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蛊真人  作者: 魏臣栋
魔头乱世
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第一百一十三節:扬名

黒楼蘭(こくろうらん)降伏勧告(こうふくかんこく)に、東方余亮(とうほうよりょう)沈黙(ちんもく)をもって(こた)えた。


(かれ)城壁(じょうへき)(うえ)()ち、眼前(がんぜん)(ひろ)がる黒々(くろぐろ)としげる敵軍(てきぐん)(なが)めながら、微風(びふう)がその長髪(ちょうはつ)()らし、(ころも)(すそ)(かろ)やかに(ひるがえ)っていた。


かすかな嘆息(たんそく)(こぼ)れた。


(たと)(ひゃく)智謀(ちぼう)()()くし、(つね)先手(せんしゅ)()って(はか)りし(もの)といえども、両軍(りょうぐん)実力差(じつりょくさ)(あま)りに大きく、(つい)()最終局面(さいしゅうきょくめん)(むか)えるに(いた)った。


智道(ちどう)といえども、無敵(むてき)(どう)ではなかったのである。


歴史(れきし)縦観(じゅうかん)すれば、蛊師(こし)流派(りゅうは)は次々(つぎつぎ)と(あら)われ、百花(ひゃっか)繚乱(りょうらん)(かん)がある。仮令(たとえ)気道(きどう)力道(りきどう)(ごと)一時的(いちじてき)隆盛(りゅうせい)(きわ)めた流派(りゅうは)(いえど)も、結局(けっきょく)他流派(たりゅうは)駆逐(くちく)し、蛊師界(こしかい)独佔(どくせん)するに(いた)った流派(りゅうは)存在(そんざい)しない。


各流派(かくりゅうは)(おの)々(おの)長所(ちょうしょ)()ち、また()れぞれ欠点(けってん)(ゆう)する。


(こと)蛊師(こし)流派(りゅうは)は、()基盤(きばん)物資(ぶっし)()いている。時代(じだい)(うつ)環境(かんきょう)変化(へんか)し、修行(しゅぎょう)必要(ひつよう)物資(ぶっし)減少(げんしょう)すれば、流派(りゅうは)生命力(せいめいりょく)(また)(おとろ)()く。


歴史(れきし)(すこ)しでも(つう)じた蛊師(こし)ならば、悠久(ゆうきゅう)なる時間(とき)(なが)れの(なか)に、数多(あまた)流派(りゅうは)(ほうむ)られてきたことを()るであろう。


智道(ちどう)遠古(えんこ)時代(じだい)(おこ)り、今日(こんにち)まで(つた)わってきた。(たと)智道蛊師(ちどうこし)(かず)(つね)(すく)なかったと(いえど)も、(かく)(ごと)生命力(せいめいりょく)(つよ)さは、(ほか)(るい)()ないと(ひょう)して()ぎない。


()()に、無敵(むてき)流派(りゅうは)など存在(そんざい)したためしが()い。存在(そんざい)するのは、無敵(むてき)蛊師(こし)のみである。


(しか)無敵(むてき)(きょう)到達(とうたつ)()(もの)は、歴史(れきし)(つらぬ)いても、(わず)九人(きゅうにん)()ぎない。


東方余亮(とうほうよりょう)五转(ごてん)智道蛊師(ちどうこし)()ぎず、世俗的(せぞくてき)には頂点(ちょうてん)()つとはいえ、無敵(むてき)()うには程遠(ほどとお)い。


仮令(たとえ)独創(どくそう)必殺技(ひっさつわざ)七星灯(しちせいとう)(ゆう)しているとはいえ、真元(しんげん)消耗(しょうもう)(はなは)だしく、永続的(えいぞくてき)使用(しよう)不可能(ふかのう)だ。黒家(こくけ)(ごと)巨大勢力(きょだいせいりょく)を前にしては、最早(もはや)独木(どくぼく)(ささ)(がた)きを痛感(つうかん)せざるを()ない。


()()れが奴道蛊師(ぬどうこし)であれば、乾坤一擲(けんこんいってき)逆転劇(ぎゃくてんげき)可能(かのう)であったかも()れぬ。(しかし)れども奴道(ぬどう)とて斬首戦術(ざんしゅせんじゅつ)には(ひる)まねばならぬ。(たと)狼王常山陰(ろうおうじょうさんいん)(いえど)も、(ひと)狼群(おおかみむれ)(ひき)いて本隊(ほんたい)から離脱(りだつ)するなど()えてしない。(ゆえ)に、蛊仙(こせん)昇華(しょうか)して(はじ)めて、塵界(じんかい)超越(ちょうえつ)()るのである」


東方余亮(とうほうよりょう)胸中(きょうちゅう)(しょ)げきのため(いき)をついた。


()(とき)水魔(すいま)浩激流(こうげきりゅう)(すす)()挑戦(ちょうせん)(もう)()んだ。


風魔(ふうま)()()()ね!」


(かれ)名指(なざ)して(さけ)んだ。


風魔(ふうま)(おお)いに(いか)り、(ひく)()えた。


浩激流(こうげきりゅう)()()るな!」


()うが(はや)いか、(かれ)城壁(じょうへき)から(もう)()(よう)(おど)()した。空中(くうちゅう)()るや(いな)や、蛊虫(こちゅう)駆動(くどう)する。二道(にどう)の四ツ葉風刃(よつばふうじん)(またた)く間に(まに)形成(けいせい)され、(ほとばし)(よう)(はな)たれた。


何時(いつ)まで(おな)()使(つか)(つづ)ける()だ!」


水魔(すいま)(わら)うと、()けもせず、猛然(もうぜん)(むか)()った。


轟々(ごうごう)!


風水双魔(ふうすいそうま)(すで)十数度(じゅうすうど)交戦(こうせん)(かさ)ね、(たが)いの手口(てぐち)熟知(じゅくち)()くしている。此度(こたび)(たたか)いも、(またた)く間に白熱(はくねつ)坩堝(るつぼ)()した。


風刃(ふうじん)水彈(すいだん)空中(くうちゅう)激突(げきとつ)し、爆発(ばくはつ)(おん)(とどろ)かせる。


風魔(ふうま)攻勢(こうせい)犀利(さいり)にして、縦横無尽(じゅうおうむじん)(うご)きで(てき)翻弄(ほんろう)する。一方(いっぽう)水魔(すいま)招式(しょうしき)狂放的(きょうほうてき)で、その(いきお)磅礴(ぼうはく)として()てしない。


両者(りょうしゃ)(ふる)くから()()(とどろ)かせており、一時(いっとき)(あい)まみえて燦然(さんぜん)たる(いくさ)ぶりを()せるも、優劣(ゆうれつ)容易(ようい)につかず。


両軍(りょうぐん)蛊師(こし)たちの視線(しせん)はこぞって()二柱(ふたはしら)(そそ)がれた。


四转蛊師(してんこし)強悍(きょうかん)さは、(おお)くの(もの)(はだ)(かん)じてきたことではあるが、(いま)(あらた)めて()にすれば、依然(いぜん)として肝胆(かんたん)(さむ)からしめる迫力(はくりょく)がある。


(たたか)いが(しば)(つづ)くうちに、水魔(すいま)次第(しだい)優位(ゆうい)()(はじ)めた。


風魔(ふうま)状態(じょうたい)最良(さいりょう)とは()えなかった。蛊師(こし)戦闘力(せんとうりょく)にも()(しず)みがあるものだ。


(いま)状況(じょうきょう)のように、大局(たいきょく)(すで)(さだ)まり、黒家軍(こくけぐん)包囲(ほうい)された東方部族連合軍(とうほうぶぞくれんごうぐん)士気(しき)低下(ていか)している(なか)風魔(ふうま)当然(とうぜん)その影響(えいきょう)()けていた。


従来(じゅうらい)互角(ごかく)だった好敵手(こうてきしゅ)が、(みずか)れに劣勢(れっせい)()()まれる(さま)()て、水魔(すいま)()(ほこ)った(さけ)(ごえ)()げ、攻勢(こうせい)一層(いっそう)(はげ)しくした。


(しょう)(へい)(たん)なり」という。()光景(こうけい)()にした黒家軍(こくけぐん)士気(しき)(さら)高揚(こうよう)し、一方(いっぽう)城壁(じょうへき)上の東方連合軍(とうほうれんごうぐん)は、更深(ふか)沈黙(ちんもく)(つつ)まれた。


王帳(おうちょう)(なか)黒楼蘭(こくろうらん)高笑(わら)いしながら、(さら)一人(ひとり)四转强者(してんきょうしゃ)(つか)いに出陣(しゅつじん)させた。


東方余亮(とうほうよりょう)一人(ひとり)派遣(はけん)して(おう)じさせた。


しかし()二人(ふたり)四转蛊師(してんこし)(たたか)いは、風水両魔(ふうすいりょうま)激闘(げきとう)とは(くら)(もの)にならぬ(ほど)精彩(せいさい)()いていた。


大山鳴動(たいざんめいどう)して鼠一匹(ねずみいっぴき)」とでも()(よう)に、()(うえ)戦闘中(せんとうちゅう)にお(たが)いに談笑(だんしょう)し、(ある)(だい)先祖(せんぞ)両家(りょうけ)(あいだ)縁組(えんぐみ)間柄(あいだがら)であった(こと)まで(はな)()始末(しまつ)だった。


東方余亮(とうほうよりょう)面色(めんしょく)一層(いっそう)(けわ)しく(くも)り、黒楼蘭(こくろうらん)()みは(さら)(ふか)まっていった。


東方連合軍(とうほうれんごうぐん)士気(しき)()()ち、人心(じんしん)(すで)離散(りさん)(はじ)めていた。各勢力(かくせいりょく)(ほとん)(すべ)てが退路(たいろ)(もと)(はじ)めていたのである。


黒家軍(こくけぐん)士気(しき)高揚(こうよう)し、四转(してん)强者(きょうしゃ)たちが続々(ぞくぞく)と出陣(しゅつじん)()う。


黒楼蘭(こくろうらん)()みを()かべて、()れぞれに(ゆる)しを(あた)えた。


()もなく、両軍(りょうぐん)陣前(じんぜん)十二(じゅうに)戦圏(せんけん)形成(けいせい)された。


(われ)こそは潘平(はんぺい)()(やいば)()ける(もの)はおらぬか!」


潘平(はんぺい)気焔(きえん)(てん)()かんばかりに、黒楼蘭(こくろうらん)(ゆる)しを()十三人目(じゅうさんにんめ)出戦者(しゅっせんしゃ)となった。


(しか)東方余亮(とうほうよりょう)沈黙(ちんもく)(つづ)けた。


(たたか)()(とき)(いた)るまで、(かれ)麾下(きか)四转蛊師(してんこし)(おお)(たお)れ、(のこ)强者(きょうしゃ)たちも前瞻後顧(ぜんちょうこう)して消極的(しょうきょくてき)(はたら)き、面従腹背(めんじゅうふくはい)態度(たいど)()(もの)(すく)なくなかった。


盟約締結(めいやくていけつ)(おり)各勢力(かくせいりょく)首脳(しゅのう)知名(ちめい)強者(きょうしゃ)たちは毒誓蛊(どくせいこ)(もち)いたものの、()誓約内容(せいやくないよう)厳格(げんかく)とは()えず、依然(いぜん)として(おお)くの()(あな)存在(そんざい)していた。


盟主(めいしゅ)(いえ)(いえど)も、他部族(たぶぞく)(みずか)れの戦車(せんしゃ)(しば)()けようと(のぞ)むも、他勢力(たせいりょく)(おろ)かでは()い。(ゆえ)毒誓(どくせい)内容(ないよう)は、幾世代(いくせだい)にも(わた)調整(ちょうせい)()確立(かくりつ)されたものなのである。


(ここ)潘平(はんぺい)(いど)みを()けるに(およ)び、東方余亮(とうほうよりょう)(おの)()(もと)(つか)()せる(しょう)()きことを(さと)った。


(かれ)(しば)沉吟(ちんぎん)した(のち)(つい)(ひと)つの指令(しれい)(くだ)した。


(なん)ですって?東方盟主(とうほうめいしゅ)父上(ちちうえ)出陣(しゅつじん)(めい)じられただと!?」


城壁(じょうへき)(うら)にある陣営(じんえい)で、唐方(とうほう)眼前(がんぜん)伝令使(でんれいし)()にし、顔色(かおいろ)(くも)らせ、()には(ほのお)()やさんばかりの(いか)りを()かべた。


(さき)(たたか)いにおいて、唐家(とうけ)族長(ぞくちょう)一族(いちぞく)退却(たいきゃく)掩護(えんご)するため、黒家(こくけ)二人(ふたり)四转蛊師(してんこし)包囲攻撃(ほういこうげき)()け、重傷(じゅうしょう)()っていた。その(あと)(とこ)()して(やまい)()えず、十分(じゅうぶん)休養(きゅうよう)()れていない状態(じょうたい)だった。


()れは盟主(めいしゅ)御命令(ごめいれい)である。唐家(とうけ)命令(めいれい)(そむ)くお()もりか?貴家(きか)族長(ぞくちょう)重傷(じゅうしょう)病床(びょうしょう)()していることは承知(しょうち)している。(しか)病床(びょうしょう)族長(ぞくちょう)など(いく)らでも()る。盟主(めいしゅ)命令(めいれい)()け、()れでも出陣(しゅつじん)した(もの)(すく)なくない。」


使者(ししゃ)強硬(きょうこう)口調(くちょう)で、唐方(とうほう)()()には露骨(ろこつ)蔑視(べっし)(いろ)()かんでいた。


貴様(きさま)!」唐方(とうほう)激怒(げきど)して(ひく)(うな)った。「奴等(やつら)仮病(けびょう)使(つか)っているんだ!父上(ちちうえ)負傷(ふしょう)正真正銘(しょうしんしょうめい)だ!」


()めよ、三郎(さぶろう)。もう()うな」 その(とき)顔色(かおいろ)蒼白(そうはく)にした唐家族長(とうかぞくちょう)(あらわ)れた。「此度(こたび)(たたか)い、()唐家(とうけ)族長(ぞくちょう)として、(みずか)出陣(しゅつじん)するは責務(せきむ)である」


「ふん、命令(めいれい)()()れれば()しい」 東方家(とうほうけ)使者(ししゃ)(つめ)たい鼻息(はないき)()らすと、(そで)(はら)って()っていった。


「だが父上(ちちうえ)()のお(からだ)は……」 唐方(とうほう)心中(しんちゅう)には不安(ふあん)渦巻(うずま)いていた。


(かま)わぬ」 唐家(とうけ)族長(ぞくちょう)()(かた)をぽんと(かろ)(たた)いた。「()数日(すうじつ)十分(じゅうぶん)養生(ようじょう)した(ゆえ)(きず)八分目(はちぶめ)ほど()えておる。今日(きょう)一戦(いっせん)が、両軍(りょうぐん)最後(さいご)(たたか)いとなるであろう。出陣(しゅつじん)せねば、体面(たいめん)()たぬ。(いわ)んや一族(いちぞく)全体(ぜんたい)にとって、(がい)の方が(おお)いのだからな」


唐方(とうほう)()()(しば)りながら()った。「では父上(ちちうえ)、どうかご無事(ぶじ)で。姉上(あねうえ)(いま)敵方(てきがた)()(なか)にあります。機会(きかい)がございましたら……」


「うむ、(ちから)(およ)(かぎ)(つと)めよう」唐家(とうけ)族長(ぞくちょう)(かす)かに(まゆ)をひそめ、陣営(じんえい)から(はず)()た。


(かれ)城壁(じょうへき)(のぼ)り、東方余亮(とうほうよりょう)対面(たいめん)した(のち)戦場(せんじょう)(くだ)潘平(はんぺい)激戦(げきせん)()(ひろ)げた。


唐方(とうほう)城壁(じょうへき)(うえ)()ち、(ちち)姿(すがた)(かた)()つめ(つづ)けた。


(わか)族長(ぞくちょう)殿(どの)、ご安心(あんしん)あれ。族長様(ぞくちょうさま)には(いま)余毒(よどく)(のこ)るも、今日(きょう)一戦(いっせん)平素(へいそ)(こと)なり、(みな)手加減(てかげん)(くわ)えておりますゆえ」唐家(とうけ)家老(かろう)一人(ひとり)(なぐさ)めるように()った。


唐方(とうほう)(ちち)潘平(はんぺい)互角(ごかく)(わた)()い、不発(ふはつ)()わる様子(ようす)()て、内心(ないしん)不安(ふあん)幾分(いくぶん)(やわ)らいだ。


(しか)るに()(とき)潘平(はんぺい)突然(とつぜん)爆発(ばくはつ)的な(うご)きを()せ、(こし)()いた彎刀(わんとう)()(はな)った。


衆人(しゅうじん)()には、(きら)めく白光(はくこう)一瞬(いっしゅん)(ひらめ)()るのが()えただけだった。


(あらた)めて()()らすと、唐家(とうけ)族長(ぞくちょう)首級(しゅきゅう)()び、(からだ)()(たお)れていた。


父上(ちちうえ)――!!」


唐方(とうほう)呆然(ぼうぜん)()(つく)すこと(しば)し、その(のち)悲痛(ひつう)(きわ)まりない(さけ)(ごえ)()げた。


()異変(いへん)(あま)りにも(すば)やく発生(はっせい)した(ため)双方(そうほう)とも数息(すうそく)(あいだ)驚愕(きょうがく)(しば)られ、()(のち)(いた)ってようやく喧騒(けんそう)()()こった。


唐家(とうか)族長(ぞくちょう)唐幽(とうゆう)()潘平(はんぺい)()()ったり!」


潘平(はんぺい)()()えた眼光(がんこう)(かがや)かせ、片手(かたて)唐家(とうか)族長(ぞくちょう)首級(しゅきゅう)(かか)げ、興奮(こうふん)(こえ)()()げた。


唐方(とうほう)眼前(がんぜん)()(くら)となり、其場(そのば)卒倒(そっとう)した。


(いま)(なに)だっ?」


一筋(ひとすじ)(ひかり)()えただけだ。()ぎて全然(ぜんぜん)()えなかったぞ」


「あれは()なのか?それとも潘平(はんぺい)(おく)()か?」


潘平(はんぺい)同格(どうかく)強者(きょうしゃ)瞬殺(しゅんさつ)したことで、一瞬(いっしゅん)にして戦場(せんじょう)焦点(しょうてん)()した。終始(しゅうし)瞑目(めいもく)養神(ようしん)していた方源(ほうげん)でさえ、(かす)かに眼帘(がんれん)見開(みひら)き、(かれ)()けて注視(ちゅうし)眼差(まなざ)しを()けた。


北原(ほくげん)()広漠(こうばく)として、百戦(ひゃくせん)()(しょう)される。数多(あまた)(たたか)いが、次々(つぎつぎ)と強者(きょうしゃ)(きた)()げてきた。此等(これら)強者(きょうしゃ)たちは、(つね)人知(じんち)れざる秘蔵(ひぞう)()(だん)温存(おんそん)しているものだ。


潘平(はんぺい)四转蛊師(してんこし)とはいえ、元来(がんらい)地味(じみ)存在(そんざい)で、同格(どうかく)蛊師(こし)(なか)でも目立(めだ)(ほう)ではなかった。(しか)此度(こたび)一戦(いっせん)唐家(とうけ)族長(ぞくちょう)(しかばね)()(だい)に、()()(とど)ろかせることとなった。


潘平(はんぺい)得意満面(とくいまんめん)()(とき)()げて帰還(きかん)した。


黒楼蘭(こくろうらん)哄笑(こうしょう)しながら、(ただ)ちに(みずか)らの酒杯(しゅはい)(くだ)すよう(めい)じ、杯中(はいちゅう)美酒(びしゅ)潘平(はんぺい)(たま)わった。


盟主様(めいしゅさま)賜物(たまもの)感謝(かんしゃ)(いた)します!」


潘平(はんぺい)王帳(おうちょう)昂然(こうぜん)()ち、(つき)中身(なかみ)一息(ひといき)()()すと、眼光(がんこう)(ひと)()りみて、意気(いき)(さか)んである。


(かれ)()蛊虫(こちゅう)()にしたのは、(まった)くの偶発(ぐうはつ)であっ た。()(とき)(いく)つかの大部族(だいぶぞく)(ひら)いた(いち)で、(かれ)()彎刀(わんとう)精緻(せいち)(つく)りに()かれて購入(こうにゅう)し、玩器(がんき)として(たずさ)えていた。


(しか)想定外(そうていがい)にも、玩賞(がんしょう)する(うち)に、(かれ)彎刀(わんとう)(かく)された秘密(ひみつ)発見(はっけん)する。刀身(とうしん)一筋(ひとすじ)冷光(れいこう)(はし)っており、()れが(なん)神秘(しんぺい)蛊虫(こちゅう)であったのだ。


潘平(はんぺい)辛苦惨憺(しんくさんたん)(すえ)(ようや)()蛊虫(こちゅう)煉化(れんか)することに成功(せいこう)した。()名称(めいしょう)不詳(ふしょう)ながら、()鋭鋒(えいほう)幾度(いくど)となく強敵(きょうてき)()()せ、(かれ)最大(さいだい)切札(きりふだ)となった。


此度(こたび)王庭争(おうていあらそ)いに、(かれ)(おお)いなる期待(きたい)()せている。


元来(がんらい)黒家(こくけ)東方軍(とうほうぐん)第一戦(だいいっせん)(おり)(かれ)()(さき)(すす)()先鋒(せんぽう)志願(しがん)していた。当時(とうじ)から、()()駆使(くし)し、衆目(しゅうもく)(まえ)強敵(きょうてき)()()たし、一戦(いっせん)にして()()げようと画策(さくさく)していたのである。


(しか)るに唐妙鳴(とうみょうめい)は、狼王常山陰(ろうおうじょうさんいん)名指(なざ)しで挑戦(ちょうせん)し、潘平(はんぺい)鬱憤(うっぷん)()めさせる結果(けっか)となった。


(さら)(かれ)(なや)ませたのは、方源(ほうげん)常道(じょうどう)(はず)れ、直接(ちょくせつ)()()し、両軍(りょうぐん)全面戦争(ぜんめんせんそう)(みちび)いたことであった。これにより、将兵挑戦(しょうへいちょうせん)段取(だんど)りが完全(かんぜん)省略(しょうりゃく)されてしまった。


潘平(はんぺい)(なが)らく()()びていた好機(こうき)は、(かく)(ごと)水泡(すいほう)()した。その(あと)激戦(げきせん)も、(かれ)(のぞ)んだ舞台(ぶたい)とは程遠(ほどとお)いものであった。


(しか)今日(きょう)一戦(いっせん)で、(つい)にして好機(こうき)(つか)()た。唐家(とうけ)族長(ぞくちょう)唐幽(とうゆう)は、(はや)くから()()せた人物(じんぶつ)である。此度(こたび)(たたか)いにより、()地位(ちい)瞬時(しゅんじ)急騰(きゅうとう)し、黒家(こくけ)随一(ずいいち)戦将(せんしょう)とまで()われるように()った。(なに)()っても、水魔(すいま)浩激流(こうげきりゅう)は、風魔(ふうま)()()たせずにいる。狼王常山陰(ろうおうじょうさんいん)(いた)っては、奴道蛊師(ぬどうこし)であるから、比較(ひかく)対象(たいしょう)(はず)れだ……」


潘平(はんぺい)周囲(しゅうい)見渡(みわた)すと、人々(ひとびと)の()(せん)(あき)らかに()わっているのを(かん)じ、心中(しんちゅう)快感(かいかん)(さら)濃密(のうみつ)になっていった。


()れが(くも)(うえ)身分(みぶん)というものか。ふふ、何時(いつ)(かなら)ず、()潘平(はんぺい)()北原中(ほくげんじゅう)(とどろ)(わた)るのだ!」


(かれ)(こころ)(うち)(さけ)(つづ)けていた。














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