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蛊真人  作者: 魏臣栋
魔头乱世
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第六十節:今夜月はきれいな

鬼王(きおう)紅玉散人(こうぎょくさんじん)(とみ)にがっくりと失望(しつぼう)した。


青索仙子(せいさくせんし)粉夢仙子(ふんむせんし)は、安堵(あんど)(いき)をつくと同時(どうじ)に、複雑(ふくざつ)表情(ひょうじょう)()かべた。


黄沙仙子(こうさせんし)(むね)のつかえが()りたように、全身(ぜんしん)(ちから)()いて、(くず)()ちそうになった。心中(しんちゅう)では、方源(ほうげん)地霊(ちれい)への(うら)みが、数倍(すうばい)(ふか)まっていた。


「ただでも()()せさえすれば、ただでも捲土重来(けんどちょうらい)できさえすれば、(かなら)ずお(まえ)たちを寸断(すんだん)にしてやる。この(うら)み、()らさでおくものか!」


「ははは、小友(しょうゆう)さすがは魔尊(まそん)後継者(こうけいしゃ)よ。」地霊(ちれい)(から)いた(わら)いを(いく)つか()らすと、通天蛊(つうてんこ)を取り()した。


この通天蛊(つうてんこ)(さい)(どう)すると、それは楕円(だえん)(かがみ)へと()わり、地霊(ちれい)頭頂(とうちょう)へと()んで()き、空中(くうちゅう)()()まれた。


(かがみ)(なか)漆黒(しっこく)だったが、突然(とつぜん)画面(がめん)()わり、(あき)るい黄色(きいろ)(ひろ)がった。


地霊(ちれい)神念蛊(しんねんこ)(さい)(どう)し、神念(しんねん)(なみ)を次々(つぎつぎ)と(かがみ)(おく)()み、また次々(つぎつぎ)と()()っていた。


同時(どうじ)に、鏡面(きょうめん)には()()なく材料(ざいりょう)実物(じつぶつ)画像(がぞう)(あら)われては()えた。


地霊(ちれい)取引(とりひき)がまとまったようで、虚空(こくう)から(ふた)つの仙元石(せんげんせき)を取り()し、通天蛊(つうてんこ)()()れた。


(かがみ)表面(ひょうめん)波紋(はもん)(ひろ)がると、仙元石(せんげんせき)はその(なか)()()まれ、()わりに材料(ざいりょう)(かがみ)から()()された。


今度(こんど)二十(にじゅう)人分(にんぶん)材料(ざいりょう)をたんまり()った。これでも成功(せいこう)しないはずがない!」地霊(ちれい)()()いしばって()った。


今回(こんかい)煉蛊(れんこ)最終段階(さいしゅうだんかい)(すす)み、星々(ほしぼし)がきらめき、やがて一対(いっつい)楕円形(だえんけい)(いし)へと収束(しゅうそく)していった。


成功(せいこう)だ!」地霊(ちれい)哈哈(はは)(わら)い、サファイアのような二粒(ふたつぶ)()()()り、(みずか)方源(ほうげん)()(わた)した。「これが星門蛊(せいもんこ)だ。(ひと)つの約束(やくそく)()たしたというわけだ。」


「これが使(つか)えるかどうか、(わたし)にどうして()かる?」方源(ほうげん)星門蛊(せいもんこ)()(はさ)みながら、()(かえ)した。


地霊(ちれい)即座(そくざ)(ひげ)逆立(さかだ)てて(にら)みつけ、(おお)きな侮辱(ぶじょく)()けたかのような反応(はんのう)をした。「わしの煉蛊(れんこ)腕前(うでまえ)(うたが)うというのか?もし駄目(だめ)なら、遠慮(えんりょ)なく交換(こうかん)()なさい!」


「よかろう。では、これで失礼(しつれい)する。」方源(ほうげん)はきわめてあっさりと、去意(きょい)(つた)えた。


地霊(ちれい)(かれ)をじっと()つめた。「()くと()ったらすぐ()くのか?それなら(のこ)二回(にかい)機会(きかい)は、(いま)使(つか)わんのか?」


無論(むろん)()っておく。出口(でぐち)はどこだ?」


地霊(ちれい)(そで)一振(ひとふ)りし、五仙(ごせん)(またた)()(うつ)()った。顔色(かおいろ)(おお)いに(やわ)らぎ、「(きみ)のとこには、まだ(なに)蛊虫(こちゅう)秘方(ひほう)があるだろう?ぜんぶ()()して、(わたし)()せてくれないか」と()った。


「もうない。もしあれば、自然(しぜん)(きみ)交換(こうかん)するさ。」方源(ほうげん)適当(てきとう)にかわした。


「どうも小友(しょうゆう)(はら)(なか)には、まだたくさん仕込(しこ)みがあるような()がする!」地霊(ちれい)(あや)しげに方源(ほうげん)()ながら、ぶつぶつとつぶやいた。「まあいい、ならば(わたし)(きみ)(ふたた)()るのを()つとしよう。」


そう()()えると、地霊(ちれい)(ふたた)長袖(ながそで)()った。


方源(ほうげん)眼前(がんぜん)がちらりとし、()()らしてみると、自分(じぶん)石林(せきりん)(なか)()っていることに()づいた。すぐ(そば)には、先程(さきほど)(すわ)っていた石凳(せきとう)があり、()()にはあの紫色(むらさきいろ)石柱(せきちゅう)がそびえている。


夜空(よぞら)には星々(ほしぼし)がきらめき、気温(きおん)非常(ひじょう)(ひく)く、(いき)()けば(きり)となった。


さっきまでの(ひと)(さい)が、夢幻(むげん)のようで、方源(ほうげん)現実(げんじつ)ではないような錯覚(さっかく)(いだ)かせた。


(ふたた)()景色(けしき)見回(みまわ)すと、琅琊福地(ろうやふくち)では相応(そうおう)時間(じかん)()ごしたが、外界(がいかい)では三十六分(さんじゅうろくぶん)(いち)しか()っていない計算(けいさん)になる。


空窾(くうこう)(なか)星門蛊(せいもんこ)神念蛊(しんねんこ)通天蛊(つうてんこ)、そして狼呑蛊(ろうどんこ)(かく)された(ふた)つの小壇(しょうだん)極上美酒(ごくじょうびしゅ)は、(なに)よりの証拠(しょうこ)で、方源(ほうげん)にこの奇遇(きぐう)をはっきりと(おも)()させた。


「もともとこの三回(さんかい)機会(きかい)使(つか)()るつもりだったが、地霊(ちれい)のところで秘方(ひほう)()交換(こうかん)できるとは(おも)わなかった。だからまだ二回(にかい)機会(きかい)(のこ)っている。もし今回(こんかい)星門蛊(せいもんこ)使(つか)えれば、(ひと)つの煉蛊(れんこ)機会(きかい)(つい)やした価値(かち)絶対(ぜったい)にある!」


ここまで(かんが)え、方源(ほうげん)はもはや躊躇(ちゅうちょ)せず、石林(せきりん)(はな)れて狼群(おおかみむれ)(もと)へと(もど)った。


一刻一刻(いっこくいっこく)大切(たいせつ)(とき)夜長(よなが)夢多(むた)(ふせ)ぐため、方源(ほうげん)はすぐさま狼王(ろうおう)護衛(ごえい)されながら(みずうみ)()草地(くさち)(すわ)り、手紙(てがみ)()(はじ)めた。


手紙(てがみ)はすぐに()()がり、(かれ)推杯換盞蛊(すいはいかんさんこ)(さい)(どう)した。しばらくすると、空穴(くうけつ)()杯盞(はいさん)()(かん)成功(せいこう)し、(さかずき)から四転蛊(してんこ)(いっ)(ぴき)手紙(てがみ)(いっ)(つう)を取り()した。


この()()()んだ小魚(こざかな)のような(かたち)をしており、涸沢蛊(こたくこ)名付(なづ)けられている。水導(すいどう)()であるが、(ほか)蛊虫(こちゅう)効力(こうりょく)増幅(ぞうふく)するという特異(とくい)効果(こうか)()つ。


この()北原(ほくげん)到着(とうちゃく)するやいなや、即刻(そっこく)三转(さんてん)へと階位(かいい)下落(げらく)した。


方源(ほうげん)手紙(てがみ)を取り()し、さっと()(とお)して、安堵(あんど)表情(ひょうじょう)(うなず)いた。「どうやら(わたし)福地(ふくち)にいない(あいだ)も、小狐仙(しょうこせん)勤勉(きんべん)(つと)め、(わたし)旅立(たびだ)(まえ)()()けたことを(わす)れず、整整(せいせい)二十匹(にじゅっぴき)涸沢蛊(こたくこ)煉成(れんせい)してくれたようだ。()くやった!」


即座(そくざ)に、方源(ほうげん)返事(へんじ)()き、手紙(てがみ)(なか)小狐仙(しょうこせん)(なん)()()めた。


「ご主人様(しゅじんさま)()められました、とっても(うれ)しいです。」小狐仙(しょうこせん)手紙(てがみ)()()ると、(うれ)しさで(ほお)(あか)らめた。


「ご主人様(しゅじんさま)、あたし、とっても(さび)しいです……」小狐仙(しょうこせん)はすぐに(つくえ)()()して、(かお)()めるようにして()(はじ)めた。「ご主人様(しゅじんさま)がいないと、あたしの(こころ)はそわそわして()()きません。ご主人様(しゅじんさま)、お元気(げんき)ですか?もう一匹(いっぴき)涸沢蛊(こたくこ)をお(おく)りしますね。」


小狐仙(しょうこせん)桃色(ももいろ)の小さな()で、手紙(てがみ)丁寧(ていねい)()(たた)み、推杯換盞蛊(すいはいかんさんこ)(なか)(おさ)めた。


同時(どうじ)に、涸沢蛊(こたくこ)一匹(いっぴき)()えて()れた。


しばらくすると、推杯換盞蛊(すいはいかんさんこ)はゆったりと()かび()がり、空穴(くうけつ)()ってもう一方(いっぽう)杯盞(はいさん)()()わした(あと)方源(ほうげん)()(もと)(とど)けられた。


方源(ほうげん)()ぐに涸沢蛊(こたくこ)を取り()し、手紙(てがみ)()(とお)した。それから元石(げんせき)から真元(しんげん)補給(ほきゅう)し、(ふたた)推杯換盞蛊(すいはいかんさんこ)催動(さいどう)した。


かくして三度四度(さんどしど)(かれ)合計(ごうけい)八匹(はっぴき)涸沢蛊(こたくこ)を取り()した。


八匹(はっぴき)涸沢蛊(こたくこ)同時(どうじ)使(つか)えば、効果(こうか)相乗(そうじょう)して、四転(してん)程度(ていど)には(たっ)するだろう。」


即座(そくざ)に、これらの涸沢蛊(こたくこ)方源(ほうげん)によって一匹(いっぴき)ずつ(にぎ)(つぶ)され、(やっ)つの光輪(こうりん)()って推杯換盞蛊(すいはいかんさんこ)(から)みついた。(おな)(とき)に、狐仙福地(こせんふくち)では小狐仙(しょうこせん)同様(どうよう)八匹(はっぴき)涸沢蛊(こたくこ)粉砕(ふんさい)し、推杯換盞蛊(すいはいかんさんこ)重畳(ちょうじょう)した。


推杯換盞蛊(すいはいかんさんこ)本来(ほんらい)五转蛊(ごてんこ)だが、北原(ほくげん)()ると四转(してん)圧縮(あっしゅく)される。そのため、四转蛊(してんこ)しか伝送(でんそう)できない。


(いま)八匹(はっぴき)涸沢蛊(こたくこ)使(つか)ったことで、推杯換盞蛊(すいはいかんさんこ)効力(こうりょく)五转(ごてん)まで向上(こうじょう)し、これで五转蛊(ごてんこ)伝送(でんそう)できるようになった。


方源(ほうげん)はしばし()ち、まず通天蛊(つうてんこ)を取り()し、(おごそ)かに推杯換盞蛊(すいはいかんさんこ)(なか)(おさ)め、真元(しんげん)(そそ)いだ。


催動(さいどう)成功(せいこう)し、(ふた)つの杯盞(はいさん)空穴(くうけつ)のなかで転換(てんかん)完成(かんせい)させ、通天蛊(つうてんこ)()れた杯盞(はいさん)狐仙福地(こせんふくち)へと()ちていった。


小狐仙(しょうこせん)歓声(かんせい)()げ、すぐさま通天蛊(つうてんこ)を取り()した。


推杯換盞蛊(すいはいかんさんこ)表面(ひょうめん)には、(かす)かな裂痕(れっこん)(あら)われ(はじ)めた。


涸沢蛊(こたくこ)(たし)かに蛊虫(こちゅう)効力(こうりょく)倍増(ばいぞう)させるが、それは「(たく)()らし(はやし)()く」ようなものだ。威力(いりょく)暴騰(ぼうとう)する()わりに、蛊虫(こちゅう)過剰(かじょう)負荷(ふか)により(のち)崩壊(ほうかい)してしまう。


(つづ)けて、方源(ほうげん)神念蛊(しんねんこ)狐仙福地(こせんふくち)(おく)(とど)けた。推杯換盞蛊(すいはいかんさんこ)裂痕(れっこん)はさらに(ふか)まった。


方源(ほうげん)沈黙(ちんもく)したまま元石(げんせき)を取り()し、()(にぎ)って真元(しんげん)補給(ほきゅう)(いそ)いだ。


その()(かれ)はサファイアのように(あお)(かがや)一対(いっつい)星門蛊(せいもんこ)のうち一匹(いっぴき)()け、狐仙福地(こせんふくち)(おく)()した。


(さいわ)星門蛊(せいもんこ)仙蛊(せんこ)ではなく五转蛊(ごてんこ)であったため、方源(ほうげん)推杯換盞蛊(すいはいかんさんこ)()って、どうにか狐仙福地(こせんふくち)(おく)()むことができた。


星門蛊(せいもんこ)福地(ふくち)(おく)(とど)けた(あと)推杯換盞蛊(すいはいかんさんこ)はすでに無惨(むざん)姿(すがた)()り、裂痕(れっこん)(すべ)てを(おお)い、崩壊(ほうかい)寸前(すんぜん)であった。


この状態(じょうたい)では、あと(ひと)(たび)使用(しよう)するのがやっとである。


方源(ほうげん)はこの杯盞(はいさん)空窾(くうこう)(おさ)め、二度(にど)使用(しよう)しなかった。


(かれ)()(はじ)めた。


推杯換盞蛊(すいはいかんさんこ)(かれ)煉製(れんせい)したもので、(かれ)意志(いし)()つ。しかし以前(いぜん)地霊(ちれい)小狐仙(しょうこせん)()してあったため、小狐仙(しょうこせん)使用(しよう)できる。


(さき)数回(すうかい)は、すべて(かれ)推杯換盞蛊(すいはいかんさんこ)使用(しよう)していた。


これは、狐仙福地(こせんふくち)時間流動速度(じかんりゅうどうそくど)北原(ほくげん)数倍(すうばい)であるためである。小狐仙(しょうこせん)()こうで軽率(けいそつ)催動(さいどう)しても、方源(ほうげん)はこちらの準備(じゅんび)(ととの)っていない可能性(かのうせい)(たか)いからだ。


「ふう……(いま)小狐仙(しょうこせん)腕前(うでまえ)次第(しだい)だ。もし失敗(しっぱい)すれば、最後(さいご)一回(いっかい)で、彼女(かのじょ)はもう一組(ひとくみ)推杯換盞蛊(すいはいかんさんこ)(おく)ってくるはずだ。うまく成功(せいこう)してほしいものだ。」


方源(ほうげん)()(まえ)煉成(れんせい)した推杯換盞蛊(すいはいかんさんこ)一組(ひとくみ)だけだった。しかし旅立(たびだ)(さい)に、小狐仙(しょうこせん)(たの)んでおいたのだ。


その(あいだ)小狐仙(しょうこせん)仙鶴門(せんかくもん)(なん)()取引(とりひき)(おこな)い、煉蛊(れんこ)材料(ざいりょう)(おお)()()れ、すでに第二(だいに)推杯換盞蛊(すいはいかんさんこ)煉成(れんせい)()えていた。


時間(じかん)がもどかしく(かん)じられる。


通天蛊(つうてんこ)にせよ神念蛊(しんねんこ)にせよ、五转蛊(ごてんこ)真元(しんげん)消耗(しょうもう)(きわ)めて(おお)きい。五转巅峰(ごてんてっぽう)蛊師(こし)でさえ、数回(すうかい)呼吸(こきゅう)する(あいだ)しか使(つか)えまい。そのため、通常(つうじょう)蛊仙(こせん)地霊(ちれい)仙元(せんげん)消費(しょうひ)して使用(しよう)するのである。


では、なぜ琅琊福地(ろうやふくち)推杯換盞蛊(すいはいかんさんこ)使(つか)わなかったのかというと、方源(ほうげん)はまだ蛊虫(こちゅう)暴露(ばくろ)したくなかったからだ。一旦(いったん)(あか)るみに()れば、琅琊地霊(ろうやちれい)(かなら)ずや対応(たいおう)する秘方(ひほう)要求(ようきゅう)してくるだろう。


時間(じかん)一刻一刻(いっこくいっこく)()ぎていくが、狐仙福地(こせんふくち)では何倍(なんばい)もの(はや)さで(なが)れている。夜風(よかぜ)(つめ)たく、方源(ほうげん)(すわ)っていられずに()()がり、(ある)(まわ)(はじ)めた。


夜空(よぞら)には(ほし)がきらめき、星明(ほしあか)りは十分(じゅうぶん)にある。しかし方源(ほうげん)()(なか)星門蛊(せいもんこ)は、微動(びどう)だにしない。


「まさか失敗(しっぱい)するのか?宝黄天(ほうこうてん)のあの星蛍蛊(せいけいこ)を、(ほか)(もの)()われてしまったのか?」時間(じかん)()つにつれ、方源(ほうげん)(こころ)(しず)んでいった。


(かれ)はもはや(ある)(まわ)るのをやめ、両手(りょうて)背中(せなか)()んで草地(くさち)(たたず)んだ。


()(とお)くにやれば、三日月湖(みかづきこ)はきらめく(なみ)をたたえ、一片(いっぺん)静寂(せいじゃく)(つつ)まれている。そして(まわ)りでは、狼群(おおかみむれ)()()し、様々(さまざま)な姿態(しだい)()せていた。


この光景(こうけい)は、(かれ)(むかし)青茅山(せいぼうざん)酒虫(さかむし)()らえたあの瞬間(しゅんかん)(おも)()させた。


(かれ)自嘲(じちょう)(わら)いを(ひと)()らすと、もはや一得一失(いっとくいっしつ)一喜一憂(いっきいちゆう)することなく、()(おく)(ふたた)()()っていった。


これまでずっと(つづ)いてきたすべての(うれ)い、すべての圧力(あつりょく)、すべての焦燥(しょうそう)が、清風(せいふう)(とも)()()っていくようだった。


(かれ)夜空(よぞら)(あお)ぎ、胸中(きょうちゅう)濁気(だくき)をすべて()()した。ふと、(いま)()(かた)がこれほどまでに素晴(すば)らしいものだと(かん)じた。すべてをかけて生涯最高(しょうがいさいこう)追及(ついきゅう)()()み、脇目(わきめ)()らず、一切(いっさい)後悔(こうかい)のないこの心境(しんきょう)を。


(かれ)(こころ)(とお)()って、ちょうど(ちり)(ひと)つない明鏡(めいきょう)のようであり、この三日月湖(みかづきこ)のように()(わた)って(しず)かであった。


青茅山(せいぼうざん)転生(てんせい)して以来(いらい)(かれ)(つね)心身(しんしん)(つく)してきたが、(いま)突然(とつぜん)ある(さと)りを()た。


この(さと)りは言葉(ことば)では説明(せつめい)できず、ただ(かれ)(こころ)(から)みつき、最終的(さいしゅうてき)にはつぶやきの一言(ひとこと)となった。「今夜(こんや)星空(ほしぞら)は、(じつ)(うつく)しい。」


これは(こころ)からの感嘆(かんたん)であった。


この言葉(ことば)(はっ)した(あと)方源(ほうげん)全身(ぜんしん)(かる)くなり、千鈞(せんきん)重荷(おもに)()ろしたかのように、飄々(ひょうひょう)と(せん)にでもなれるような()がした。


(かれ)全身(ぜんしん)から(ただよ)気質(きしつ)も、(すこ)()わったようだった。本来(ほんらい)陰湿(いんしつ)気配(けはい)跡形(あとかた)もなく()え、清新(せいしん)(あか)るい()()わった。以前(いぜん)幽玄(ゆうげん)(ふか)かった双眸(そうぼう)も、(いま)(きよ)らかで(あき)らかな(ひかり)(はな)ち、新生児(しんせいじ)のようであり、また星々(ほしぼし)のようでもあった。


()(なか)星門蛊(せいもんこ)が、かすかに(ふる)(はじ)めた。その(はば)次第(しだい)(おお)きくなっていく。


方源(ほうげん)()(はな)した。


サファイアのように(あお)(かがや)星門蛊(せいもんこ)は、ゆったりと空中(くうちゅう)()かび()がった。そして(おお)(りょう)星明(ほしあか)りを()()せ、凝集(ぎょうしゅう)させていく。その(さま)は、(ゆめ)のように燦爛(さんらん)として、(まぼろし)のように優雅(ゆうが)であった。


しばらくすると、星明(ほしあか)りは巨大(きょだい)円形(えんけい)星門(せいもん)形作(かたちづく)った。


星門蛊(せいもんこ)はついに成功(せいこう)したのだ!


方源(ほうげん)(しず)かにそれを見守(みまも)り、口元(くちもと)(かす)かな()みを()かべていた。(よろこ)びはあるものの、その双眸(そうぼう)には一片(いっぺん)平静(へいせい)(たた)えられていた。


(かれ)は悠々(ゆうゆう)と星門(せいもん)(ある)()った。眼前(がんぜん)星明(ほしあか)りが(うず)()き、(かれ)身体(からだ)()()んで疾走(しっそう)させた。


十数回(じゅうすうかい)呼吸(こきゅう)(あと)(かれ)星門(せいもん)から()て、(ふたた)狐仙福地(こせんふくち)へと(あし)()()れた。


「ご主人様(しゅじんさま)、ついに(もど)ってきてくれたんだね!」


小狐仙(しょうこせん)(おお)いにお(よろこ)びで、一跳(ひとは)ねして(かれ)(むね)()()んだ。


方源(ほうげん)呵呵(かか)(わら)いながら、地霊(ちれい)(ちい)さな(あたま)をそっと()でた。


「ああ、また(もど)ってきたよ。」(かれ)は淡々(たんたん)とそう()った。





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