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蛊真人  作者: 魏臣栋
魔头乱世
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第一百零九節:狼王的狠辣

(たたか)いは(つづ)く。


東方余亮(とうほうよりょう)全力(ぜんりょく)出撃(しゅつげき)により、(みっ)つの精鋭部隊(せいえいぶたい)壊滅(かいめつ)した(のち)東方部族連合軍(とうほうぶぞくれんごうぐん)(あき)らかな優位(ゆうい)()った。


()て! 蹴散(けち)らせ!」


黒家(こくけ)(いぬ)どもを一匹(いっぴき)(のこ)らず(ほふ)()くせ!」


(おとこ)皆殺(みなごろ)し、(おんな)戦利品(せんりひん)として()陣営(じんえい)(うば)()め!」


東方連合軍(とうほうれんごうぐん)士気(しき)(たか)まり、攻勢(こうせい)激烈(げきれつ)(きわ)め、黒家連合軍(こくかれんごうぐん)(いき)もつけぬほど()しまくられた。


(しか)し、()状況(じょうきょう)(まね)いた張本人(ちょうほんにん)である東方余亮(とうほうよりょう)心中(しんちゅう)には、不安(ふあん)渦巻(うずま)いていた。


此刻(こくさ)(いきお)(さか)んなりと(いえど)も、()(かた)早期(そうき)に切り(きりふだ)()()した結果(けっか)()ぎぬ。殺招(さっしょう)七星灯(しちせいとう)持続(じぞく)(なが)からず、()()(のが)せば黒楼蘭(こくろうらん)常山陰(じょうさんいん)を引きずり()せぬ(おそ)れが…」


()れを(おも)(いた)り、東方余亮(とうほうよりょう)双眸(そうぼう)には鮮烈(せんれつ)寒光(かんこう)(ほとばし)った。


()(とお)(ごと)()(ひとみ)黒家(こくけ)本陣(ほんじん)()けられ、其処(そこ)鎮座(ちんざ)する黒旗精兵(こっきせいへい)()がれた。()精鋭部隊(せいえいぶたい)(ほか)圧倒(あっとう)する戦力(せんりょく)(ゆう)し、戦局(せんきょく)()段階(だんかい)(いた)るまで、()貴重(きちょう)戦力(せんりょく)(つね)温存(おんぞん)され、全軍(ぜんぐん)陣脚(じんきゃく)()さえていたのである。


(つづ)けて東方余亮(とうほうよりょう)視線(しせん)(てん)じ、戦場(せんじょう)()一角(いっかく)凝視(ぎょうし)した。


其処(そこ)には葛家(かつか)一族(いちぞく)蛊師(こし)たちが集結(しゅうけつ)し、葛光(かっこう)らは血戦(けっせん)()(ひろ)げていた。


東方余亮(とうほうよりょう)無表情(むひょうじょう)のまま、星念(せいねん)(くも)二分割(にぶんかつ)した。一方(いっぽう)黒旗精兵(こっきせいへい)()けて侵攻(しんこう)し、他方(たほう)天空(てんくう)から葛家部族(かっかぶぞく)目掛(めざ)して(おそ)いかかった。


星雲(せいうん)来襲(らいしゅう)()にした黒旗軍(こっきぐん)三人(さんにん)統領(とうりょう)顔色(かおいろ)一変(いっぺん)させた。


防備(ぼうび)(かた)めよ!全軍(ぜんぐん)一斉(いっせい)戦念蛊(せいねんこ)催動(さいどう)せよ!」


大統領(だいとうりょう)一声(いっせい)のもと、黒旗軍(こっきぐん)(すべ)ての頭目(とうもく)たちが必死(ひっし)戦念蛊(せいねんこ)発動(はつどう)した。


戦念蛊(せいねんこ)は、星念蛊(せいねんこ)空念蛊(くうねんこ)同様(どうよう)智道蛊虫(ちどうこちゅう)(ひと)つである。黒旗精兵(こっきせいへい)大小(だいしょう)首領(しゅりょう)たちは、三转(さんてん)から四转(してん)戦念蛊(せいねんこ)装備(そうび)されていた。


此等(これら)戦念蛊(せいねんこ)本来(ほんらい)黒旗精兵(こっきせいへい)身上(しんじょう)作用(さよう)する。交戦(こうせん)()には戦念(せいねん)()脳裏(のうり)奔流(ほんりゅう)し、滔天(とうてん)戦意(せんい)不敵(ふてき)勇気(ゆうき)(もたら)す。


星念(せいねん)(くも)襲来(しゅうらい)する(なか)黒旗軍(こっきぐん)上空(じょうくう)には赤紅(せきこう)(ねん)渦巻(うずま)()がった。


()戦念(せいねん)は、(まば)らではあるが、黒旗精兵(こっきせいへい)()()くようにして(まも)り、(かろ)うじて星念(せいねん)(くも)衝撃(しょうげき)(ふせ)()った。


流石(さすが)超弩級(ちょうどきゅう)家族(かぞく)黒家(こくけ)育成(いくせい)する精兵(せいへい)素質(そしつ)は、(ほか)部族(ぶぞく)精兵(せいへい)とは格段(かくだん)()がある。同輩(どうはい)(はる)かに凌駕(りょうが)している。」


()光景(こうけい)()にした方源(ほうげん)も、心中(しんちゅう)(あん)賞賛(しょうさん)した。


此等(これら)黒旗精兵(こっきせいへい)は、黒家(こくけ)平素(へいそ)より()()なき蓄積(ちくせき)(かさ)ね、厳選(げんせん)厳選(げんせん)(かさ)ねた精鋭(せいえい)蛊師(こし)より()り、(さら)膨大(ぼうだい)訓練(くんれん)莫大(ばくだい)投資(とうし)(もっ)(きた)()げられた切り(きりふだ)戦力(せんりょく)である。


彼等(かれら)(ひと)(ひと)りが鋼鉄(こうてつ)(ごと)意志(いし)(ゆう)し、元来(がんらい)(ねん)衝撃(しょうげき)(たい)する耐性(たいせい)(そな)えている。(いま)戦念(せいねん)包囲(ほうい)されながらも、星念(せいねん)(くも)戦場(せんじょう)肆虐(しがく)する(なか)(はじ)めて()進撃(しんげき)(はば)まれた。


無論(むろん)()(なか)には決定的(けっていてき)要因(よういん)として、東方余亮(とうほうよりょう)全力(ぜんりょく)()さず、星雲(せいうん)二分(にぶん)して(なか)ばのみを(もっ)黒旗軍(こっきぐん)衝撃(しょうげき)した事実(じじつ)存在(そんざい)する。


黒旗軍(こっきぐん)驚異的(きょういてき)活躍(かつやく)は人々(ひとびと)の()見張(みは)らせ、(ほか)潰走(かいそう)した精兵(せいへい)鮮明(せんめい)対照(たいしょう)()して()せつけた。


一方(いっぽう)葛家(かっか)陣営(じんえい)では悲鳴(ひめい)相次(あいつ)ぎ、浩蕩(こうとう)たる星念(せいねん)打撃(だげき)(もと)潰滅(かいめつ)危機(きき)(ひん)していた。


方源(ほうげん)冷眼(れいがん)()って()光景(こうけい)傍観(ぼうかん)し、狼顧蛊(ろうここ)絶妙(ぜつみょう)(きわ)みに駆使(くし)して、葛家(かっか)惨状(さんじょう)鮮明(せんめい)(とら)えていた。


葛家(かっか)所詮(しょせん)(かれ)身分(みぶん)偽装(ぎそう)する(ため)(こま)()ぎない。棋手(きしゅ)たる(もの)が、(ひと)つの(こま)(ため)危険(きけん)()(さら)(はず)がなかろう。


(いま)出撃(しゅつげき)せぬか……」


東方余亮(とうほうよりょう)辛抱強(しんぼうづよ)片時(かたとき)()ち、()()なく偵察蛊(ていさつこ)催動(さいどう)(つづ)けていた。仮令(たとえ)方源(ほうげん)(かす)かでも救援(きゅうえん)(うご)きを()せれば、魂魄(こんぱく)波動(はどう)(かい)して正確(せいかく)()位置(いち)捕捉(ほそく)できる算段(さんだん)であった。


(しか)(かれ)()てど()らせど、方源(ほうげん)出撃(しゅつげき)(つい)()かった。


狼王(ろうおう)冷徹冷酷(れいてつれいこく)ぶりは、東方余亮(とうほうよりょう)にも一筋(ひとすじ)戦慄(せんりつ)(はし)らせた。


一方(いっぽう)黒楼蘭(こくろうらん)自軍(じぐん)黒旗軍(こっきぐん)(ささ)えきれなくなりつつある状況(じょうきょう)看過(かんか)できず、電光(でんこう)(ごと)()けつけた。


東方余亮(とうほうよりょう)覚悟(かくご)しろ!」


(かれ)咆哮(ほうこう)底力(そこぢから)()ち、反噬(はんせい)による内傷(ないしょう)(すで)()えたようだった。


東方余亮(とうほうよう)冷笑(れいしょう)(とも)(はな)()らし、頭脳(ずのう)から滾々(こんこん)と()()でる(あたら)しい星念(せいねん)奔流(ほんりゅう)黒楼蘭(こくろうらん)にぶつけた。二人(ふたり)空中(くうちゅう)激突(げきとつ)(たが)いに(から)()い、(しば)しの(あいだ)優劣(ゆうれつ)()かなかった。


黒楼蘭(こくろうらん)撹乱(かくらん)により、黒旗軍(こっきぐん)葛家(かっか)(くる)しめていた星念(せいねん)後方支援(こうほうしえん)()たれ、一時的(いちじてき)()(くる)った(のち)虚空(こくう)()()せた。


戦場(せんじょう)一時的(いちじてき)混乱(こんらん)()て、(ふたた)膠着状態(こうちゃくじょうたい)(もど)った。


十数(じゅうすう)四转戦圏(してんせんけん)(うち)小半(しょうはん)(すで)勝敗(しょうはい)()している。四转强者(してんきょうしゃ)たちは死傷(ししょう)し、其中(そのなか)風魔(ふうま)水魔(すいま)(いま)(たが)いに(から)()っている。影劍客(えいけんかく)辺絲軒(へんしけん)飛電(ひでん)東破空(とうはくう)二人(ふたり)は、戦場(せんじょう)縦横(じゅうおう)()()けている。


()二人(ふたり)強力(きょうりょく)移動蛊(いどうこ)(ゆう)しており、仮令(たとえ)四转蛊師(してんこし)攔截(らんせい)されようとも、容易(ようい)()(ひるがえ)して脱出(だっしゅつ)する。


彼等(かれら)()()なく方源(ほうげん)蹤影(しょうえい)(さが)(もと)めているが、()しむらくは方源(ほうげん)(つね)(ひそ)(つづ)け、()()さない(ため)()探索(たんさく)到頭(とうとう)成果(せいか)()()ていない。


一方(いっぽう)逆雨福地(ぎゃうふくち)では、二人(ふたり)蛊仙(こせん)——(おとこ)(おんな)相対(あいたい)而坐()し、(ちゃ)(たしな)みながら石桌(せきさく)中央(ちゅうおう)()煙影(えんえい)(なが)めていた。


煙影(えんえい)は滾々(こんこん)と(ひるがえ)り、黒家(こくけ)東方家(とうほうけ)大戦(たいせん)鮮明(せんめい)(うつ)()しており、微細(びさい)(いた)るまで明瞭(めいりょう)(うかが)うことができた。


女蛊仙(おんなこせん)譚碧雅(たんへきが)視線(しせん)(てん)じ、男蛊仙(おとここせん)東方長凡(とうほうちょうぼん)()かって()みを()かべて()った。「()大戦(たいせん)行方(ゆくえ)は、依然(いぜん)として東方余亮(とうほうよりょう)黒楼蘭(こくろうらん)一騎打(いっきう)ちに()っているようですね。一方(いっぽう)勝利(しょうり)すれば、()(ぐん)優位(ゆうい)()つ。東方余亮(とうほうよりょう)若者(わかもの)はなかなかのもの、(あき)らかに軍勢(ぐんぜい)黒家(こくけ)(おと)っているのに、()(よう)膠着状態(こうちゃくじょうたい)()()すとは、長凡兄(ちょうぼんけい)薫陶(くんとう)()(むす)んでいるのでしょう。」


東方長凡(とうほうちょうぼん)高冠(こうかん)古風(こふう)面差(おもざ)し、双眸(そうぼう)には(つね)数百(すうひゃく)(しゅ)琉璃(るり)(ひかり)(またた)いている。東方家(とうほうけ)唯一(ゆいいつ)智道蛊仙(ちどうこせん)として、(かれ)(あわ)(かし)()り、(つめ)たい口調(くちょう)(かた)った。


(じつ)()えば、(わたし)東方余亮(とうほうよりょう)指導(しどう)したのは、(ふた)()つの言葉(ことば)だけだ。しかし()若者(わかもの)(たし)かに(すぐ)れており、独自(どくじ)(かんが)えを()っている。帰還(きかん)()、大々(だいだいてき)宣伝(せんでん)し、(わたし)威光(いこう)()りて見事(みごと)地位(ちい)(きず)()げた。(いく)ばくかの素質(そしつ)があり、(つと)めを()しまぬ。(すで)(かれ)約束(やくそく)した。王庭(おうてい)()ることを()()げれば、其妹(そのいもうと)(やまい)治療(ちりょう)し、後継者(こうけいしゃ)一人(ひとり)として(そだ)てることを。」


王庭入(おうていい)りですって?」


譚碧雅(たんへきが)(すこ)(おどろ)き、(かろ)(わら)いながら()った。「(せつ)ですが一言(ひとこと)(もう)()げますと、此度(こたび)王庭争(おうていあらそ)いにおいて、東方部族(とうほうぶぞく)勝算(しょうさん)(おお)きくはないかと。今年(ことし)優勝候補(ゆうしょうこうほ)(なか)では、耶律家(やりつけ)耶律桑(やりつそう)圧倒的(あっとうてき)支持(しじ)されています。今回(こんかい)耶律家(やりつけ)太上家老(たいじょうかろう)耶律莱(やりつらい)(ひそ)かに仙蛊(せんこ)耶律桑(やりつそう)寄託(きたく)したことは、業界内(ぎょうかいない)では周知(しゅうち)事実(じじつ)でございますよ。」


耶律家(やりつけ)(いえど)黄金(おうごん)血脈(けつみょう)()き、北原(ほくげん)有数(ゆうすう)超級家系(ちょうきゅうかけい)(ひと)つであるが、(すで)八連続(はちれんぞく)王庭(おうてい)()りを()たせていない。()(ゆえ)に、耶律莱(やりつらい)先日(せんじつ)黒家(こくけ)黒城(こくじょう)から公衆(こうしゅう)面前(めんぜん)嘲笑(ちょうしょう)()びせられた。今回(こんかい)仙蛊(せんこ)(うご)かしたのも、()面目(めんぼく)挽回(ばんかい)せんが(ため)であろう。」


東方長凡(とうほうちょうぼん)()(かた)()えると、(かろ)(わら)いを()らした。()笑声(しょうせい)には一片(いっぺん)蔑視(べっし)(にじ)んでいるようであった。


譚碧雅(たんへきが)一口(ひとくち)(ちゃ)()ると、()べた。「ふむ、黒城(こくじょう)()えば、黒楼蘭(こくろうらん)(かれ)第二十七(だいにじゅうなな)(ぼう)()んだ実子(じっし)ですわ。(なさ)(ことわり)的に(てき)()て、(かれ)(かげ)(おお)きく支援(しえん)するのは必定(ひつじょう)(ゆえ)黒楼蘭(こくろうらん)主要(しゅよう)優勝候補(ゆうしょうこうほ)(ひと)つです。歴代(れきだい)王庭争(おうていあらそ)いとやら、所詮(しょせん)(いく)つかの黄金家系(おうごんかけい)による競争遊戯(きょうそうゆうぎ)()ぎませぬ。(だれ)王庭主(おうていぬし)()るかは、背後(はいご)勢力(せいりょく)支持(しじ)(きわ)めて重要(じゅうよう)です。(もう)せば、黒楼蘭(こくろうらん)勝算(しょうさん)は、東方余亮(とうほうよりょう)より(はる)かに(おお)きいと(ぞん)じます。」


東方長凡(とうほうちょうぼん)は、ゆったりと(かし)()った。


()様子(ようす)()て、譚碧雅(たんへきが)(ひとみ)一筋(ひとすじ)の興味津々(きょうみしんしん)の(かがや)きが(はし)った。「(なん)ですと? まさか長凡兄(ちょうぼんけい)(ひそ)かに東方余亮(とうほうよりょう)仙蛊(せんこ)護身(ごしん)として(あた)えたのでしょうか? (ある)いは(なに)仕組(しく)みを(もう)けて、東方余亮(とうほうよりょう)王庭入(おうていい)りを保証(ほしょう)しているのですか?」


智道蛊師(ちどうこし)謀略(ぼうりゃく)(さい)については、蛊仙(こせん)たちは()()みて体感(たいかん)しているか、(ある)いは(はや)くから(うわさ)()いていた。智道蛊師(ちどうこし)(かず)(きわ)めて稀少(きしょう)であり、東方長凡(とうほうちょうぼん)北原(ほくげん)名高(なだか)智道蛊師(ちどうこし)である。()(かれ)(ひそ)かに()(まわ)しているならば、王庭之争(おうていのあらそい)不文律(ふぶんりつ)公然(こうぜん)(やぶ)らない(かぎ)り、東方余亮(とうほうよりょう)には(おお)いに活路(かつろ)(ひら)けることであろう。


しかし東方長凡(とうほうちょうぼん)譚碧雅(たんへきが)推測(すいそく)否定(ひてい)した。「(いな)(いな)此度(こたび)王庭争奪戦(おうていそうだつせん)は、馬家(ばか)(いきお)いが(つよ)く、(すで)片足(かたあし)王庭主位(おうていしゅい)()けていると()えよう。()東方長凡(とうほうちょうぼん)が、無駄骨(むだぼね)()真似(まね)をしよう(はず)がなかろう?」


(かれ)東方長凡(とうほうちょうぼん)は、()いの(きわ)みに(たっ)し、余命(よめい)幾何(いくばく)もない。


(みずか)らの死期(しき)(ちか)いことを(さと)った(かれ)は、一族(いちぞく)(ため)、そして(みずか)らの継承(けいしょう)()えぬ(ため)に、急務(きゅうむ)後継者(こうけいしゃ)選定(せんてい)育成(いくせい)であると(かんが)えた。王庭主(おうていぬし)()は、(ふた)(つぎ)でしかない。


全て(すべ)ての蛊師(こし)が、智道蛊虫(ちどうこちゅう)一揃(ひとそろ)(そろ)えば智道蛊師(ちどうこし)()れる(わけ)ではない。東方余亮(とうほうよりょう)天賦(てんぷ)(さい)は、東方長凡(とうほうちょうぼん)大変(たいへん)満足(まんぞく)させると(とも)に、(ひそ)かに警戒(けいかい)せざるを()なかった。そして(かれ)(さら)満足(まんぞく)させたのは、東方余亮(とうほうよりょう)病弱(びょうじゃく)修行(しゅぎょう)不可能(ふかのう)実妹(じつまい)()たことであった。


()れが東方余亮(とうほうよりょう)致命的(ちめいてき)弱点(じゃくてん)であり、此処(ここ)()さえておけば、(かれ)忠誠心(ちゅうせいしん)(うたが)必要(ひつよう)はない。


王庭争(おうていあらそ)いは、(かれ)東方余亮(とうほうよりょう)仕掛(しか)けた(わな)()ぎない。


東方余亮(とうほうよりょう)失敗(しっぱい)した(あと)(いもうと)(ため)(かなら)(すく)いを(もと)めて(おとず)れて()るだろう。()れは(みずか)(よわ)みを()()(よう)なものだ。


(たと)東方余亮(とうほうよりょう)幸運(こううん)にも成功(せいこう)したとしても、それは予想外(よそうがい)(よろこ)びでしかない。(たし)かに(いもうと)治療(ちりょう)約束(やくそく)はしたが、結局(けっきょく)完治(かんち)させる(わけ)ではあるまい。


譚碧雅(たんへきが)(おお)きく(おどろ)いた。「(なん)ですって?長凡兄(ちょうぼんけい)、まさか馬家(ばか)()っておいでですの?馬家(ばか)(たし)かに大規模(だいきぼ)家系(かけい)で、表立(おもてだ)てた軍勢(ぐんぜい)(たし)かに見事(みごと)ですが、馬家(ばか)には太上家老(たいじょうかろう)となる蛊仙(こせん)一人(ひとり)()りませんわ。」


東方長凡(とうほうちょうぼん)は、()()いを()(かま)っていたように、悠然(ゆうぜん)(こた)えた。「碧雅小妹(へきがしょうまい)(きみ)()らぬところではあるが、大雪山福地(だいせつざんふくち)(ひそ)かに馬家(ばか)連絡(れんらく)()り、(くら)がりから彼等(かれら)支援(しえん)している。」


大雪山福地(だいせつざんふくち)()えば、()魔道蛊仙(まどうこせん)どもの?」


譚碧雅(たんへきが)表情(ひょうじょう)一瞬(いっしゅん)(けわ)しくなった。()(しら)せは彼女(かのじょ)(すく)なからぬ衝撃(しょうげき)(あた)えた。


彼女(かのじょ)東方長凡(とうほうちょうぼん)凝視(ぎょうし)して()()めた。「長凡兄貴(ちょうぼんあにき)一体(いったい)どうやって()情報(じょうほう)を?」


東方長凡(とうほうちょうぼん)傲然(ごうぜん)(わら)った。「全て(すべて)は()(みずか)推演(すいえん)した結果(けっか)だ。(なんじ)(いま)最初(さいしょ)知情者(ちじょうしゃ)である。」


譚碧雅(たんへきが)(ただ)ちに七分八分(しちぶはちぶ)信憑性(しんぴょうせい)(みと)めた。東方長凡(とうほうちょうぼん)智道蛊仙(ちどうこせん)であり、(みずか)推演(すいえん)した結果(けっか)は、(ほとん)事実(じじつ)(ひと)しい。(かれ)()かれた状況(じょうきょう)も、譚碧雅(たんへきが)には筒抜(つつぬ)けであり、自分(じぶん)(あざむ)動機(どうき)()い。


(さら)に、大雪山福地(だいせつざんふくち)魔道蛊仙(まどうこせん)どもは、(むかし)から八十八角真陽楼(はちじゅうはっかくしんようろう)垂涎(すいぜん)(ねん)(いだ)いており、此度(こたび)(ひそ)かに馬家(ばか)支援(しえん)し、巨陽仙尊(きょようせんそん)継承(けいしょう)()()そうとする(よう)行為(こうい)は、過去(かこ)にも幾度(いくど)となく発生(はっせい)していた。


()れを(おも)(いた)り、彼女(かのじょ)最早(もはや)(すわ)っていられなくなった。


彼女(かのじょ)劉家(りゅうか)外姓(がいせい)太上家老(たいじょうかろう)として、(ひそ)かに劉文武(りゅうぶんぶ)支援(しえん)している。劉文武(りゅうぶんぶ)一旦(いったん)王庭(おうてい)()()れば、彼女(かのじょ)劉家(りゅうか)(ない)での地位(ちい)(おお)いに向上(こうじょう)するのである。


馬家(ばか)存在(そんざい)は、彼女(かのじょ)布石(ふせき)深刻(しんこく)(みだ)していた。()れを看過(かんか)する(わけ)にはいかない。彼女(かのじょ)()()がると()った。「長凡兄(ちょうぼんけい)()(けん)重大(じゅうだい)御座(ござ)います。魔道蛊仙(まどうこせん)どもは(みな)豺狼(さいろう)()御座(ござ)いますが、(ほか)同輩(どうはい)(いま)真相(しんそう)()らされて御座(ござ)いません。小妹(しょうまい)早速(さっそく)皆様(みなさま)にお()らせに(まい)ります。お(ゆる)(くだ)さい。」


()って(まい)れ。」


東方長凡(とうほうちょうぼん)(ゆる)やかに(うなず)き、同時(どうじ)福地(ふくち)門扉(もんぴ)(ひら)いた。


譚碧雅(たんへきが)福地(ふくち)(はな)れた(のち)東方長凡(とうほうちょうぼん)古井戸波(ふるいどなみ)(ごと)(おも)に、(はじ)めて一筋(ひとすじ)()みが(にじ)んだ。


此度(こたび)対話(たいわ)は、所詮(しょせん)(かれ)譚碧雅(たんへきが)仕掛(しか)けた(わな)()ぎなかったのである。


譚碧雅(たんへきが)(また)聡明(そうめい)蛊仙(こせん)であったが、奈何(いかん)せん局中(きょくちゅう)()りて、所望(しょもう)する(ところ)()り、自然(しぜん)輕易(きょうい)(さん)せられた。


東方長凡(とうほうちょうぼん)(ふたた)視線(しせん)煙影(えんえい)(うつ)した。()(とき)戦場(せんじょう)には(すで)変化(へんか)(あらわ)れていた。


東方余亮(とうほうよりょう)久戦(きゅうせん)(もと)次第(しだい)(ささ)えきれなくなり、()()撤退(てったい)(えら)んだ。総帥(そうすい)(いっ)たび退(しりぞ)けば、大軍(たいぐん)士気(しき)瞬時(しゅんじ)低落(ていらく)し、東方余亮(とうほうよりょう)命令(めいれい)(もと)同様(どうよう)撤退(てったい)開始(かいし)した。


()撤退(てったい)(あわ)てず(みだ)れず、(あき)らかに数多(あまた)訓練(くんれん)()んだ様子(ようす)であった。東方余亮(とうほうよりょう)(はや)くから()(てん)予見(よけん)し、(ゆえ)以前(いぜん)より撤退戦(てったいせん)(たい)し、(おお)きな心血(しんけつ)(そそ)いでいたのである。


東方軍(とうほうぐん)徐徐(じょじょ)として退(しりぞ)きつつ、時折(ときおり)反撃(はんげき)(はさ)み、黒家(こくけ)蛊師(こし)たちは(かえ)って油断(ゆだん)した(すき)に、()反撃(はんげき)によって(いのち)()とす(もの)(すく)なくなかった。


風魔(ふうま)め、()腰抜(こしぬ)野郎(やろう)()()そうと(たくら)んでいるのか?」水魔(すいま)浩激流(こうげきりゅう)は、全身(ぜんしん)(きず)だらけで()みどろになりながら怒号(どごう)した。


風魔(ふうま)()ややかに(ふん)(はな)()らしただけで、返事(へんじ)もせず沈黙(ちんもく)()後退(こうたい)(つづ)け、東方余亮(とうほうよりょう)軍令(ぐんれい)忠実(ちゅうじつ)執行(しっこう)した。


(さき)大軍(たいぐん)(きず)いた防衛線(ぼうえいせん)は、背後(はいご)数百里(すうひゃくり)地点(ちてん)存在(そんざい)する。其処(そこ)退(しりぞ)き、(しば)しの休息(きゅうそく)()さえすれば、東方連合軍(とうほうれんごうぐん)戦力(せんりょく)(すみ)やかに回復(かいふく)するであろう。


()(とき)こそ、黒家(こくけ)大軍(たいぐん)頭痛(ずつう)(たね)(かか)える(ばん)である。初戦(しょせん)不利(ふり)など、所詮(しょせん)些細(ささい)(こと)()ぎない。


(しか)るに()(とき)狼群(ろうぐん)忽然(こつぜん)として(ひと)しく()()ち、(あつ)まって(ふたた)浪潮(ろうしょう)()し、東方軍(とうほうぐん)()けて()()した突撃(とつげき)開始(かいし)した。


狼群(ろうぐん)蛊師(こし)とは(こと)なり、蛊師(こし)(いのち)()しむのに(たい)し、狼群(ろうぐん)()()れぬ。


(ごう)(ふか)い!」東方余亮(とうほうよりょう)瞋恚(しんい)(あま)(ひとみ)()かんばかりであった。狼群(ろうぐん)猛攻(もうこう)(もと)東方連合軍(とうほうれんごうぐん)無数(むすう)死傷者(ししょうしゃ)()し、恐慌(きょうこう)(じょう)(またた)()全軍(ぜんぐん)蔓延(まんえん)し、(つい)には潰走(かいそう)(いきお)いを形成(けいせい)した。


方源(ほうげん)八分(はちぶ)(ちから)()し、大師級(だいしきゅう)奴道(ぬどう)造詣(ぞうけい)は、()(もの)をして目眩(めまい)がするほどであった。次々(つぎつぎ)と()()される波状攻撃(はじょうこうげき)(まえ)に、東方軍(とうほうぐん)(どろ)(ごと)く、(おおかみ)潮流(ちょうりゅう)(あら)われて、次々(つぎつぎ)と(くず)()ちていった。


強烈(きょうれつ)魂魄(こんぱく)波動(はどう)が、方源(ほうげん)位置(いち)(あき)らかに(さら)()した。


しかし方源(ほうげん)(すで)公然(こうぜん)姿(すがた)(あらわ)しており、(ふたた)安定(あんてい)した双頭犀(そうとうさい)背中(せなか)()ち、周囲(しゅうい)には集結(しゅうけつ)した蛊師強者(こしきょうしゃ)たちが居並(いなら)んでいた。


狼王(ろうおう)常山陰(じょうさんいん)め……!」


東方余亮(とうほうよりょう)歯軋(はぎし)りしながら、両眼(りょうがん)から()()()さんばかりの(いか)りを(あら)わにした。


此度(こたび)(たたか)いで、(かれ)方源(ほうげん)陰険狠辣(いんけんこんらつ)さを骨身(ほねみ)()みて(あじ)わうこととなった。


()(かえ)れば、方源(ほうげん)直接(ちょくせつ)()()ろしたのは二度(にど)だけである。


最初(さいしょ)出手(しゅって)では、大軍(たいぐん)(うご)かして戦端(せんたん)(ひら)き、東方余亮(とうほうよりょう)数多(あまた)布石(ふせき)無駄(むだ)()させた。


(しこう)して()二度目(にどめ)出手(しゅって)は、東方軍(とうほうぐん)(もっと)脆弱(ぜいじゃく)瞬間(しゅんかん)()いたものだった。(きょ)()じて窮鼠(きゅうそ)()むが(ごと)く。()()でもなく、蛊師(こし)たちは()くも(なが)(たたか)(つづ)け、空竅(くうきょう)真元(しんげん)最早(もはや)(そこ)()いており、(いま)一戦(いっせん)(ちから)(のこ)すものの、往々(おうおう)にして野狼(やろう)相討(あいう)ちに()わる有様(ありさま)であった。


方源(ほうげん)狼群(おおかみむれ)(また)甚大(じんだい)損害(そんがい)(こうむ)った。(しか)(すで)(おお)いに採算(さいさん)()れている。(かれ)野狼(やろう)容易(ようい)補充(ほじゅう)可能(かのう)であり、北原(ほくげん)()いて野狼(やろう)()いて()てる(ほど)存在(そんざい)する!(しか)るに(たい)する(がわ)(うしな)ったのは、貴重(きちょう)蛊師(こし)生命(いのち)なのである。










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