第十八節:方源め、この 卑劣な 小僧め!
「胆石を 売らずに、石人を 売るだと?」鶴風揚は 手に 持った 書簡を 見つめ、顔を 曇らせた。
狐仙福地において、蕩魂山の 胆識蛊こそが、仙鶴門が 最も(もっとも) 求める ものだ。一度 胆識蛊を 手に 入れて 魂魄の 基盤を 増強できれば、仙鶴門 全弟子の 実力が さらに 三割増しに なるはずだ。
その上、胆石は 蕩魂山から 離す ことが できないため、現地採掘する しかない。これにより、仙鶴門の 弟子たちは 狐仙福地に 出入り する 口実を 得る。何度も 往来する うちに、方源の 警戒心が 徐々(じょじょ)に 薄れれば、仙鶴門が 陰かに 細工を 施すのも 容易に なるだろう。
しかし 方源は 頑なに 胆石の 売却を 拒む。鶴風揚は 苛立ちを 覚えた:「いつから わたくし 这样的 蛊仙が、つまらない 凡人ごろに 足元を 見られる ような 真似を しなくては ならないのだ!?」
彼は 歯噛み ながら 思った——その 端麗な 少年の 顔貌が、今や 歪み、凶悪な 形相と 化していた。
有り 余る 戦力を 持ち ながらも、それを 発揮する ことさえ できない。方源は 狐仙福地に 籠り、まるで 首を 縮めた 亀の ように 身を 潜めて いる。さらに 定仙游蛊を 持っている ため、いつでも 脱出できる。鶴風揚は もちろん、仙鶴門 全体も これには 手を 焼き、当分の 間は 手出し できない でいる。
「どうやら 狐仙が 当時 移住させた 石人は まだ 生存している ようだな。だが 方源め、一度に これほど 多くの 石人を 取引に 出す とは……いったい どれだけの 胆識蛊を 使って 培養した というのだ!」
ここまで 考え 及ぶと、鶴風揚は 胸が 張り 裂ける ような 痛みを 感じた——まるで 心臓から 血が 滴り 落ちる かの ように。
前回の 取引から 数ヶ月が 経過していた。狐仙福地では 時間の 流れが 五倍に 遅いため、実質的には 一年ほどに 相当する。
方源が これほど 多くの 若くて 力強い 石人を 育成した という ことは、それだけの 胆識蛊を 消費した ということだ。もし これらを 仙鶴門が 弟子の 育成に 使っていたら、どれほど 良かった ことか!
しかし 方源という 賊は、仙鶴門に 提供する よりも、石人を 培養する ことを 選んだ。その 心 許し 難い、まったく 許し 難い!
鶴風揚を 憤慨させたのは、この 事実だけでは なかった。さらに 重要な ことには、彼は 自らに 対する 怒りを 感じていた——方源が これほど 多くの 石人を 売り 出す と いうのは、たとえ 蛊仙である 自分と しても、心を 動かさずには いられない 取引だった のだ。
福地において、十分な 数の(かずの) 石人がいれば、蛊仙は 地下を 開発し、膨大な 地底資源を 採掘することが 可能となる。
様々(さまざま)な 金属、宝石、鉱石、そして 蛊虫や 地底生物などが、途切れる ことなく 得られる。
これに 加えて、石人の 数が さらに 増えれば、地下都市を 建設することも 可能に なり、これは 言わば 福地の 空間を 拡張する ことと 同義である。福地に 労働力が 不足している 場合、蛊仙が 採掘できる 資源は 地表の もの が 主で、これは 二次元的な 利用に 過ぎない。しかし 石人が 増えれば、地下までも 利用できる ようになり、利益は 間違いなく 倍増する。
一方 市場では、石人奴隷への 需要が 供給を 上回っている。
石人は 生涯の 大半を 睡眠に 費やす。一般的な 石人は 千歳で 寿命を 迎え、その 一生の 間に 生み 出せる 子孫は、わずか 四つ である。
もし 魂道蛊虫を 用いて 石人の 魂魄を 増強する ことも 不可能では ない。実際 数多の 蛊仙が 試した ことがあるが、一度として 広く 普及させた 例は ない。
その 理由は 他でも ない——ただ 一つ(ひとつ)、コストの 問題だ。
魂道蛊虫の 価値は、単体の 石人の それよりも はるかに 高い。
一部の 蛊仙が 石人に 特別な 需要を 持つ 場合を 除けば、利益が 費用を 上回 ことは まずない。
この 世界で、蕩魂山を 手中に 収めた 方源だけが、これほど 大規模に 石人を 培養できる のである。
しかも 今回の 取引において、方源が 書簡で 提示した 価格は、鶴風揚の 心を 動かすに 足りる ものだった。たとえ 仙鶴門が 自ら 使わなくとも、転売すれば 十分 利益が 見込める 金額なのである。
しかし、取引が たとえ お得でも、鶴風揚の 心中は 依然として 晴れなかった。
彼は これが 方源の 投げ 出した 餌だと 悟っていた。
「心が 動く ことなど 恐れるな!食いつく ことなど 恐れるな!」と いう 方源の 挑発が、耳に 残っている ようだった。
そして 方源の 読み どおり、鶴風揚の 心は 動いた。仙鶴門も また 心を 動かす だろう。他の(ほかの) 蛊仙たちも 必ずや 激しく 心を 動かす に 違いない。石人奴隷の 売買は、少なくとも 百年は 繁盛する だろう!
「方源め、実に 憎らしい 小僧よ。実に 狡賢い。だが この 石人を 手に 入れれば、太上大長老や 二長老、三長老に 成果を 示せる。雷坦の 嫌な 奴にも ようやく 口を 閉じさせられる。そして 私も ひと息 つける というものだ」鶴風揚は 深く 息を 吸い 込み、徐やかに 吐き出して、心境を 落ち 着かせた。
彼は 細目に し、口元に 徐々(じょ)に 冷やかな 笑みを 浮かべた:「しかし 方源よ、余り 得意に なるな。お前が 初一を する なら、私が 十五を して やる。お前が 胆識蛊を 売らない なら、私も 舍利蛊を 売らない。黄金舍利蛊が 欲しい だと?紫晶舍利蛊が 欲しい だと?絶対に やれない ぞ!」
……
方源は 寝椅子に 寝転がり、仙鶴門からの 返信を 読んでいた。
魅藍電影が 今も 天梯山を 守っている ため、小狐仙は 安易に 福地の 門戸を 開く ことが できなかった。そのため 仙鶴門は 今回、飛劍伝書蛊を 用いて 連絡して きたの だった。
方源は ちらりと 目を 通し、内容を 瞬時に 把握した。
鶴風揚は 手紙の 中で、取引への 応諾に 加えて、今回 明確に 要求を 付け 加えていた:胆識蛊の 取引を 求める という ことだ。胆識蛊と 引き 換えに、舍利蛊を 販売しても よい という。さらには 自ら 手を 下し、方源が 七度目の 地災を 乗り 切るのを 手助けする と まで 申し 出ていた。
方源は 冷やかに 笑い 続けた。
鶴風揚を 狐仙福地に 入れれば、その 危険性は 地災よりも はるかに 大きく、絶対に 許せる ことでは ない。
ましてや 舍利蛊の 取引を 止めれば、方源の 急所を 押さえられる と でも いうのか?笑える 話だ。
「胆識蛊は 決して 取引しない。しかし 石人は 売る ことができる。それに、仙鶴門が 心を 動かさない はずも ない。ただ、今後 仙鶴門 一門だけと 取引する わけには いかず、取引先を 外に 広げなければ ならない」方源は そう 考えた。
前世での 五百年の 経験から、方源は 自分が 提示した 価格が、蛊仙市場の 相場より 少し 低い ことを 知っていた。
仙鶴門が この 取引を 行えば、間違いなく 十分な 利益を 得る だろう。
しかし、これも 方源が 故意に 仕組んだ ことだった。
現時点では、彼には 仙鶴門弟子という 身分が 必要であり、この 脆弱で 偽りの 関係を 維持し、安定させて おく 必要が あった。
「この 利益を 手に 入れる ことで、鶴風揚の プレッシャーも 多少 緩和される だろう。奴は 私の 福地を 徐々(じょじょ)に 奪おうと 画策しているが、まさに 私も この『徐々に』という 時間が 必要なのだ。いずれ 私が 蛊仙に なれば、仙鶴門の 顔色など 気に するものか」方源は 淡く 笑った。
彼は 再び 書簡を 見ると、文面の 最後に、鶴風揚が 時間を 指定し、方源に 門戸を 開いて 洞地蛊を 送り 込むよう 要求している ことが 書かれて いた。
今回の 取引は 規模が 非常に(ひじょうに) 大きく、方源は 六万もの 石人を 売り 出す ことに なった。しかし、これら 大量の 石人を、福地の 門戸から 通して 外に 送り 出す ことは 不可能だった。
現状、あの 魅藍電影が 依然として 天梯山で 徘徊している。もし 門戸を 開き 放って、再び 侵入されて しまえば、方源は とんでもない 麻煩(ま fan)に** 見舞われる ことになる。
このような 状況では、洞地蛊を 使用する 必要が ある。
この 蛊は 高くも 五転であり、二匹一組で、一匹が 親蛊、もう一匹が 子蛊と なっている。
その 作用は、二つの 場所の 間に 設置して、宇道通路を 形成する ことだ。蛊師が 子蛊の 側から 入ると、親蛊の 側から 出て 来る。同様に、親蛊の 側から 入れば、瞬時に 子蛊の 側に 到達する。
洞地蛊は、しばしば 異なる 二つの 福地を 接続する ために 用いられる。平時には、様々(さまざま)な 資源を 輸送する ために 使われ、戦時には、援軍が 洞地蛊を 通って 迅速に 支援を 展開することが できる。
「取引を 行、これら 大量の 石人を 運び 出す には、洞地蛊を 使用する ことは 避けられない。しかし、貴殿の 洞地蛊に 何か 細工が 施されている のではないかと 懸念する。やはり 自分自身で 煉成した ものの 方が 安全だ」
方源は そう 考えると、春秋蝉の 気息を わずかに 漏らし、手に 持った 飛劍伝書蛊を さっと 煉化した。そして、迅速に 返信を 書き 送った。
半日後、鶴風揚は 返信を 受け 取った。開いて 見ると、そこには 多種多様な 蛊虫と、様々(さまざま)な 材料が 列記されていた。
「ほう? 私が 提供した 洞地蛊を 使わずに、洞地蛊の 秘方を 改良して、新しい 蛊を 自分で 煉成する つもりだと?」鶴風揚の 顔に 怒色が 浮かんだ。
「ふざけるな! 洞地蛊は 五百余年も 前から 広く 使われて きた。その 秘方は とっくに 蛊仙の 間で 知られて いる。どうして お前の ところ だけが 改良できる というのか?方源め、まったく 警戒心が 強すぎる。これに 便乗して、俺を 脅し、取引を 断れ なく しようと している のだろう。見る までも なく、これらの 煉成に 必要な ものの 中には、必ず 舍利蛊が 含まれている はずだ。あるいは 泉蛋蛊、あるいは 力道の 珍しい 蛊虫が な……え? ない?」
鶴風揚は 何度か 目を 通したが、舍利蛊も 泉蛋蛊も なく、力道蛊虫の 影も 形も 見つからなかった。
その 代わりに、大量の マイナーな 材料と、低転の 蛊虫が 要求されていた。最高位の 五転蛊は、土道の 为山九仞蛊という 蛊で、煉蛊の 成功確率を 高める ための 専用蛊だった。さらに、数多の 四転蛊も 要求されて おり、常見の 移步换形蛊から、極めて 実用性の 高い 旁推侧引蛊まで 含まれていた。
鶴風揚の 考え(かんがえ)は 揺らぎ 始めた:「この 様子では、本当に 蛊を 煉成する つもりなの だろうか。運が 普通であれば、これらの 材料で 三匹の 洞地蛊は 煉成できる。まさか、本当に 洞地蛊の 秘方を 改良したの だろうか?いや、方源ごとき 凡人に できる わけが ない。しかし 万が 一、彼の 背後に いる 蛊仙の 仕業なら どうだろう?」
もし 秘方が 改良されている ならば、新しい 蛊は 間違いなく 洞地蛊よりも 一歩 優れて いる はずだ。
鶴風揚は 思わず 胸を 躍らせた。
たとえ 秘方を 手に 入れられなくとも、方源が 煉成に 成功した 後には、必ず 子蛊を 彼に 渡す はずだ。その 時には、彼のような 堂堂たる 蛊仙なら、子蛊から 逆推して 多くの 情報を 得られる だろう。さらには、秘方そのもの を 復元できる 可能性も 十分に ある。
二日後、方源は 返信を 受け 取った。開いて 目を 通すと、案の 定、鶴風揚は 様々(さまざま)な 言を 借りて、故意に 多くの 材料と 蛊虫を 削減していた。その 目的は 言うまでもなく、方源の 真の 秘方を 探り 出そう という ものだった。
方源は 思わず 首を 振り ながら 苦笑いした——鶴風揚という 男は とにかく 心思が 細やか すぎる。これが 彼の 長所でも あり、同時に 短所でも あるの だった。
取引の 回数は 極めて 少ないが、方源は 既に 鶴風揚の 人柄を ほぼ 見抜いていた。
彼は 即座に 義を 正して 凛とした 態度で 返信し、鶴風揚に 一切の 削減を 許さず、さもなくば 蛊の 煉成が 不可能に なる と 要求した。
しかし 鶴風揚は 表面だけ 繕い、引き続き 言を 左右に し、その 言い訳は 聞いている 本人が もはや 信じ かねる ほどだった。
何度か 手紙の 往復が あり、方源は 「仕方なく」 妥協を 選び、さらに 別の リストを 作成した。
「小僧め、俺と 張り 合うには まだ 未熟者だ」鶴風揚は この 返信を 受け、ようやく リストに 記載された 一部の 物品を 渡した。そして、また も 言を 弄して 遅延を 図った。
こうして 手紙の やり取り(とり)を 重ねる うちに、まるまる 七、八日(なな、ようか)もの 時間が 費やされた。
方源が 極度の 無念さと 怒りを 表に し始めた 時、ようやく 鶴風揚は 手を 引いた。「頃合い も 良かろう」と 判断し、何度も 削り 取られた 六番目の リストを 手に 取ると、持ち帰って 研究に 没頭した。
しかし 彼の 錬成術への 造詣は 浅く、苦心して 研究し、何度も 試行錯誤を 重ねたが、成果は 全く 得られなかった。
中洲時間で 半月後、彼は 方源から 送られてきた 洞地蛊の 子蛊を 受け 取った。
彼は まるで 宝物を 手に 入れたかの ように 喜び、さらに 忍耐強く 研究に 没頭した。
今度は 三日間も かけて 研究を 続け、ついに 秘方の 逆解析に 成功した。
その 秘方を 目に した 瞬間、鶴風揚は 激怒して 咆哮した:「方源め!この 卑劣な 小僧めが!これは 明らかに 普通の 洞地蛊の 秘方じゃ ないか!」
その 場、彼は 声を 張り 上げて 方源を 罵倒し、「卑怯で 无耻な 狡賢い 卑賤もの」と 罵り、その 怒りは やがて 方源の 十八代も 前の 祖先に まで 及んだ。




