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蛊真人  作者: 魏臣栋
魔头乱世
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第一百一十九節:威望隆重功第一

太白雲生(たいはくうんせい)は、背丈(せたけ)(たか)風貌(ふうぼう)奇矯(ききょう)で、(びん)(しも)(ゆき)(ごと)く、顔中(かおじゅう)(きざ)まれた(しわ)(ふか)(きざ)まれていた。


(よわい)(すで)八十(はちじゅう)()えるが、その両目(りょうめ)には(ろう)いの(こん)げは微塵(みじん)()く、(てん)(あた)えの悲天憫人(ひてんびんじん)(おん)かさと、世俗(せぞく)見透(みす)かす平淡(へいたん)さが宿(やど)っていた。


七歳(ななつ)(とき)より、北原(ほくげん)遍歴(へんれき)衆生(しゅじょう)救済(きゅうさい)せんと(こころざ)した。


()人生(じんせい)激動(げきどう)()ち、命運(めいうん)翻弄(ほんろう)され(つづ)けてきた。一族(いちぞく)滅亡(めつぼう)奴隷蛊師(どれいこし)転落(てんらく)(つま)裏切(うらぎ)り、異人(いじん)捕虜(ほりょ)奇遇(きぐう)による宙道蛊仙(ちゅうどうこせん)継承(けいしょう)臨終(りんじゅう)(きわ)みの兄弟(きょうだい)捨身(しゃしん)救済(きゅうさい)……


(いま)(かれ)()ける伝説(でんせつ)()している。


孤高(ここう)()ながら、(だれ)もが(みと)める正道(せいどう)大蛊師(だいこし)である。()仁慈(じんじ)()北原(ほくげん)の人々(ひとびと)の(こころ)(ふか)根差(ねざ)し、常山陰(じょうざんいん)黒楼蘭(こくろうらん)劉文武(りゅうぶんぶ)らを遠遠(とおとお)凌駕(りょうが)する()(ぼう)(ゆう)する。


まさに黒楼蘭(こくろうらん)戦局(せんきょく)()()き、撤兵(てっぺい)(かんが)(はじ)めた(ころ)(かれ)一騎(いっき)陣営(じんえい)(そと)(あら)われ、一通(いっつう)書簡(しょかん)()にしていた。


黒楼蘭(こくろうらん)(ふう)()いて()(とお)すや、瞬時(しゅんじ)事情(じじょう)(さと)った。


元来(がんらい)往年(おうねん)黒家(こくけ)太上家老(たいじょうかろう)である黒柏(こくはく)は、太白雲生(たいはくうんせい)(たか)(ひょう)()し、幾度(いくど)となく指導(しどう)救済(きゅうさい)(ほどこ)していた。(いま)黒家大軍(こくかたいぐん)苦境(くきょう)(おちい)ったのを(あん)()(まも)っていた黒柏(こくはく)は、書簡(しょかん)をしたためて太白雲生(たいはくうんせい)(つた)え、支援(しえん)()()けるよう(もと)めたのである。


太白雲生(たいはくうんせい)力量(りきりょう)熟知(じゅくち)する黒楼蘭(こくろうらん)は、(おお)いに(よろこ)び、当夜(とうや)(うたげ)(もう)けて手厚(てあつ)くもてなした。


翌日(よくじつ)夜明(よあ)けと(とも)に、黒楼蘭(こくろうらん)()()れず陣形(じんけい)(ととの)え、太白雲生(たいはくうんせい)出手(しゅっしゅ)()うた。


衆人(しゅうじん)期待(きたい)()()びながら、太白雲生(たいはくうんせい)悠然(ゆうぜん)陣頭(じんとう)(すす)()眼前(がんぜん)(そび)える高山(こうざん)(あお)()た。


古家(こけ)土道(どどう)得意(とくい)とすることでは、北原(ほくげん)随一(ずいいち)()()せている。巨石(きょせき)()()げて(やま)(きず)く——()戦術(せんじゅつ)地球(ちきゅう)では想像(そうぞう)もできず、実現(じつげん)不可能(ふかのう)だろう。(しか)()世界(せかい)では、十数日(じゅうすうじつ)浇筑(ちゅうごう)された()(あたら)しい(やま)が、人々(ひとびと)に「不可能(ふかのう)()い」と(かた)りかけている。


盟主(めいしゅ)古国龍(ここくりゅう)山頂(さんちょう)君臨(くんりん)し、山麓(さんろく)俯瞰(ふかん)していた。


(しろ)()(ゆき)(ごと)白髪(はくはつ)老人(ろうじん)(じん)()るを()て、(まわ)りの蛊師(こし)たちは哄笑(こうしょう)()ぜさせ、(ある)いは軽蔑(けいべつ)嘲笑(あざわら)いを()らした。しかし古国龍(ここくりゅう)心中(しんちゅう)には、不穏(ふおん)予感(よかん)(つの)っていった。(かれ)(つう)(かん)していた——(おのれ)の「積土成山(せきどせいざん)(さく)」は、自家(じか)土道蛊師(どどうこし)多勢(たぜい)基盤(きばん)としていることを。他家(たか)真似(まね)するのは(むずか)しくとも、打破(だは)する手立(てだ)てが()(わけ)ではないと。


古国龍(ここくりゅう)黒家軍(こくけぐん)連戦連敗(れんせんれんぱい)(きっ)し、軍勢(ぐんぜい)()がれて、当初(とうしょ)野望(やぼう)(すで)色褪(いろあ)せていた。(かれ)熟慮(じゅくりょ)(すえ)劉家(りゅうか)帰順(きじゅん)することを決断(けつだん)した。


劉家(りゅうか)劉文武(りゅうぶんぶ)仁厚(じんこう)英明(えいめい)(ひと)(くつろ)(おのれ)(きび)しく、黒楼蘭(こくろうらん)より(はる)かに評判(ひょうばん)()い。数日(すうじつ)(まえ)古国龍(ここくりゅう)(ひそ)かに書簡(しょかん)(おく)り、帰順(きじゅん)意思(いし)(つた)えていた。


劉文武(りゅうぶんぶ)公子(こうし)(すで)返書(へんしょ)(くだ)さり、()(ぞく)帰順(きじゅん)承諾(しょうだく)された。(いま)(ぐん)()援軍(えんぐん)として()()けて(くだ)さっている。()(しろ)(かた)(まも)り、(あと)七日(なのか)()()てば、暗雲(あんうん)()れて青空(あおぞら)()え、苦境(くきょう)(だつ)することができる。」


古国龍(ここくりゅう)(こころ)(うち)(みずか)らを(はげ)ましていた——()(とき)太白雲生(たいはくうんせい)(ゆる)やかに両手(りょうて)()()した。


()(てのひら)(おお)きく、(ふる)胼胝(たこ)が点々(てんてん)とし、(しわ)(ひろ)がる(さま)古木(こぼく)樹皮(じゅひ)(おも)わせる。


(かれ)(ゆる)やかに真元(しんげん)(めぐ)らせ、両手(りょうて)(かす)かな銀色(ぎんいろ)(かがや)きが(あら)われた。銀光(ぎんこう)(はじ)(よわ)かったが、(またた)(うち)次第(しだい)(つよ)まり、数回(すうかい)(まばた)きする(ころ)には強烈(きょうれつ)(かがや)きと()り、直視(ちょくし)できない(ほど)であった。


山如故(さんじょこ)。」


太白雲生(たいはくうんせい)悠然(ゆうぜん)(うた)(こえ)は、(くも)()くを(さえぎ)るほど(ひび)(わた)った。


山頂(さんちょう)では、古国龍(ここくりゅう)()(こえ)()くなり、顔面(がんめん)驚愕(きょうがく)(いろ)(はし)った。「しまった!(かれ)太白雲生(たいはくうんせい)だったのか!」


()うが(はや)いか、銀光(ぎんこう)炸裂(さくれつ)し、一直線(いっちょくせん)光柱(こうちゅう)()って山頂(さんちょう)直撃(ちょくげき)した。


数多(あまた)蛊師(こし)たちは危険(きけん)察知(さっち)し、()ぐに防御蛊虫(ぼうぎょこちゅう)発動(はつどう)させ、(ある)いは攻撃(こうげき)(はな)って迎撃(げいげき)しようとした。


しかし銀光(ぎんこう)如何(いか)なる妨害(ぼうがい)無視(むし)し、山頂(さんちょう)燦然(さんぜん)()らし()した。


(ひと)(けもの)無事(ぶじ)であったが、古家軍(こけぐん)足下(あしもと)(いわ)(いし)は、如何(いか)巨大(きょだい)堅固(けんご)であろうと、銀光(ぎんこう)()らされると灼熱(しゃくねつ)()(さら)された(ゆき)(ごと)く、()()えて(じょ)々(じょ)に虚無(きょむ)へと()していった。(あた)かも元々(もともと)存在(そんざい)しなかったかのように。


足場(あしば)(うしな)った古家軍(こけぐん)兵士(へいし)たちは、次々(つぎつぎ)に墜落(ついらく)した。瞬時(しゅんじ)人馬(じんば)倒錯(とうさく)し、五丈(ごじょう)から六丈(ろくじょう)もの(たか)さから岩石(がんせき)(うえ)転落(てんらく)数多(あまた)死傷者(ししょうしゃ)()した。


最も愚鈍(ぐどん)古家(こけ)蛊師(こし)でさえ、()(とき)危機(きき)(さと)った。


(かれ)らは一斉(いっせい)悲鳴(ひめい)()げた。「(やま)()える!」「足場(あしば)()くなる!」「墜落(ついらく)する!」「(たす)けてくれ!」


恐慌(きょうこう)(またた)()全軍(ぜんぐん)蔓延(まんえん)した。兵士(へいし)たちは右往左往(うおうさおう)し、(たが)いに()()(きびす)(まわ)有様(ありさま)であった。


(かく)(ごと)(ちから)……()れは太白雲生様(たいはくうんせいさま)の『山如故(さんじょこ)』に相違(そうい)ない!」


(てん)よ、何故(なぜ)太白老先生(たいはくろうせんせい)暴君(ぼうくん)黒楼蘭(こくろうらん)(たす)けられるのか!」


太白雲生様(たいはくうんせいさま)(むかし)()(ぞく)(ため)元泉(げんせん)回復(かいふく)し、(すく)いの恩人(おんじん)であらせられた。()(かた)(いま)(たたか)わねばならぬというのか?」


古家軍(こけぐん)足下(あしもと)(きず)かれた新山(しんざん)は、(かれ)最大(さいだい)精神的支柱(せいしんてきしちゅう)であった。()れが轟音(ごうおん)(とも)崩壊(ほうかい)したのみならず、太白雲生(たいはくうんせい)という存在(そんざい)そのものの威光(いこう)が、(かれ)らの戦意(せんい)根底(こんてい)から()るがす要因(よういん)となった。


「はははは、流石(さすが)太白雲生(たいはくうんせい)一出手(いっしゅしゅ)にして(ぼん)ならざる(ひび)()りよ。」


黒楼蘭(こくろうらん)王帳(おうちょう)(なか)()し、()情景(じょうけい)()にすると、(おご)(たか)ぶる(わら)(ごえ)(はな)った。


(かれ)予想(よそう)だにしなかった、(なん)(いえ)には()うした(かく)(だま)存在(そんざい)したとは。


(しか)し、超弩級(ちょうどきゅう)部族(ぶぞく)太上家老(たいじょうかろう)たちは、(おり)()れて魔道(まどう)正道(せいどう)凡人蛊師(ぼんじこし)(なか)から、将来性(しょうらいせい)(みと)めた(たね)見出(みいだ)し、育成(いくせい)するものだ。


一旦(いったん)此等(これら)の「(たね)」が将来(しょうらい)蛊仙(こせん)()()がれば、往々(おうおう)にして超弩級部族(ちょうどきゅうぶぞく)吸収(きゅうしゅう)され、外姓(がいせい)太上家老(たいじょうかろう)となる。


()れこそ超弩級部族(ちょうどきゅうぶぞく)(おの)地位(ちい)維持(いじ)する(ため)発展策(はってんさく)(ひと)つなのである。


(あき)らかに、太白雲生(たいはくうんせい)六转蛊仙(ろくてんこせん)黒柏(こくはく)見出(みいだ)され、将来(しょうらい)蛊仙昇格(こせんしょうかく)期待(きたい)される有望(ゆうぼう)な「(たね)」であったのだ。


敵軍(てきぐん)狼狽(うろた)える姿(すがた)()にし、黒家軍(こくかぐん)士気(しき)(おお)いに高揚(こうよう)した。兵士(へいし)たちの(あいだ)からは轟然(ごうぜん)たる(わら)(ごえ)()()こり、「(てき)老若男女(ろうにゃくなんにょ)皆殺(みなごろ)しにせよ!」との(さけ)(ごえ)()がった。


王帳(おうちょう)(なか)では、蛊師(こし)強者(つわもの)たちも欣喜(きんき)雀躍(じゃくやく)していた。しかし、方源(ほうげん)だけは沈静(ちんせい)とした表情(ひょうじょう)()かべていた。太白雲生(たいはくうんせい)出現(しゅつげん)は、(かれ)予想(よそう)(ない)であった。


前世(ぜんせ)五百年(ごひゃくねん)記憶(きおく)によれば、太白雲生(たいはくうんせい)()時期(じき)黒家軍(こくかぐん)参加(さんか)し、終始(しゅうし)黒楼蘭(こくろうらん)補佐(ほさ)して多大(ただい)支援(しえん)提供(ていきょう)したのである。


黒楼蘭(こくろうらん)最終的(さいしゅうてき)諸雄(しょゆう)勝利(しょうり)できたのは、(おお)きく太白雲生(たいはくうんせい)功績(こうせき)()うところが(おお)きかった。


しかし太白雲生(たいはくうんせい)生来(せいらい)仁慈(じんじ)性格(せいかく)であり、補佐(ほさ)する(なか)次第(しだい)黒楼蘭(こくろうらん)凶暴残忍(きょうぼうざんにん)本性(ほんしょう)認識(にんしき)するようになった。()(ため)王庭福地(おうていふくち)(はい)った(あと)其処(そこ)蛊仙(こせん)昇格(しょうか)したものの、黒柏(こくはく)要請(ようせい)()け入れず、黒家(こくけ)外姓太上家老(がいせいたいじょうかろう)とはならなかったのである。


(ころ)せ!()犬畜生(いぬちくしょう)めが!()くも(つち)()()げて(やま)()し、依怙地(えこじ)抵抗(ていこう)するとは!」


黒楼蘭(こくろうらん)興奮(こうふん)して咆哮(ほうこう)した。


陣頭(じんとう)()太白雲生(たいはくうんせい)は、()言葉(ことば)()いて(まゆ)をひそめ、悠々(ゆうゆう)と(いき)をついた。(しか)攻撃(こうげき)(つづ)ける()わりに、伝音術(でんおんじゅつ)黒楼蘭(こくろうらん)諫言(かんげん)した。「盟主(めいしゅ)殿(どの)(てん)(せい)(あい)しむ(とく)あり。(なん)()(ひつ)(よう)()殺生(せっしょう)(かさ)ねられますや?歴代(れきだい)王庭争奪戦(おうていそうだつせん)において、()(たて)(ただよ)い、犠牲(ぎせい)数多(あまた)(のぼ)ります。盟主(めいしゅ)殿(どの)王庭(おうてい)()りを目指(めざ)されるなら、古家軍(こけぐん)降伏(こうふく)させて収容(しゅうよう)される方が()ろしい。()老生(ろうせい)説得役(せっとくやく)()って()ましょう。」


古家軍(こけぐん)(つち)()()げて(きず)いた(やま)は、黒家軍(こくかぐん)対抗(たいこう)する(ため)のものだったが、太白雲生(たいはくうんせい)を前にしては、(かえ)って(みずか)らを(ほうむ)致命(ちめい)(わな)()してしまった。


(いま)黒家軍(こくかぐん)古家軍(こけぐん)鉄壁(てっぺき)包囲網(ほういもう)(かこ)み、(ひと)つの(すき)()(ふう)()んでいる。


太白雲生(たいはくうんせい)本気(ほんき)()せば、古家軍(こけぐん)半減(はんげん)させることなど造作(ぞうさ)もない。古家軍(こけぐん)()して()()(わけ)にはいかず、新山(しんざん)消滅(しょうめつ)すれば、軍力(ぐんりょく)必然的(ひつぜんてき)枯渇(こかつ)し、最後(さいご)突撃(とつげき)など微塵(みじん)脅威(きょうい)にもならぬだろう。


(しか)太白雲生(たいはくうんせい)()れを()さなかった。


黒楼蘭(こくろうらん)眼中(がんちゅう)には凶光(きょうこう)()らめいていた。内心(ないしん)では殺意(さつい)沸騰(ふっとう)しているものの、太白雲生(たいはくうんせい)(かお)()てねばならない。


太白雲生(たいはくうんせい)(なみ)蛊師(こし)では()い。


(かれ)(きわ)めて(まれ)宙道(ちゅうどう)蛊師(こし)であり、()修行(しゅぎょう)五转巅峰(ごてんてんぽう)(たっ)し、北原(ほくげん)における()(ぼう)旭日(きょくじつ)(ごと)(てん)()がし、()影響力(えいきょうりょく)草原(そうげん)全土(ぜんど)(あまね)(およ)んでいる。


黒楼蘭(こくろうらん)(すこ)沉吟(ちんぎん)した(のち)(こた)えた。「では此度(こたび)ばかりは老先生(ろうせんせい)()う通り(どおり)に(いた)しましょう。(ただ)し、老先生(ろうせんせい)(ひと)りで(やま)(のぼ)られるのは(あま)りに危険(きけん)です。六人(ろくにん)四转强者(してんきょうしゃ)護衛(ごえい)として()けさせていただきます。」


太白雲生(たいはくうんせい)(かろ)(うなず)き、重厚(じゅうこう)護衛(ごえい)(かこ)まれて山上(さんじょう)()かった。


(かれ)()(ぼう)(きわ)めて(あつ)く、仁慈(じんじ)()は人々(ひとびと)の(こころ)(ふか)くに浸透(しんとう)している。()(いた)(ところ)敵軍(てきぐん)自発的(じはつてき)両側(りょうがわ)()かれ、中央(ちゅうおう)通路(つうろ)(あら)わした。


恩公(おんこう)()(よう)(とき)にお()いするとは(おも)いも()りませんでした。」


古国龍(ここくりゅう)苦笑(くしょう)()かべながら(すす)()て、(うやうや)しく挨拶(あいさつ)()べた。


当年(とうねん)古家(こけ)元泉(げんせん)枯渇(こかつ)し、(いく)つかの大部族(だいぶぞく)から排斥(はいせき)()けて移徙(いし)危険(きけん)(ひん)した(さい)太白云生(たいはくうんせい)()()れて救済(きゅうさい)(もと)めた。太白云生(たいはくうんせい)(なん)報酬(ほうしゅう)(もと)めず、無償(むしょう)()(くだ)し、古家(こけ)上下(じょうげ)恩人(おんじん)となったのである。


太白雲生(たいはくうんせい)説得(せっとく)(こた)え、古国龍(ここくりゅう)劉文武(りゅうぶんぶ)(こころ)()せる(おも)いを(いだ)きつつも、状況(じょうきょう)優位(ゆうい)(あらが)えず、(あたま)()れざるを()なかった。


太白雲生(たいはくうんせい)(やま)(のぼ)ってから一刻(いっこく)()たずして下山(げざん)した。


登頂(とうちょう)時の七名(しちめい)(たい)し、下山時(げざんじ)には十数万(じゅうすうまん)軍勢(ぐんぜい)(したが)えていた。


()一戦(いっせん)において、太白雲生(たいはくうんせい)見事(みごと)説得(せっとく)成功(せいこう)させ、古家大軍(こけたいぐん)全員黒楼蘭(ぜんいんこくろうらん)麾下(きか)帰順(きじゅん)させた。黒家軍(こくけぐん)兵力(へいりょく)爆発的(ばくはつてき)増強(ぞうきょう)されることとなった。


太白雲生(たいはくうんせい)孤高(ここう)(ちから)戦局(せんきょく)一転(いってん)させ、深甚(しんじん)なる威光(いこう)をもって十余万(じゅうよまん)生命(せいめい)救済(きゅうさい)すると(とも)に、黒家(こくけ)(たい)する偉勲(いきゅん)()()てた。


太白雲生(たいはくうんせい)黒家軍(こくけぐん)(くわ)わった初日(しょにち)にして、(はや)くも戦功榜(せんこうほう)首位(しゅい)(おど)()た。


()れに(たい)(しょう)する方源(ほうげん)()は──


狼王(ろうおう)常山陰(じょうざんいん)()は、戦功榜(せんこうぼう)最下位(さいかい)に、鮮烈(せんれつ)(あか)(しる)された巨大(きょだい)負数戦功(ふすうせんこう)


太白雲生(たいはくうんせい)(かがや)かしい戦功(せんこう)と、(いた)ましい(ほど)対照的(たいしょうてき)であった。


当夜(とうや)黒楼蘭(こくろうらん)祝勝宴(しゅくしょうえん)開催(かいさい)(めい)じ、太白雲生(たいはくうんせい)(ため)歓迎宴(かんげいえん)()ねた。


(つき)()(わた)(ほし)(まば)らに、篝火(かがりび)(てん)()(いきお)いで()()がった。


(さかずき)()わし()い、音楽(おんがく)(くも)(つらぬ)いて(ひび)(わた)った。美貌(びぼう)少女(しょうじょ)たちは北原(ほくげん)民族衣装(みんぞくいしょう)(まと)い、金銀(きんぎん)玉石(ぎょくせき)琳琅(りんろう)(ちりば)めた装飾品(そうしょくひん)()()け、篝火(かがりび)(かこ)って優雅(ゆうが)()(おど)った。


黒楼蘭(こくろうらん)は度々(たびたび)太白雲生(たいはくうんせい)(さかずき)(ささ)げ、(たた)えて()った。「老先生(ろうせんせい)御座(ござ)すれば、如何(いか)なる防衛線(ぼうえいせん)形骸化(けいがいか)すること必定(ひつじょう)御座(ござ)います!」


太白雲生(たいはくうんせい)()には、北原(ほくげん)(たみ)(だれ)もが()二匹(にひき)五转蛊(ごてんこ)存在(そんざい)する。


一匹(いっぴき)は「山如故(さんじょこ)」、もう一匹(いっぴき)は「江如故(こうじょこ)」と(しょう)され、(いず)れも宙道(ちゅうどう)蛊虫(こちゅう)である。


前者(ぜんしゃ)大地(だいち)厚土(こうど)山岳(さんがく)丘谷(きゅうこく)(もと)姿(すがた)回復(かいふく)させる能力(のうりょく)(ゆう)し、後者(こうしゃ)江河(こうが)湖沼(こしょう)渓流(けいりゅう)瀑布(ばくふ)本来(ほんらい)風貌(ふうぼう)還元(かんげん)する。


古国龍(ここくりゅう)(きず)いた新山(しんざん)は、元々(もともと)平坦(へいたん)草原(そうげん)であった(ため)山如故蛊(さんじょここ)作用(さよう)によって本来(ほんらい)地形(ちけい)回帰(かいき)した。


古家(こけ)以前(いぜん)(ゆう)していた元泉(げんせん)は、江如故蛊(こうじょここ)によって当初(とうしょ)状態(じょうたい)恢復(かいふく)され、(ふたた)元石(げんせき)産出(さんしゅつ)可能(かのう)となった。


大軍(たいぐん)相争(あいあらそ)(さい)土道(どどう)蛊虫(こちゅう)(しゅ)として構築(こうちく)される千里(せんり)(およ)防衛線(ぼうえいせん)城壁(じょうへき)は、山如故蛊(さんじょここ)(まえ)には平坦(へいたん)草地(そうち)へと還元(かんげん)される。(ゆえ)黒楼蘭(こくろうらん)が「如何(いか)なる防衛線(ぼうえいせん)形骸化(けいがいか)する」と()べた言葉(ことば)は、(ふか)道理(どうり)(かな)っているのである!









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