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蛊真人  作者: 魏臣栋
魔头乱世
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第三十九節:蛮家誘う

強者(つわもの)(とうと)ばれ、実力(じつりょく)がすべての北原(ほくげん)において、蛮多(ばんた)(ちち)寵愛(ちょうあい)()け、家老(かろう)(どう)(いん)し、葛家(かっけ)全体(ぜんたい)挑戦(ちょうせん)するとは。これは(あき)らかに、(かれ)手腕(しゅわん)勇気(ゆうき)(なら)みの道楽息子(どうらくむすこ)ではないことを(しめ)している。


方源(ほうげん)()()みを()かべて()った。「(わたし)常山陰(じょうさんいん)(えん)あって葛家(かっけ)(きゃく)となった。北原(ほくげん)のならわしも()っているから、余計(よけい)世話(せわ)()くべきではないのだが――ただ(いま)、この弟分(おとうとぶん)十万枚(じゅうまんまい)元石(げんせき)()すと()うのを(みみ)にした。(おり)よく(わたし)元石(げんせき)(こま)っている。()()された(ざい)(ほう)、もらわない()はあるまい?」


石武(せきぶ)はこの言葉(ことば)()いて、即刻(そっこく)自分(じぶん)(くち)(なぐ)りたくなった。


「この(くち)本当(ほんとう)(わざわ)いを(まね)く!四転(してん)高手(こうしゅ)()()せてしまうとは!」(かれ)心中(しんちゅう)(にが)さで()たされた。


蛮多(ばんた)苦笑(にがわら)いを()かべて()った。「この(けん)簡単(かんたん)解決(かいけつ)できます。先輩(せんぱい)元石(げんせき)(こま)っておられるなら、後輩(こうはい)から五十万枚(ごじゅうまんまい)元石(げんせき)()()げましょう!」


この言葉(ことば)(うら)には、方源(ほうげん)傍観(ぼうかん)(もと)める意味(いみ)()められていた。


一瞬(いっしゅん)にして、葛家(かっけ)(もの)たちは(みな)緊張(きんちょう)した面持(おもも)ちで方源(ほうげん)()つめた。


方源(ほうげん)(たし)かに伝説(でんせつ)英雄(えいゆう)ではあるが、名声(めいせい)ばかりが先走(さきばし)って実力(じつりょく)(ともな)わない英雄(えいゆう)など、数多(あまた)存在(そんざい)するではないか。


さらに「時務(じむ)(つう)じる(もの)俊傑(しゅんけつ)である」という言葉(ことば)もある。葛家(かっけ)零落(れいらく)し、蛮家(ばんけ)(いきお)(さか)んである。常山陰(じょうさんいん)はあくまで外部(がいぶ)(もの)であり、()()理由(りゆう)などない。


(いま)方源(ほうげん)衆目(しゅうもく)(まと)となった。(かれ)態度(たいど)が、この局面(きょくめん)行方(ゆくえ)決定(けってい)するのである。


衆目(しゅうもく)睽睽(きき)(もと)方源(ほうげん)傲然(ごうぜん)(わら)った。「君子(くんし)(ざい)(あい)するも、(これ)()るに(みち)をもってす。()()された五十万(ごじゅうまん)(かろ)く感じるが、(たたか)いで()十万(じゅうまん)元石(げんせき)こそ(おも)みがある。さあ、北原(ほくげん)規矩(きく)(したが)い、この勝負(しょうぶ)(わたし)が引き()けよう」


方源(ほうげん)(ある)()()(くだ)りた。


常山陰(じょうさんいん)叔父上(おじさま)!」葛光(かっこう)感極(かんきわ)まって(なみだ)(なが)し、()()()ず、方源(ほうげん)(うし)ろで(さけ)んだ。


葛家(かっけ)家老(かろう)たちも、(みな)感無量(かんむりょう)面持(おもも)ちであった。


流石(さすが)常山陰(じょうさんいん)(せい)(どう)英雄(えいゆう)よ!」


厚利(こうり)(まえ)でも微動(びどう)だにせず、(なん)正義感(せいぎかん)()んだ(ひと)だろう」


「この()錦上(きんじょう)()()える(もの)(おお)く、雪中(せっちゅう)(たん)(おく)(もの)(すく)ない。常山陰(じょうさんいん)()(ぞく)永遠(えいえん)(きゃく)となるだろう!」


蛮多(ばんた)顔色(かおいろ)(くら)(しず)み、(きわ)めて(けん)しい表情(ひょうじょう)()かべていた。もはや言葉(ことば)(かさ)ねても無駄(むだ)だと(さと)り、(くち)()じて石武(せきぶ)(ほう)()た。


石武(せきぶ)蛮多(ばんた)視線(しせん)(かん)()り、心中(しんちゅう)(にが)さで()ちあふれた。


(かれ)蛮家(ばんけ)帰順(きじゅん)してから()(あさ)く、蛮家(ばんけ)外姓家老(がいせいかろう)となったばかりだった。当然(とうぜん)功績(こうせき)(あせ)って()てたいと(おも)っていた。蛮多(ばんた)修行(しゅぎょう)()りないとはいえ、族長(ぞくちょう)三男(さんなん)である。葛家(かっけ)老族長(ろうぞくちょう)重病(じゅうびょう)だと明言(めいげん)されたため、ついて()たのだ。思いもよらなかったのは、常山陰(じょうさんいん)出会(であ)うことなど!


相手(あいて)気息(きそく)四転初階(してんしょかい)で、自分(じぶん)三転巅峰(さんてんてんぽう)であり、()()大差(たいさ)がないように(おも)える。しかし石武(せきぶ)(ふか)理解(りかい)していた――この大境界(だいきょうかい)(へだ)たりがもたらす実力差(じつりょくさ)という決壊(けっかい)を。


しかし(いま)状況(じょうきょう)はもはや(とら)()()りできず、もし(たたか)いを()けようものなら、(そと)(もの)たちの強烈(きょうれつ)侮蔑(ぶべつ)()けるだろう。勇武(ゆうぶ)(とうと)北原(ほくげん)では、やっていけないのである。


石武(せきぶ)はひそかに()()いしばり、やむなく()()った。


「ご教授(きょうじゅ)(たまわ)りたい」(かれ)方源(ほうげん)(ふか)一礼(いちれい)し、無理(むり)笑顔(えがお)(つく)った。


方源(ほうげん)は淡々(たんたん)と(うなず)き、その()()ったまま(うご)かなかったが、体表(たいひょう)には淡青色(たんせいしょく)狼毛(ろうもう)急速(きゅうそく)()(はじ)めた。


狼毛(ろうもう)(かれ)全身(ぜんしん)(おお)い、(みみ)(かお)、さらには(あし)(うら)()(ひら)にまで(およ)んだ。


「これは天青狼皮蛊(てんせいろうひこ)だ」石武(せきぶ)心中(しんちゅう)(あん)(ぜん)とした。天青狼皮蛊(てんせいろうひこ)四転蛊虫(してんこちゅう)(なか)では大道(おおみち)りものだ。だが、たとえそうであっても、この防御(ぼうぎょ)(そう)を、三転蛊(さんてんこ)容易(ようい)(つらぬ)けるものではない。


方源(ほうげん)背後(はいご)にいる葛家(かっけ)の人々(ひとびと)は、誰一人(だれひとり)として(いき)()んで()つめ、()(かがや)かせて方源(ほうげん)(おお)いなる威力(いりょく)発揮(はっき)するのを期待(きたい)していた。


(なか)には「あの野郎(やろう)(ころ)せ!(やつ)()(ぞく)三家老(さんかろう)(ころ)したのだ!」と怒号(どごう)する(もの)もいた。


この言葉(ことば)()いた石武(せきぶ)は、(きも)()やし、内心(ないしん)悲鳴(ひめい)()げた。「最悪(さいあく)だ!(さき)二戦(にせん)(くう)(きょう)真元(しんげん)三割(さんわり)(のこ)っていない。万全(ばんぜん)状態(じょうたい)でも(かな)わないのに、まして(いま)状態(じょうたい)では?」


動作(どうさ)(かた)く、()(およ)いでいる石武(せきぶ)()て、方源(ほうげん)内心(ないしん)冷笑(れいしょう)した。この(おとこ)はすでに戦意(せんい)完全(かんぜん)(うしな)っており、(かり)全力(ぜんりょく)があっても半分(はんぶん)発揮(はっき)できない。ましてや数回(すうかい)(たたか)い、真元(しんげん)不足(ふそく)している現状(げんじょう)ではなおさらだ。


こんな相手(あいて)は、方源(ほうげん)()には(みずか)(すす)んで(ほふ)たれようとする俎上(そじょう)(うお)同然(どうぜん)である。


だが方源(ほうげん)(かれ)(ころ)すつもりはなかった。


(ころ)して(なん)になる?


(やつ)蛮家(ばんけ)(まね)いた外姓家老(がいせいかろう)だ。(ころ)せば、蛮家(ばんけ)への鮮烈(せんれつ)平手打(ひらてう)ちとなる。方源(ほうげん)面倒(めんどう)(おそ)れはしないが、無用(むよう)(あらそ)いは()けたい。


石武(せきぶ)葛家(かっけ)家老(かろう)(ころ)したとしても、葛家(かっけ)など自分(じぶん)(かん)わりがあるか!


「かかってこい!」方源(ほうげん)(あし)()()()らすと、狼奔蛊(ろうほんこ)()り、()(ごと)猛然(もうぜん)()()した。その(はや)さは残像(ざんぞう)()くほどだった。


石武(せきぶ)(とっく)戦意(せんい)喪失(そうしつ)しており、方源(ほうげん)凶暴(きょうぼう)気勢(きせい)()(あわ)てて後退(こうたい)した。


同時(どうじ)に、(かれ)三枚(さんまい)回転(かいてん)する骨盾(こっじゅん)展開(てんかい)した。


パン!パン!パン!


方源(ほうげん)(かげ)(ごと)()いすがり、至近距離(しきんきょり)(たたか)いを仕掛(しか)け、三度(みたび)にわたる猛烈(もうれつ)攻撃(こうげき)骨盾(こっじゅん)を次々(つぎつぎ)に()(くだ)いた。


石武(せきぶ)驢馬(ろば)(ころ)がり(ろばごろがり)のように地面(じめん)(ころ)がり、(ふたた)三枚(さんまい)骨盾(こっじゅん)召喚(しょうかん)した。


パン!パン!パン!


方源(ほうげん)電光石火(でんこうせっか)攻撃(こうげき)(もと)三枚(さんまい)骨盾(こっじゅん)(ふたた)崩壊(ほうかい)した。


(いま)(かれ)には二十鈞(にじっきん)(ちから)がある。(すべ)てを発揮(はっき)できないにせよ、この骨盾(こっじゅん)(やぶ)るのは朝飯前(あさめしまえ)だ。


(ほか)(なに)かあるなら、全部(ぜんぶ)使(つか)ってみろ」方源(ほうげん)はこれ以上(いじょう)攻撃(こうげき)せず、石武(せきぶ)(いき)をつく(すき)(あた)えた。


石武(せきぶ)(ひたい)(つめ)たい(あせ)()かべ、()()いしばりながら両手(りょうて)()()わせ、二振(ふたふ)りの鉄骨(てっこつ)板斧(ばんふ)生成(せいせい)した。


「うわあああ!」(かれ)(さけ)(ごえ)()げ、板斧(ばんふ)(にぎ)りしめて猛然(もうぜん)()()せた。


「ふふふ…」方源(ほうげん)(かる)(わら)ったが、攻撃(こうげき)はせず、両手(りょうて)(うし)ろで()み、狼行蛊(ろうこうこ)移動(いどう)のみで対応(たいおう)した。


方源(ほうげん)(うご)きは(さだ)まらず、(かぜ)()柳絮(りゅうじょ)のようで、(おおかみ)のような背中(せなか)(はち)のように()まった(こし)体型(たいけい)が、一層(いっそう)飄逸(ひょういつ)とした風格(ふうかく)際立(きわだ)たせていた。


石武(せきぶ)怒号(どごう)()げ、両手(りょうて)(おの)をどう()(まわ)しても、方源(ほうげん)()(はし)一つ(とら)えられず、完全(かんぜん)方源(ほうげん)の引き(ひきた)(やく)()していた。


()(ころ)べ」方源(ほうげん)(かろ)やかに(いき)をつくと、突然(とつぜん)指先(ゆびさき)()ばした。ゆっくりと()えて(じつ)(はや)く、(かろ)(おの)()(ひと)(はじ)いた。


石武(せきぶ)方源(ほうげん)翻弄(ほんろう)されてすでに()(まわ)しており、この一撃(いちげき)()けて均衡(きんこう)(うしな)い、地面(じめん)にまっさかさまに(たお)れ、(いぬ)のように(つち)()らう(かたち)となった。葛家(かっけ)の人々(ひとびと)はこの無様(ぶざま)姿(すがた)()て、どっと歓声(かんせい)()げ、欢呼(かんこ)(こえ)(てん)(ふる)わすほどで、次第(しだい)(ひと)つの(さけ)(こえ)収斂(しゅうれん)していった。「(ころ)せ!(ころ)せ!」


石武(せきぶ)(かお)(はい)(いろ)()び、戦意(せんい)はほとんど()()せていた。方源(ほうげん)完全(かんぜん)局面(きょくめん)支配(しはい)しており、まさに(とら)(ひつじ)(もてあそ)ぶかのようだった。自分(じぶん)方源(ほうげん)(かたき)ではないと(さと)れば(さと)るほど、実力(じつりょく)発揮(はっき)できなくなり、状況(じょうきょう)はますます悪化(あっか)していく。


(かたわ)らにいる蛮多(ばんた)(こころ)谷底(たにそこ)(しず)んでいった。


腹立(はらだ)たしい!石武(せきぶ)という(やつ)本来(ほんらい)実力(じつりょく)をまったく発揮(はっき)できていない。もう(てき)(きも)(つぶ)されているのだ!だが(かり)にそうだとしても、この四転蛊師(してんこし)(つよ)すぎる。のんびり(ある)いているだけで、石武家老(せきぶかろう)(たお)してしまうとは。はあ、石武(せきぶ)()ぬだろう。今回(こんかい)()きで家老(かろう)一人(ひとり)(うしな)えば、(かえ)ってから兄弟(きょうだい)たちの責難(せきなん)()けることになる」


しかし(かれ)予想(よそう)(はん)して、方源(ほうげん)はさらに()()さなかった。


「お(まえ)所詮(しょせん)三転(さんてん)()ぎん。四転(してん)修為(しゅうい)でお(まえ)(ころ)せば、()常山陰(じょうさんいん)(たい)(もっ)(しょう)(あざむ)くと(おも)われかねん。()ってしまえ」方源(ほうげん)()()った。


常山陰(じょうさんいん)叔父上(おじさま)!あの小人物(しょうじんぶつ)見逃(みのが)してはなりません!」(うし)ろで葛光(かっこう)(さけ)んだ。


しかし方源(ほうげん)(かれ)無視(むし)した。


石武(せきぶ)(われ)(かえ)り、すぐに()()がった。(かお)には(あぶ)ない(ところ)(たす)かった安堵(あんど)(よろこ)びで一杯(いっぱい)だった。「お(いのち)(たす)けてくださり感謝(かんしゃ)いたします。感謝(かんしゃ)いたします」


方源(ほうげん)(まゆ)をひそめた。「(はや)(しっ)せろ」


「はいはいはい」石武(せきぶ)(きびす)(かえ)して()()った。


先輩(せんぱい)失礼(しつれい)いたします」蛮多(ばんた)一礼(いちれい)し、軍馬(ぐんば)(また)がった。一行(いっこう)葛家(かっけ)嘲罵(ちょうば)(こえ)(なか)()()りながら()っていった。


……


父上(ちちうえ)息子(むすこ)(つか)えを(あやま)り、この(たび)はお()びに(まい)りました」蛮多(ばんた)地面(じめん)(ひざまず)き、(あたま)()げられなかった。


蛮家(ばんけ)族長(ぞくちょう)(からだ)(ゆう)(そう)で、四転(してん)頂点(ちょうてん)という修為(しゅうい)(ゆう)する。虎皮(とらかわ)座席(ざせき)(だい)()金刀(きんとう)(すわ)り、足元(あしもと)蛮多(ばんた)一瞥(いちべつ)して()った。「今回(こんかい)葛家(かっけ)老族長(ろうぞくちょう)病床(びょうしょう)()している(うえ)、お(まえ)数名(すうめい)三転(さんてん)高手(こうしゅ)()れていたというのに、まさか失敗(しっぱい)するとは?(たし)かにお(まえ)不手際(ふてぎわ)だが、下僕(げぼく)報告(ほうこく)では、葛家(かっけ)突然(とつぜん)四転(してん)高手(こうしゅ)()()したというな?」


(まこと)にその(とお)りでございます。石武家老(せきぶかろう)(かれ)()(やぶ)れました。此奴(こいつ)はほんの腕試(うため)程度(ていど)で、()(かた)最強(さいきょう)石武家老(せきぶかろう)(もてあそ)びました。実力(じつりょく)(はか)()れません。しかし、この(けん)一貫(いっかん)して息子(むすこ)担当(たんとう)しており、全て(すべて)は息子(むすこ)情報(じょうほう)収集(しゅうしゅう)不十分(ふじゅうぶん)だったために(まね)いた失敗(しっぱい)です。息子(むすこ)(こころ)から()()り、父上(ちちうえ)どうか(はや)くお(ばつ)(くだ)さい!」蛮多(ばんた)()()()にし、(なみだ)()かべて嗚咽(おえつ)した。


蛮家(ばんけ)族長(ぞくちょう)蛮多(ばんた)言葉(ことば)()くと、かえって口調(くちょう)(やわ)らげた。「()()がれ。今回(こんかい)失敗(しっぱい)(たし)かにお(まえ)不手際(ふてぎわ)だが、所詮(しょせん)()()である。(くわ)しい状況(じょうきょう)(はな)してみよ」


蛮多(ばんた)(くち)(ひら)き、当時(とうじ)様子(ようす)(こま)かに()(はじ)めた。


しかし(はなし)(はじ)まったばかりで、蛮家(ばんけ)族長(ぞくちょう)(おどろ)いて座席(ざせき)から()()き、両目(りょうめ)蛮多(ばんた)()えて()った。「(やつ)常山陰(じょうさんいん)名乗(なの)っただと?どこの常山陰(じょうさんいん)だ?()(まえ)(たし)かに常山陰(じょうさんいん)だと断言(だんげん)できるのか?」


息子(むすこ)(まん)(ひと)つの(いつわ)りもございません!」蛮多(ばんた)(あわ)てて()ました。


蛮家(ばんけ)族長(ぞくちょう)呆然(ぼうぜん)としばし絶句(ぜっく)した。


父上(ちちうえ)父上(ちちうえ)蛮多(ばんた)(こえ)(ひそ)めて()びかけるしかなかった。「まさかこの常山陰(じょうさんいん)という(もの)(なに)由緒(ゆいしょ)ある人物(じんぶつ)なのでしょうか?」


蛮家(ばんけ)族長(ぞくちょう)茫然(ぼうぜん)とした状態(じょうたい)から(だっ)し、(われ)(かえ)ると、()(きび)しくして()った。「(いま)のところ(なん)とも()えん。偽者(にせもの)可能性(かのうせい)もある。しかしもし本物(ほんもの)ならば、北原(ほくげん)にまた一人(ひとり)人物(じんぶつ)(あら)われたことになる……まずは()がれ。この(けん)(わたくし)直接(ちょくせつ)(しょ)()する」


蛮多(ばんた)(おどろ)いた。(ちち)多忙(たぼう)(きわ)める()である。それをこの(けん)直接(ちょくせつ)(しょ)()するとは、常山陰(じょうさんいん)という人物(じんぶつ)重要(じゅうよう)さが(うかが)える。


常山陰(じょうさんいん)常山陰(じょうさんいん)……つまるところ、お(まえ)何者(なにもの)なのだ?」


……


数日後(すうじつご)葛家(かっけ)にて。


先日(せんじつ)は、山陰老弟(さんいんろうてい)義侠心(ぎきょうしん)(たす)けられ、(まこと)感謝(かんしゃ)しております。ここに五十万枚(ごじゅうまんまい)元石(げんせき)、ほんの(こころ)ばかりですが、どうかお(おさ)めください」葛家老族長(かっけろうぞくちょう)憔悴(しょうすい)した(おも)もちで、(むすめ)(うし)った(かな)しみから、十歳(じゅっさい)()けたように()えた。


方源(ほうげん)(すこ)しばかり辞退(じたい)した(あと)、受け()った。「この(たび)貴家(きか)滞在(たいざい)し、()()すのは(とも)として当然(とうぜん)のこと。(ただ)(わたし)(たし)かに元石(げんせき)(こま)っておりますので、これらの元石(げんせき)一時的(いちじてき)にお()りするということで」


山陰老弟(さんいんろうてい)高潔(こうけつ)気風(きふう)流石(さすが)北原(ほくげん)英雄好漢(えいゆうこうかん)です」老族長(ろうぞくちょう)がそう()っていると、部下(ぶか)報告(ほうこく)()て、名刺(めいし)(おく)(もの)(はこ)(とど)けた。


老族長(ろうぞくちょう)表情(ひょうじょう)(けわ)しくなり、その名刺(めいし)(おく)(もの)方源(ほうげん)(わた)した。「山陰老弟(さんいんろうてい)蛮家(ばんけ)族長(ぞくちょう)貴方(あなた)がここにいることを()り、今回(こんかい)(ぞく)(なか)(きゃく)として(まね)きたいとのことです」

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