいか)(とも)に、(おそ)かれ(はや)かれ(ほか)競争相手(きょうそうあいて)()()りにしてしまうのである。


黒楼蘭(こくろうらん)東方余亮(とうほうよりょう)(やぶ)り、超弩級部族(ちょうどきゅうぶぞく)から戦争賠償(せんそうばいしょう)(うば)()った。()自体(じたい)(すで)大儲(おおもう)けだ。一方(いっぽう)、我々(われわれ)が撃破(げきは)した連合軍(れんごうぐん)は、(いず)れも大規模部族(だいきぼぶぞく)()()めに()ぎず、()賠償金(ばいしょうきん)は元々(もともと)黒家(こくけ)より(おと)っていた。(いま)黒家(こくけ)太白雲生(たいはくうんせい)という()きた看板(かんばん)()にした。(かれ)(とき)(あた)えて勢力(せいりょく)拡大(かくだい)させれば、将来(しょうらい)()()えなくなるだろう。」


劉文武(りゅうぶんぶ)片時(かたとき)思索(しさく)した(のち)果断(かだん)軍令(ぐんれい)(くだ)した。劉家軍(りゅうかけぐん)原案(げんあん)(どお)りの計画(けいかく)維持(いじ)し、黒家(こくけ)()かって進軍(しんぐん)(つづ)ける。


()(しら)せを()けた黒楼蘭(こくろうらん)哄笑(こうしょう)()ぜ、「()かろう!」と(さけ)び、即座(そくざ)現地(げんち)での防衛線(ぼうえいせん)構築(こうちく)(めい)じた。


第一防衛線(だいいちぼうえいせん)完成(かんせい)すると、(ぐん)(ゆる)やかに移動(いどう)開始(かいし)劉家軍(りゅうかけぐん)()かって前進(ぜんしん)した。千里(せんり)(ごと)駐留(ちゅうりゅう)して数日(すうじつ)()ごし、(あたら)しい防衛線(ぼうえいせん)(きず)()げてから、(さら)(すす)むという作戦(さくせん)()った。


十二日(じゅうににち)()て、黒家軍(こくけぐん)構築(こうちく)した第四防衛線(だいよんぼうえいせん)より進発(しんぱつ)し、五百里(ごひゃくり)行軍(こうぐん)して劉家軍(りゅうかけん)対峙(たいじ)した。


両軍(りょうぐん)(じん)(かま)え、(しょう)(いど)段階(だんかい)(はい)った。


黒家(こくけ)大将(たいしょう)浩激流(こうげきりゅう)当然(とうぜん)(ごと)陣頭(じんとう)(おど)()た。


劉文武(りゅうぶんぶ)()れを()て、裴燕飛(はいえんひ)(つか)わした。


浩激流(こうげきりゅう)四转高阶(してんこうきゅう)修行(しゅぎょう)()んでいたが、裴燕飛(はいえんひ)同様(どうよう)であった。両者(りょうしゃ)二十合(にじゅうごう)(わた)って(たたか)ったが、優劣(ゆうれつ)つけ(がた)かった。


浩激流(こうげきりゅう)怒涛(どとう)(ごと)攻勢(こうせい)は人々(ひとびと)の(きも)()やした。(しか)るに裴燕飛(はいえんひ)鋭利(えいり)猛鋭(もうえい)で、()激流(げきりゅう)(なか)縦横無尽(じゅうおうむじん)()(めぐ)り、()かう(ところ)(てき)()しの(いきお)いであった。


さらに片時(かたとき)(たたか)いが(つづ)くと、両者(りょうしゃ)真元(しんげん)(とも)枯渇(こかつ)(きざ)しを()(はじ)めた。


蛊師(こし)持久戦(じきゅうせん)得意(とくい)とせず、真元(しんげん)()きれば戦力(せんりょく)急激(きゅうげき)低下(ていか)する。


()のままではいけない!」


二人(ふたり)心中(しんちゅう)に、()せずして(おな)(おも)いが()()がった。


水瀑蛊(すいばくこ)


浩激流(こうげきりゅう)先制(せんせい)し、両掌(りょうしょう)()()すや、轟音(ごうおん)(とも)大瀑布(だいばくふ)現出(げんしゅつ)し、裴燕飛(はいえんひ)目掛(めが)けて激突(げきとつ)した。


裴燕飛(はいえんひ)正面(しょうめん)から()()めず、移動蛊(いどうこ)()()()って天空(てんくう)()()がり、水瀑(すいばく)攻撃(こうげき)回避(かいひ)した。


四转蛊(してんこ)金縷衣蛊(きんるいころもこ)


四转蛊(してんこ)燕翅蛊(えんしこ)


四转蛊(してんこ)虹変蛊(こうへんこ)


殺招(さっしょう)――金虹一撃(きんこういちげき)


裴燕飛(はいえんひ)乾坤一擲(けんこんいってき)覚悟(かくご)で、渾身(こんしん)招牌(しょうばい)殺招(さっしょう)(はな)った。


瞬時(しゅんじ)(かれ)一筋(ひとすじ)金虹(きんこう)()け、(てん)()(ごと)電光石火(でんこうせっか)(いきお)いで水瀑(すいばく)粉砕(ふんさい)し、見事(みごと)浩激流(こうげきりゅう)直撃(ちょくげき)一撃(いちげき)(かれ)()(くだ)いた!


()かしながら、浩激流(こうげきりゅう)(くだ)()ったのは(みず)飛沫(しぶき)であって、本物(ほんもの)血肉(けつにく)ではなかった。


水像蛊(すいぞうこ)


浩激流(こうげきりゅう)(なが)(たたか)いの(なか)で、裴燕飛(はいえんひ)偵察蛊(ていさつこ)強力(きょうりょく)でないことを事前(じぜん)()(あく)していた。(ゆえ)水瀑(すいばく)(はな)つと同時(どうじ)に、巨大(きょだい)水流(すいりゅう)裴燕飛(はいえんひ)視界(しかい)(さえぎ)った(すき)に、(おと)()水像蛊(すいぞうこ)発動(はつどう)(しん)身体(しんたい)瀑布(ばくふ)()()んでいたのである。(まさ)(しん)()らぬ巧妙(こうみょう)(わな)であり、両軍(りょうぐん)大多数(だいたすう)蛊師(こし)(あざむ)くこととなった。


裴燕飛(はいえんひ)水像(すいぞう)撃破(げきは)するや、心中(しんちゅう)で「しまった!」と(さけ)び、最早(もはや)保留(ほりゅう)せず、残存(ざんそん)する真元(しんげん)を全て(すべて)燕翅蛊(えんしこ)(そそ)()んだ。


(かれ)背中(せなか)()えた二対(にたい)(つばめ)(つばさ)(はや)(ふる)え、戦場(せんじょう)から脱出(だっしゅう)させる。


一方(いっぽう)浩激流(こうげきりゅう)原地(げんち)佇立(ちょりつ)し、全身(ぜんしん)水流(すいりゅう)()れていた。小勝(しょうしょう)(おさ)めたものの、(よろこ)びはなかった。相手(あいて)殺招(さっしょう)威力(いりょく)(すさ)まじく、今回(こんかい)水像蛊(すいぞうこ)(あざむ)くことができたが、(つぎ)はどうか?


兄貴(あにき)(おれ)出陣(しゅつじん)させてくれ!」


裴燕飛(はいえんひ)敗退(はいたい)()て、墨獅狂(ぼくしきょう)(ひげ)逆立(さかだ)てて焦燥(しょうそう)し、出戦(しゅっせん)請願(せいがん)した。


劉文武(りゅうぶんぶ)微笑(ほほえ)みを()かべたが、(かれ)(ねが)いには(おう)じなかった。


三弟(さんてい)()()きたまえ。(さき)大戦(たいせん)貴様(きさま)出番(でばん)であった。此度(こたび)(われ)(ばん)心得(こころえ)よ。」


(きわ)めて痩身(そうしん)高丈(たかたけ)で、(ほね)(ぶと)精悍(せいかん)(あたま)蛊師(こし)()()て、墨獅狂(ぼくしきょう)(かた)(かる)(たた)いた。


二哥(にか)!」


墨獅狂(ぼくしきょう)()()(さけ)んだ。()人物(じんぶつ)欧陽碧桑(おうようへきそう)(もう)す。魔道(まどう)蛊師(こし)であり、(わか)()遺跡(いせき)にて劉文武(りゅうぶんぶ)墨獅狂(ぼくしきょう)邂逅(かいこう)し、三人(さんにん)協力(きょうりょく)して難局(なんきょく)打破(だは)し、傳承(でんしょう)()た。意気投合(いきとうごう)した彼等(かれら)義兄弟(ぎきょうだい)(ちぎ)りを(むす)んだのである。


鄙人(ひじん)欧陽碧桑(おうようへきそう)(たれ)賜教(しきょう)()わん?」


欧陽碧桑(おうようへきそう)はゆったりと両軍(りょうぐん)陣頭(じんとう)(ある)()(かろ)やかに(かつ)した。


(つづ)けて(かれ)浩激流(こうげきりゅう)()かい、「水魔(すいま)よ、()此方(こちら)()合わせ(ねが)いたければ、()ずは(しば)休息(きゅうそく)し、真元(しんげん)(まった)恢復(かいふく)されたい。」と()べた。


水魔(すいま)(わら)いを()らしたが、応戦(おうせん)しなかった。「(いそ)ぐことはない。(かなら)ずや()合わせする機会(きかい)(めぐ)って()る。」


そう()()えると、(かれ)陣中(じんちゅう)()()がった。


王庭争奪戦(おうていそうだつせん)()段階(だんかい)(いた)り、各勢力(かくせいりょく)強者(つわもの)たちの情報(じょうほう)(ひろ)流布(るふ)している。


欧陽碧桑(おうようへきそう)墨獅狂(ぼくしきょう)二哥(じけい)であるという一点(いってん)だけでも、軽視(けいし)できる存在(そんざい)ではない。以前(いぜん)劉家軍(りゅうかぐん)における幾戦(いくせん)かでの(かれ)活躍(かつやく)は、(きわ)めて鮮烈(せんれつ)であった。


(かれ)変化道(へんかどう)強者(きょうじゃ)であり、()流派(りゅうは)蛊師(こし)(すく)なくとも(ひと)つの殺招(さっしょう)(ゆう)する。()修行(しゅぎょう)四转巅峰(してんてんぽう)であり、墨獅狂(ぼくしきょう)同様(どうよう)に、五转蛊師(ごてんこし)匹敵(ひってき)する戦力(せんりょく)(そな)えている!


(かれ)初陣(ういじん)にして、敵方(てきがた)五转盟主(ごてんめいしゅ)斬殺(ざんさつ)した。越階挑戰(えっかいちょうせん)()()げるとは、(おお)くの(もの)生涯(しょうがい)をかけて(あこが)れる(かがや)かしい戦績(せんせき)である!


(かく)(ごと)強者(きょうじゃ)面前(めんぜん)に、水魔(すいま)浩激流(こうげきりゅう)たとえ全盛期(ぜんせいき)であろうとも、勝算(しょうさん)(すく)なく敗北(はいぼく)可能性(かのうせい)(たか)い。()してや今日(こんにち)一戦(いっせん)では、(かれ)精力(せいりょく)(すで)裴燕飛(はいえんひ)によって消耗(しょうもう)されている。蛊師(こし)状態(じょうたい)は、(たん)空窠(くうか)(なか)真元(しんげん)(りょう)のみで(はか)れるものではない。


欧陽碧桑(おうようへきそう)出陣(しゅつじん)()て、黒楼蘭(こくろうらん)(かす)かな頭痛(ずつう)(おぼ)えた。


劉文武(りゅうぶんぶ)(くら)べるに、(いま)(おのれ)麾下(きか)猛将(もうしょう)不足(ふそく)痛感(つうかん)した。


古家軍(こけぐん)吸収(きゅうしゅう)した(のち)黒家大軍(こくかたいぐん)王帳(おうちょう)()五转蛊師(ごてんこし)(みっ)(たり)(おのお)黒楼蘭(こくろうらん)太白雲生(たいはくうんせい)、そして新規加入(しんきかにゅう)古国龍(ここくりゅう)である。


黒楼蘭(こくろうらん)盟主(めいしゅ)として(かる)々(が)しく(うご)けず、太白雲生(たいはくうんせい)治療(ちりょう)専用(せんよう)蛊師(こし)戦闘(せんとう)得意(とくい)としない。古国龍(ここくりゅう)五转土道(ごてんどどう)蛊師(こし)だが、相手(あいて)四转巅峰(してんてんぽう)(かれ)()せば挑将(ちょうしょう)不文律(ふぶんりつ)(はん)し、世間(せけん)失笑(しっしょう)()うだろう。


四转蛊師(してんこし)()()けると、十分(じゅうぶん)使(つか)えるのは狼王(ろうおう)常山陰(じょうざんいん)水魔(すいま)浩激流(こうげきりゅう)影劍客(えいけんかく)邊絲軒(へんしけん)小狐帥(しょうこすい)唐妙鳴(とうみょうめい)、そ(れ)に単刀将(たんとうしょう)潘平(はんぺい)のみ。


常山陰(じょうざんいん)唐妙鳴(とうみょうめい)奴道蛊師(ぬどうこし)(ため)()(さき)除外(じょがい)水魔(すいま)浩激流(こうげきりゅう)(すで)退場(たいじょう)黒楼蘭(こくろうらん)選択肢(せんたくし)(のこ)(ふた)つに(しぼ)られた。


(かれ)視線(しせん)は、潘平(はんぺい)邊絲軒(へんしけん)二人(ふたり)(かお)()()した。


潘平(はんぺい)は、(おのれ)底力(そこぢから)だけでは欧陽碧桑(おうようへきそう)(かな)わぬと(さと)り、()()きを(うし)っていた。邊絲軒(へんしけん)(くろ)(ぬの)(かお)(おお)い、(つめ)たい眼差(まなざ)しを(たた)えていた。


黒楼蘭(こくろうらん)邊絲軒(へんしけん)()(なお)り、()った。「此度(こたび)は、影劍客(えいけんかく)出手(しゅっしゅ)(わずら)わせたい。」


()らば、(いのち)だけは保証(ほしょう)するが、勝利(しょうり)保証(ほしょう)できぬ。」


邊絲軒(へんしけん)(ひや)やかに()(はな)った。


黒楼蘭(こくろうらん)(かわ)いた(わら)(ごえ)()げた。盟主(めいしゅ)(いえ)ども、邊絲軒(へんしけん)毒誓(どくせい)()てているとはいえ、彼女(かのじょ)無理(むり)死戦(しせん)()いる(わけ)にはいかないのだ。


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