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蛊真人  作者: 魏臣栋
青茅山
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第五十二節: その解釈を飲み込むがいい

教室きょうしつじゅう全員ぜんいん方源ほうげん集中しゅうちゅうしていた。

その視線しせんには驚愕きょうがく恐怖きょうふ嘲笑ちょうしょう冷酷れいこくじっていた。


方源ほうげんはそれらの視線しせん無視むしし、学堂家老がくどうかろう見据みすえながら、たおれた意識不明いしきふめい護衛ごえい指差ゆびさきびしい表情ひょうじょうった:

もうげます。この二人ふたり護衛ごえい邪心じゃしんいだいており、誅殺ちゅうさつすべき存在そんざいでした!わたし中階ちゅうかい突破とっぱ最重要さいじゅうよう瞬間しゅんかん無理矢理むりやりとびらやぶって侵入しんにゅうしてきたのです。ご存知ぞんじの通り、蛊師こし修行しゅぎょう干渉かんしょうけてはなりません。ましてや境界きょうかい突破とっぱ尚更なおさらです。すこしでも失敗しっぱいすれば、空竅くうこう損傷そんしょうする危険きけんがありました。幸運こううんにもかれらが乱入らんにゅうした瞬間しゅんかん中階ちゅうかい到達とうたつできたのです」


周囲しゅうい反応はんのうするもなく、方源ほうげんつづけた:

「しかし!この二人ふたりみずからのあやまちをみとめず、厚顔無恥こうがんむちにもわたしそうとし、さらには一族いちぞく先祖せんぞ侮辱ぶじょくし、今回こんかい妨害ぼうがい家老かろうさま指示しじだとうそきました。学生がくせいしんじられずはげしく抵抗ていこうしました。かれらは武芸ぶげいすぐれていたため、血戦けっせんすえようやくたおした次第しだいです」


「ただし」方源ほうげんこぶしなおす。「学舎がくしゃものということで、致命傷ちめいしょうあたえませんでした。一人ひとりうで根元ねもとからり、もう一人ひとり大腿だいたい切断せつだんしただけです。失血しっけつおおいですが、まだいきはあります。どうか学生がくせい正当性せいとうせいをご裁決さいけつください!」


早口はやくちでまくしてるようにえると、周囲しゅういおそればせながら反応はんのうはじめた。


方源ほうげんいまなんった? のがした」

中階ちゅうかい昇格しょうかくしたって!」

「まさか!丙等へいとうくず最初さいしょ中階ちゅうかいだなんて」

うそまってる!ばつのがれの方便ほうべんだ!」


生徒せいとたちがさわなか学堂家老がくどうかろうつめたいこえはなった:

中階ちゅうかいだと?方源ほうげん虚偽きょぎもうてれば処罰しょばつ倍増ばいぞうする。いまなら初犯しょはんとして寛大かんだい処遇しょぐうしてやれる」


方源ほうげん反論はんろんせず、かるわらいかけてった:「ご検分けんぶんを」


うながされるまでもなく、学堂家老がくどうかろうちかづき方源ほうげん下腹部かふくぶてた。意識いしき空竅くうこう浸透しんとうさせると――


春秋蝉しゅんじゅうせみ隠蔽いんぺいされ、六転ろくてんのレベルは三転さんてん家老かろう超越ちょうえつしており発見はっけんされない。酒虫しゅちゅう寮室りょうしつ酒壺さかつぼりにしていた。


青銅色せいどういろ真元海しんげんかいしずかにひろがり、中階真元ちゅうかいしんげん特有とくゆう蒼青色そうせいしょくしずく確認かくにんされる。周囲しゅうい竅壁こうへき水流すいりゅうのようにひかり、高速こうそく循環じゅんかんしていた。


水膜すいまく

本当ほんとう中階ちゅうかいか…こんなことが!」学堂家老がくどうかろうのまぶたのうらおどろきのひかり一瞬いっしゅんはしったが、表情ひょうじょう強張こわばらせてかくした。


しばらく沈黙ちんもくし、もどしながらひく宣言せんげんした:「たしかに中階ちゅうかいだ」


いきころしていた生徒せいとたちが一斉いっせいった。


「まさか…」「丙等へいとう最初さいしょだって?」「常識じょうしきやぶりすぎ!」

古月方正こげつ ほうせいさおになり椅子いすくずちた。漠北ばくほくこぶしにぎめ、赤城せきじょう歯軋はぎしりした。


「どうやって…?」という疑念ぎねん全員ぜんいんひとみ渦巻うずまく。


学堂家老がくどうかろう困惑こんわくかくせずめた:「方源ほうげん、どういう経緯けいい中階ちゅうかいいたったのか説明せつめいせよ」


方源ほうげん薄笑うすわらいをかべる:「天道酬勤にむくいます。日々(ひび)の鍛錬たんれんみのったまで」


うそつき!」

「ちぇっ、努力どりょくだけで結果けっかるなら、とっくにおれがトップだっての!」

商店街しょうてんがいでブラブラしてたのたぞ!」


不満ふまんこえがるなか学堂家老がくどうかろう眼光がんこうするどくする:「それだけか?」


まったあさ着物きもの)姿すがた方源ほうげん平然へいぜん視線しせんわした。そのひとみおくひそ嘲笑ちょうしょう家老かろうこころさぶった。


(このおとこおそれず、どうじない…丙等へいとう中階ちゅうかい秘密ひみがあるにちがいない。だが強制きょうせいはできぬ…内密ないみつ調しらべるしか)


表情ひょうじょうゆるめながら視線しせんはずした家老かろう背中せなかに、方源ほうげんうすみがにじんだ。



方源ほうげんがらなかった:「学生がくせいながらおそりますが、家老かろう殿どの、この護衛ごえいどもをどう処分しょぶんなさいますか?このままだと失血死しっけつししますぞ」


おそれるだと?」学堂家老がくどうかろう内心ないしんわらった。まゆふかきざむ。


学舎がくしゃ責任者せきにんしゃとして決断けつだんせまられた。


「しかしどうさばくべきか…」


思案しあんれる家老かろう様子ようすを、方源ほうげん眼底がんていおさ薄笑うすわらいをかべた。


外姓がいせい奴僕どぼくなど、いのちくさごとかるい。平時へいじなら無視むしされる存在そんざいだ。


だがいまちがう。家老かろうみずからが派遣はけんしたものねば面目めんもく丸潰まるつぶしだ。かす必要ひつようがある。


しん難題なんだい方源ほうげんへの処置しょちだった。


当初とうしょ計画けいかくでは、無断欠席むだんけっせき護衛殺害ごえいさつがい二重にじゅうつみろうおくりにするつもりだった。


しかし中階ちゅうかい昇格しょうかくという大前提だいぜんていが全て(すべて)をくつがえした。


修行しゅぎょう優先ゆうせん正当性せいとうせい同輩どうはい最速さいそく栄誉えいよ


てば官軍かんぐんければ賊軍ぞくぐん」――結果けっかが全て(すべて)を正当化せいとうかする。優秀ゆうしゅう後進こうしん非難ひなんするものなどあらわれまい。


学舎がくしゃちょうたるもの優等生ゆうとうせい弾圧だんあつすれば、あきらかな職務怠慢しょくむたいまんだ。


たとえれば、優秀ゆうしゅう生徒せいとばっする教師きょうしなどみとめられぬ。


ほか家老かろうなら嫉妬しっと私怨しえんから暗躍あんやくするかもしれぬ。だが学舎がくしゃ責任者せきにんしゃたる自分じぶんちがう。


表向おもてむきの公平こうへいさすらたもてぬとなれば、学舎がくしゃそのものの存在意義そんざいいぎわれる。


これがおきてだ!


「まさかこのまま彼を放免ほうめんするのか?やっとつかんだよわみなのに」学堂家老がくどうかろうは強い無念むねんを感じた。彼ははっきり理解りかいしていた――学舎がくしゃ中の少年しょうねんたちはみな局外者きょくがいしゃだと。


局外者きょくがいしゃはただの見物人けんぶつにんでしかなく、物事ものごと奥深おくふか道理どうり見抜みぬけず、暗闘あんとうたえ理解りかいできない!


実際じっさい、これは学堂家老がくどうかろう生徒せいと方源ほうげんとの一騎打いっきうちだったのだ!


家老かろう最初さいしょ規律きりつたて方源ほうげんおさみ、他の生徒せいとたちのこころなかでのつよいイメージをこわそうとした。


それにたい方源ほうげん猛然もうぜん反撃はんげき一見いっけん無鉄砲むてっぽうえる行動こうどうだが、核心かくしんいていた。中階ちゅうかい昇格しょうかくという大義名分たいぎめいぶんかかげ、即座そくざ形勢けいせい逆転ぎゃくてんさせた。


あの二人ふたり不運ふうん護衛ごえいは、両者りょうしゃ闘争とうそうまれた無辜むこごまでしかなかった。


「この方源ほうげん計算高けいさんだかすぎる!もし本当ほんとう護衛ごえいころしていたら、まだ反撃はんげき余地よちがあったのに。資質ししつはどうあれ、この周到しゅうとう老練ろうれん手口てぐち――十五歳じゅうごさい少年しょうねん所業しょぎょうとはおもえん。まさに往年おうねんからうわさされていた早熟そうじゅく詩才しさいだ!」学堂家老がくどうかろう敗北はいぼくさとった。


彼の敗因はいいんは、学舎がくしゃ統括とうかつする家老かろうという立場たちばそのものにあった。


これが彼のつよみでもあり、同時どうじよわみでもあった。


最強さいきょう一点いってんこそ最大さいだい弱点じゃくてん


方源ほうげんはやくからこの道理どうり見抜みぬいていた!


学堂家老がくどうかろう胸中きょうちゅうには無力感むりょくかんいかりが渦巻うずまいていた。


先程さきほど方源ほうげん説明せつめいもとめたさい、その言葉ことばあなだらけで、まともに検証けんしょうえられるものではなかった。


護衛ごえいたちは学堂家老がくどうかろうみずからがえらんだもの――軽率けいそつ性格せいかくなどありず、まして古月こげつ先祖せんぞ侮辱ぶじょくするなど論外ろんがいだ。


方源ほうげん主張しゅちょうあきらかな誣告ぶこくで、知情人ちじょうにん面前めんぜんつみせたものだった!


学堂家老がくどうかろうはこのてん熟知じゅくちしていたが、同時どうじ追求ついきゅうできないこともかっていた。


これはわなだった。


真相しんそうあきらかになれば、どう処置しょちすべきか?


方源ほうげん処罰しょばつしなければ、護衛ごえい二人ふたり冤罪えんざいこうむることに――学舎がくしゃ公平性こうへいせいうたがわれ、今後こんご統制とうせい困難こんなんになる。


一方いっぽう方源ほうげんばっすれば、才能さいのうある後進こうしん弾圧だんあつする嫉妬深しっとぶか家老かろうという烙印らくいんされる。外姓がいせい奴僕どぼくのために一族いちぞく若手わかて犠牲ぎせいにする――このうわさひろまれば族内ぞくない不満ふまん爆発ばくはつする。


最善さいぜん解決策かいけつさくは、つぶ護衛ごえいごまにし、方源ほうげん表彰ひょうしょうすることだった。


こうすれば一族いちぞく納得なっとくし、真相しんそうらない護衛ごえいたちも公正こうせいだとかんじるだろう。


この処置しょちこそ学堂家老がくどうかろう最大利益さいだいりえきかなう。


理性りせいはそうげていたが、感情かんじょうてきえられないかべがあった。


この方源ほうげんじつにくらしい!


学堂家老がくどうかろう方源ほうげんいきおいをおさえるどころか、ぎゃくだいにされ、公衆こうしゅう面前めんぜん面目めんもくうしなった!


方源ほうげん畏敬いけいねんなど微塵みじんもなく、公然こうぜん家老かろうねらちした。学舎がくしゃちょうとしてこの屈辱くつじょくいきどおりはがたいものだった。


さら重大じゅうだいなのは、今後こんご護衛ごえいたちが冤罪えんざいらそうとした場合ばあい学堂家老がくどうかろうみずからの立場たちばまもるため、まっさきに彼らを鎮圧ちんあつせねばならないてんだ!


しかしこれら全て(すべて)は方源ほうげん仕組しくんだわなだった!


この感覚かんかくなんたとえようか?


具体的ぐたいてきえば、方源ほうげん学堂家老がくどうかろう顔面がんめんふんながし、家老かろうは彼を称賛しょうさんしながらみずか後始末あとしまつをせねばならない。もし外部者がいぶしゃが「家老様かろうさまかおふんいています」と指摘してきすれば、まっさきにそのくちふうじなければならないのだ。


この鬱憤うっぷん嫌悪感けんおかん学堂家老がくどうかろうれそうになかった。


胸中きょうちゅう方源ほうげんほおばしたい衝動しょうどう渦巻うずまいていた。


しかし最終的さいしゅうてき家老かろうばし、方源ほうげんかたかるたたいただけだった。


「よくやった」学堂家老がくどうかろう顔色かおいろくらく、あいだからしぼすようにった。


「全て(すべて)は学舎がくしゃのご指導しどうのおかげです」方源ほうげんこえは淡々(たんたん)としていた。


学堂家老がくどうかろうまぶたかすかに痙攣けいれんした。

翻訳に問題がありましたらお知らせください。ありがとうございます。

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