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蛊真人  作者: 魏臣栋
魔头乱世
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第六十八節:正道英雄

「そろそろ(とき)だな……」 方源(ほうげん)心中(しんちゅう)でひらめいた。夜狼万兽王(やろうばんじゅうおう)十余(じゅうよ)りの夜狼千兽王(やろうせんじゅうおう)(ひき)いて、戦団(せんだん)参入(さんにゅう)し、严家(げんけ)众人(しゅうじん)(まえ)()ちはだかった。


狼群(おおかみむれ)攻撃(こうげき)(もと)で、严家(げんけ)蛊师(こし)(はじ)めての死伤者(ししょうしゃ)(あらわ)れた。


狼嚎蛊(ろうこうこ)!」


方源(ほうげん)(あま)(あお)いで長嘯(ちょうしょう)し、(おおかみ)のような嗷叫(ごうきょう)(はっ)した。叫声(きょうせい)(おお)範囲(はんい)(ない)で、狼群(おおかみむれ)戦力(せんりょく)激増(げきぞう)した。


狼烟蛊(ろうえんこ)!」


旋即(せんきゅう)(かれ)はまた滚滚(こんこん)たる濃煙(のうえん)(はっ)し、戦場(せんじょう)籠罩(ろうちょう)し、迅速(じんそく)狼群(おおかみむれ)傷勢(しょうせい)治療(ちりょう)した。


厳家(げんけ)(もの)たちは(みな)大驚失色(だいきょうしっしょく)した。


水魔浩激流(すいまこうげきりゅう)顔色(かおいろ)も、(かみ)(ごと)蒼白(そうはく)になった。


先程(さきほど)まで方源(ほうげん)(たん)指揮(しき)()るだけだったが、(いま)突如(とつじょ)として()()したことで、一瞬(いっしゅん)にして優位(ゆうい)勝勢(しょうせい)へと転換(てんかん)させた。


数十(すうじゅう)もの憎悪(ぞうお)恐怖(きょうふ)(いか)り、(つめ)たい視線(しせん)方源(ほうげん)()けられた。衆目(しゅうもく)睽睽(きき)のなか、方源(ほうげん)は淡々(たんたん)と(わら)い、駝狼(だろう)()()れて徐々(じょじょ)に後退(こうたい)し、厳家(げんけ)(もの)たちとの距離(きょり)()った。


(てき)要撃戦術(ようげきせんじゅつ)(ふせ)ぐため、方源(ほうげん)周囲(しゅうい)には多数(たすう)(おおかみ)がおり、白眼狼(はくがんろう)一匹(いっぴき)いた。()完全(かんぜん)には成熟(せいじゅく)していないが、(すで)一般(いっぱん)千狼王(せんろうおう)上回(うわま)わる戦力(せんりょく)()っている。


方源(ほうげん)のこの挙動(きょどう)()にし、包囲(ほうい)された蛊師(こし)たちは(みな)(こころ)谷底(たんてい)(しず)み、闘志(とうし)()り、()()(おちい)り、(のが)れられないという(かん)じが(しょう)じた。


時間(じかん)(ゆる)やかに(なが)れ、厳家(げんけ)蛊師(こし)たちは(ふか)泥沼(どろぬま)()まったように、もがけばもがくほど(ふか)(しず)んでいった。


方源(ほうげん)(さき)(どう)(いん)した駄狼(だろう)(かれ)らの真元(しんげん)消耗(しょうもう)させたことが、(いま)(せい)(こう)(あらわ)していた。


厳家(げんけ)家老(かろう)たちは次々(つぎつぎ)と戦場(せんじょう)惨死(さんし)し、一股(いっこ)悲憤(ひふん)()戦場(せんじょう)中央(ちゅうおう)()もった。


常山陰(じょうさんいん)怨霊(おんりょう)となっても貴様(きさま)見逃(みのが)さない!」一人(ひとり)家老(かろう)()え、()目前(もくぜん)呪詛(じゅそ)()いた。


だがこの呪詛(じゅそ)は、方源(ほうげん)(こころ)(なか)冷笑(れいしょう)(かえ)されるだけだった。「幽霊(ゆうれい)になる機会(きかい)など(あた)えない。貴様(きさま)魂魄(こんぱく)は、蕩魂山(とうこんざん)(うるお)肥料(ひりょう)となるのだ。」


狼王(ろうおう)覚悟(かくご)があるならこの(おれ)一騎打(いっきう)ちをせよ!」厳家(げんけ)戦堂家老(せんどうかろう)咆哮(ほうこう)した。


()い!腰抜(こしぬ)けめ!臆病者(おくびょうもの)め!」(かれ)必死(ひっし)方源(ほうげん)挑発(ちょうはつ)し、(のこ)(すく)ない真元(しんげん)()(しぼ)って、人生最期(じんせいさいご)突撃(とつげき)開始(かいし)した。


方源(ほうげん)無表情(むひょうじょう)でそれを()つめ、脳裏(のうり)一瞬(いっしゅん)(おも)いを(めぐ)らせるや、たちまち狼群(おおかみむれ)波濤(はとう)(ごと)()()せ、戦堂家老(せんどうかろう)悲壮(ひそう)突進(とっしん)途上(とちゅう)扼殺(やくさつ)した。


狼群(おおかみむれ)(さん)じた(あと)(かれ)無残(むざん)(しかばね)がその()(のこ)された。白骨(はっこつ)体表(たいひょう)から()()し、鮮血(せんけつ)()()るように(なが)れ、(いか)りに(ゆが)んだ眼玉(めだま)虚空(こくう)(うら)めしげに(にら)みつけていた。


戦堂家老(せんどうかろう)……」 厳天寂(げんてんじゃく)(ひく)(うな)るような(こえ)()らし、全身(ぜんしん)(ふる)わせた。家老(かろう)たちが次々(つぎつぎ)と犠牲(ぎせい)になるにつれ、(つよ)悲嘆(ひたん)幾度(いくど)(かれ)心臓(しんぞう)(おそ)い、もはや無感覚(むかんかく)(ちか)状態(じょうたい)だった。


常山陰(じょうさんいん)貴様(きさま)悲惨(ひさん)末路(まつろ)辿(たど)るに()まっている!正道(せいどう)英雄(えいゆう)名乗(なの)りながら、よくも味方(みかた)暗算(あんさん)できるものだ!劉文武公子(りゅうぶんぶこうし)(かなら)ずや我々(われわれ)の(あだ)()ってくれる!」 厳天寂(げんてんじゃく)(かお)(ゆが)みんばかりの憎悪(ぞうお)()ちていた。可能(かのう)ならば、方源(ほうげん)(にく)()らい、()(すす)()くしたいほどだった。


「ふん、敗者(はいしゃ)咆哮(ほうこう)は、野良犬(のらいぬ)断末魔(だんまつま)のようだ。他人(たにん)復讐(ふくしゅう)期待(きたい)するとは、(よわ)き者の心理(しんり)というものだ」 方源(ほうげん)()ややかに一言(ひとこと)()てると、()一振(ひとふ)りした。夜狼万兽王(やろうばんじゅうおう)(くろ)閃電(せんでん)のように(やく)()て、厳天寂(げんてんじゃく)(もう)(とつ)(げき)()()ばした。


厳天寂(げんてんじゃく)真元(しんげん)はすでに()()てており、この一撃(いちげき)によって粉骨砕身(ふんこつさいしん)となった。


(かれ)(いと)()れた(たこ)のように、(とお)くへ()()ばされ、空中(くうちゅう)()(せん)(えが)いた。地面(じめん)()ちたときには、(からだ)前面(ぜんめん)完全(かんぜん)(つぶ)れ、(いき)()完全(かんぜん)()まっていた。


閣下(かっか)!」葛光(かつこう)家老(かろう)たちを(ひき)い、興奮(こうふん)しながら()()ってきた。


狼王(ろうおう)威風(いふう)、まことに(おそ)()りました!この一戦(いっせん)によって、厳家(げんけ)高層(こうそう)全滅(ぜんめつ)し、厳家(げんけ)陣営(じんえい)には三転家老(さんてんかろう)一人(ひとり)局面(きょくめん)()仕切(しき)っているのみです。厳天寂(げんてんじゃく)らが(おく)った手紙蛊(てがみこ)はすべて我々(われわれ)が遮断(しゃだん)し、厳家(げんけ)上下(じょうげ)はまだ真実(しんじつ)()らぬ(ぞん)ぜぬ。まさに奇襲(きしゅう)好機(こうき)でございます!」葛家(かつけ)戦堂家老(せんどうかろう)歓呼(かんこ)した。


残念(ざんねん)ながら水魔(すいま)浩激流(こうげきりゅう)()がしてしまった。狼王(ろうおう)(さま)、我々(われわれ)は(つづ)けて水魔(すいま)追殺(ついさつ)するか、それとも厳家(げんけ)陣営(じんえい)急襲(きゅうしゅう)するか、どちらがよろしいでしょうか?」と葛光(かつこう)(たず)ねた。


方源(ほうげん)()にせずに(わら)(こえ)をあげた。「もちろん直接(ちょくせつ)厳家(げんけ)陣営(じんえい)攻撃(こうげき)するさ。」


一匹(いっぴき)蚌蛊(はまぐりこ)が、(からだ)回転(かいてん)させながら、月牙湖(げつがこ)急速(きゅうそく)潜行(せんこう)した。


ぷはっ!


(はまぐり)(いきお)いよく水面(すいめん)から()()し、一对(いっつい)貝殻(かいがら)(ひら)いて、(なか)(かく)れていた二人(ふたり)()()した。この二人(ふたり)一男一女(いちなんいちじょ)で、(おとこ)(まさ)水魔(すいま)浩激流(こうげきりゅう)(おんな)(すなわ)厳家(げんけ)大小姐(だいしゅうじょ)厳翠児(げんすいじ)であった。


「はあはあはあ……」。 浩激流(こうげきりゅう)()(いき)()りながら、まだ(むね)鼓動(こどう)(おさ)まらない様子(ようす)()(かえ)一目(いちもく)をくれた。()って()なかったのを確認(かくにん)して、ようやく(むね)()()ろした。


ここは三日月湖(みかづきこ)()かぶ小島(こじま)の一つで、浩激流(こうげきりゅう)事前(じぜん)地形(ちけい)(さぐ)った(さい)(えら)んでおいた三番目(さんばんめ)脱出路(だっしゅつろ)だった。


狼王(ろうおう)常山陰(じょうさんいん)……」。 浩激流(こうげきりゅう)(こころ)の中でその()幾度(いくど)()みしめ、()(なか)には(にく)しみ、屈辱的(くつじょくてき)(いか)り、(おそ)れ、警戒心(けいかいしん)()()じった複雑(ふくざつ)(いろ)一瞬(いっしゅん)(ひか)った。


(かれ)()()てから今日(きょう)まで、これほどの大失敗(だいしっぱい)(きっ)したのは(はじ)めてだった。


四転高阶(してんこうきゅう)実力(じつりょく)は、(かれ)北原(ほくげん)縦横(じゅうおう)するのに十分(じゅうぶん)すぎる。しかし今日(きょう)方源(ほうげん)相対(あいたい)して、(かれ)(まえ)代未聞(みもん)無力感(むりょくかん)孤独感(こどくかん)(あじ)わわされた。


「これが奴道蛊師(ぬどうこし)(つよ)さなのか?これでもまだ(かれ)全盛期(ぜんせいき)ではないはずだ。(むかし)常山陰(じょうさんいん)格上(かくうえ)哈突骨(ハトツコツ)()り、馬賊(ばぞく)一味(いちみ)全滅(ぜんめつ)させたときというのは、いったいどれほど強大(きょうだい)(ちから)だったのだろう?」


浩激流(こうげきりゅう)はここまで(おも)(いた)ると、(いき)()まるような(かん)じがした。


方源(ほうげん)馭狼術(ぎょろうじゅつ)は、(かれ)江暴牙(こうぼうが)楊破桜(ようはおう)馬尊(ばそん)連想(れんそう)させた。


「どうやら今後(こんご)北原(ほくげん)一流(いちりゅう)奴道大師(ぬどうだいし)は、三強鼎立(さんきょうていりつ)ではなく、四強対峙(よんきょうたいじ)となるようだ。(さいわ)(かれ)()にある水狼(すいろう)(かず)(おお)くなかった。そうでなければ、今日(きょう)(わたし)(いのち)()としていただろう。」


生死(せいし)(さかい)(のが)れたときの危機(きき)一髪(いっぱつ)状況(じょうきょう)(おも)()すと、浩激流(こうげきりゅう)(おも)わずぞっとした。


「だが、どうして(わたし)はいつも、常山陰(じょうさんいん)故意(こい)(わたし)一筋(ひとすじ)生路(せいろ)(はな)したように(かん)じるのだろう?」 浩激流(こうげきりゅう)心思(しんし)敏锐(えいびん)で、()(とき)当時(とうじ)情景(じょうけい)回想(かいそう)し、(また)一絲(いっし)蹊跷(けいこう)(さと)った。


()しいことに厳家(げんけ)高層(こうそう)(ほと)んど常山陰(じょうさんいん)一網打尽(いちもうだじん)にされ、(わたし)(つづ)けて(ろう)(さく)するのは、もう現実的(げんじつてき)ではない。しかし仕方(しかた)ない、背水一戦蛊(はいすいいっせんこ)はもう()()った、()(たび)行動(こうどう)はもう成功(せいこう)した。(つぎ)はやはり原計画(げんけいかく)(したが)って、()厳家(げんけ)大小姐(たいしょうじょ)黑楼蘭公子(こくろうらんこうし)(おく)り、见面礼(けんめんれい)とする。」 盤算(ばんさん)ここに(いた)り、浩激流(こうげきりゅう)()(ちゅう)一抹(いちまつ)精芒(せいぼう)(ひらめ)いた。


北原(ほくげん)十年(じゅうねん)大風雪(だいふうせつ)は、(つね)独来独往(どくりらいどうおう)魔道蛊師(まとうこし)にとって、また(ひと)つの艱難(かんなん)試練(しれん)である。()れに修業資源(しゅぎょうしげん)欠乏(けつぼう)しているので、浩激流(こうげきりゅう)英雄大会(えいゆうたいかい)(つう)じて、(ぼう)勢力(せいりょく)依附(いふ)しようと考え(かんがえ)た。将来(しょうらい)もし(さいわ)いにも王庭(おうてい)入主(にゅうしゅ)すれば、浩激流(こうげきりゅう)姓命(せいめい)(たも)つだけでなく、修業上(しゅぎょうじょう)(さら)一層楼(いっそうろう)(のぼ)れる。


こたびの王庭(おうてい)(あるじ)争奪(そうだつ)には、いくつかの人気(にんき)候補(こうほ)がいる。


浩激流(こうげきりゅう)はあれこれ()(あん)した(すえ)最大(さいだい)本命(ほんめい)である黒楼蘭公子(こくろうらんこうし)に全て(すべて)を()けることを決断(けつだん)した。


黒楼蘭(こくろうらん)色好(いろす)きぶりは、とっくに(ひろ)()(わた)っている。浩激流(こうげきりゅう)厳翠児(げんすいじ)黒楼蘭(こくろうらん)献上(けんじょう)すれば、(かなら)重用(じゅうよう)されるだろう。なぜなら厳翠児(げんすいじ)は、本人(ほんにん)(はな)のごとく(うつく)しいだけでなく、劉文武公子(りゅうぶんぶこうし)婚約者(こんやくしゃ)という特異(とくい)身分(みぶん)()つからだ。


そして劉文武(りゅうぶんぶ)こそ、今回(こんかい)王庭争覇(おうていそうは)において、黒楼蘭(こくろうらん)にとって最大(さいだい)強敵(きょうてき)一人(ひとり)なのである。


強敵(きょうてき)婚約者(こんやくしゃ)自分(じぶん)後宮(こうきゅう)(おさ)めること――これは黒楼蘭(こくろうらん)にとって、絶対(ぜったい)(ことわ)れない誘惑(ゆうわく)なのであった。


「もし厳家(げんけ)がまだ存続(そんぞく)していれば、この(おく)(もの)価値(かち)はもっと(おも)かったのだが。残念(ざんねん)なことに、狼王(ろうおう)厳家(げんけ)高層(こうそう)(ころ)した以上(いじょう)(かなら)(つぎ)厳家(げんけ)そのものに()()すだろう。」 ここまで(かんが)えると、浩激流(こうげきりゅう)呆然(ぼうぜん)とした表情(ひょうじょう)厳翠児(げんすいじ)(あざけ)るように()ながら、口笛(くちぶえ)(ひと)()いた。


(かれ)軽薄(けいはく)調子(ちょうし)でからかった。「小美人(しょうびじん)ちゃん、()っておくが、(きみ)(おれ)感謝(かんしゃ)すべきだよ。もし(おれ)(たす)()さなければ、(きみ)常山陰(じょうさんいん)()()んでいたんだぜ。」


厳翠児(げんすいじ)()(まつげ)一瞬(いっしゅん)(ふる)え、悪夢(あくむ)から()めたように(かお)()げた。「どういう意味(いみ)ですか?」


「ふん、まだ()からないのか?常山陰(じょうさんいん)(きみ)(ちち)(うえ)家老(かろう)たちを(ころ)した。(つぎ)(かなら)厳家(げんけ)併呑(へいどん)する。(いま)ごろ狼群(おおかみむれ)はとっくに厳家(げんけ)陣営(じんえい)()かう途中(とちゅう)だろう。ははは、(きみ)のようなお姫様(ひめさま)も、()もなく孤家寡人(こかかじん)になるんだよ。」


「いや、そんなはずがない!」 厳翠児(げんすいじ)(くび)()(つづ)け、顔色(かおいろ)蒼白(そうはく)だった。彼女(かのじょ)懸命(けんめい)否定(ひてい)したが、(こころ)(おく)では浩激流(こうげきりゅう)推測(すいそく)(ただ)しいことを(さと)っていた。


常山陰(じょうさんいん)正義(せいぎ)大英雄(だいえいゆう)です。どうしてそんなことをするはずがありますか?」 彼女(かのじょ)はこの残酷(ざんこく)現実(げんじつ)()()うことを(こば)み、(なみだ)真珠(しんじゅ)のように、(ほそ)やかで(やわ)らかな(ほお)(つた)って一粒一粒(ひとつぶひとつぶ)()ちていった。美人(びじん)(なみだ)は、(なし)(はな)(あめ)がかかるようで、()(もの)(むね)(いた)ませる。


正義(せいぎ)英雄(えいゆう)だと?」 浩激流(こうげきりゅう)()ややかに(わら)(つづ)けた。「(とき)には正義(せいぎ)英雄(えいゆう)は、我々(われわれ)魔道(まとう)よりも(おそ)ろしいものだ。()浩激流(こうげきりゅう)身代金(みのしろきん)要求(ようきゅう)拉致(らち)くらいしかしていないが、常山陰(じょうさんいん)()()せばお(まえ)たち厳家(げんけ)を丸々(まるまる)()()む。しかも(かれ)には大義名分(たいぎめいぶん)があり、復讐(ふくしゅう)という(にしき)御旗(みはた)があり、そして勝者(しょうしゃ)である。厳家(げんけ)(ほろ)べば、(だれ)(なん)反論(はんろん)できよう?ふん、これがこの屁理屈(へりくつ)()(なか)というものだ!」


厳翠児(げんすいじ)()()かせられるうちに放心(ほうしん)状態(じょうたい)となったが、突然(とつぜん)その()(ひざまず)き、浩激流(こうげきりゅう)のズボンの(すそ)(にぎ)りしめて哀願(あいがん)した。「お(ねが)いです、(わたし)たちの厳家(げんけ)(すく)ってください。(ちち)家老(かろう)たちの(おく)った手紙蛊(てがみこ)はすべて遮断(しゃだん)され、厳家(げんけ)(いま)指導者(しどうしゃ)(うしな)い、危険(きけん)(せま)っていることさえ()らないのです」


()(なか)(じつ)奇妙(きみょう)残酷(ざんこく)だ。厳翠児(げんすいじ)は、自分(じぶん)がかつて(もっと)(にく)んでいた人物(じんぶつ)(ひざまず)いて哀願(あいがん)する()()るとは(ゆめ)にも(おも)わなかった。


(ちち)()くなった(いま)(わたし)厳家(げんけ)次期(じき)族長(ぞくちょう)です。浩激流(こうげきりゅう)さん、どうか手伝(てつだ)ってください。厳家(げんけ)(まえ)もって()らせてください。厳家(げんけ)存続(そんぞく)すれば、(わたし)族長(ぞくちょう)として、あなたを厳家(げんけ)外姓家老(がいせいかろう)任命(にんめい)し、厳家(げんけ)のすべての資源(しげん)をあなたの修行(しゅぎょう)提供(ていきょう)することを約束(やくそく)します!」厳翠児(げんすいじ)必死(ひっし)取引材料(とりひきざいりょう)提示(ていじ)した。


この言葉(ことば)水魔浩激流(すいまこうげきりゅう)一瞬(いっしゅん)(むね)高鳴(たかな)った。外姓家老(がいせいかろう)厳家(げんけ)資源(しげん)


なかなか魅力的(みりょくてき)提案(ていあん)(おも)える!


しかし浩激流(こうげきりゅう)脳裏(のうり)方源(ほうげん)姿(すがた)()かんだ瞬間(しゅんかん)全身(ぜんしん)(おも)わず(ふる)えあがった。


「ふん、(おれ)誘惑(ゆうわく)するつもりか?」(かれ)表情(ひょうじょう)一変(いっぺん)させ、パシッと一発(いっぱつ)厳翠児(げんすいじ)(ほお)平手打(ひらてう)ちにした。


厳翠児(げんすいじ)火照(ほて)るような(ほお)()さえ、(なみだ)(くも)った(うつく)しい(ひとみ)で、呆然(ぼうぜん)として浩激流(こうげきりゅう)()つめた。


心配(しんぱい)するな、お(まえ)()()はもう()めてある。へへへ……」浩激流(こうげきりゅう)()ややかに(わら)い、呆然(ぼうぜん)とした厳翠児(げんすいじ)()()げて蚌蛊(はまぐりこ)(なか)(ほう)()んだ。


大きな(はまぐり)二枚(にまい)貝殻(かいがら)()じられ、浩激流(こうげきりゅう)水面(すいめん)()みしめ、最後(さいご)岸辺(きしべ)()(かえ)()た。


厳家(げんけ)陣営(じんえい)位置(いち)には、もはや(てん)()戦火(せんか)烽煙(ほうえん)()()がっていた。


厳家(げんけ)()わった!」浩激流(こうげきりゅう)(こころ)には、暗中快哉(あんちゅうかいさい)とする気持(きも)ちと、凛然(りんぜん)たる(さむ)さが同時(どうじ)()()がった。


この()弱肉強食(じゃくにくきょうしょく)(やま)(うえ)には(やま)があり、高人(こうじん)(うえ)には高人(こうじん)がいる。厳家(げんけ)(かれ)にとっては巨大(きょだい)存在(そんざい)だったが、常山陰(じょうさんいん)から()れば、(ひと)つの美味(びみ)(にく)()ぎないのだろう。


「この(さき)王庭(おうてい)(あらそ)い、北原(ほくげん)激動(げきどう)群雄割拠(ぐんゆうかっきょ)、いったいどれだけの(もの)(いのち)()とすことやら?」


浩激流(こうげきりゅう)(かん)(がい)にふけりながら、大蚌(おおはまぐり)(とも)西(にし)へと(すす)んでいった。



ps:明日は早く仕事があるので、更新を休止します。







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