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蛊真人  作者: 魏臣栋
魔头乱世
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第九十六節:五十万狼启战端

(よる)(とばり)()(そそ)草原(そうげん)を、桑易(そうえき)必死(ひっし)()()けていた。


()すような寒風(かんぷう)(かお)(おそ)()かるが、(かれ)全身(ぜんしん)大汗(おおあせ)()れていた。


(はや)く、もっと(はや)く!」


内心(ないしん)(さけ)びながら、空竅(くうきょう)真元(しんげん)移動蛊(いどうこ)(くる)ったように(そそ)()んだ。


オオオォン――!


背後(はいご)では、一団(いちだん)夜狼(やろう)執拗(しつよう)追跡(ついせき)(つづ)けている。


桑易(そうえき)()()げた夜狼(やろう)幼獣(ようじゅう)死骸(しがい)が、()追跡劇(ついせきげき)(すで)半刻(はんこく)(つづ)けさせている原因(げんいん)であった。


もし普段(ふだん)ならば、この半刻(はんこく)ほどの時間(じかん)桑易(そうえき)にとって(まばた)きほどのものだった。しかし背後(はいご)万余(まんよ)狼群(おおかみむれ)執拗(しつよう)()ってくる(いま)一分一秒(いっぷんいちびょう)()(がた)(なが)(かん)じられる。


()いた、やっと()いた!」


前方(ぜんぽう)(ちい)さな谷間(たにま)()て、桑易(そうえき)(あら)たな(ちから)()()るのを(かん)じ、(たに)()()んだ。


ドドドドッ……


二万頭(にまんとう)(ちか)夜狼(やろう)(くろ)濁流(だくりゅう)(ごと)く、速度(そくど)()とすことなく谷間(たにま)(なが)()んだ。


(はい)った、(はい)ったぞ!」


谷間(たにま)潜伏(せんぷく)していた蛊師(こし)たちは歓声(かんせい)()げた。


(すみ)やかに包囲網(ほういもう)()じろ。失敗(しっぱい)(ゆる)されん。」


埋伏(まいふく)指揮(しき)()三転蛊師(さんてんこし)(かしら)即座(そくざ)命令(めいれい)(くだ)した。


土壁(どへき)()てろ!」


大勢(おおぜい)二転蛊師(にてんこし)協力(きょうりょく)し、同時(どうじ)二転土壁蛊(にてんどへきこ)発動(はつどう)させた。


これだけの数の土壁蛊(どへきこ)一斉(いっせい)発動(はつどう)したことで、谷間(たにま)(せま)入口(いりぐち)では土石(どせき)急激(きゅうげき)隆起(りゅうき)し、三転土壁蛊(さんてんどへきこ)(きゅう)障害物(しょうがいぶつ)瞬時(しゅんじ)形成(けいせい)された。


同時(どうじ)に、(たに)反対側(はんたいがわ)では数十名(すうじゅうめい)蛊師(こし)たちが二転落石蛊(にてんらくせきこ)一斉(いっせい)作動(さどう)させた。


大量(たいりょう)岩石(がんせき)轟音(ごうおん)(とも)(ころ)がり()ち、入口(いりぐち)完全(かんぜん)封鎖(ふうさ)した。


()谷間(たにま)出口(でぐち)(すで)(ふう)じられていた。(いま)入口(いりぐち)(うし)ない、()()んできた夜狼(やろう)()れは(ふくろ)(ねずみ)となった。夜狼万獣王(やろうばんじゅうおう)異変(いへん)()()き、(ただ)ちに狼群(おおかみむれ)(ひき)いて谷壁(たにかべ)()(のぼ)り、脱出(だっしゅつ)(こころ)みた。


(しか)()(とき)蒼涼(そうりょう)にして雄大(ゆうだい)(おおかみ)遠吠(とおぼ)えが(てん)()いて(ひび)(わた)った。


方源(ほうげん)夜狼皇(やろうこう)騎乗(きじょう)し、大勢(おおぜい)夜狼(やろう)(したが)えて(うえ)から(した)突撃(とつげき)開始(かいし)した。


野生(やせい)夜狼群(やろうむれ)()(あか)らめ、怒号(どごう)()()していたが、狼皇(ろうこう)威光(いこう)()され、躊躇(ちゅうちょ)して前進(ぜんしん)できなかった。


神清蛊(しんせいこ)


方源(ほうげん)(ねん)じるや、一匹(いっぴき)神清蛊(しんせいこ)(あらわ)れた。


()四転蛊(してんこ)真元(しんげん)(そそ)がれるや、(ただ)ちに一筋(ひとすじ)清風(せいふう)()した。


清風(せいふう)がそよそよと()()け、場内(じょうない)全体(ぜんたい)()(わた)った。


元々(もともと)二転葱爆蛊(にてんそうばくこ)影響(えいきょう)狂暴(きょうぼう)()していた野生夜狼群(やせいやろうむれ)は、()清風(せいふう)()かれるや正気(しょうき)(かえ)った。


狼皇(ろうこう)(ふたた)一声(いっせい)()()がると、野生(やせい)夜狼群(やろうむれ)(おお)きな混乱(こんらん)(おちい)り、陣形(じんけい)崩壊(ほうかい)(きざ)しを()せ、戦意(せんい)深刻(しんこく)動揺(どうよう)した。


方源(ほうげん)朗然(ろうぜん)(わら)い、()れから(はじ)めて狼群(おおかみむれ)()いて真正(しんせい)突撃(とつげき)開始(かいし)した。


(すで)何名(なんめい)かの蛊師(こし)戦闘(せんとう)参加(さんか)し、野生(やせい)万狼王(ばんろうおう)足止(あしど)めしていた。


方源(ほうげん)()狼群(おおかみむれ)(うご)かして野生群(やせいむれ)分断(ぶんだん)し、蚕食(さんしょく)しながら全局(ぜんきょく)牢固(ろうこ)掌握(しょうあく)した。()(のち)野生万狼王(やせいばんろうおう)面前(めんぜん)(やく)()ると、頃合(ころあ)いを見計(みはか)四転驭狼蛊(してんぎょろうこ)発動(はつどう)させた。


最終的(さいしゅうてき)には、数百頭(すうひゃくとう)夜狼(やろう)犠牲(ぎせい)という代償(だいしょう)のみで、()万狼王(ばんろうおう)二万頭近(にまんとうちか)くの狼群(おおかみむれ)見事(みごと)収編(しゅうへん)することに成功(せいこう)した。


大功(たいこう)()()げた(あと)戦場(せんじょう)掃討(そうとう)()れら蛊師(こし)たちに(まか)せ、方源(ほうげん)(さら)膨大(ぼうだい)()した狼群(おおかみむれ)()いて(つぎ)地点(ちてん)急行(きゅうこう)した。


其処(そこ)には、(さら)大規模(だいきぼ)野生(やせい)夜狼群(やろうむれ)が、(かれ)収編(しゅうへん)()(かま)えている。


()くやったぞ。」三転(さんてん)首領(しゅりょう)桑易(そうえき)(かた)をポンと(たた)き、五百枚(ごひゃくまい)元石(げんせき)一匹(いっぴき)三転蛊(さんてんこ)(わた)した。「()れは貴様(きさま)相応(ふさわ)しい褒美(ほうび)だ。」


桑易(そうえき)(ひたい)(あせ)(ぬぐ)い、(いき)()らしながら元石(げんせき)()を受け(うけと)った。


(かれ)はぼんやりと(とお)くを()つめ、羨望(せんぼう)眼差(まなざ)しを方源(ほうげん)()って()背中(せなか)(そそ)いだ。


自分(じぶん)三転蛊師(さんてんこし)ではあるが、魔道(まとう)(すこ)()()られているだけだ。狼王(ろうおう)(さま)(くら)べれば、()るに()らない。()れが(まこと)大物(おおもの)というものか。いつになったら、()のような()()げることができるだろうか。」


()一夜(いちや)方源(ほうげん)数千里(すうせんり)にわたり転戦(てんせん)し、七万頭(ななまんとう)野生夜狼群(やせいやろうむれ)見事(みごと)収編(しゅうへん)した。


夜明(よあ)けまでに、夜狼(やろう)たちは()りを()えて次々(つぎつぎ)と巣窟(そうくつ)(もど)(はじ)めた。方源(ほうげん)()(あと)狼群(おおかみむれ)()き、風塵(ふうじん)にまみれて黒家(こくけ)陣営(じんえい)へと(もど)った。


黒楼蘭(こくろうらん)同盟(どうめい)結成(けっせい)してからは、人員(じんいん)勢力(せいりょく)(おお)きく()え、(ちか)くに()つもの巨大(きょだい)陣営(じんえい)設置(せっち)していた。


方源(ほうげん)狼群(おおかみむれ)は、()れら五陣営(ごじんえい)分散(ぶんさん)配置(はいち)され、専任(せんにん)要員(よういん)によって飼育(しいく)されている。


()れまで数日間(すうじつかん)(かれ)膨大(ぼうだい)夜狼(やろう)収編(しゅうへん)し、元々(もともと)三万頭(さんまんとう)(ほど)だった手持(ても)ちの夜狼(やろう)が、(いま)三十二万頭(さんじゅうにまんとう)まで爆発的(ばくはつてき)増加(ぞうか)した!


夜狼群(やろうむれ)一挙(いっきょ)方源(ほうげん)手中(しゅちゅう)(もっと)膨大(ぼうだい)戦力(せんりょく)となり、(ほか)(なら)ぶものがない。


(さら)以前(いぜん)から()朱炎狼(しゅえんろう)風狼(ふうろう)水狼(すいろう)などを(くわ)えると、方源(ほうげん)支配(しはい)する狼群(おおかみむれ)総数(そうすう)五十三万頭(ごじゅうさんまんとう)という天文学的数字(てんもんがくてきすうじ)(たっ)している!


夜狼皇(やろうこう)()たからこそ、夜狼群(やろうむれ)収編(しゅうへん)()(ほど)容易(ようい)だったのだ。」狼群(おおかみむれ)手配(てはい)した(あと)方源(ほうげん)疲労困憊(ひろうこんぱい)(からだ)()して密室(みっしつ)(もど)休息(きゅうそく)()った。


夜狼群(やろうむれ)増加(ぞうか)するに(ともな)い、方源(ほうげん)駆使(くし)する万狼王(ばんろうおう)(かず)数倍(すうばい)()えている。


膨大(ぼうだい)夜狼万獣王(やろうばんじゅうおう)(かれ)魂魄(こんぱく)負担(ふたん)をかけており、(たましい)奥底(おくそこ)(おも)()しい(かん)じが日増(ひま)しに(つよ)まっていくのを(おぼ)えた。


数時間(すうじかん)(ねむ)った(あと)方源(ほうげん)()()け、座布団(ざぶとん)(うえ)結跏趺坐(けっかふざ)し、修行(しゅぎょう)(つづ)けた。


狼魂蛊(ろうこんこ)


(かれ)狼魂蛊(ろうこんこ)催動(さいどう)し、千人魂(せんにんこん)()(ちから)によって徐々(じょじょ)に狼人魂(ろうじんこん)へと変容(へんよう)していくのを(かん)じた。


元々(もともと)百人級(ひゃくにんきゅう)狼人魂(ろうじんこん)()っており、人体(じんたい)(おおかみ)(みみ)()(つめ)(そな)えていた。しかしその()蕩魂山(とうこんざん)多量(たりょう)胆識蛊(たんしきこ)使用(しよう)したため魂魄(こんぱく)千人魂(せんにんこん)膨張(ぼうちょう)し、(かえ)って(もと)狼魂蛊(ろうこんこ)効果(こうか)(うす)まり、普通(ふつう)魂魄(こんぱく)姿(すがた)(もど)ってしまっていたのである。


狼魂蛊(ろうこんこ)効果(こうか)顕著(けんちょ)ではなく、一時間余(いちじかんあま)()ってようやく、方源(ほうげん)人魂(にんこん)頭頂(ずちょう)にある(おおかみ)(みみ)(かす)かに()びた程度(ていど)であった。


しかし方源(ほうげん)にとっては、(こころ)奥底(おくそこ)にあった(おも)()しい(かん)じが(おお)いに軽減(けいげん)されたことが重要(じゅうよう)だった。


狼人魂(ろうじんこん)へと転換(てんかん)した(あと)は、狼群(おおかみむれ)駆使(くし)(さら)容易(ようい)になる。狼群(おおかみむれ)魂魄(こんぱく)最深部(さいしんぶ)から奴道蛊師(どどうこし)同族(どうぞく)(みと)めるようになるのだ。


残念(ざんねん)ながら、()()には五転(ごてん)狼魂蛊(ろうこんこ)がなく、四転狼魂蛊(してんろうこんこ)使用(しよう)している。後者(こうしゃ)百人魂(ひゃくにんこん)作用(さよう)させる(ぶん)には効率(こうりつ)(あき)らかだが、千人魂(せんにんこん)(およ)ぶと()速度(そくど)では緩慢(かんまん)すぎる。」


(なが)らく催動(さいどう)(つづ)けた(あと)方源(ほうげん)狼魂蛊(ろうこんこ)(おさ)め、心中(しんちゅう)(すくな)からぬ遺憾(いかん)(おぼ)えた。


だが五転蛊(ごてんこ)は、(つね)より容易(ようい)入手(にゅうしゅ)できるものではない。


四転狼魂蛊(してんろうこんこ)煉製(れんせい)するには、万狼王(ばんろうおう)完全(かんぜん)魂魄(こんぱく)一匹(いっぴき)必要(ひつよう)だ。五転狼魂蛊(ごてんろうこんこ)煉製(れんせい)には、狼皇(ろうこう)(たましい)が求められる。


しかも、(かり)煉道大師(れんどうたいし)(みずか)()(くだ)したとしても、五転狼魂蛊(ごてんろうこんこ)煉製成功確率(れんせいせいこうかくりつ)五割(ごわり)()たない。


方源(ほうげん)は元々(もともと)宝黄天(ほうこうてん)での購入(こうにゅう)(かんが)えていたが、(のこ)二枚(にまい)だけの仙元石(せんげんせき)と、(やみ)(ひそ)(なぞ)勢力(せいりょく)存在(そんざい)(おもんばか)り、慎重(しんちょう)()して()計画(けいかく)()()めた。


宝黄天(ほうこうてん)直接購入(ちょくせつこうにゅう)(かな)わぬが、(すで)黒楼蘭(こくろうらん)()要求(ようきゅう)(つた)えてある。黒家(こくけ)黄金部族(おうごんぶぞく)であり、太上家老(たいじょうかろう)(みな)蛊仙(こせん)、その基盤(きばん)(きわ)めて(あつ)い。二、三日(に、さんにち)が経過(けいか)した(いま)此度(こたび)直接催促(ちょくせつさいそく)()ってみよう。」


方源(ほうげん)()()がり、密室(みっしつ)()た。


黒楼蘭(こくろうらん)()い、事情(じじょう)(はな)すと、(かれ)愛莫能助(あいばくのじょ)態度(たいど)(しめ)した。


山陰老弟(さんいんろうてい)(じつ)()うと、(すで)太上家老(たいじょうかろう)たちに援軍要請(えんぐんようせい)手紙(てがみ)()したんだ。だが彼等(かれら)は、五転狼魂蛊(ごてんろうこんこ)貴方(あなた)(わた)すより、()きている狼皇(ろうこう)一頭(いっとう)直接(ちょくせつ)提供(ていきょう)する(ほう)()いと(かんが)えている。しかし狼皇(ろうこう)簡単(かんたん)には(わた)せない。彼等(かれら)(かんが)えでは、戦功(せんこう)交換(こうかん)すべきだという。(なに)しろ(わたし)(みな)納得(なっとく)させなければならないからな。」


黒楼蘭(こくろうらん)(じつ)狡猾(こうかつ)だった。方源(ほうげん)毒誓蛊(どくせいこ)使(つか)ってからというもの、(かれ)態度(たいど)以前(いぜん)(ごと)熱心(ねっしん)ではなくなっていた。


それに(くわ)え、()(あいだ)方源(ほうげん)夜狼群(やろうむれ)収編(しゅうへん)できるよう、大量(たいりょう)人的(じんてき)物的資源(ぶってきしげん)動員(どういん)したことで、(かれ)自分(じぶん)方源(ほうげん)のために(じゅう)(ぶん)()くしたと(かん)じていた。


一方(いっぽう)で、方源(ほうげん)狼群(おおかみむれ)五十万頭(ごじゅうまんとう)以上(いじょう)(ふく)()がっている。()(ほど)膨大(ぼうだい)戦力(せんりょく)を前に、黒楼蘭(こくろうらん)内心(ないしん)警戒感(けいかいかん)(つよ)めていた。毒誓蛊(どくせいこ)による拘束(こうそく)()いているとはいえ、(かれ)潜在意識(せんざいいしき)には(いく)ばくかの防備(ぼうび)(ねん)(しょう)じていたのだ。


方源(ほうげん)(うなず)き、理解(りかい)(しめ)した。


(かれ)自身(じしん)小狐仙(しょうこせん)宝黄天(ほうこうてん)注視(ちゅうし)させ、北原(ほくげん)(さん)狼皇(ろうこう)(あらわ)次第(しだい)出来(でき)(かぎ)確保(かくほ)するよう指示(しじ)していた。


しかし残念(ざんねん)ながら、獣皇(じゅうこう)自体(じたい)市場(しじょう)出回(でまわ)ることは(まれ)である。()数日間(すうじつかん)(たし)かに一頭(いっとう)獣皇(じゅうこう)出品(しゅっぴん)されていたが、()れは狼皇(ろうこう)ではなく豚皇(とんこう)だった。方源(ほうげん)黒楼蘭(こくろうらん)言葉(ことば)(はし)に、(かれ)最早(もはや)遠征(えんせい)開始(かいし)する(ため)()()(はじ)めており、()りを(おさ)()れなくなっていることを(かん)()った。


()数日間(すうじつかん)天川(てんせん)猛丘(もうきゅう)草府(そうふ)など北原(ほくげん)各地(かくち)では(すで)戦火(せんか)()()い、熱戦(ねっせん)()(ひろ)げられている。王庭(おうてい)()(あらそ)有力候補(ゆうりょくこうほ)(なか)で、黒家(こくけ)一族(いちぞく)だけが(うご)かず、狼群(おおかみむれ)蓄積(ちくせき)専念(せんねん)していた。


(いま)狼群(おおかみむれ)もほぼ十分(じゅうぶん)蓄積(ちくせき)された。野望(やぼう)()える黒楼蘭(こくろうらん)は、(じつ)(はや)くから()()れない(ほど)であった。


「では、楼蘭兄貴(ろうらんあにき)はまずどちらの勢力(せいりょく)攻略(こうりゃく)したいとお考えですか?」方源(ほうげん)はそう()うた。


黒楼蘭(こくろうらん)豪快(ごうかい)大笑(おおわら)いし、方源(ほうげん)(かた)をポンポンと(たた)いた。「老弟(ろうてい)()(たし)かだな、見抜(みぬ)かれたか。老弟(ろうてい)(かく)さずに()おう、(おれ)草府(そうふ)直撃(ちょくげき)し、東方部族(とうほうぶぞく)根絶(ねだ)やしにしたいと(おも)っている。東方部族(とうほうぶぞく)美人(びじん)産地(さんち)として有名(ゆうめい)だ。特に東方晴雨(とうほうせいう)という(おんな)は、北原(ほくげん)でも名高(なだか)絶世(ぜっせい)美女(びじょ)だ。奴等(やつら)(おとこ)皆殺(みなごろ)しにし、(おんな)(すべ)(うば)()ってやる!はははは……!」


方源(ほうげん)(かす)かに呆然(ぼうぜん)とした。歴史(れきし)(なが)れには、やはり慣性(かんせい)というものがあるのだろうか。(まわ)(まわ)って、(ふたた)東方部族(とうほうぶぞく)へと(もど)ってきた。


「しかし(いま)や、()()には五十万(ごじゅうまん)狼群(おおかみむれ)がいる。前世(ぜんせ)とは(ちが)うのだ。東方家(とうほうけ)……ふふ。」方源(ほうげん)内心(ないしん)冷笑(れいしょう)した。


(かれ)実力(じつりょく)(すで)に、歴史(れきし)展開(てんかい)影響(えいきょう)(あた)()(いき)(たっ)している。


だが、()れがどうしたというのか?


歴史(れきし)面目(めんもく)一変(いっぺん)させようと、(なん)(かん)わりもない。


利益(りえき)眼前(がんぜん)にある以上(いじょう)、たとえ(てん)(くず)()()け、洪水(こうずい)(てん)()こうとも――万人(ばんにん)(ゆび)()され、後世(こうせい)汚名(おめい)(のこ)そうとも、一切(いっさい)がどうでもよいのだ!


翌日(よくじつ)黒家(こくけ)全軍(ぜんぐん)陣営(じんえい)(はら)い、草府(そうふ)方向(ほうこう)()けて浩浩蕩蕩(こうこうとうとう)進軍(しんぐん)開始(かいし)した。


()(しら)せが(つた)わるや、(ただ)ちに各勢力(かくせいりょく)注目(ちゅうもく)(あつ)めた。


風雲急(ふううんきゅう)()げる情勢(じょうせい)(なか)草府側(そうふがわ)大敵(たいてき)(のぞ)むが(ごと)態勢(たいせい)(ととの)えた。


玉田英雄大会(ぎょくでんえいゆうたいかい)劉黑(りゅうこく)二家(にか)互角(ごかく)であったのとは(こと)なり、草府英雄大会(そうふえいゆうたいかい)では東方部族(とうほうぶぞく)最大(さいだい)優勢(ゆうせい)(にぎ)り、(ほか)勢力(せいりょく)圧倒(あっとう)して(すで)(おお)くの家族(かぞく)傘下(さんか)(おさ)めていた。唯一(ゆいいつ)趙家(ちょうけ)のみが、東方家(とうほうけ)苛烈(かれつ)同盟条件(どうめいじょうけん)(おう)じることを(こば)み、孤軍奮闘(こぐんふんとう)圧力(あつりょく)()(しの)いでいた。


黒家軍(こくけぐん)進撃(しんげき)により、東方部族(とうほうぶぞく)注意(ちゅうい)(ほとん)(すべ)()れに集中(しゅうちゅう)した(ため)趙家(ちょうけ)(いき)をつく(ひま)()陣営(じんえい)(てん)じて独鈷方向(とっこほうこう)移動(いどう)する(きざ)しを()(はじ)めた。


東方家(とうほうけ)当代族長(とうだいぞくちょう)である五転智道蛊師(ごてんちどうこし)東方余亮(とうほうよりょう)は、一夜(いちや)(てっ)して推演测算(すいえんそくさん)(おこな)った(あと)従来(じゅうらい)強硬(きょうこう)姿勢(しせい)一転(いってん)させた。同盟条件(どうめいじょうけん)苛烈(かれつ)さを(はい)し、(きわ)めて寛容(かんよう)豊潤(ほうじゅん)内容(ないよう)へと変更(へんこう)された。


東方余亮(とうほうよりょう)(みずか)説得(せっとく)()()し、趙家(ちょうけ)加盟(かめい)熱心(ねっしん)(うなが)した!


趙家(ちょうけ)族長(ぞくちょう)決断(けつだん)をためらっていた。


趙家(ちょうけ)東方家(とうほうけ)には(ふる)くから確執(かくしつ)があり、近年(きんねん)になるほど()(みぞ)(ふか)まっていた。しかしながら此度(こたび)東方家(とうほうけ)誠意(せいい)(あき)らかであり、提示(ていじ)された条件(じょうけん)()見張(みは)るほど魅力的(みりょくてき)だ。


(ある)いは()れは、趙家(ちょうけ)東方部族(とうほうぶぞく)旧怨(きゅうえん)()てて和解(わかい)する、得難(えがた)好機(こうき)となるのではあるまいか?












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