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蛊真人  作者: 魏臣栋
魔头乱世
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第六十二節:智道

十万匹(じゅうまんびき)星蛍虫(せいけいちゅう)購入(こうにゅう)したものの、取引(とりひき)はまだ()わっていない。


方源(ほうげん)はこれらの(むし)(えさ)問題(もんだい)解決(かいけつ)する必要(ひつよう)があった。


星蛍虫(せいけいちゅう)星屑草(ほしくさ)()べます。(わたし)大量(たいりょう)星屑草(ほしくさ)(たね)()っているので、()ることができます」万象星君(ばんしょうせいくん)(もっと)(はや)神念(しんねん)(つた)えてきた。


(わたし)(くさ)(たね)だけでなく、あなた(がた)培育(ばいいく)心得(こころえ)必要(ひつよう)だ。まずは宝光(ほうこう)強弱(きょうじゃく)()よう」方源(ほうげん)小狐仙(しょうこせん)(かい)して、万象星君(ばんしょうせいくん)揺光仙子(ようこうせんし)、そして帝淵(ていえん)三人(さんにん)神念(しんねん)(つた)えた。


()もなく、三通(さんつう)文書(ぶんしょ)宝黄天(ほうこうてん)(あら)われ、それぞれが宝光(ほうこう)(はな)った。


今度(こんど)万象星君(ばんしょうせいくん)ではなく、意外(いがい)にも揺光仙子(ようこうせんし)文書(ぶんしょ)宝光(ほうこう)(もっと)(さか)んで、六尺(ろくしゃく)もあった。


(わたし)(くさ)(そだ)てるのが大好(だいす)きで、星蛍虫(せいけいちゅう)はむしろ星屑草(ほしくさ)繁殖(はんしょく)させるため、わざわざ(すこ)しだけ(うつ)してきたものなのです。(わたし)文書(ぶんしょ)(えら)べば、絶対(ぜったい)(そん)はさせません」揺光仙子(ようこうせんし)神念(しんねん)(つた)えてきた。


方源(ほうげん)沈思(ちんし)した。


もともと(かれ)はこの詳細(しょうさい)(わす)れていた。畢竟(ひっきょう)前世(ぜんせ)では(かれ)星門蛊(せいもんこ)使(つか)うことも必要(ひつよう)もなかったのだ。


(いま)琅琊地霊(ろうやちれい)通天蛊(つうてんこ)万象星君(ばんしょうせいくん)といった(もの)たちからのヒントが(つづ)き、(かれ)記憶(きおく)のなかでこの部分(ぶぶん)はますます鮮明(せんめい)になりつつあった。


記憶(きおく)のなかでは、星門蛊(せいもんこ)(あら)われると、星蛍蛊(せいけいこ)(かん)するすべてが機密(きみつ)となり、(けっ)して取引(とりひき)されることはなかった。


琅琊地霊(ろうやちれい)星門蛊(せいもんこ)秘方(ひほう)()()れた以上(いじょう)、もしかすると星門蛊(せいもんこ)煉成(れんせい)し、宝黄天(ほうこうてん)販売(はんばい)するかもしれない。いったん星門蛊(せいもんこ)宝黄天(ほうこうてん)登場(とうじょう)すれば、これら機密(きみつ)情報(じょうほう)入手(にゅうしゅ)するのは(きわ)めて困難(こんなん)になるだろう。」


そう考え(かんがえ)て、方源(ほうげん)決断(けつだん)(くだ)した。小狐仙(しょうこせん)神念(しんねん)(つた)えさせた。「あなた(がた)(みっ)つの文書(ぶんしょ)、すべて購入(こうにゅう)する。仙元石(せんげんせき)決済(けっさい)だ。」


仙元石(せんげんせき)購買力(こうばいりょく)は非常に(つよ)い。


一塊(いっかい)仙元石(せんげんせき)(みっ)つに()け、三通(さんつう)文書(ぶんしょ)購入(こうにゅう)しても、なお四分(よんぶん)(いち)(かい)(のこ)った。


方源(ほうげん)三通(さんつう)文書(ぶんしょ)(ひら)いた。そこには(おお)くの事項(じこう)(しる)されていた――


星屑草(ほしくさ)(てん)にしか()えられず、(くも)(うえ)(そだ)つ。そのため、よく上質(じょうしつ)雲土(うんど)(えら)んで栽培(さいばい)する……」


星屑草(ほしくさ)(かげ)(この)(ひなた)(きら)う。()ぎた(よう)(こう)星屑草(ほしくさ)()らしてしまう。しかし完全(かんぜん)(ひかり)遮断(しゃだん)するわけにもいかず、必要(ひつよう)(りょう)はおよそ……」


星屑草(ほしくさ)星蛍虫(せいけいちゅう)生息(せいそく)すれば、種子散布(しゅしさんぷ)(たす)け、より(はや)(ひろ)がり、生育(せいいく)()くなる……」


三通(さんつう)文書(ぶんしょ)のうち、帝淵(ていえん)のものは最も簡潔(かんけつ)信頼性(しんらいせい)(たか)く、万象星君(ばんしょうせいくん)のものは独自(どくじ)工夫(くふう)(ほどこ)され、揺光仙子(ようこうせんし)のものは最も詳細(しょうさい)豊富(ほうふ)であった。方源(ほうげん)はそれらを()()れ、(たが)いに照合(しょうごう)(むす)()けることで、すべてを(またた)()暗記(あんき)した。瞬時(しゅんじ)にして星屑草(ほしくさ)栽培(さいばい)専門家(せんもんか)となったのである。


(かれ)(こころ)のなかで冷笑(れいしょう)した。「これで、(わたし)将来(しょうらい)最大(さいだい)星蛍蛊(せいけいこ)()()になれる。いずれ星門蛊(せいもんこ)(さか)んになれば、(かなら)(おお)きな利益(りえき)()げられるはずだ。」


(つぎ)(さけ)()(ばん)だ。」方源(ほうげん)極上(ごくじょう)美酒(びしゅ)(わす)れることなく、(こころ)(きざ)んでいた。


(かれ)はすでに三種(さんしゅ)極上美酒(ごくじょうびしゅう)(あつ)めており、最後(さいご)(ひと)つだけが(のこ)っている。


宝黄天(ほうこうてん)には、もちろん極上美酒(ごくじょうびしゅう)販売(はんばい)されている。(おも)蛊仙(こせん)()()るために(もち)いるが、(つぎ)生活(せいかつ)(たの)しむための佳品(かひん)でもある。


しかし、方源(ほうげん)極上美酒(ごくじょうびしゅう)購入(こうにゅう)しようとしたまさにその(とき)宝黄天(ほうこうてん)全体(ぜんたい)突然(とつぜん)沸騰(ふっとう)した。無数(むすう)神念(しんねん)(くる)ったように(はげ)しく(うご)(はじ)めた。


仙蛊(せんこ)だ!(だれ)かが仙蛊(せんこ)()っている!」小狐仙(しょうこせん)驚叫(きょうきょう)した。


鏡面(きょうめん)画面(がめん)一瞬(いっしゅん)きらめき、一匹(いっぴき)仙蛊(せんこ)映像(えいぞう)(あら)われた。


神遊蛊(しんゆうこ)!」方源(ほうげん)瞳孔(どうこう)がわずかに収縮(しゅうしゅく)した。


()()されているこの仙蛊(せんこ)は、まさに(かれ)必要(ひつよう)としている神遊蛊(しんゆうこ)だった。(だれ)かが(かれ)より一歩(いっぽ)(はや)く、神遊蛊(しんゆうこ)所有権(しょゆうけん)()()れていたのだ。


「ふっ、結局(けっきょく)一歩(いっぽ)(おく)れたか。」方源(ほうげん)一瞬(いっしゅん)呆然(ぼうぜん)とした(あと)(かる)(わら)(ごえ)()らした。


(かれ)第二空竅蛊(だいにくうきょうこ)煉製(れんせい)するには、神遊蛊(しんゆうこ)必須(ひっす)だった。しかし三王福地(さんおうふくち)では情勢(じょうせい)(せま)られ、神遊蛊(しんゆうこ)定仙遊(ていせんゆう)へと煉成(れんせい)せざるを()なかったのである。


人祖伝(じんそでん)』の記録(きろく)によれば、四種(よんしゅ)極上美酒(ごくじょうびしゅ)()まなければ神遊蛊(しんゆうこ)()られない。方源(ほうげん)美酒(びしゅ)(あつ)(つづ)けてきたが、(いま)になって(ほか)(もの)(さき)()されてしまった。


神遊蛊(しんゆうこ)がなければ、第二空竅蛊(だいにくうきょうこ)最後(さいご)一歩(いっぽ)完成(かんせい)できない。(さいわ)い、まだ数十年(すうじゅうねん)時間(じかん)はある。」


「とはいえ、三叉山(さんさざん)()()(さい)目立(めだ)()ぎたのが原因(げんいん)だ。南疆(なんきょう)(もの)すべてが()るところとなってしまった。ははは、だから(ひと)(さき)()されても(おどろ)くにはあたらない。」方源(ほうげん)(かた)をすくめた。この結末(けつまつ)は、(じつ)のところ予想(よそう)範囲内(はんいない)だった。


神遊蛊(しんゆうこ)定仙遊(ていせんゆう)煉成(れんせい)する(かれ)姿(すがた)は、(おお)くの蛊師(こし)()()()けられた。この(けん)確実(かくじつ)(おお)きな波紋(はもん)()び、南疆(なんきょう)蛊仙(こせん)()けて()ているはずがない。(うご)かないわけがなかったのだ。


ただ方源(ほうげん)以前(いぜん)から、蛊仙(こせん)同士(どうし)内紛(ないふん)相互(そうご)牽制(けんせい)期待(きたい)()せ、ひたすら収集(しゅうしゅう)(つと)めてきたのである。


(ひと)一生(いっしょう)には、希望(きぼう)(すく)なくとも努力(どりょく)(つづ)けなければ後悔(こうかい)するような(こと)がある。努力(どりょく)しなければ、本当(ほんとう)にわずかでも希望(きぼう)さえも(うし)ってしまうのだ。


()のなかは(おも)うようにならないことの方が(おお)い。(わたし)はとっくに()れている。しかし相手(あいて)がこの神遊蛊(しんゆうこ)出品(しゅっぴん)した以上(いじょう)取引(とりひき)意思(いし)はあるはずだ。まずは様子(ようす)()よう。」


方源(ほうげん)は淡々(たんたん)として、一得一失(いっとくいっしつ)一喜一憂(いっきいちゆう)することもなく、心境(しんきょう)平穏(へいおん)(たも)っていた。


たとえ宝黄天(ほうこうてん)蛊仙(こせん)最大(さいだい)取引市場(とりひきしじょう)であるとはいえ、仙蛊(せんこ)取引(とりひき)(おこ)なわれることは(きわ)めて(まれ)である。歴史的(れきしてき)()ても仙蛊取引(せんことりひき)回数(かいすう)(ゆび)()(かぞ)えるほどしかなく、その(おお)(はん)蛊仙同士(こせんどうし)事前(じぜん)(はな)()い、宝黄天(ほうこうてん)仲介(ちゅうかい)として宝光(ほうこう)真偽(しんぎ)(たし)かめ、取引(とりひき)安全(あんぜん)確保(かくほ)するのであった。


これらの取引(とりひき)大多数(だいたすう)仙蛊(せんこ)同士(どうし)交換(こうかん)だが、神遊蛊(しんゆうこ)販売(はんばい)している蛊仙(こせん)硯石老人(けんせきろうじん)(てい)(しゅつ)した取引条件(とりひきじょうけん)異例(れい)だった。


(わたし)はこの神遊蛊(しんゆうこ)()()えに、第二空竅蛊(だいにくうきょうこ)秘方(ひほう)(もと)める。」


この要求(ようきゅう)(ふく)情報量(じょうほうりょう)膨大(ぼうだい)で、広範(こうはん)注目(ちゅうもく)(あつ)めた。宝黄天(ほうこうてん)では、蛊仙(こせん)たちの神念(しんねん)()()い、(たが)いに(はげ)しく反響(はんきょう)()った。


神遊蛊(しんゆうこ)とは!今日(きょう)、まさかこの伝説(でんせつ)蛊虫(こちゅう)()にする()()るとは。」


仙蛊(せんこ)であることは(たし)かだが、神遊蛊(しんゆうこ)効用(こうよう)(じつ)予測(よそく)不能(ふのう)だ。(むかし)人祖(じんそ)太子(たいし)でさえこれにより危険(きけん)(おちい)った。我々(われわれ)のような(ちい)さな蛊仙(こせん)なら尚更(なおさら)危険(きけん)だろう。」


「しかし神遊蛊(しんゆうこ)所詮(しょせん)仙蛊(せんこ)だ。()っていれば、(まん)(いち)()()まった(とき)絶体絶命(ぜったいぜつめい)危機(きき)(おちい)った(とき)には、(ひと)(ばち)()けてみる価値(かち)もある。」


神遊蛊(しんゆうこ)について議論(ぎろん)するより、むしろ第二空竅蛊(だいにくうきょうこ)秘方(ひほう)()になる!」


「その(とお)り。第二空竅蛊(だいにくうきょうこ)(はなし)以前(いぜん)から(みみ)にしていたが、まさか本当(ほんとう)にそんな蛊方(こほう)存在(そんざい)するとは?」


第二空竅(だいにくうきょう)とな!凡人(ぼんじん)にはその(しん)価値(かち)理解(りかい)するのは(むずか)しいが、蛊仙(こせん)にとって(こころ)(うご)かされない(もの)がいるだろうか?」


……


方源(ほうげん)はもはや座席(ざせき)から()()がり、半空(はんくう)通天蛊(つうてんこ)凝視(ぎょうし)していた。


(かれ)()(なか)には第二空竅蛊(だいにくうきょうこ)秘方(ひほう)がある。この()交換(こうかん)するかどうかは、ただ一念(いちねん)()問題(もんだい)だ。


しかし!


神遊蛊(しんゆうこ)販売(はんばい)しているこの硯石老人(けんせきろうじん)は、(おそ)らく(わたし)(ねら)ってきたのだろう。(かれ)直接(ちょくせつ)第二空竅蛊(だいにくうきょうこ)秘方(ひほう)要求(ようきゅう)するとは……販売(はんばい)時期(じき)(はや)からず(おそ)からず、(わたし)取引(とりひき)しているまさにこの(とき)(えら)ぶとは……なんて手練(てれん)なのだ!この蛊仙(こせん)流派(りゅうは)太古(たいこ)智道(ちどう)だろう。推演(すいえん)測算(そくさん)得意(とくい)とするに(ちが)いない。(わたし)(いま)通天蛊(つうてんこ)(ひら)宝黄天(ほうこうてん)取引(とりひき)していることまで、(かれ)には計算(けいさん)()みだったのだ!」


智道(ちどう)蛊師(こし)のなかでも(きわ)めて神秘(しんぴ)流派(りゅうは)である。太古(たいこ)から存在(そんざい)し、現在(げんざい)まで(つた)わっているが、その人数(にんずう)(つね)(きわ)めて(すく)ない。


智道(ちどう)開祖(かいそ)は、太古(たいこ)時代(じだい)()きた星宿仙尊(せいしゅくせんそん)第二代天庭(だいにだいてんてい)(あるじ)である。彼女(かのじょ)一万九千年(いちまんきゅうせんねん)()き、九転蛊仙(きゅうてんこせん)(なか)長寿(ちょうじゅ)第二位(だいにい)(ほこ)る。


()直前(ちょくぜん)天機(てんき)推衍(すいえん)し、星宿仙尊(せいしゅくせんそん)死後三百万年(しごさんびゃくまんねん)()こる一切(いっさい)事象(じしょう)見通(みとお)した。彼女(かのじょ)死後(しご)天庭(てんてい)(なが)きにわたって(ぬし)(うし)ないこと、天地(てんち)激動(げきどう)すること、そして三人(さんにん)魔尊(まそん)(あら)われることを予見(よけん)した。


彼女(かのじょ)(ただ)ちに(みっ)つの布局(ふきょく)(ほどこ)し、(とく)三人(さんにん)魔尊(まそん)対処(たいしょ)するよう(のこ)した。そして後人(こうじん)にこの計画(けいかく)(したが)うよう(つた)え、これにより天庭(てんてい)三百年(さんびゃくねん)太平(たいへい)(たも)つことができると約束(やくそく)した。


彼女(かのじょ)死後(しご)()たして天地(てんち)激動(げきどう)し、時代(じだい)変遷(へんせん)(みっ)つの大時代(だいじだい)(つづ)いて三人(さんにん)魔尊(まそん)相次(あいつ)いで(あら)われた。


(みっ)人の魔尊(まそん)はそれぞれの時代(じだい)無敵(むてき)であり、(みな)天庭(てんてい)攻撃(こうげき)したが、すべて星宿仙尊(せいしゅくせんそん)布局(ふきょく)(はば)まれ、あと一歩(いっぽ)のところで失敗(しっぱい)した。こうして天庭(てんてい)(たお)れることなく(そび)()(つづ)けたのである。


智道蛊仙(ちどうこせん)……硯石老人(けんせきろうじん)……」方源(ほうげん)両目(りょうめ)(ほそ)め、(こえ)をつぶやくようにして(つぶや)いた。智道蛊仙(ちどうこせん)注目(ちゅうもく)されることは、(けっ)して()いことではない。


智道蛊仙(ちどうこせん)天機(てんき)(つう)じ、布石(ふせき)謀略(ぼうりゃく)を最も得意(とくい)とする。往々(おうおう)にして(ひと)(おとしい)れるのに痕跡(こんせき)(のこ)さず、(いん)(うご)いても声色(せいしょく)(うご)かさない。対処(たいしょ)が最も困難(こんなん)強敵(きょうてき)一類(いちるい)なのである!


(わたし)南疆(なんきょう)目立(めだ)()ぎたのだ。智道蛊仙(ちどうこせん)注意(ちゅうい)()いてしまった。ははは、この()(わたし)勇猛(ゆうもう)精進(しょうじん)し、()なる危険(きけん)(おか)して(がけ)(うえ)一路(いちろ)疾走(しっそう)してきた。(はや)すぎたのだ、()るに()らない凡人(ぼんじん)()ながら、蛊仙(こせん)関心(かんしん)()くに(いた)ったとは!」


この状況(じょうきょう)は、まさに(あり)大像(ぞう)注目(ちゅうもく)()いたようなものだ。


(またた)()に、方源(ほうげん)通天蛊(つうてんこ)()かして、知恵(ちえ)陰謀(いんぼう)()ちた一対(いっつい)()自分(じぶん)凝視(ぎょうし)しているのを(かん)じた。


空気中(くうきちゅう)には、(かたち)のない圧迫感(あっぱくかん)(ただよ)っていた。


しかし方源(ほうげん)心境(しんきょう)はもはや以前(いぜん)とは(ちが)っていた。(かれ)仰向(あおむ)けに(てん)見上(みあ)げて高笑(たかわら)いし、心中(しんちゅう)鬱屈(うっくつ)をすべて払拭(ふっしょく)した。


「よし、智道蛊仙(ちどうこせん)策謀(さくぼう)があるからこそ、さらに面白(おもしろ)くなる。ふん、()るに()らない神遊蛊(しんゆうこ)第二空竅蛊(だいにくうきょうこ)ごときで、(わたし)誘惑(ゆうわく)されると思うか?」


前世(ぜんせ)五百年(ごひゃくねん)経験(けいけん)が、潜在(せんざい)する危機(きき)への直感(ちょっかん)(つちか)っていた。


方源(ほうげん)漠然(ばくぜん)と、この神遊蛊(しんゆうこ)硯石老人(けんせきろうじん)仕掛(しか)けた()である可能性(かのうせい)(かん)()っていた。


仙蛊(せんこ)(たし)かに(すぐ)れているが、(わたし)永生(えいせい)(こころざ)す。いわゆる仙蛊(せんこ)など、修行(しゅぎょう)(みち)(あか)すための(たん)なる道具(どうぐ)()ぎない。」


……


その(ころ)南疆(なんきょう)生死福地(せいしふくち)


漆黒(しっこく)(ころも)(まと)った一人(ひとり)(おい)人が、蒲团(ふとん)(うえ)(しず)かに(すわ)っていた。その()からは七転蛊仙(しちてんこせん)幽玄(ゆうげん)気配(けはい)(ただよ)っている。


顔中(かおじゅう)(きざ)まれた(しわ)、そして漆黒(しっこく)双眸(そうぼう)——(ひとみ)には一片(いっぺん)(しろ)もない。


老人(ろうじん)虚空(こくう)()かぶ通天蛊(つうてんこ)凝視(ぎょうし)し、宝黄天(ほうこうてん)渦巻(うずま)無数(むすう)神念(しんねん)(かん)()りながら、微動(びどう)だにせず、無表情(むひょうじょう)(つらぬ)いていた。


まさに硯石老人(けんせきろうじん)その(ひと)である!


老人(ろうじん)()(まえ)には、人殺鬼医(さつじんきい)仇九(きゅうきゅう)が跪(ひざまずいていた。


(かれ)はしばらく通天蛊(つうてんこ)()つめた(あと)失望(しつぼう)した表情(ひょうじょう)()かべて()った。「太師尊(たいしそん)、どうやら方源(ほうげん)(わな)にかからなかったようです。」


硯石老人(けんせきろうじん)(かす)かに(わら)い、(いか)りの(いろ)一片(いっぺん)()せなかった。「この小魚(しょうぎょ)(たし)かに(すこ)(おもむき)がある。()るべきところでは()り、()てるべきところでは()てる。たかが一介(いっかい)凡人(ぼんじん)ながら、その気魄(きはく)大多数(だいたすう)蛊仙(こせん)をも()えている。しかし、(かれ)()()ぎる。よくもまあお(まえ)奴隷(どれい)にし、()影宗(えいしゅう)(かお)(どろ)()ったものだ。これでは(みずか)()(もと)めるようなものだ。」


仇九(きゅうきゅう)(あわ)てて(ひたい)()()けた。「太師尊(たいしそん)がお(もど)りにならなければ、弟子(でし)永遠(えいえん)奴隷(どれい)として(あつか)われる悲惨(ひさん)運命(うんめい)でした!」


「ふむ……」硯石老人(けんせきろうじん)(かす)かに(うなず)き、「()()け、小徒孫(しょうとそん)。お(まえ)奴隷蛊(どれいこ)には(すで)()(くわ)えておいた。わしの推演(すいえん)によれば、方源(ほうげん)(かなら)義天山(ぎてんざん)正魔大戦(せいまたいせん)参加(さんか)する。その(とき)にはお(まえ)(かれ)(そば)(ひそ)み、機会(きかい)(うかが)うのだ」


承知(しょうち)いたしました、太師尊(たいしそん)!」


「うむ、()がれ。そしてお(まえ)妹弟子(いもうとでし)である白凝冰(はくぎょうひ)()んで(まい)れ」「かしこまりました。徒孫(とそん)退出(たいしゅつ)いたします」












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