表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
蛊真人  作者: 魏臣栋
魔头乱世
512/561

第一百零七節:可靠的盟友

東方余亮(とうほうよりょう)流石(さすが)智道蛊師(ちどうこし)()()じず、黒楼蘭(こくろうらん)反応(はんのう)見事(みごと)推算(すいさん)していた。


三心合魂(さんしんごうこん)殺招(さっしょう)(たん)なる(おとり)()ぎず、黒楼蘭(こくろうらん)主動攻撃(しゅどうこうげき)へと(いざな)()(ため)のものだった。その(あと)東方余亮(とうほうよりょう)悠然(ゆうぜん)と切り(きりふだ)開示(かいじ)した——暗渦(あんか)専用(せんよう)対抗殺招(たいこうさっしょう)である雲渦(うず)で、黒楼蘭(こくろうらん)完全(かんぜん)拘束(こうそく)したのである。


元来(もともと)王帳(おうちょう)()黒楼蘭(こくろうらん)拘束(こうそく)されたことで、方源(ほうげん)側近警護(そっきんけいご)戦力(せんりょく)急激(きゅうげき)低下(ていか)した。


()好機(こうき)(のが)さず、影劍客(えいけんかく)辺絲軒(へんしけん)猛然(もうぜん)(おそ)()かり、王帳(おうちょう)突入(とつにゅう)して(ふたた)方源(ほうげん)暗殺(あんさつ)(こころ)みた。


()方源(ほうげん)一人(ひとり)(たお)れれば、狼群(おおかみむれ)即座(そくざ)崩壊(ほうかい)し、勝利(しょうり)天秤(てんびん)東方同盟軍(とうほうどうめいぐん)(おお)いに(かたむ)くこと必定(ひつじょう)である。


斬首戦術(ざんしゅせんじゅつ)確実(かくじつ)成功(せいこう)()して、黒楼蘭(こくろうらん)影劍客(えいけんかく)のみならず、(さら)強力(きょうりょく)蛊師(こし)をも配置(はいち)していた。


()れこそが東破空(とうはくう)、「飛電(ひでん)」の異名(いみょう)()られる北原(ほくげん)随一(ずいいち)飛行大師(ひこうたいし)である。雷道蛊師(らいどうこし)として四转高階(してんこうかい)修為(しゅうい)(ゆう)し、(さき)混戦(こんせん)(ちゅう)でも()()さず、()(しの)(つづ)けてきた。(いま)こそ図窮(ずきゅう)匕首(あいくち)(あら)わるが(ごと)く、一鳴驚人(いちめいきょうじん)(とき)である。


狼王(ろうおう)(まも)れ!」


賊子(ぞくし)其方等(そちら)思惑(おもわく)(とお)さぬ!」


狼王(ろうおう)(いそ)退(しりぞ)け!」


王帳(おうちょう)周囲(しゅうい)六人(ろくにん)三转蛊師(さんてんこし)躍起(やっき)となり、(おど)()がって東破空(とうはくう)辺絲軒(へんしけん)二人(ふたり)迎撃(げいげき)せんと(こころ)みた。


退()がれ!!」


東破空(とうはくう)()ややかに一喝(いっかつ)するや、周囲(しゅうい)雷光(らいこう)(ほとば)()した。


眼前(がんぜん)(はば)三人(さんにん)蛊師(こし)雷撃(らいげき)()たれ、防禦蛊(ぼうぎょこ)瞬時(しゅんじ)破壊(はかい)され、(またた)()二人(ふたり)死亡(しぼう)一人(ひとり)重傷(じゅうしょう)()った。


「ふふふ……」


一方(いっぽう)辺絲軒(へんしけん)(かろ)嘲笑(あざわら)うと、(かげ)()けて毒蛇(どくへび)(ごと)(はば)蛊師(こし)たちの(あいだ)縦横無尽(じゅうおうむじん)()()け、わずか数秒(すうびょう)彼等(かれら)背後(はいご)(まわ)()んだ。


(なに)!?」


()(はや)さは……」


「まさしく影劍客(えいけんかく)真骨頂(しんこっちょう)か!?」


三人(さんにん)蛊師(こし)(きも)()やす思いで()(かえ)るも、辺絲軒(へんしけん)窈窕(ようちょう)とした後姿(うしろすがた)視界(しかい)(のこ)るのみであった。


()()けようとしたが、身動(みうご)きが()れないことに()づいた。手足(てあし)には幾重(いくえ)にも黒影(こくえい)(から)()き、縦横(じゅうおう)(しば)()げられているのだった。


上空(じょうくう)から東破空(とうはくう)地上(ちじょう)から影劍客(えいけんかく)という挟撃(きょうげき)()けて、方源(ほうげん)顔色(かおいろ)()え、()には(あわ)てた感情(かんじょう)()かんだ。(かれ)(あわ)てて後退(こうたい)しながら、「(はや)く、(はや)(だれ)()()れを(まも)れ!」と(さけ)んだ。


狼王(ろうおう)、ご安心(あんしん)あれ。黒绣衣(こくしゅうい)待機(たいき)しておる。」


方源(ほうげん)(そば)()最後(さいご)一人(ひとり)であった黒衣(こくい)(おとこ)は、(てつ)(ごと)表情(ひょうじょう)数歩(すうほ)(まえ)(あゆ)()し、方源(ほうげん)面前(めんぜん)()(ふさ)がった。


()(もと)めるか!」


東破空(とうはくう)大喝(たいかつ)一声(いっせい)全身(ぜんしん)雷光(らいこう)爆発的(ばくはつてき)膨張(ぼうちょう)し、戦槍(せんそう)()わって黒绣衣(こくしゅうい)目掛(めざ)けて(はげ)しく()()した。


辺絲軒(へんしけん)()ややかに(はな)(わら)うと、手首(てくび)(かろ)(ひるがえ)し、瞬時(しゅんじ)飛輪(ひりん)(ごと)剣影(けんえい)奔流(ほんりゅう)(ごと)(はな)った。


二大強者(にだいきょうしゃ)合撃(ごうげき)(むか)え、黒绣衣(こくしゅうい)表情(ひょうじょう)微動(びどう)だにせず、両掌(りょうしょう)(むね)(まえ)(つよ)合掌(がっしょう)真元(しんげん)(くる)おしく駆動(くどう)した。


(ごう)


次の瞬間(しゅんかん)(かれ)防御(ぼうぎょ)全開(ぜんかい)となった。


五十六枚(ごじゅうろくまい)飛骨盾(ひこつじゅん)同時(どうじ)飛翔(ひしょう)し、隙間(すきま)()(なら)んで()面前(めんぜん)に立ち(ふさ)がった。


一筋(ひとすじ)翠綠(すいりょく)光輪(こうりん)頭頂(ずちょう)へと()()がり、方円(ほうえん)百歩(ひゃっぽ)灼熱(しゃくねつ)(ごと)()らし()した。


黒光(こっこう)鋼鉄(こうてつ)(ごと)光沢(こうたく)(はな)ち、厚実(あつじつ)無比(むひ)甲冑(かっちゅう)()わって(かれ)全身(ぜんしん)(つつ)()んだ。


九枚(きゅうまい)(いろ)とりどりの鬼面(きめん)嗚咽哭号(おえつこくごう)(こえ)(はな)ち、()左右(さゆう)旋回(せんかい)する。


同時(どうじ)に、暗褐色(あんかっしょく)油風(ゆふう)飛骨盾(ひこつじゅん)(あいだ)鼓動(こどう)(はじ)めた。


東破空(とうはくう)雷電長槍(らいでんちそう)七枚(ななまい)飛骨盾(ひこつじゅん)射抜(いぬ)いた(のち)暗褐油風(あんかくゆふう)貫通(かんつう)するも、黒光甲冑(こっこうかっちゅう)(はば)まれた。


辺絲軒(へんしけん)剣影(けんえい)(たて)激突(げきとつ)十八枚(じゅうはちまい)(たて)粉砕(ふんさい)したが、油風(ゆふう)(さまた)げられ、剣影(けんえい)泥油(でいゆ)()まった(ごと)く、動勢(どうせい)(にわか)()え、脅威(きょうい)とは()()なかった。


黒绣衣(こくしゅうい)黒楼蘭(こくろうらん)右腕(みぎうで)として、()黒旗精兵(こっきせいへい)三人(さんにん)統領(とうりょう)一人(ひとり)であり、守備(しゅび)最得意(もっとくい)とする。


東破空(とうはくう)辺絲軒(へんしけん)守備(しゅび)専念(せんねん)する黒绣衣(こくしゅうい)面前(めんぜん)に、(しば)膠着状態(こうちゃくじょうたい)(おちい)り、突破(とっぱ)することができなかった。


黒绣衣(こくしゅうい)(さき)墨獅狂(ぼくしきょう)との対戦(たいせん)惨敗(ざんぱい)(きっ)したが、()れは実力不足(じつりょくふそく)ではなく、相手(あいて)史上(しじょう)()王庭之争(おうていのあらそい)において北原(ほくげん)随一(ずいいち)猛将(もうしょう)であった(ため)である。


(いま)飛電(ひでん)影劍客(えいけんかく)という二大強者(にだいきょうしゃ)合撃(ごうげき)(たい)し、(かれ)左右(さゆう)防御(ぼうぎょ)し、十数回(じゅうすうかい)(あい)()ても背後(はいご)方源(ほうげん)寸分(すんぶん)(すき)()(まも)()った。


(かれ)蛊虫(こちゅう)の組み(くみあ)わせは、水際立(みぎわだ)った防御(ぼうぎょ)陣形(じんけい)形成(けいせい)し、(じつ)周到(しゅうとう)考慮(こうりょ)されたものだった。


東破空(とうはくう)辺絲軒(へんしけん)幾度(いくど)突破(とっぱ)(こころ)みたが、(ことごと)(いたず)らに()わり、歯痒(はがゆ)(おも)いを(あじ)わされた。


激戦(げきせん)余波(よは)双頭犀(そうとうさい)背中(せなか)()すように(いた)み、巨犀(きょさい)(いた)さの(あま)(くる)ったように()()し、敵味方(てきみかた)(かま)わず戦場(せんじょう)(あば)(まわ)り、方々(ほうぼう)を蹂躙(じゅうりん)した。


黒绣衣(こくしゅうい)表情(ひょうじょう)一層(いっそう)(けわ)しくなった。


激烈(げきれつ)戦闘(せんとう)による真元(しんげん)消耗(しょうもう)極限(きょくげん)(たっ)し、最早(もはや)(そこ)()いていた。一方(いっぽう)相手(あいて)二人(ふたり)がかりであるため、真元(しんげん)消費(しょうひ)黒绣衣(こくしゅうい)半分(はんぶん)()んでいる。


黒绣衣(こくしゅうい)(いま)艱難(かんなん)選択(せんたく)(せま)られていた──防御(ぼうぎょ)堅持(けんじ)して真元(しんげん)()()てるまで()えるか、(ある)いは撤退(てったい)して狼王(ろうおう)危険(きけん)(さら)すか、二者択一(にしゃたくいつ)岐路(きろ)()たされていたのである。


第一(だいいち)選択(せんたく)は、真元(しんげん)消耗(しょうもう)(かえり)みず防衛線(ぼうえいせん)堅持(けんじ)し、黒楼蘭(こくろうらん)援軍(えんぐん)()の他の支援(しえん)到着(とうちゃく)するのを()つことである。(しか)双頭犀(そうとうさい)暴走(ぼうそう)して原位置(げんいち)から(とお)(はな)れている現在(げんざい)援軍(えんぐん)戦場(せんじょう)突破(とっぱ)して時機(じき)()()()ける可能性(かのうせい)()してどれ(ほど)あろうか?


第二(だいに)選択(せんたく)は、真元(しんげん)節約(せつやく)(はか)ることである。(ただ)()れでは防御(ぼうぎょ)手薄(てうす)となり、(てき)突破(とっぱ)される危険性(きけんせい)急騰(きゅうとう)する。一旦(いったん)防衛線(ぼうえいせん)(やぶ)られれば、背後(はいご)方源(ほうげん)危殆(きたい)(おちい)るであろう。


(いった)如何(いか)抉択(けっちゃく)すべきか?


黒绣衣(こくしゅうい)(ひとみ)一瞬(いっしゅん)(まよ)いの(ひかり)(はし)ったが、()もなく決意(けつい)(かた)まった。


(かれ)防御(ぼうぎょ)次第(しだい)縮小(しゅくしょう)(はじ)め、(てき)強襲(きょうしゅう)(たい)しても以前(いぜん)ほどの積極性(せっきょくせい)()せなくなった。


東破空(とうはくう)辺絲軒(へんしけん)()ぐに黒绣衣(こくしゅうい)変化(へんか)敏感(びんかん)察知(さっち)し、数回(すうかい)突破(とっぱ)(こころ)み、危機一髪(ききいっぱつ)成功(せいこう)寸前(すんぜん)まで(せま)った。


仮令(たとえ)狼王(ろうおう)存在(そんざい)戦局(せんきょく)全体(ぜんたい)(かか)わり、黒楼蘭様(こくろうらんさま)から常山陰(じょうさんいん)護衛(ごえい)(まか)されていたとしても、生死(せいし)(さかい)()たされた(いま)黒绣衣(こくしゅうい)には(おのれ)(いのち)()けてまで奮戦(ふんせん)する覚悟(かくご)などなかった。


()背後(はいご)黒楼蘭様(こくろうらんさま)がおられれば、(わたくし)(よろこ)んで()(てい)して(まも)ったでしょう。(しか)常山陰(じょうさんいん)(よそ)(もの)平素(へいそ)傲岸不遜(ごうがんふそん)(わたくし)見下(みくだ)しております。何故(なぜ)此様(かよう)(もの)(ため)犠牲(ぎせい)にならねばならないのでしょう?狼王(ろうおう)(たと)()んでも、我々(われわれ)には()黒旗軍(こっきぐん)(のこ)っており、依然(いぜん)として五分五分(ごぶごぶ)情勢(じょうせい)()らば、()有用(ゆうよう)()()かし、家族(かぞく)(ため)()くす方が()(かな)っています。」


黒绣衣(こくしゅうい)(こころ)(なか)では自己正当化(じこせいとうか)(ねん)渦巻(うずま)き、次第(しだい)に「(しか)るべし」との安心感(あんしんかん)(ひろ)がっていった。元来(がんらい)背後(はいご)方源(ほうげん)(まも)るべき立場(たちば)であったが、(いま)自己保身(じこほしん)専念(せんねん)するに(したが)い、真元(しんげん)消耗速度(しょうもうそくど)急激(きゅうげき)減速(げんそく)した。


()れぞ好機(こうき)疊影蛊(じょうえいこ)!」


突然(とつぜん)辺絲軒(へんしけん)()防御(ぼうぎょ)(ほころ)びが(うつ)った。彼女(かのじょ)双眸(そうぼう)(するど)(かがや)き、()絶好(ぜっこう)機会(きかい)(のが)さず、東方余亮(とうほうよりょう)から()()けた()猛然(もうぜん)催動(さいどう)した。


()疊影蛊(じょうえいこ)四转珍稀蛊(してんちんきこ)(ぞく)し、市場(しじょう)では滅多(めった)入手(にゅうしゅ)できず、()価格(かかく)大多数(だいたいすう)五转蛊(ごてんこ)()けを()らないほど高額(こうがく)である。


元々(もともと)辺絲軒(へんしけん)東方余亮(とうほうよりょう)と、方源(ほうげん)暗殺(あんさつ)成功(せいこう)次第(しだい)()()褒賞(ほうしょう)として(さず)かる約束(やくそく)()わしていたのである。


しかし辺絲軒(へんしけん)暗殺(あんさつ)失敗(しっぱい)し、()()けた爆脳蛊(ばくのうこ)方源(ほうげん)解決(かいけつ)された。()傲岸(ごうがん)性格(せいかく)から、自然(しぜん)()疊影蛊(じょうえいこ)()()れることを(がえん)じなかった。(しか)此度(こたび)大戦前(たいせんまえ)東方余亮(とうほうよりょう)慎重(しんちょう)()し、(みずか)(すす)んで()()()(あた)えた。


疊影蛊(じょうえいこ)は、他者(たしゃ)にとっては()だの四转蛊(してんこ)()ぎないかもしれない。(ただ)辺絲軒(へんしけん)にとっては、戦力(せんりょく)爆発的(ばくはつてき)増大(ぞうだい)させ、五转蛊(ごてんこ)よりも価値(かち)(おお)きいと()える。


疊影蛊(じょうえいこ)作用(さよう)により、辺絲軒(へんしけん)多重(たじゅう)剣影(けんえい)が次々(つぎつぎ)と(たた)()い、(またた)()空一面(そらいちめん)剣影(けんえい)一振(ひっとふ)りだけとなった。()一振(ひっとふ)りの剣影(けんえい)は、黒幽深邃(こくゆうしんすい)として、実質(じっしつ)(ごと)く、全て(すべて)の攻勢(こうせい)(たた)()わせている。


辺絲軒(へんしけん)(けん)()()ろして直刺(ちょくし)すると、その効果(こうか)驚異的(きょういてき)で、あたかも(かたな)豆腐(とうふ)()るが(ごと)く、難無(なんなく)防御線(ぼうぎょせん)貫通(かんつう)し、狼王(ろうおう)へと殺到(さっとう)した。


(なが)らく()()とせなかった防衛線(ぼうえいせん)(つい)突破(とっぱ)された!


()光景(こうけい)()にした東破空(とうはくう)安堵(あんど)(いき)をつくと、(あわ)てて黒绣衣(こくしゅうい)拘束(こうそく)し、辺絲軒(へんしけん)好機(こうき)(つく)()した。


(しか)黒绣衣(こくしゅうい)最早(もはや)()(すべ)なしと()るや、(すで)退却(たいきゃく)意思(いし)(かた)めていた。(いま)影劍客(えいけんかく)常山陰(じょうさんいん)目掛(めざ)けて突進(とっしん)する(なか)()れこそ退(しりぞ)絶好(ぜっこう)機会(きかい)と、(かれ)(いそ)いで()()(とら)えんと、双頭犀(そうとうさい)(あつ)背中(せなか)から()逆様(さかさま)()()りた。


東破空(とうはくう)呆気(あっけ)()られたように黒绣衣(こくしゅうい)逃亡(とうぼう)()にしたが、一瞬(いっしゅん)躊躇(ちゅうちょ)した(のち)狼王(ろうおう)殺害(さつがい)(いそ)ぐべきと判断(はんだん)し、仕方(しかた)なく()()見逃(みのが)すこととした。


(しか)()(かえ)って一瞥(いちべつ)するや、辺絲軒(へんしけん)影劍(えいけん)(すで)常山陰(じょうさんいん)心臓(しんぞう)(つらぬ)いているのを(みと)めた。


辺絲軒(へんしけん)一刺(ひとさ)しは(きわ)めて(ふか)く、影劍(えいけん)剣柄(つか)のみを(のこ)して方源(ほうげん)(むね)()()み、刃先(はさき)背中(せなか)から大きく()()していた。


狼王(ろうおう)(おぼ)えておけ。貴様(きさま)(ほうむ)ったのは此方(こち)ぞ、影劍客(えいけんかく)辺絲軒(へんしけん)である!」


辺絲軒(へんしけん)双瞳(そうどう)(あか)()まり、顔中(かおじゅう)欣喜(きんき)(いろ)(あふ)れていた。


北原(ほくげん)にその()(とどろ)かせた赫赫(かっかく)たる狼王(ろうおう)が、彼女(かのじょ)()()って(たお)れた。()(ほま)(たか)戦績(せんせき)は、彼女(かのじょ)全身(ぜんしん)(かす)かに戦慄(せんりつ)させる(ほど)歓喜(かんき)をもたらした。


成功(せいこう)だ!」


()光景(こうけい)()にした東破空(とうはくう)も、(まゆ)()げて(よろこ)びを(あら)わにした。


狼王(ろうおう)(たお)れれば、()(ぐん)(おお)いに優位(ゆうい)()ち、勝利(しょうり)目前(もくぜん)だ。」


遠方(えんぽう)では、偵察蛊(ていさつこ)戦況(せんきょう)注視(ちゅうし)していた東方余亮(とうほうよりょう)も、(ちから)(づよ)(こぶし)(にぎ)りしめ奮起(ふんき)した。


(かれ)(かお)()げ、(あたま)(うえ)雲渦(うず)拮抗(きっこう)する黒楼蘭(こくろうらん)見上(みあ)げながら、余裕(よゆう)のある()みを()かべて()った。「黒楼蘭(こくろうらん)常山陰(じょうさんいん)(すで)誅殺(ちゅうさつ)された。(いま)ここで()(おさ)め、敗北(はいぼく)(みと)めるなら、()れは大将(たいしょう)地位(ちい)(さず)けよう。王庭(おうてい)()りの機会(きかい)(あた)えて(つか)わす。」


(しか)(かれ)予想(よそう)(はん)し、黒楼蘭(こくろうらん)逆上(ぎゃくじょう)して怒号(どごう)(はな)つどころか、(むし)一筋(ひとすじ)獰猛(どうもう)()みを()かべた。「東方余亮(とうほうよりょう)其方(そち)狗眼(くがん)見開(みひら)いて()()てみよ!」


()瞬間(しゅんかん)双頭犀(そうとうさい)背中(せなか)からも辺絲軒(へんしけん)東破空(とうはくう)驚愕(きょうがく)(さけ)(ごえ)()がった。


「...っ!?」


東方余亮(とうほうよりょう)(むね)(つよ)不穏(ふおん)予感(よかん)()(めぐ)るのを(かん)じ、(あわ)てて偵察蛊(ていさつこ)()(なお)して凝視(ぎょうし)した。


そこには、「常山陰(じょうさんいん)」の姿(すがた)一灘(いったん)流水(りゅうすい)()わり、数匹(すうひき)()()()(なか)水跡(すいせき)(のこ)された水像蛊(すいぞうこ)が、影劍(えいけん)によって()()つに(つらぬ)かれ、首尾(しゅび)一層(いっそう)(かわ)(かろ)うじて(つな)がっているだけだった。


()水像蛊(すいぞうこ)は、(まさ)水魔(すいま)浩激流(こうげきりゅう)所有物(しょゆうぶつ)である。


(むかし)英雄大会(えいゆうたいかい)において(かれ)()水像蛊(すいぞうこ)使(つか)い、偽物(にせもの)本物(ほんもの)()せかけ、すべての人間(にんげん)(あざむ)いて火浪子(かろうし)柴明(さいめい)殺害(さつがい)していたのであった。


大戦前(たいせんまえ)方源(ほうげん)()手口(てぐち)()をつけ、黒楼蘭(こくろうらん)密議(みつぎ)()わした。情報漏洩(じょうほうろうえい)(ふせ)(ため)()配置(はいち)(とう)()(しゃ)(さん)(めい)のみが()るところであった。


方源(ほうげん)本体(ほんたい)一度(いちど)王帳(おうちょう)にはおらず、戦場(せんじょう)何処(どこ)かに潜伏(せんぷく)していた。(かれ)狼顧蛊(ろうここ)戦況(せんきょう)観察(かんさつ)し、獣群(けものむれ)指揮(しき)()っていた。先程(さきほど)黒楼蘭(こくろうらん)との対話(たいわ)も、一連(いちれん)蛊虫(こちゅう)使(つか)った偽装(ぎそう)であっった。


畜生(ちくしょう)偽物(にせもの)だったのか。」


本物(ほんもの)常山陰(じょうさんいん)何処(いずこ)にいる!?」


辺絲軒(へんしけん)東破空(とうはくう)顔色(かおいろ)()(かげ)()(くも)った。彼等(かれら)奮戦(ふんせん)した結果(けっか)は、()(だま)()られるという結末(けつまつ)であった!













評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ