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蛊真人  作者: 魏臣栋
魔头乱世
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第九十七節:赵怜云

書斎(しょさい)で、趙家(ちょうけ)族長(ぞくちょう)(つか)()った様子(ようす)()にしていた文書(ぶんしょ)()いた。


窓枠(まどわく)()して()()陽光(ようこう)が、(かれ)(かお)()らしている。


五転初階(ごてんしょかい)蛊師(こし)である()五十歳(ごじゅっさい)(おとこ)は、長年(ながねん)部族(ぶぞく)事務(じむ)忙殺(ぼうさつ)されたため、(すで)白髪交(しらがま)じりで(しわ)だらけの(かお)をしていた。


()数日間(すうじつかん)黒家(こくけ)大軍(たいぐん)(せま)り、東方余亮(とうほうよりょう)積極的(せっきょくてき)(さそ)いを()けたことから、族内(ぞくない)二派(には)分裂(ぶんれつ)している。


両派(りょうは)()()なく(あらそ)(つづ)けており、一方(いっぽう)東方部族(とうほうぶぞく)帰属(きぞく)して旧怨(きゅうえん)()くべきだと主張(しゅちょう)し、他方(たほう)黒家(こくけ)の方が勢力(せいりょく)(おお)きいのだからと、()れに()すべきだと提唱(ていしょう)している。


しかし()たして東方家(とうほうけ)(とう)(こう)すれば、(まこと)積年(せきねん)(うら)みを()()せるのだろうか?本家(ほんけ)東方家(とうほうけ)が代々(だいだい)()(かさ)ねて()(ふか)仇怨(きゅうえん)(おも)うと、趙家(ちょうけ)族長(ぞくちょう)には自信(じしん)()てなかった。


かと()って黒家(こくけ)()するのも問題(もんだい)がある。


趙家(ちょうけ)本拠地(ほんきょち)(なに)()っても草府(そうふ)()にある。一方(いっぽう)黒家(こくけ)代表(だいひょう)する玉田(ぎょくでん)豪族(ごうぞく)たちは(すで)盟約(めいやく)(むす)んでいる。(あと)から帰属(きぞく)する部族(ぶぞく)として、(ほか)(もの)たちから連合(れんごう)(いじ)められる可能性(かのうせい)(たか)く、()られる利益(りえき)(かぎ)られよう。もしかすると、(たん)なる犠牲(ぎせい)(ごま)として(あつか)われるかもしれない。


(ゆえ)に、趙家(ちょうけ)族長(ぞくちょう)矛盾(むじゅん)逡巡(しゅんじゅん)(さいな)まれている。


(とく)()数日間(すうじつかん)族内(ぞくない)高官(こうかん)たちの(あらそ)いは収拾(しゅうしゅう)()かず、趙家(ちょうけ)族長(ぞくちょう)対外(たいがい)では狡猾(こうかつ)東方余亮(とうほうよりょう)陰謀詭計(いんぼうきけい)(ふせ)ぎ、対内(たいない)では局面(きょくめん)(しず)(いえ)統率(とうそつ)しなければならない。趙家(ちょうけ)族長(ぞくちょう)(ふか)疲労(ひろう)(かん)じていた。


「はあ……」


(かれ)(ふか)(いき)()き、椅子(いす)()にもたれかかる。(うつ)ろな(ひとみ)で、()(ひかり)()かぶ(ちり)(なが)めていた。


(きら)めく陽光(ようこう)(もと)微細(びさい)(ちり)がくっきりと()()れる。趙家(ちょうけ)族長(ぞくちょう)は、(みずか)れも()(ただよ)(ちり)一粒(いちりゅう)(ごと)く、(まよ)彷徨(さまよ)い、(いま)空中(くうちゅう)()かんでいるが、一陣(いちじん)(かぜ)()けば、(またた)()地上(ちじょう)(ちり)へと()ちてしまうのではないかと(かん)じていた。


そして黒家(こくけ)東方家(とうほうけ)大戦(たいせん)は、まさに(いま)にも(おそ)()うとする激風(げきふう)なのである。


()くの(ごと)(あらし)直面(ちょくめん)して、(おのれ)は、家族(かぞく)は、何処(いずこ)()かうべきなのか?


趙家(ちょうけ)族長(ぞくちょう)心煩意燥(しんぱんいそう)しているまさに()(とき)(まど)(そと)から突然(とつぜん)()(ごえ)()こえてきた。


()(なつ)かしい(こえ)()き、趙家(ちょうけ)族長(ぞくちょう)即座(そくざ)(まゆ)をひそめ、心配(しんぱい)そうな表情(ひょうじょう)()かべて(そと)()かって()いかけた。「何事(なにごと)だ?」


(とびら)(そと)護衛(ごえい)(ただ)ちに(こた)えた。「はっ、族長様(ぞくちょうさま)、お姫様(ひめさま)()けて()られた(さい)階段(かいだん)(あし)(すべ)らせ、(あたま)()たれてしまわれました。」


「なんと!」趙家(ちょうけ)族長(ぞくちょう)座席(ざせき)から()()き、(むね)(いた)めるような表情(ひょうじょう)()った。「()肝心要(かんじんかなめ)(むすめ)が、どうして(ころ)んでしまったのか?()はどれほど(なが)れた?(はや)く、彼女(かのじょ)(なか)()れて()なさい。」


趙家(ちょうけ)族長(ぞくちょう)には以前(いぜん)何人(なんにん)息子(むすこ)がいたが、(みな)東方余亮(とうほうよりょう)陰謀(いんぼう)()けられて()に、(いま)では膝下(しっか)(のこ)されたのは一人娘(ひとりむすめ)だけなのである。


(むすめ)は五、六歳(ご、ろくさい)(ほど)容姿(ようし)で、(すこ)腕白(わんぱく)性分(しょうぶん)だが、眉目(びもく)(かん)()先妻(せんさい)面影(おもかげ)色濃(いろこ)く、趙家(ちょうけ)族長(ぞくちょう)溺愛(できあい)とも()えるほど寵愛(ちょうあい)していた。


()もなく、書斎(しょさい)(とびら)()いた。


護衛(ごえい)一人(ひとり)女児(じょじ)部屋(へや)(みちび)いた。


少女(しょうじょ)陶器(とうき)のように()(とお)(はだ)錦衣(きんい)(まと)い、(じつ)(いと)おしい姿(すがた)をしていたが、(いま)はしくしくと()きながら、(うで)目元(めもと)(おお)っていた。


()肝心要(かんじんかなめ)(むすめ)よ、()(くも)のような()よ、どこを()ったのか?」趙家(ちょうけ)族長(ぞくちょう)(いそ)いで()()り、(おさな)(むすめ)()()こして心配(しんぱい)そうに(たず)ねた。


父上(ちちうえ)()()えないのか?傷口(きずぐち)(ひたい)にあるのに……』 少女(しょうじょ)(こころ)(さけ)びながらも、趙家(ちょうけ)族長(ぞくちょう)(うで)のなかで(あま)えるようにすり()り、「父上(ちちうえ)、雲々(くもくも)、(あたま)(いた)いの……」と()(ごえ)(にご)した。


「おお、(ちち)()てやる、()てやるからな」 趙家(ちょうけ)族長(ぞくちょう)(やさ)しく(むすめ)(ひたい)(かみ)(はら)い、かすかに(あか)()りむけた(きず)(たし)かめた。()()るほど(ふか)(きず)ではないが、(かれ)(むね)(いた)むほど心配(しんぱい)した。


(かれ)(むすめ)(やさ)しく(かた)りかける一方(いっぽう)で、()()けて()乳母(うば)()かって(つめ)たい口調(くちょう)叱責(しっせき)した。「呉媽(ごまま)(なに)をしておるのか!お(まえ)には(ひめ)()(まわ)りを(つね)注意(ちゅうい)して(つか)えと(もう)してあろう。()(ひたい)(きず)をよく()よ!」


老身(ろうしん)不覚(ふかく)でございます!族長様(ぞくちょうさま)何卒(なにとぞ)(ゆる)しくださいませ。」(ろう)乳母(うば)(おそ)(おのの)き、即座(そくざ)(ひざまず)いて地面(じめん)(あたま)(たた)きつけた。(ひたい)には()(あせ)()かんでいる。心中(しんちゅう)では舌打(したう)ちしたくなるほど(くや)しかった——()()彼女(かのじょ)()きて()出会(であ)った(なか)(もっと)()()かり、(もっと)厄介(やっかい)小悪魔(こあくま)だった。日頃(ひごろ)から悪戯(いたずら)()み、油断(ゆだん)すれば(またた)()姿(すがた)()し、狡知(こうち)()けて、大人(おとな)である自分(じぶん)翻弄(ほんろう)して生死(せいし)(きょう)彷徨(さまよ)わせる。(しか)族長(ぞくちょう)(まえ)では、利口(りこう)可憐(かれん)()仮面(かめん)(かぶ)り、()まれ()った演技力(えんげいりょく)発揮(はっき)する。彼女(かのじょ)()(ちい)さい()(もの)(よわ)みを(つか)むことさえ出来(でき)ないのだ!


父上(ちちうえ)乳母(うば)()めないでください。雲々(くもくも)が自分(じぶん)足元(あしもと)注意(ちゅうい)しなかったのですから。」少女(しょうじょ)(ほそ)(こえ)()った。


(こころ)(なか)では(つづ)けて(つぶや)く。「()(ろう)いぼれ(ばば)本当(ほんとう)(うる)さい、一日中(いちにちじゅう)あたしの(うし)ろを()いて(まわ)ってくる。あたしが()書斎(しょさい)(はい)(ため)に、わざわざ自分(じぶん)(きず)()けたんだから、容易(ようい)なことじゃないんだぞ!」


趙家(ちょうけ)族長(ぞくちょう)(ふか)(いき)をつくと、(むすめ)(つや)やかな黒髪(くろかみ)(やさ)しく()でながら、満面(まんめん)()みを()かべて()った。「(むすめ)よ、お(まえ)母上(ははうえ)(おな)じように(こころ)(やさ)しい()だのう」。


老乳母(ろううば)(こころ)(そこ)咆哮(ほうこう)した。「族長様(ぞくちょうさま)、お見目(みめ)(くも)っておられます!此方(こちら)姫君(ひめぎみ)間違(まちが)いなく小悪魔(こあくま)でございますぞ……」


しかし彼女(かのじょ)(さけ)べるのは内心(ないしん)(なか)だけだった。()事実(じじつ)(しん)じてくれる(もの)自分(じぶん)以外(いがい)にほとんどいないと()っているからだ。()()せば、今後(こんご)()姫君(ひめぎみ)からどんな仕打(しう)いを()けるか()かったものではない。


役立(やくた)たずめ、今日(きょう)雲々(くもくも)が(なさ)けを()けてくれたから()いようなものの……ふん、()がれ。」趙家(ちょうけ)族長(ぞくちょう)老乳母(ろううば)退(しりぞ)けると、(ふたた)(おだ)やかな表情(ひょうじょう)(むすめ)()て「()()よ、どうして(ちち)(ところ)(あそ)びに()たのかい?」と(たず)ねた。


父上(ちちうえ)、雲々(くもくも)、父上(ちちうえ)のことが心配(しんぱい)です。(みな)()(ごろ)家老(かろう)たちが父上(ちちうえ)喧嘩(けんか)しているって()ってる。父上(ちちうえ)(いや)になって、一人(ひとり)書斎(しょさい)()()もってるんだって。」少女(しょうじょ)(くろ)(かがや)(おお)きな(ひとみ)見開(みひら)き、心配(しんぱい)そうに趙家(ちょうけ)族長(ぞくちょう)()つめた。


しかし(じつ)内心(ないしん)では(さけ)んでいた。「(あた)(まえ)だわ、()のままじゃ(いのち)(あぶ)ないんだから。親父(おやじ)さんったら、優柔不断(ゆうじゅうふだん)すぎるのよ。()状況(じょうきょう)(はや)()()さないと。ぐずぐず(なに)をしてるのよ?!」


趙家(ちょうけ)族長(ぞくちょう)(むすめ)言葉(ことば)()き、(はな)(おく)()っぱくなり、()(あか)らんで(なみだ)(あふ)()そうになった。「()(むすめ)よ、(ちち)心配(しんぱい)してくれるのか。普段(ふだん)可愛(かわい)がってきた甲斐(かい)があるというものだ。だが安心(あんしん)しなさい、(ちち)元気(げんき)だ。(むすめ)(かお)()れば(こころ)()れるよ」。


(やす)っぽい親父(おやじ)め、(いま)生死(せいし)()かっているってのに、()無感覚(むかんかく)楽観主義(らっかんしゅぎ)(なん)だ! 仕方(しかた)ない、あたしの将来(しょうらい)(しあわ)せの(ため)なら、此度(こたび)(すこ)(おこな)()ぎたことをしても(かま)わない!』


少女(しょうじょ)(こころ)(さけ)びながら、桃色(ももいろ)(ちい)さな(うで)()り、(なん)とも(おも)わない様子(ようす)()った。「父上(ちちうえ)、雲々(くもくも)が(かんが)えたの。喧嘩(けんか)してる人達(ひとたち)(みな)馬鹿(ばか)なのよ。趙家(ちょうけ)(ひつじ)のようで、東方家(とうほうけ)(おおかみ)みたい。(いま)玉田(ぎょくでん)から猛虎(もうこ)()たから、(おおかみ)(とら)()てないから(ひつじ)(たす)けて()しいって()うの。でも(ひつじ)がどっち(がわ)(たす)けても、最後(さいご)には(とら)(おおかみ)(ひつじ)()べちゃうのよ」。


(むすめ)一言(ひとこと)は、趙家(ちょうけ)族長(ぞくちょう)(むね)(つよ)()った。岡目八目(おかめはちもく)とは()(こと)で、当事者(とうじしゃ)(まよ)(とき)傍観者(ぼうかんしゃ)一言(ひとこと)覚醒(かくせい)(うなが)すこともある。


()(とお)りだ。東方家(とうほうけ)()こうと黒家(こくけ)()こうと、(とら)(かわ)(うば)(よう)(あぶ)ない()けだ。しかし趙家(ちょうけ)として、()たして()(きょく)(がい)()(つづ)けることなどできようか?


(いな)十年(じゅうねん)一度(いちど)天災(てんさい)である大吹雪(おおふぶき)が、北原(ほくげん)桃源郷(とうげんきょう)など存在(そんざい)()ないことを(すで)決定(けってい)している。王庭(おうてい)(あらそ)いは()けて(とお)れぬ(みち)であり、()王庭福地(おうていふくち)(もぐ)()むことができさえすれば、()られる利益(りえき)(てん)()(ほど)である。だが趙家(ちょうけ)(すす)むべき(みち)(いず)こにあるのか?


少女(しょうじょ)終始(しゅうし)趙家(ちょうけ)族長(ぞくちょう)顔色(かおいろ)(うかが)っており、頃合(ころあ)いを見計(みはか)らって(ただ)ちに(つづ)けた。「父上(ちちうえ)馬家(ばけ)(つよ)くて、(ひと)にも(やさ)しいと()いています。(ひつじ)(うま)(くさ)()べるけど、(とら)(おおかみ)はお(にく)()べるの。馬家(ばけ)友達(ともだち)にならない?」


趙家(ちょうけ)族長(ぞくちょう)ははっとした。


そうだ、なぜそうしないのか?


馬家(ばけ)黒家(こくけ)東方家(とうほうけ)とは(ちが)う。後者(こうしゃ)二家(にか)には蛊仙(こせん)老祖(ろうそ)がおり、背後(はいご)には福地(ふくち)(ひか)えている。いずれも歴史(れきし)(なが)く、(ふか)基盤(きばん)(ゆう)する(ちょう)(だい)家族(かぞく)なのだ。


ps:(ちょう)(だい)家族(かぞく)=スーパー家族、好きな方を読めばいいよ


馬家(ばけ)黄金家族(おうごんかぞく)一員(いちいん)でありながら、蛊仙(こせん)後援(こうえん)()たず、現在(げんざい)超級家族(ちょうきゅうかぞく)へと躍進(やくしん)しつつある。馬家(ばけ)族長(ぞくちょう)(わか)後継者(こうけいしゃ)は、いずれも英雄豪傑(えいゆうごうけつ)()()じない人物(じんぶつ)だ。馬家(ばけ)趙家(ちょうけ)来訪(らいほう)(こころ)から歓迎(かんげい)するであろう。ただ、天川(てんせん)まで(たび)するとなると、道程(みちのり)(はる)かである……


(やす)っぽい親父(おやじ)、まだ(なに)躊躇(ためら)っているの?(はや)決断(けつだん)しなさいよ!』至近距離(しきんきょり)から(ちち)表情(ひょうじょう)変化(へんか)観察(かんさつ)する少女(しょうじょ)は、内心(ないしん)焦燥感(しょうそうかん)()られていた。


しかし趙家(ちょうけ)族長(ぞくちょう)は、天川(てんせん)までの長旅(ながたび)()馬家(ばけ)()()せることの危険性(きけんせい)(おも)うと、(ふたた)逡巡(しゅんじゅん)躊躇(ちゅうちょ)(ふち)()たされた。


仕方(しかた)なく、少女(しょうじょ)(さら)一押(ひとお)しした。「父上(ちちうえ)(はや)()きましょう。(いま)(もっと)()(とき)です。(おおかみ)(とら)(たが)いに(にら)()っていて、(だれ)余裕(よゆう)がありませんから」。


趙家(ちょうけ)族長(ぞくちょう)(こころ)(きん)(ちょう)した。


「そうだ、(おれ)(なに)躊躇(ためら)っているのだ?もっと逡巡(しゅんじゅん)していれば、最良(さいりょう)()(どき)さえ(のが)してしまう!黒家(こくけ)にせよ東方家(とうほうけ)にせよ、()(やから)ではない。本家(ほんけ)王庭(おうてい)(たたか)いで(ひとき)れの()()ようとするなら、彼等(かれら)()けるのは(きわ)めて不適切(ふてきせつ)なことだ!」


()(むすめ)よ、其方(そち)()う通り(どおり)だ。此度(こたび)大戦(たいせん)に、趙家(ちょうけ)(くび)()()むべきではない。()(いえ)(たから)を、()(うず)(とう)じるわけにはいかぬ。そうだ、()げよう!」趙家(ちょうけ)族長(ぞくちょう)決意(けつい)(かた)めた。


(かれ)(むね)()かれた少女(しょうじょ)は、(おも)わず(うれ)()きしそうになりながら、(こころ)(かん)()った。「親父(おやじ)さん、やっと()()めたんだね。あたしがわざわざ(あし)(はこ)んで説得(せっとく)した甲斐(かい)があったよ……」


「しかし()()よ、()()言葉(ことば)一体(いったい)(だれ)から()いたのだ?(だれ)(おし)えたのか、(ちち)(はな)してごらん。」趙家(ちょうけ)族長(ぞくちょう)()(かえ)り、違和感(いわかん)気付(きづ)いて小娘(こむすめ)凝視(ぎょうし)して()(ただ)した。少女(しょうじょ)(むね)がどきりとし、(おお)きな()(またた)かせて無邪気(むじゃき)(よそお)った。「(だれ)(おし)えてないよ。父上(ちちうえ)全部(ぜんぶ)雲々(くもくも)が自分(じぶん)(かんが)えたの。父上(ちちうえ)毎日(まいにち)大変(たいへん)そうだから、雲々(くもくも)がお手伝(てつだ)いしたくてずっと(かんが)えてたんだよ。」


そう()()えると、彼女(かのじょ)小心翼翼(しょうしんよくよく)に、(いま)にも()()しそうな様子(ようす)(つづ)(くわ)えた。「父上(ちちうえ)、雲々(くもくも)の(かんが)え、間違(まちが)ってるの?」


趙家(ちょうけ)族長(ぞくちょう)()(なか)に、一筋(ひとすじ)(おどろ)きと(よろこ)びが(はし)った。(かれ)は、眼前(がんぜん)()小天女(しょうてんにょ)自分(じぶん)(だま)すとは(おも)わなかった。


()()はまだ何歳(なんさい)だ?


それに、自分(じぶん)()(ころ)から見守(みまも)って(そだ)てて()()ではないか!


(ただ)し、彼女(かのじょ)(おさな)(ころ)から()(ほど)聡明(そうめい)であれば、成長(せいちょう)後の修行(しゅぎょう)素質(そしつ)並大抵(なみたいてい)ではあるまい。


小娘(こむすめ)(しか)られるのを(おそ)れる様子(ようす)()にすると、趙家(ちょうけ)族長(ぞくちょう)(むね)(ふたた)慈愛(じあい)(じょう)()()がって()た。


(かれ)少女(しょうじょ)(かみ)()でながら()った。「雲々(くもくも)、お(まえ)()本当(ほんとう)()かった。(ちち)は、()んな素敵(すてき)(むすめ)がいて(しあわ)せだよ!」


「ああ、仕方(しかた)ないわね、()姿(すがた)転生(てんせい)しちゃったんだから。人生(じんせい)って、友達(ともだち)(えら)べるけど、(おや)(てん)()めるもの。普段(ふだん)あんたが(わたし)(やさ)しくしてくれるから、(わたし)(おん)(むく)いるわよ……」


少女(しょうじょ)(こころ)でそう(つぶや)きながら、表向(おもてむ)きには趙家(ちょうけ)族長(ぞくちょう)(くび)()きつき、(ちい)さな(くちびる)(とが)らせて(やす)っぽい親父(おやじ)(ほお)にチューした。「父上(ちちうえ)(むすめ)父上(ちちうえ)一番(いちばん)大好(だいす)きだよ。」


「はははは、()(むすめ)よ、お(まえ)(ちち)(こころ)肝臓(かんぞう)のような(たから)だよ。」趙家(ちょうけ)族長(ぞくちょう)大笑(おおわら)いした。












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