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蛊真人  作者: 魏臣栋
魔头乱世
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第七十八節:安然撤退

貝草川(かいそうせん)戦局(せんきょく)推移(すいい)(しず)かに見守(みまも)っていた。


(かれ)周囲(しゅうい)には十一人(じゅういちにん)蛊師(こし)(つど)っている。貝家(かいけ)家老(かろう)のみならず、鄭家(ていけ)から(のが)れてきた数名(すうめい)家老(かろう)も、貝草川(かいそうせん)()()けに(おう)じて此処(ここ)結集(けっしゅう)した。


彼ら(かれら)が此処(ここ)(きた)たった(ひと)つの目的(もくてき)は、常山陰(じょうさんいん)()(のぞ)き、戦局(せんきょく)勝敗(しょうはい)逆転(ぎゃくてん)させることにある。


葛家(かつけ)烏合(うごう)(しゅう)()ぎず、(うれ)うるに()りない。(しん)(かなめ)狼王(ろうおう)常山陰(じょうさんいん)ただ一人(いちにん)である。(かれ)(たお)せば、勝利(しょうり)は我々(われわれ)のものだ!我々(われわれ)には(いま)逆転(ぎゃくてん)希望(きぼう)がある!!」


貝草川(かいそうせん)()(するど)(ひかり)宿(やど)らせ、戦場(せんじょう)観察(かんさつ)しつつ、仲間(なかま)士気(しき)(たか)(つづ)けた。


鄭家(ていけ)家老(かろう)たちは(すで)(かれ)()きに(したが)っていた:「貝家(かいけ)族長(ぞくちょう)()う通り(どおり)だ。だが、我々(われわれ)はいつ攻撃(こうげき)開始(かいし)すべきか?」


貝草川(かいそうせん)()(ほそ)めた:「(しの)ぶことが必要(ひつよう)だ。狼王(ろうおう)(きわ)めて慎重(しんちょう)で、(つね)亀背万狼王(きせいばんろうおう)のみを前線(ぜんせん)派遣(はけん)し、風狼万獣王(ふうろうばんじゅうおう)身辺(しんぺん)(のこ)している。(かれ)(まわ)りの防御(ぼうぎょ)(りょく)相当(そうとう)(あつ)い。我々(われわれ)の実力(じつりょく)(つよ)いが、突撃(とつげき)機会(きかい)一度(いちど)きりだ。失敗(しっぱい)すれば、強行突破(きょうこうとっぱ)するしかなくなる。()(とき)には、(まも)るべき地形(ちけい)もなく、(おおかみ)()れの(なか)()ち、常山陰(じょうさんいん)()機会(きかい)はますます(とお)のくだろう。」


()瞬間(しゅんかん)戦場(せんじょう)史上(しじょう)(もっと)激烈(げきれつ)対轟(たいごう)爆発(ばくはつ)させた。


様々(さまざま)な攻撃(こうげき)(いろ)とりどりに戦場(せんじょう)(そら)()たし、轟音(ごうおん)爆発音(ばくはつおん)()えることなく(ひび)(わた)った。


(かく)(ごと)光景(こうけい)()にし、一同(いちどう)(こころ)(りん)とさせた。()(よう)戦場(せんじょう)では、三転蛊師(さんてんこし)(いえど)(かす)かな存在(そんざい)()ぎない。四転(してん)五転蛊師(ごてんこし)こそが、(しん)大黒柱(だいこくばし)なのである。


殿(どの)(いま)こそ我々(われわれ)が攻撃(こうげき)開始(かいし)する最良(さいりょう)時機(じき)でございます。」


一人(ひとり)家老(かろう)突然(とつぜん)提案(ていあん)した。


(あせ)るな。」


貝草川(かいそうせん)()()って(せい)した。


(はげ)しい対轟(たいごう)がしばらく(つづ)いた(あと)終息(しゅうそく)すると、また(べつ)家老(かろう)()()れずに()った:「族長(ぞくちょう)殿(どの)(とき)()たれり。葛家(かつけ)蛊師(こし)たちが真元(しんげん)回復(かいふく)専念(せんねん)している(すき)()けば、(かなら)ずや不意打(ふいう)ちを成功(せいこう)させられます。」


(いな)!我々(われわれ)の標的(ひょうてき)常山陰(じょうさんいん)ただ一人(ひとり)先程(さきほど)激戦(げきせん)でむしろ(かれ)(まわ)りの狼群(ろうぐん)増強(ぞうきょう)されている。」


貝草川(かいそうせん)(きび)しく拒絶(きょぜつ)した。


その直後(ちょくご)方源(ほうげん)突然(とつぜん)(うご)()し、(するど)戦機(せんき)(とら)えて一区画(いっくかく)城壁(じょうへき)轟音(ごうおん)(とも)崩壊(ほうかい)させた。


()れが決定的(けっていてき)進展(しんてん)となった。


裴家(はいけ)防衛線(ぼうえいせん)は、(つい)(ひと)つの突破口(とっぱこう)()かれた。大量(たいりょう)野狼(やろう)殺到(さっとう)し、同時(どうじ)亀背万狼王(きせいばんろうおう)到着(とうちゃく)した。


()れは大変(たいへん)だ!防衛線(ぼうえいせん)(やぶ)れ、狼群(ろうぐん)完全(かんぜん)攻勢(こうせい)展開(てんかい)すれば、裴家(はいけ)状況(じょうきょう)急転直下(きゅうてんちょっか)し、危機(きき)(おちい)る!」


殿(どの)、我々(われわれ)は()ぐに出手(しゅっしゅ)すべきです。()のままでは裴家(はいけ)全滅(ぜんめつ)してしまいます。」


(いま)(うご)けば、(いま)()局面(きょくめん)(すく)うことができます。」


(いな)!」


貝草川(かいそうせん)は立ち()がった。()()には(するど)(ひかり)()らめき、心中(しんちゅう)(よろこ)びに()ちていた。(かれ)辛抱強(しんぼうづよ)()(つづ)けていた戦機(せんき)が、(つい)(あらわ)れたのである。


裴家(はいけ)防衛線(ぼうえいせん)突破(とっぱ)されさえすれば、常山陰(じょうさんいん)(かなら)狼群(ろうぐん)()()てて、大挙(たいきょ)して裴家(はいけ)陣営(じんえい)攻撃(こうげき)せざるを()ない。そうなれば、(かれ)身辺(しんぺん)防御力(ぼうぎょりょく)手薄(てうす)になり、貝草川(かいそうせん)奇襲(きしゅう)して()()絶好(ぜっこう)機会(きかい)(あた)えることになる。


「もし(いま)出手(しゅっしゅ)すれば、常山陰(じょうさんいん)気付(きづ)かせ、狼群(ろうぐん)収束(しゅうそく)させて戦局(せんきょく)(ふたた)膠着状態(こうちゃくじょうたい)(おとし)()れるだけだ。我々(われわれ)が露見(ろけん)すれば、(かれ)()貴重(きちょう)機会(きかい)(うしな)う。三家連合(さんかれんごう)の中で、何故(なぜ)裴家(はいけ)損害(そんがい)()()より(すく)ないのか?狼王(ろうおう)(かく)(ごと)慎重(しんちょう)である以上(いじょう)容易(ようい)(たお)せる相手(あいて)では(けっ)してない。裴家(はいけ)(えさ)として(もち)い、(かれ)勝利(しょうり)滋味(じみ)(ひと)()めさせ、警戒心(けいかいしん)(ゆる)ませた(とき)こそ、我々(われわれ)が(かれ)()機会(きかい)なのである!」


電光石火(でんこうせっか)()に、貝草川(かいそうせん)脳裏(のうり)思考(しこう)電転(でんてん)し、心念(しんねん)幾度(いくど)(ひるが)えった。


しかし(くち)にし()言葉(ことば)は、()のようであってはならなかった。(かれ)(くち)(ひら)いて()った:「もう(すこ)()て。我々(われわれ)は(けっ)して(あわ)ててはならぬ。裴燕飛(はいえんぴ)()じよ!(かれ)北原(ほくげん)名高(なだか)猛将(もうしょう)である。お前達(まえたち)(かれ)実力(じつりょく)()れだけだと本気(ほんき)(おも)っているのか?」


一群(いちぐん)三転蛊師(さんてんこし)たちは()言葉(ことば)()き、(かろ)うじて突進(とっしん)(あし)()めた。


貝草川(かいそうせん)語音(ごおん)()ちるや(いな)や、裴燕飛(はいえんぴ)殺招(さっしょう)金虹一撃(きんこういちげき)」を発動(はつどう)した。強烈(きょうれつ)爆発(ばくはつ)燦爛(さんらん)たる光芒(こうぼう)は、人々(ひとびと)をして(おも)わず(うで)()げて双眼(そうがん)(さえぎ)らしめた。


光芒(こうぼう)(さん)じた(あと)亀背万狼王(きせいばんろうおう)重傷(じゅうしょう)()い、裴燕飛(はいえんぴ)崩壊(ほうかい)した城壁(じょうへき)廃墟(はいきょ)(うえ)浮遊(ふゆう)し、顔色(かおいろ)蒼白(そうはく)であった。


(つよ)い!」


一撃(いちげき)だけで、万獣王(ばんじゅうおう)重傷(じゅうしょう)()わせた。」


()れは裴燕飛(はいえんぴ)看板殺招(かんばんさっしょう)だ、流石(さすが)(すご)い!」


「やはり貝家(かいけ)族長(ぞくちょう)見事(みごと)だ。戦場全体(せんじょうぜんたい)見透(みす)かす(ごと)洞察力(どうさつりょく)には敬服(けいふく)した。」


家老(かろう)たちは次々(つぎつぎ)と裴燕飛(はいえんぴ)戦闘力(せんとうりょく)驚嘆(きょうたん)し、同時(どうじ)貝草川(かいそうせん)英明(えいめい)さを(たた)えた。


貝草川(かいそうせん)口元(くちもと)(かす)かに(ゆが)めた。(かれ)としては、(むし)裴燕飛(はいえんぴ)此処(ここ)(まも)()れない(ほう)(のぞ)んでいたのだ。


機会(きかい)はまだある。もう(すこ)()たねばならない。裴燕飛(はいえんぴ)(かく)(ごと)強力(きょうりょく)殺招(さっしょう)使(つか)えば、(かなら)真元(しんげん)(おお)きく消耗(しょうもう)している。(かれ)顔色(かおいろ)()れば、自身(じしん)相当(そうとう)(くる)しんでいるのは(あき)らかだ。風狼王(ふうろうおう)常山陰(じょうさんいん)(そば)にいる(かぎ)り、狼王(ろうおう)不敗(ふはい)()にある。裴家(はいけ)依然(いぜん)として劣勢(れっせい)だ。もし狼群(ろうぐん)裴家(はいけ)陣営(じんえい)()()れば、()れは(さき)計画(けいかく)続行(ぞっこう)する。もし裴燕飛(はいえんぴ)優勢(ゆうせい)(てん)じれば、()れは痛打(つうだ)(くわ)えて協力(きょうりょく)し、常山陰(じょうさんいん)致命(ちめい)一撃(いちげき)をもたらす!」


貝草川(かいそうせん)脳裏(のうり)()(ねん)電光石火(でんこうせっか)(ごと)()(めぐ)った。(またた)()に、(かれ)戦術(せんじゅつ)調整(ちょうせい)した。


()れにはまだ機会(きかい)がある、まだ希望(きぼう)がある!()(とき)こそ、(あわ)てることは最も(ゆる)されぬ。()()き、()(しの)ばねばならぬ……常山陰(じょうさんいん)さえ()()れば、形勢逆転(けいせいぎゃくてん)()うに(およ)ばず、()れは()れによって名声(めいせい)(たか)め、劉文武(りゅうぶんぶ)帰順(きじゅん)した(のち)にはより(おも)きを()し、家族(かぞく)により(おお)機会(きかい)()()ることになろう!」


貝草川(かいそうせん)(こころ)(なか)で、不断(ふだん)(みずか)らを(ふる)()てていた。


だが()(とき)(かれ)瞳孔(どうこう)(きゅう)(ちぢ)み、我慢(がまん)ならず呪罵(じゅば)爆発(ばくはつ)した:「ちっ、畜生(ちくしょう)!」


家老(かろう)たちは一斉(いっせい)(かれ)(いぶか)しげな視線(しせん)()げかけた。


これまで、状況(じょうきょう)不利(ふり)であっても、貝草川(かいそうせん)(つね)胸中(きょうちゅう)成算(せいさん)があるように振舞(ふるま)い、余裕(よゆう)()自信(じしん)()せてきた。何故(なぜ)(いま)()(ごと)く取り(とりみだ)しているのか?


貝草川(かいそうせん)はもはや(ほか)(もの)()()にする余裕(よゆう)などなかった。(かれ)戦場(せんじょう)(かた)見据(みす)え、(こえ)(ふる)わせて自問(じもん)した:「何故(なぜ)だ……常山陰(じょうさんいん)何故(なぜ)(いま)()(とき)撤退(てったい)(えら)んだのか!?」


狼王(ろうおう)(あき)らかに優勢(ゆうせい)にある。亀背万狼王(きせいばんろうおう)重傷(じゅうしょう)()ったが、(いま)()には(いた)っていない。(かれ)手元(てもと)には依然(いぜん)として風狼万獣王(ふうろうばんじゅうおう)(ひか)えている!


一方(いっぽう)裴燕飛(はいえんぴ)(めい)()るからに強弩(きょうど)(すえ)だ。(もっと)重要(じゅうよう)なのは、裴家(はいけ)陣営(じんえい)防衛線(ぼうえいせん)(すで)(ひと)つの突破口(とっぱこう)穿(うが)たれていることである。()弱点(じゃくてん)()いて猛攻(もうこう)(くわ)えれば、裴家(はいけ)防御(ぼうぎょ)への圧力(あつりょく)従前(じゅうぜん)数倍(すうばい)()()がるはずだ。(ふせ)()れない可能性(かのうせい)(きわ)めて(たか)い。


狼群(ろうぐん)大挙(たいきょ)して裴家(はいけ)陣営(じんえい)侵攻(しんこう)する(とき)()てば、()貝草川(かいそうせん)()(すき)()じて奇襲(きしゅう)仕掛(しか)け、狼王(ろうおう)背後(はいご)から致命(ちめい)一撃(いちげき)(くわ)えることができたはずだ!


(しか)るに(いま)(やつ)撤退(てったい)しただと!?


常山陰(じょうさんいん)何故(なぜ)撤退(てったい)したのか、貝草川(かいそうせん)には(いま)考え(かんがえ)る(ひま)もない。


(かれ)極度(きょくど)緊張(きんちょう)(おそ)われ、元来(もとより)余裕(よゆう)のあった(かお)一瞬(いっしゅん)恐慌(きょうこう)(はし)った。狼王(ろうおう)依然(いぜん)として雄厚(ゆうどう)戦力(せんりょく)(たも)っている。一度撤退(いちどてったい)されれば、(かれ)(くる)しい思い(おもい)で()(しの)(つづ)けてきた斬首奇襲(ざんしゅきしゅう)計画(けいかく)は、開始(かいし)もせずに頓挫(とんざ)してしまう。


(さら)(わる)いことには、貝家(かいけ)陣営(じんえい)鄭家(ていけ)陣営(じんえい)も、(すで)葛家(かつけ)支配下(しはいか)にある。一旦(いったん)狼群(ろうぐん)撤退(てったい)し、これらの捕虜(ほりょ)陣営内(じんえいない)物資(ぶっし)()()られてしまえば、貝草川(かいそうせん)完全(かんぜん)(みずか)らの家族(かぞく)(うしな)うことになる。


家族(かぞく)すら(うしな)ってしまい、数人(すうにん)家老(かろう)だけが(そば)(のこ)るという状況(じょうきょう)では、貝草川(かいそうせん)族長(ぞくちょう)としての()は、(かなら)ずや衆人(しゅうじん)(わら)(ぐさ)となるだろう。


(とお)将来(しょうらい)()うに(およ)ばず、劉文武(りゅうぶんぶ)帰順(きじゅう)した(あと)でも、(かれ)(おも)きを()せないだろう。


駄目(だめ)だ、絶対(ぜったい)常山陰(じょうさんいん)()のまま撤退(てったい)させてはならぬ!一旦(いったん)(やつ)退(しりぞ)けば、形勢逆転(けいせいぎゃくてん)希望(きぼう)一切合切(いっさいがっさい)(つい)える!」


貝草川(かいそうせん)(こころ)(うち)(さけ)んだ。


(かれ)猛然(もうぜん)身体(からだ)()こし、(こえ)()()げて呼喝(こかつ)した:「諸君(しょくん)、もはや()ってはおれぬ。常山陰(じょうさんいん)(すで)力尽(ちからつ)き、撤退(てったい)(はか)ろうとしている。(いま)こそ()()(いぬ)()ち、狼王(ろうおう)()()り、()(ぞく)奪回(だっかい)する(とき)である!」


()(そば)にいる家老(かろう)たちも、(すで)戦場(せんじょう)状況(じょうきょう)()にしていた。


貝草川(かいそうせん)言葉(ことば)は、彼ら(かれら)の精神(せいしん)(ふる)()て、戦意(せんい)勃発(ぼっぱつ)させた。


()て!」


常山陰(じょうさんいん)()()がるな!」


狼王(ろうおう)覚悟(かくご)あるなら(われ)三百合戦(さんびゃくがっせん)するがよい!!」


三転蛊師(さんてんこし)たちの一群(いちぐん)が、貝草川(かいそうせん)(ひき)いられ、偽装(ぎそう)()()て、葛家軍(かつけぐん)背後(はいご)から奇襲攻撃(きしゅうこうげき)開始(かいし)した。


「ふん、()たして(あらわ)れたな。」


方源(ほうげん)(すで)予測(よそく)しておき、此等(これら)(もの)()ても驚愕(きょうがく)しなかった。


(かれ)(あき)らかに認識(にんしき)していた:貝草川(かいそうせん)らが(みずか)らの陣営(じんえい)救援(きゅうえん)(もど)らなかった以上(いじょう)(のこ)される可能性(かのうせい)(ふた)つしかないと。


(ひと)つは葛家本拠(かつけほんきょ)襲撃(しゅうげき)し、報復(ほうふく)実行(じっこう)すること。もう(ひと)つは、裴家(はいけ)支援(しえん)するために()()けることである。


三家(さんけ)陣営(じんえい)(なん)異変(いへん)もない以上(いじょう)()れら一味(いちみ)(かなら)戦場(せんじょう)周辺(しゅうへん)潜伏(せんぷく)しているはずだ。


方源(ほうげん)がもし一本槍(いっぽんやり)裴家陣営(はいけじんえい)攻撃(こうげき)し、裴燕飛(はいえんぴ)死闘(しとう)()(ひろ)げていれば、肝心(かんじん)(とき)腹背(ふくはい)(てき)()けること必定(ひつじょう)であった。(ゆえ)撤退(てったい)こそが賢明(けんめい)選択(せんたく)なのである。「(ただ)()(もの)たちは、なかなか()(しの)(もの)よ。(いま)になってようやく(わたし)()()されたとは、(おお)きく(たくら)んでいる(あか)しだ。」


方源(ほうげん)白眼狼(はくがんろう)()()ったまま、表情(ひょうじょう)冷静(れいせい)(たも)っていた。


しかし葛家(かつけ)(もの)たちは、(まぬ)れず(あわ)(はじ)めた。


貝草川(かいそうせん)十二人(じゅうににん)は、各々(おのおの)が高手(こうしゅ)であり、突進(とっしん)してくる道中(どうちゅう)()かう(ところ)(てき)()く、彼ら(かれら)に巨大(きょだい)精神的圧力(せいしんてきあつりょく)()()けてきた。


太上家老(たいじょうかろう)(さま)(いま)如何(いか)にすべきでしょうか?」


葛光(かつこう)方針(ほうしん)(あお)いだ。


(あわ)てるな。()命令(めいれい)(したが)い、(とも)撤退(てったい)すればよい。」


方源(ほうげん)()ややかに(わら)った。


戦場(せんじょう)での撤退(てったい)は、(きわ)めて(たか)危険(きけん)(ともな)う。退却中(たいきゃくちゅう)(てき)追撃(ついげき)され、潰走(かいそう)(てん)じる可能性(かのうせい)(だい)いにある。しかし方源(ほうげん)前世(ぜんせ)において数多(あまた)戦陣(せんじん)経験(けいけん)しており、手中(しゅちゅう)狼群(ろうぐん)断後(だんご)最適(さいてき)である。両方(りょうほう)からの圧力(あつりょく)(はい)し、安然(あんぜん)撤退(てったい)する手腕(しゅわん)は、(かれ)には(そな)わっている。


(かれ)亀背万狼王(きせいばんろうおう)(みずか)らの(そば)()()せ、狼群(ろうぐん)収束(しゅうそく)させた。百狼王(ひゃくろうおう)千狼王(せんろうおう)などは、軍勢(ぐんぜい)中央(ちゅうおう)集結(しゅうけつ)させた。


そして普通(ふつう)野狼(やろう)たちは後方(こうほう)(のこ)し、殿軍(でんぐん)として追撃軍(ついげきぐん)真元(しんげん)消耗(しょうもう)させる役目(やくめ)(にな)わせた。


()たして、しばらくすると貝草川(かいそうせん)らも衝勢(しょうせい)(ゆる)(はじ)めた。空窓(くうそう)(なか)真元(しんげん)大切(たいせつ)使(つか)わざるを()なくなったのである。


(にく)らしい……()のまま常山陰(じょうさんいん)見逃(みのが)すわけにはいかぬ!」


貝草川(かいそうせん)(くちびる)()()き、殺意(さつい)()まった双眸(そうぼう)(あか)らめ、心中(しんちゅう)(くや)しさで()()っていた。


裴燕飛(はいえんぴ)何故(なぜ)(いま)()()さぬ!?()(よる)狼王(ろうおう)(たお)さずして、我々(われわれ)三家(さんか)如何(いか)英雄大会(えいゆうたいかい)(かお)()けできよう!?」


貝草川(かいそうせん)絶叫(ぜっきょう)した。


裴燕飛(はいえんぴ)()ややかに(はな)(わら)った。(かれ)蛮勇(ばんゆう)()ではない。貝草川(かいそうせん)(いま)になって突如(とつじょ)奇襲(きしゅう)開始(かいし)したのは、裴家(はいけ)(おとり)使(つか)おうという計算(けいさん)だと看破(かんぱ)している。


しかし狼王常山陰(ろうおうじょうさんいん)看過(かんか)するつもりもない。


此役(しえき)葛家(かつけ)(ひと)つで(みっ)つを(てき)(まわ)し、もし無事(ぶじ)撤退(てったい)できれば、(かなら)一戦(いっせん)()()げ、此方(こちら)三家(さんか)葛家(かつけ)()(だい)()るだろう。


(さら)に、裴家(はいけ)死傷者(ししょうしゃ)甚大(じんだい)で、(かく)(ごと)深仇(しんきゅう)(むく)いずして如何(いか)がすべきか?


()れを(おも)(いた)り、裴燕飛(はいえんぴ)決意(けつい)(かた)めた。


五転(ごてん)——破釜沈舟蛊(はふちんしゅうこ)


ざあざあざあ——


裴燕飛(はいえんぴ)心底(しんてい)(から)っぽになる(かん)じと(とも)に、膨大(ぼうだい)真元(しんげん)虚空(こくう)から()()で、()()った(かれ)空窓(くうそう)疾風(しっぷう)(ごと)()たした。


常山陰(じょうさんいん)(いのち)(いただ)くぞ!」


(かれ)怒号(どごう)一声(いっせい)追撃(ついげき)速度(そくど)()した。


葛家(かつけ)(もの)たちは一斉(いっせい)動揺(どうよう)した。


しかし方源(ほうげん)(わら)()し、左右(さゆう)()うた:「()(もの)(だれ)か?」


葛光(かつこう)方源(ほうげん)平静(へいせい)ぶりに感服(かんぷく)し、心中(しんちゅう)動揺(どうよう)半減(はんげん)した。(ひく)(おも)(こえ)(こた)えた:「貝家(かいけ)族長(ぞくちょう)貝草川(かいそうせん)でございます。」


貝草川(かいそうせん)……裴燕飛(はいえんぴ)……ふふふ、乱世(らんせい)英雄(えいゆう)(あら)わるとは、(じつ)結構(けっこう)なことだ。」


方源(ほうげん)(たか)らかに(ひょう)し、()(こえ)(よる)(そら)(ひび)(わた)った。


(しか)(のち)(かれ)白眼狼(はくがんろう)から()()り、駝狼(だろう)()()えた。


白眼狼(はくがんろう)数歩(すうほ)跳躍(ちょうやく)し、風狼万獣王(ふうろうばんじゅうおう)亀背万狼王(きせいばんろうおう)(かた)(なら)べた。


「あれは……!」


貝草川(かいそうせん)衝勢(しょうせい)途切(とぎ)れ、瞳孔(どうこう)(きゅう)(ちぢ)んだ。


裴燕飛(はいえんぴ)顔色(かおいろ)鉄青(てっせい)となり、(きわ)めて(けわ)しい表情(ひょうじょう)()かべた。


白眼狼(はくがんろう)異獣(いじゅう)であり、その戦力(せんりょく)万獣王(ばんじゅうおう)匹敵(ひってき)する!彼ら(かれら)は之前(これまで)方源(ほうげん)にばかり注目(ちゅうもく)し、白眼狼(はくがんろう)軽視(けいし)していた。(いま)白眼狼(はくがんろう)(みずか)(すす)()たことで、その正体(しょうたい)瞬時(しゅんじ)見破(みやぶ)られた。


「くっ……!」


裴燕飛(はいえんぴ)()()(しば)ったが、()(すべ)なく追撃(ついげき)中止(ちゅうし)した。


方源(ほうげん)風狼万獣王(ふうろうばんじゅうおう)一頭(いっとう)だけならまだしも、(いま)また白眼狼(はくがんろう)(あらわ)れた。()戦力(せんりょく)追撃(ついげき)(はば)むに十分(じゅうぶん)であり、(はん)って逆襲(ぎゃくしゅう)してくる可能性(かのうせい)さえある。


裴燕飛(はいえんぴ)危険(きけん)(おか)し、(ふたた)裴家(はいけ)危殆(きたい)(おとし)()れることを(おそ)れた。


(かれ)()()くことを(えら)んだ。


一方(いっぽう)貝草川(かいそうせん)もやむなく追撃(ついげき)(あし)()めざるを()なかった。


(かれ)大軍(たいぐん)安然(あんぜん)撤退(てったい)するのを見送(みおく)り、心中(しんちゅう)には失望感(しつぼうかん)(ほか)に、一股(いちこ)(つめ)たい畏怖(いふ)(ねん)()()がった:「狼王(ろうおう)常山陰(じょうさんいん)其方(そち)手札(てふだ)枚数(まいすう)(いず)(ほど)あるというのか?」













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