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蛊真人  作者: 魏臣栋
魔头乱世
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第一百零二節:意外な驚きの盜天伝承

(あか)(みどり)(くろ)三色(さんしょく)空中(くうちゅう)(くる)おしく(から)()っていた。


()()なく()らめく(ひかり)方源(ほうげん)(ひとみ)(うつ)る。(かれ)滿臉(まんがん)集中(しゅうちゅう)(いろ)()かべ、眼前(がんぜん)半完成品(はんかんせいひん)凝視(ぎょうし)しながら、必死(ひっし)局面(きょくめん)制御(せいぎょ)しようとしていた。


()――!


突然(とつぜん)(みみ)をつんざくような(するど)共鳴音(きょうめいおん)炸裂(さくれつ)した。


音波(おんぱ)空気(くうき)(はげ)しく(ふる)わせ、猛烈(もうれつ)突風(とっぷう)となって部屋(へや)(なか)(つくえ)椅子(いす)本棚(ほんだな)()()ばした。花瓶(かびん)(ゆか)()ちてガラガラと粉々(こなごな)に()れ、(すみ)()り、(かみ)()()った。


三色(さんしょく)(ひかり)完全(かんぜん)()()せ、(もと)半完成品(はんかんせいひん)(あお)血痕(けっこん)()みへと爆発(ばくはつ)し、周囲(しゅうい)(かべ)一面(いちめん)()()った。


「また失敗(しっぱい)したか……」


方源(ほうげん)(かろ)嘆息(たんそく)した。


()数日間(すうじつかん)(かれ)(つね)()()(つづ)けていた。()()()嘔心嬰泣蛊(おうしんえいきゅうこ)(もう)し、(とく)三心合魂(さんしんごうこん)対処(たいしょ)する(ため)のものである。


三心合魂(さんしんごうこん)東方家(とうほうけ)一族(いちぞく)有名(ゆうめい)殺招(さっしょう)であり、三人(さんにん)蛊師(こし)魂魄(こんぱく)一時的(いちじてき)合一(ごういつ)させ、三人(さんにん)一心同体(いっしんどうたい)(ごと)く、進退攻防(しんたいこうぼう)すべてに(わた)完璧(かんぺき)連携(れんけい)発揮(はっき)させる(こと)出来(でき)る。


方源(ほうげん)()数日(すうじつ)実戦(じっせん)経験(けいけん)する(なか)で、元々(もともと)曖昧(あいまい)だった記憶(きおく)次第(しだい)鮮明(せんめい)になってきた。


(かれ)朦朧(もうろう)とし(なが)らも(おぼ)えている――黒楼蘭(こくろうらん)東方余亮(とうほうよりょう)との()(たたか)いで、散散(さんさん)()()い、(かろ)うじて勝利(しょうり)したものの、三心合魂(さんしんごうこん)(ため)(ぐん)大打撃(だいしょうげき)()けたということを。


後年(こうねん)馬鴻運(ばこううん)台頭(たいとう)し、東方部族(とうほうぶぞく)対峙(たいじ)した(さい)三心合魂(さんしんごうこん)幾度(いくど)(かれ)深刻(しんこく)苦境(くきょう)をもたらした。


(はな)だしきに(いた)っては、(かれ)(さく)にはめられ、()殺招(さっしょう)(まえ)惨敗(ざんぱい)(きっ)し、東方家(とうほうけ)生捕(いけど)りにされたことさえある。


虜囚(りょしゅう)()()した馬鴻運(ばこううん)は、偶然(ぐうぜん)東方晴雨(とうほうせいう)出会(であ)い、彼女(かのじょ)芳心(ほうしん)()()めた。東方晴雨(とうほうせいう)(ひそ)かに(かれ)()がしたのみならず、()殺招(さっしょう)秘密(ひみつ)一切(いっさい)()かし()くしたのである。


無事(ぶじ)帰還(きかん)した馬鴻運(ばこううん)は、煉道大師(れんどうたいし)となっていた(つま)聖霊児(せいれいじ)協働(きょうどう)し、三心合魂(さんしんごうこん)専用(せんよう)対抗蛊(たいこうこ)となる嘔心嬰泣蛊(おうしんえいきゅうこ)煉成(れんせい)成功(せいこう)したのであった。


嘔心嬰泣蛊(おうしんえいきゅうこ)戦場(せんじょう)驚異的(きょういてき)効果(こうか)発揮(はっき)し、馬鴻運(ばこううん)(ぐん)大勝(たいしょう)(おさ)めた。一方(いっぽう)東方一族(とうほういちぞく)退却(たいきゃく)(かさ)ねるばかりであった。


敗北(はいぼく)()(かえ)(なか)で、三心合魂(さんしんごうこん)殺招(さっしょう)次第(しだい)歴史(れきし)表舞台(おもてぶたい)から()()せていった。


五域乱戦(ごいきらんせん)時代(じだい)(いた)ると、天下(てんか)戦火(せんか)(つつ)まれた。三心合魂(さんしんごうこん)中洲(ちゅうしゅう)蛊師(こし)(ぬす)まれて改良(かいりょう)(ほどこ)され、(ふたた)脚光(きゃっこう)()びるようになる。馬鴻運(ばこううん)(ただ)ちに嘔心嬰泣蛊(おうしんえいきゅうこ)秘伝(ひでん)処方(しょほう)公開(こうかい)した。()の人々(ひとびと)は()れを(もと)(さら)なる工夫(くふう)(くわ)え、改良版(かいりょうばん)三心合魂(さんしんごうこん)をも(ふたた)(やぶ)ることに成功(せいこう)した。


()れを(もっ)て、三心合魂(さんしんごうこん)(しん)()効力(こうりょく)(うしな)い、もはや(もち)いられることは()くなったのである。


方源(ほうげん)転生(てんせい)(しゃ)として五百年(ごひゃくねん)(ぶん)前世(ぜんせ)記憶(きおく)(ゆう)しており、嘔心嬰泣蛊(おうしんえいきゅうこ)秘方(ひほう)自然(しぜん)把握(はあく)している。


しかし嘔心嬰泣蛊(おうしんえいきゅうこ)四転蛊(してんこ)であり、煉製材料(れんせいざいりょう)(めずら)しくないものの、煉成難度(れんせいなんど)(きわ)めて(たか)い。煉道大師級(れんどうたいしきゅう)(せま)方源(ほうげん)才能(さいのう)をもってしても、十余回(じゅうよかい)(こころ)みたが、(ことごと)失敗(しっぱい)()わっている。


ため(いき)をつくと、方源(ほうげん)()()がり、窓枠(まどわく)(かたわ)らに(ある)()った。


この窓枠(まどわく)煉蛊失敗(れんこしっぱい)(さい)発生(はっせい)した気流(きりゅう)激突(げきとつ)して破壊(はかい)されていた。ガラスのような薄膜(はくまく)(おお)きな(あな)破裂(はれつ)し、外界(がいかい)からの(かぜ)青草(あおくさ)(かお)りを(とも)なって破孔(はこう)から(なが)()み、部屋中(へやじゅう)充満(じゅうまん)していた。


方源(ほうげん)(てのひら)(かる)窓辺(まどべ)()て、一股(いっこ)真元(しんげん)(おく)()んだ。


()もなく、(まど)薄膜(はくまく)は徐々(じょじょ)に生長(せいちょう)し、(ふたた)凝結(ぎょうけつ)して、(そと)からの(かぜ)一切(いっさい)遮断(しゃだん)した。


(かべ)腸詰(ちょうづ)めの(ごと)波打(なみう)ち、(さき)(しょう)じた無数(むすう)(くぼ)みも恢復(かいふく)して平坦(へいたん)となった。(ゆか)散乱(さんらん)した花瓶(かびん)破片(はへん)や、(あお)血痕(けっこん)(ことごと)()()まれた。


()れこそ大蜥屋蛊(だいせきおくこ)便利(べんり)(てん)である。


大蜥屋蛊(だいせきおくこ)三転蛊(さんてんこ)(ぞく)し、二転蜥屋蛊(にてんせきおくこ)から昇進(しょうしん)したものである。


蜥屋蛊(せきおくこ)(すで)にバス(ほど)の大き(おおき)さで、外見(がいけん)四本足(よんほんあし)大蜥蜴(おおとかげ)(よう)である。()体内(たいない)には(ひと)つの通路(つうろ)(とお)り、(すう)部屋(へや)両側(りょうがわ)(なら)んでいる。


大蜥屋蛊(だいせきおくこ)二階建(にかいだ)ての小屋(こや)(ごと)く、体長(たいちょう)蜥屋蛊(せきおくこ)五倍(ごばい)(およ)ぶ。


二層(にそう)()かれており、部屋数(へやすう)(さら)に多く、空間(くうかん)一層(いっそう)(ひろ)い。()れは方源(ほうげん)黒家(こくけ)加入(かにゅう)した(あと)黒楼蘭(こくろうらん)(みずか)(すす)んで(おく)ったものである。


普段(ふだん)修行(しゅぎょう)起居(ききょ)はすべて()(なか)(おこな)っている。


方源(ほうげん)以外(いがい)にも、六人(ろくにん)三転蛊師(さんてんこし)周囲(しゅうい)護衛(ごえい)している。


彼ら(かれら)は交替(こうたい)崗位(こうい)()き、特化(とっか)した偵察蛊(ていさつこ)装備(そうび)して、(ほとん)ど全て(すべて)の潜行(せんこう)型蛊師(がたこし)対応(たいおう)する体制(たいせい)(ととの)えている。


()影剑客(えいけんかく)再襲来(さいしょうらい)(たくら)んでも、()百步(ひゃっぽ)にも(せま)らぬ(うち)発見(はっけん)され、行踪(こうそう)(さら)すことになるだろう。()れも方源(ほうげん)暗殺未遂(あんさつみすい)事件(じけん)(あと)追加(ついか)した配慮(はいりょ)である。此刻(こくしゃ)方源(ほうげん)(まど)から高み(たかみ)を見下(みお)ろせば、大量(たいりょう)蛊師(こし)凡人(ぼんじん)緊張(きんちょう)して防衛線(ぼうえいせん)()姿(すがた)()()れた。


彼らは(みぞ)()っている(もの)()生長(せいちょう)させて箭塔(せんとう)()てている(もの)土壁(どへき)()()げている(もの)などがいる……厳密(げんみつ)防御戦線(ぼうえいせんせん)輪郭(りんかく)次第(しだい)(かたち)()してきている。


()れは(すで)第三(だいさん)防衛線(ぼうえいせん)である。


北原(ほくげん)地形(ちけい)は、(おお)くが平坦(へいたん)草原(そうげん)で、(けわ)しい障害物(しょうがいぶつ)()く、見渡(みわた)(かぎ)りの(たい)らかな土地(とち)である。(ゆえ)に、(いにしえ)より北原(ほくげん)(ふた)つの勢力(せいりょく)大戦(たいせん)()(ひろ)げると、(ひと)たび(たたか)いに(やぶ)れると、()()()く、(つね)勝利者(しょうりしゃ)によって大規模(だいきぼ)追撃(ついげき)されるのであった。


(ひと)つの大戦(たいせん)失敗(しっぱい)は、往々(おうおう)にして大局(たいきょく)(さだ)まり、一部族(いちぶぞく)急速(きゅうそく)衰退(すいたい)(はな)だしきは滅亡(めつぼう)意味(いみ)した。


()かしながら、防衛線(ぼうえいせん)存在(そんざい)すれば、状況(じょうきょう)一変(いっぺん)するのである。


仮令(たとえ)戦局(せんきょく)不利(ふり)となろうとも、撤退(てったい)して退却(たいきゃく)するにせよ、一時的(いちじてき)鋒先(きっさき)()けて反攻(はんこう)機会(きかい)(うかが)うにせよ、此等(これら)防衛線(ぼうえいせん)多大(ただい)役割(やくわり)()たすであろう。


戦争(せんそう)生死(せいし)(かか)わる大事(だいじ)であり、部族(ぶぞく)興亡(こうぼう)左右(さゆう)する。(きわ)めて危険(きけん)であると同時(どうじ)予測(よそく)困難(こんなん)である。些細(ささい)予期(よき)せぬ出来事(できごと)(ある)いは(おのれ)(かた)(わず)かな過失(かしつ)が、敗北(はいぼく)(まね)可能性(かのうせい)(おお)いにある。


()(よう)(とき)部族(ぶぞく)一旦退(いったんしりぞ)き、防衛線(ぼうえいせん)()(どころ)として守勢(しゅせい)(ととの)え、(いき)(ととの)え、陣脚(じんきゃく)(おだ)やかにすれば、(ふたた)軍勢(ぐんぜい)を立て(なお)すことが出来(でき)る。


此処(ここ)()世界(せかい)である。個々(ここじん)不思議(ふしぎ)(ちから)(ゆう)している。地球(ちきゅう)長城(ちょうじょう)匹敵(ひってき)する長大(ちょうだい)防衛線(ぼうえいせん)(きず)くことなど、(じつ)困難(こんなん)なことではない。


人々(ひとびと)は(すみ)やかに()(しゅ)防衛線(ぼうえいせん)巨大(きょだい)利点(りてん)実感(じっかん)するようになった。


(したが)って、北原(ほくげん)における大戦(たいせん)一戦決着(いっせんけっちゃく)騎馬突撃(きばとつげき)ではなく、(むし)陣地戦(じんちせん)消耗戦(しょうもうせん)様相(ようそう)(てい)するのである。


(しら)せに()れば、東方部族(とうほうぶぞく)(すで)第四(だいよん)防衛線(ぼうえいせん)布置(ふち)着手(ちゃくしゅ)している。現在(げんざい)()(かた)敵方(てきがた)との距離(きょり)三千里(さんぜんり)である。慣例(かんれい)(したが)い、八百里(はっぴゃくり)から千里(せんり)(ごと)停止(ていし)し、(あたら)しい防衛線(ぼうえいせん)布置(ふち)するだろう」。方源(ほうげん)心中(しんちゅう)回想(かいそう)した。


()数日間(すうじつかん)(かれ)(つね)閉門修行(へいもんしゅぎょう)(てっ)しているが、外部(がいぶ)情報(じょうほう)には常時(じょうじ)把握(はあく)()かさない。(かれ)黒家同盟軍(こくけどうめいぐん)高幹(こうかん)であるから、日々(ひび)蛊師(こし)(みずか)(すす)んで情報(じょうほう)(とど)けに()るのであった。


(とき)()して(はか)るに、明日(あす)には()(ぐん)先鋒隊(せんぽうたい)敵方(てきがた)前衛(ぜんえい)接触(せっしょく)し、戦闘(せんとう)開始(かいし)するだろう。(ただ)し、()(はい)出番(でばん)までは、(いま)(すこ)時日(じつ)(よう)する。」


方源(ほうげん)現在(げんざい)黒楼蘭(こくろうらん)(とも)中軍(ちゅうぐん)坐陣(ざじん)している。数日前(すうじつまえ)黒楼蘭(こくろうらん)(ふた)たび使者(ししゃ)(つか)わし、所謂(いわゆ)る「(よわ)きを(しめ)す」の(けい)(つた)えてきた。(よう)するに、(てき)計略(けいりゃく)(じょう)じて、東方余亮(とうほうよりょう)布置(ふち)(はや)めに(いざな)()し、方源(ほうげん)後発制人(こうはつせいじん)(はか)らせようというのである。


方源(ほうげん)()れに(たい)し、内心(ないしん)冷笑(れいしょう)した。


(かれ)には夜狼皇(やろうこう)がいる。夜狼群(やろうぐん)(きわ)めて補充(ほじゅう)容易(ようい)消耗品(しょうもうひん)である。(しか)るに黒楼蘭(こくろうらん)()(よう)()(ごま)利用(りよう)せず、()えて方源(ほうげん)出撃(しゅつげき)させようとする。(たし)かに東方余亮(とうほうよりょう)(ねら)要素(ようそ)もあろうが、()以上(いじょう)狼王常山陰(ろうおうじょうさんいん)抑圧(よくあつ)しようとする意図(いと)()められているのだ。


方源(ほうげん)常山陰(じょうさんいん)高傲(こうごう)さを見事(みごと)(えん)()っていた。黒楼蘭(こくろうらん)(かれ)(こころよ)(おも)わないのはそのためであり、新規(しんき)結成(けっせい)された同盟軍(どうめいぐん)(ない)では、各勢力(かくせいりょく)(たが)いに牽制(けんせい)()っている。(とく)現在(げんざい)黒家(こくけ)(がわ)(あき)らかに優勢(ゆうせい)状況(じょうきょう)であるため、蛊師(こし)たちはこぞって戦功(せんこう)(あらそ)い、他者(たしゃ)()さえつけ、より(おお)きな利益(りえき)()ようと画策(かくさく)している。


水魔浩激流(すいまこうげきりゅう)先鋒大将(せんぽうたいしょう)()(うば)()るため、王帳(おうちょう)(まえ)(みっ)日間(かかん)も立ち(ふさ)がり、陣門(じんもん)()ざして出撃(しゅつげき)懇願(こんがん)(つづ)けた。さらに十数名(じゅうすうめい)競争相手(きょうそうあいて)()()かして、ようやく(ねが)いを()たしたのである。


狈君子(はいくんし)こと孫湿寒(そんしつかん)謀略(ぼうりゃく)(めぐ)らせ、頭角(とうかく)(あら)わすため、(すす)んで黒楼蘭派(こくろうらんは)(くみ)し、一時的(いちじてき)同盟軍(どうめいぐん)随一(ずいいち)謀臣(ぼうしん)地位(ちい)()にした。


()(すなわ)内紛(ないふん)というものだ。


如何(いか)なる組織(そしき)体制(たいせい)も、内輪(うちわ)もめは()(もの)である。


常山陰(じょうさんいん)孤高(ここう)性格(せいかく)で、()五十万頭(ごじゅうまんとう)(おおかみ)大群(たいぐん)(よう)しているため、周囲(しゅうい)から疎外(そがい)されていた――『(やつ)実力(じつりょく)()(つよ)さでは、出番(でばん)()って()れぁ戦功(せんこう)全部(ぜんぶ)()って()かれる。我々(われわれ)の出番(でばん)(なく)なるではないか』


黒楼蘭(こくろうらん)狈君子(はいくんし)献策(けんさつ)()れたのも、上位者(じょういしゃ)としての立場(たちば)維持(いじ)し、体制(たいせい)(まも)るための行動(こうどう)だった――『狼王(ろうおう)めの勢力(せいりょく)強大(きょうだい)すぎて、()()すら安眠(あんみん)出来(でき)ぬ。()がひでも牽制(けんせい)し、()さえ()まねばなるまい』


()れら数多(あまた)()()き、人々(ひとびと)の(あさ)はかな思惑(おもわく)を、方源(ほうげん)(するど)看破(かんぱ)していた。


(かれ)状況(じょうきょう)(こと)なる。王庭(おうてい)(あらそ)いは所詮(しょせん)(たん)なる足掛(あしが)かりに()ぎず、(かれ)企図(きと)はあまりにも(おお)きく、(ほか)(もの)(かた)るべくもない。狐仙福地(こせんふくち)(よう)する(かれ)にとって、()れら戦利品(せんりひん)への需要(じゅよう)(おお)きく低下(ていか)している。


既然(すで)彼等(かれら)()(はい)出撃(しゅつげき)(のぞ)まぬなら、修業(しゅぎょう)時間(じかん)()しい()(はい)にとって(むし)好都合(こうつごう)ではないか?」


方源(ほうげん)不足(ふそく)しているのは、()れら凡庸(ぼんよう)資源(しげん)ではなく、珍稀(ちんき)資源(しげん)大量(たいりょう)時間(じかん)なのである。


一日後(いちにちご)水魔浩激流(すいまこうげきりゅう)先鋒軍(せんぽうぐん)(ひき)い、東方同盟軍(とうほうどうめいぐん)大将(たいしょう)激突(げきとつ)した。


戦前(せんぜん)挑将(ちょうしょう)において、浩激流(こうげきりゅう)勇猛無比(ゆうもうむひ)で、敵方(てきがた)大将(たいしょう)一撃(いちげき)()()せ、(さら)三人(さんにん)副将(ふくしょう)をも()()った。


敵軍(てきぐん)統領(とうりょう)(うしな)い、士気(しき)沮喪(そそう)する(なか)浩激流(こうげきりゅう)(いきお)いに()じて猛攻(もうこう)(くわ)え、大勝(たいしょう)(おさ)めた。(しか)追撃(ついげき)(ちゅう)影劍客(えいけんかく)辺絲軒(へんしけん)不意打(ふいう)ちに()い、重傷(じゅうしょう)()わされた。


浩激流(こうげきりゅう)()()進撃(しんげき)中止(ちゅうし)し、駐屯(ちゅうとん)して(きず)(いや)しつつ、本隊(ほんたい)到着(とうちゃく)()つこととなった。


三日後(みっかご)黒楼蘭(こくろうらん)中軍(ちゅうぐん)(ひき)いて前線陣地(ぜんせんじんち)進駐(しんちゅう)した。


五日後(いつかご)左右両軍(さゆうりょうぐん)相次(あいつ)合流(ごうりゅう)


両陣営(りょうじんえい)距離(きょり)数百里(すうひゃくり)()たず、旌旗(せいき)林立(りんりつ)し、陣営(じんえい)重畳(ちょうじょう)たり。大戦(たいせん)一触即発(いっしょくそくはつ)雰囲気(ふんいき)緊迫(きんぱく)たり。


深夜(しんや)月明(つきあ)かり星疎(ほしうと)ら。


部屋(へや)(なか)方源(ほうげん)蒲团(ふとん)(うえ)結跏趺坐(けっかふざ)し、両眼(りょうがん)(かたく)()じて、()()なく空念蛊(くうねんこ)催動(さいどう)していた。


空念蛊(くうねんこ)五転蛊(ごてんこ)であり、宝黄天(ほうこうてん)より購入(こうにゅう)したもの。推杯換盞蛊(すいはいかんさんこ)(つう)じて、狐仙福地(こせんふくち)より方源(ほうげん)()(わた)された。


空念蛊(くうねんこ)作用(さよう)により、方源(ほうげん)(あたま)(なか)半透明(はんとうめい)(ねん)が次々(つぎつぎ)と(しょう)じ、気泡(きほう)(ごと)(ゆる)やかに頭髄(ずずい)(なか)爆脳蛊(ばくのうこ)接近(せっきん)する。


爆脳蛊(ばくのうこ)四转蛊(してんこ)()ぎず、方源(ほうげん)入手(にゅうしゅ)した当日(どうじつ)春秋蝉(しゅんじゅうせん)気息(きそく)(もっ)強引(ごういん)にこれを降伏(こうふく)していた。


(しか)れども、(かれ)()えて爆脳蛊(ばくのうこ)(みずか)らの頭脳(ずのう)(なか)(とど)()いた。


()数日間(すうじつかん)爆脳蛊(ばくのうこ)(かれ)脳髄液(のうずいえき)吸収(きゅうしゅう)(つづ)ける一方(いっぽう)空念(くうねん)侵食(しんしょく)され(つづ)け、(つい)質的転換(しつてきてんかん)(とき)(むか)えた!


瞬時(しゅんじ)爆脳蛊(ばくのうこ)分解(ぶんかい)(ひろ)がり、一団(いちだん)(くろ)(ひかり)一蓬(いちほう)(しろ)(けむり)、そして拳大(こぶしだい)空念(くうねん)一顆(いっか)()した。


逆煉(ぎゃくれん)成功(せいこう)だ」


()光景(こうけい)()て、方源(ほうげん)(にご)った(いき)()()し、心中(しんちゅう)(かぎ)りない歓喜(かんき)()ちた。


(かれ)黒光(こっこう)白煙(はくえん)頭脳(ずのう)から()()し、各々(おのおの)二匹(にひき)三転蛊(さんてんこ)へと()えた。


此等(これら)()凡庸(ぼんよう)(しな)()ぎず、方源(ほうげん)(かたわ)らに放置(ほうち)して(かえり)みなかった。


(まこと)(かなめ)は、依然(いぜん)として()一顆(いっか)空念(くうねん)()った。


方源(ほうげん)空念(くうねん)(みずか)らの脳裏(のうり)()()み、其中(そのちゅう)記録(きろく)された念情報(ねんじょうほう)()()いた。


()もなく、(かれ)身体(からだ)(かろ)(ふる)え、瞳孔(どうこう)(おお)きく(ひろ)がり、(かお)には()さえ()れない驚喜(きょうき)(いろ)()かんだ。


盗天魔尊(とうてんまそん)()伝承(でんしょう)が、(なん)落魄谷(らくはくこく)()しているだと!?」












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