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蛊真人  作者: 魏臣栋
青茅山
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第五節:希望蛊

この作品は中国の作者・蛊真人によって翻訳されました。”

「……!?」ザワついていた場が一瞬で静まり返り、無数の視線が一気に集中してきやがった。


「こりゃ面白くなってきたぜ」方源は心底で笑ってやった。みんなの目の前で川を渡り、対岸に足を踏み入れる。


「ぐっ…!」すぐにズシリと圧力を感じる。花畑の奥にある霊泉から漏れ出る濃すぎる元気が、圧力を生んでるんだよな。


でもすぐに、足元の花々からモヤッと光の粒が立ち昇ってきて、フワフワと体全体を包み込んだかと思うと、スーッと体に吸い込まれていった。


「これが希望のか」方源はまぶたを細めた。説明してねーけど、こいつは希望の蠱だってのは知ってんだよ。一粒一粒が全部蠱(蟲)で、名前の通り「希望」ってやつさ。最古の伝説で希望の蠱の話があるんだぜ。



「この世がまだ生まれたての頃の話さ。どこまでも荒れ果てた大地で、獣どもが暴れ回ってた時代。最初の人間『人祖じんそ』が現れたんだよ」


「彼は毛皮をまとって獣の血をすすり、生きるのに必死だった。そこに『苦境くきょう』って名の獣の群れがね、人祖の匂いを嗅ぎつけて食い殺そうと追いかけてきたのさ」


「人祖には岩のような頑丈な体もなければ、鋭い牙も爪もない。どうやって『苦境』の獣と戦えっていうんだ?食料も安定せず、隠れ場を探しては逃げ回る毎日。自然の摂理の底辺で、もう生き永らえるのもやっとだったんだって」


「そんときだ、三匹のが自分から近寄ってきて人祖に言ったんさ。『お前の命で俺らを養ってくれたら、このピンチ救ってやるぜ』って」


追い詰められた人祖、仕方なく承知する。まず少年時代の青春を捧げて、一番でかい蠱に契約。そいつが力を授けてくれたんだ。


力のおかげで食料も安定し、自己防衛もできるように。人祖は暴れ回って苦境の獣を何人も倒すけど、すぐにボロが出る。力って万能じゃないって気づいたんだよ。休みなしに使い続けると、すぐガス欠になるし。何より苦境の群れ全体から見りゃ、一人の力なんてちっぽけなもんだ。


「くそ…!」悔しさ噛みしめた人祖、今度は働き盛りの中年時代を、三匹の中で一番美しい蠱に捧げる決意をする。


二匹目の蠱がくれたのは知恵。これで反省したり経験積んだりできるようになった。力より知恵が役立つ場面も多いって気づいて、次々と苦境を打ち破っていく。獣の肉食って血すすりながら、必死に生き延びるさ。


だが長くは続かねえ。少年も中年も蠱に捧げたせいで、人祖は急速に老いていった。筋肉は衰え、頭の回転も鈍る。


「人間よ、もう貢ぐもの残ってないじゃねえか」力の蠱と知恵の蠱がそう言うと、あっさり姿を消した。


取り残された人祖、苦境の群れに包囲される。走れない、歯も抜け落ち、野草さえ噛み切れない。地面に倒れ込み、絶望に浸るその時――


三匹目の蠱が囁いた。「おい、俺に契約しないか?苦境から救ってやるよ」


人祖涙ながらに「もう何も残ってない。老年だけだ。これを捧げたら即死だ。今すぐ死ぬより…一秒でも長く生きたい」


すると蠱が言う。「俺の要求は一番小さい。心を預けてくれりゃいい」


「心か…いいよ」人祖は首を縦に振る。「でもこの状況、力と知恵戻ったってどうにもならねえだろ?」


他の二匹と比べ、この蠱は小さな光の粒みたいなもん。色も地味で輝きも弱い。だが契約成立と同時に、突然太陽のような光を放った!


「ぎゃああ!希望蠱だ!!」苦境の獣たちが悲鳴を上げて逃げ出す。人祖は呆然、その場に立ち尽くす。


(心を希望に預ければ、苦境に打ち勝てる…か)


「その瞬間、希望蠱が光の川となって方源ほうげんの体内へ流れ込んだ。外界の圧力に押されるように、へその三寸下で自然と固まり始める。


『……軽くなった』方源は圧力の減退を感じ、再び歩を進めた。足を踏み出すたび、花畑から新たな希望の蠱が舞い上がり、彼の体に吸い込まれていく。光の塊は膨らみ続け、輝きを増していく。


だが対岸の試験官は眉をひそめた。『希望蠱の数が……少なすぎる』。密かに監視していた家老たちも胸騒ぎを覚える。族長までが額に皺を寄せた──これは甲等資質が出す気象では断じてない!


方源は圧力をものともせず前進を続ける。


「十歩未満は修業の素質無し。十歩から二十歩は丁等資質。二十歩から三十歩は丙等。三十歩から四十歩は乙等。四十歩から五十歩こそ甲等――現時点で二十三歩進んだ」


「二十四、二十五、二十六……二十七」方源が心で数えるやいなや、両腎の間で光の塊が限界まで膨張し、轟然と爆発した。この爆発は体内に留まり、外からは微塵も感知できない。ただ本人だけが天地がひっくり返るような玄妙を体験する。


全身の毛孔が緊急閉鎖。神経が引き絞られた弓のように張り詰めたかと思うと、次の瞬間には雲海に転落するがごとく全身の力が抜ける。汗腺が一斉に開き、珠玉の汗が肌を覆った。


一瞬の失神から回復すると、臍下三寸に新たな「竅」が形成されていた。まさに――


「開竅成功だ!これこそ長生への道標!!」

この作品は中国の作者・蛊真人によって翻訳されました。”

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