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蛊真人  作者: 魏臣栋
魔头乱世
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番外:炎天下の『聖業』

容赦(ようしゃ)ない太陽(たいよう)地面(じめん)から(あぶら)(しぼ)()さんばかりに()りつけ、空気(くうき)には(ちり)(あせ)(にお)いが(ただよ)い、()じり()って (ひと)(むね)()まらせる。工事現場(こうじげんば)では()(ごえ)が次々(つぎつぎ)と()がるが、(ちから)()ちているというより、()(ぎわ)(かな)しい(さけ)びのようで、(なが)()きずられ、(かぜ)()かれて ()()れの(いき)のような(おと)()っていく。


人混(ひとご)みの(うし)ろから(のぞ)いていると、(こし)()がった老石人(おいしいと)()えた。(かた)(こけ)()()って (いし)地肌(じはだ)()えており、一歩一歩(いっぽいっぽ)()うようにして 全身(ぜんしん)(こけ)宝石(ほうせき)(かざ)った熱闘良(ねっとうよ)(まえ)(すす)()ると、「ドスン」と 小石(こいし)(みち)(ひざ)(たた)きつけた。その(おと)()いているだけで()()くようだった。(かれ)(しわ)だらけの(かお)()げ、(なみだ)(どろ)(ほこり)にまみれさせながら(なが)し、(かみ)やすりで()られたような ()れた(こえ)()った。「旦那様(だんなさま)、どうか(あわ)れんで……。昨日(きのう)()()が ここで(たお)れました。(となり)三郎(さぶろう)もそうです……。このままでは、(みんな)()()えてしまいますぞ!」


その熱闘良(ねっとうよ)四十歳前後(よんじゅっさいぜんご)(おも)われる (おとこ)で、(こし)長鞭(ちょうべん)()げ、表情(ひょうじょう)一つ(ひとつ)()えず、(あわ)々(だん)と老人(ろうじん)一瞥(いっべい)すると、平然(へいぜん)とした、しかし(うたが)いを(ゆる)さない(つめ)たい口調(くちょう)()った。「地子様(ちしさま)(せい)なる御業(みわざ)のため、石人一族(いしひといちぞく)栄光(えいこう)のために、これが(かれ)らの本分(ほんぶん)だ」。(かれ)(とお)くを()()した。そこには何枚(なんまい)かの大きな(いし)(はた)灼熱(しゃくねつ)太陽(たいよう)(もと)(ちから)なく()れていた。「この工事(こうじ)(だれ)のためだと(おも)っている?俺々(おれおれ)の子孫(しそん)(みな) 地子様(ちしさま)御恩(みおん)(よく)せるようにするためだ!(いま)多く(おおく)の(あせ)(なが)せば、将来(しょうらい) 平穏(へいおん)(おとず)れる——その程度(ていど)道理(どうり)()からないのか?」


老石人(おいしいと)呆然(ぼうぜん)とし、(くちびる)(ふる)わせながら、まだ(なに)()おうとした:「で……でも、(やつ)らは()んだんです!(あたた)かい(めし)最後(さいご)一口(ひとくち)()えずに……」


()?」熱闘良(ねっとうよ)(ひや)やかに(わら)い、(かれ)言葉(ことば)(さえぎ)った。「地子様(ちしさま)()(ささ)げられることができれば 本望(ほんもう)だろう。あそこを()ろ」。(かれ)(ゆび)さす(ほう)には、工事現場(こうじげんば)(はし)()()がいくつも()っており、それらは(ゆが)んで、(うえ)には名前(なまえ)(きざ)まれている。(かぜ)()くと、()(くく)()けられた(かみ)(ばん)が さらさらと(おと)()て、()いているようだった。「(おれ)はもう (かれ)らのために 『忠魂碑(ちゅうこんひ)』を()てた。地子様(ちしさま)も これらの忠臣(ちゅうしん)(わす)れはしない」。


(わたし)はそれらの木碑(もくひ)()つめた。(かず)密集(みっしゅう)して、(はたけ)作物(さくもつ)よりも(おお)い。昨日(きのう)(とお)りかかった(とき)には、まだこんなに(おお)くなかったように(おも)う。老人(ろうじん)もそれらの()()つめ、(にご)った()(うつ)ろで、しばらく()ってから (つぶや)いた。「だが…… 我々(われわれ)(たみ)()きていたいだけなのです。石人(いしひと)(すべ)()()えたら、(だれ)(いえ)()り、(だれ)()(そだ)てるのです?この『聖業(せいぎょう)』とは、(ひと)(いのち)()()げて ()()げるものなのですか?」


熱闘良(ねっとうよ)はもはや(かれ)(かま)わず、()()けた宝石(ほうせき)(ととの)えるだけだった。威張(いば)った足取(あしと)りで老人(ろうじん)(かたわ)らを(とお)()ぎると、(きら)びやかな(くつ)老人(ろうじん)がさっき(ひざまず)いた場所(ばしょ)()みしめ、「ギシリ」と(おと)()てた。老石人(おいしいと)は その()()のように()(づく)し、(かた)(かす)かに(ふる)わせていた。(まわ)りの石人(いしひと)()()ないふりをして、相変(あいか)わらず 作業(さぎょう)没頭(ぼっとう)している——ある(もの)(おお)きな(いし)(かつ)ぎ、(かお)()()にして よろよろと(ある)いている;ある(もの)(いし)()って地面(じめん)()り、その動作(どうさ)(いと)(あやつ)られる人形(にんぎょう)のように(おそ)い;まだ(わか)子供(こども)もいる、(ちい)さなシャベルを()に、()(うつ)ろ、機械的(きかいてき)(つぶや)いている:「地子様(ちしさま)万歳(ばんざい)…… 聖業(せいぎょう)のために……」


(わたし)工事現場(こうじげんば)(わき)(まわ)り、(かべ)標語(ひょうご)()()められているのを()た。(あか)(かみ)(くろ)文字(もじ)太陽(たいよう)(さら)されて(いろ)あせているが、相変(あいか)わらず()()さる:「地子(ちし)一心(いっしん)三日(みっか)聖業(せいぎょう)()す!」「()()しても(たましい)(ほろ)びず、忠魂(ちゅうこん)天皇(てんのう)(とも)に!」(かぜ)()くと、標語(ひょうご)(かみ)(はし)()くれ()がり、(くち)()けて(わら)っているようでもあり、()いているようでもあった。


()ていると、(わか)石人(いしひと)一人(ひとり)(たお)れた。()()っていた(いし)が 「ガチャン」と地面(じめん)()ちる。(まわ)りの石人(いしひと)一瞬(いっしゅん)呆然(ぼうぜん)としたが、(だれ)(たす)けに()ようとせず、熱闘良(ねっとうよ)一人(ひとり)(ちか)づいてきて、若者(わかもの)(あし)()った。反応(はんのう)がないのを確認(かくにん)すると、(とお)くに()かって(さけ)んだ。「また一人(ひとり)だ!()めてしまえ、()名前(なまえ)追加(ついか)しろ!」


(わか)石人(いしひと)(かお)灼熱(しゃくねつ)地面(じめん)()()き、口元(くちもと)には かすかな()みすら()かんでいた。(なか)(ひら)いた()(おお)きな(いし)(はた)(ほう)()いており、(なに)(たから)でも()ているようだった。(わたし)背筋(せすじ)(さむ)くなるのを(かん)じた。一昨日(おととい) 部落(ぶらく)(ひと)(はなし)()いたのを(おも)()した。この工事(こうじ)は もともと運河(うんが)建設(けんせつ)するためだったが、半分(はんぶん)まで出来上(できあ)がったところで、(うえ)(もの)()まぐれで 『地子聖道(ちしせいどう)』に()えると()めたらしい。万民(ばんみん)がこの(みち)沿()って 地子様(ちしさま)御恩(みおん)(かん)じられるようにするためだ と()うが、御恩(みおん)らしきものは()えず、(ひと)(いのち)ばかりが ()()している。


(すこ)(ある)くと、(さき)ほどの熱闘良(ねっとうよ)(ふたた)出会(であ)った。(かれ)(たか)(ところ)()ち、(した)(はたら)石人(いしひと)見下(みお)ろし、(まゆ)をひそめて 心配(しんぱい)しているようだった。(かれ)(そば)石人(いしひと)小声(こごえ)()うのを()いた:「進捗(しんちょく)がまだ(おそ)い…… (うえ)地子様(ちしさま)成果(せいか)()っていると せかしている。もっと頑張(がんば)れ、どうしても駄目(だめ)なら 部落(ぶらく)老人(ろうじん)()んでこい——どうせ いなくなっても (なん)影響(えいきょう)もない、聖業(せいぎょう)貢献(こうけん)させた方がましだ」。


(そば)(もの)(あわ)てて(うなず)いた:「はい!旦那様(だんなさま)(かしこ)い!すぐ手配(てはい)いたします!」


(わたし)は その()()(づく)し、熱闘良(ねっとうよ)背中(せなか)()つめた。突然(とつぜん) (かれ)(いと)(あやつ)られる人形(にんぎょう)のように(おも)えた。(いと)(うえ)(もの)()(にぎ)られ、(した)(はたら)(もの)人形(にんぎょう)以下(いか)で、ただ(いき)をする(どろ)人形(にんぎょう)()ぎず、使(つか)()われば (なん)痕跡(こんせき)(のこ)さず ()てられてしまう。


太陽(たいよう)(じょ)々(じょ)に西(にし)(かたむ)き、(ひと)(かげ)(なが)()()ばす。工事現場(こうじげんば)()(ごえ)次第(しだい)(よわ)まっていくが、まだ()まない。あの(こし)()がった老石人(おいしいと)は いつの()にか工事現場(こうじげんば)(もど)っており、()(いし)()ち、ゆっくりと地面(じめん)()っていた。動作(どうさ)(おそ)いが、非常(ひじょう)丁寧(ていねい)だ。(わたし)(ちか)づいて 小声(こごえ)()いた:「お(じい)さん、さっき旦那(だんな)意見(いけん)()ってたじゃないですか?どうしてまた (はたら)きに()たんですか?」


老石人(おいしいと)(かお)()げ、(わたし)(ひと)()()ると、()にはもはや(さき)ほどの(かな)しみはなく、無感覚(むかんかく)になっていた:「(はたら)かなかったら……どうしようもない。(はたら)かないのは 地子様(ちしさま)への不忠(ふちゅう)だ と()う、(くび)()られる。(おれ)には まだ(ちい)さい(まご)がいる、(おれ)()ねば、(すく)なくとも (まご)()わせる(めし)には()えられる……もしかしたら、(おれ)()ねば 『忠魂碑(ちゅうこんひ)』に()せてもらえる、地子様(ちしさま)(おれ)(まご)(まも)ってくれるかも……」


そう()うと、またうつむいて 地面(じめん)()(つづ)け、(くち)には あの呪文(じゅもん)のようにつぶやいた:「地子様(ちしさま)万歳(ばんざい)…… 聖業(せいぎょう)のために……」


(わたし)は もう(なに)()わず、()っていった。(とお)くまで()ても、まだ工事現場(こうじげんば)()(ごえ)()こえる。(かぜ)(おと)()じり()い、哀歌(あいか)のようにも、賛歌(さんか)のようにも()こえる。容赦(ようしゃ)ない太陽(たいよう)(もと)(とお)くまで(ただよ)っていく。魯迅(ろじん)先生(せんせい)が 「悲劇(ひげき)人生(じんせい)価値(かち)あるものを破壊(はかい)して (ひと)()せるものだ」と()ったのを(おも)()す。だがここでの悲劇(ひげき)には、「価値(かち)あるもの」さえもない——(かれ)らは (ひと)(いのち)(くさ)のようになげすて、愚昧(ぐまい)忠誠(ちゅうせい)とし、破滅(はめつ)天国(てんごく)とし、自分(じぶん)たちが いかに偉大(いだい)なことをしているのか と(しん)()んでいる。


(そら)次第(しだい)(くら)くなっていく。(とお)くの(おお)きな(いし)(はた)相変(あいか)わらず(ひるがえ)り、巨大(きょだい)(かげ)のように この土地(とち)を、そしてこの土地(とち)()む人々(ひとびと)を(おお)っている。(わたし)には()かる、明日(あした)太陽(たいよう)(のぼ)るとき、ここは相変(あいか)わらずだということが——()(ごえ)標語(ひょうご)(たお)れる(もの)無感覚(むかんかく)(かお)、そして ますます密集(みっしゅう)していく『忠魂碑(ちゅうこんひ)』。そして(かれ)らは、相変(あいか)わらず 「地子様(ちしさま)万歳(ばんざい)」と(とな)え、あのいわゆる「聖業(せいぎょう)」のために、最後(さいご)(いき)まで (ささ)(つづ)けるのだろう。



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