第四節:古月方源!
この作品は中国の作者・蛊真人によって翻訳されました。
朝日が昇り、爛漫な霞光が青茅山を染める。霧剣のような陽光が山霧を貫く中、百十五人の十五歳少年が家主閣前に集結していた。
五層の楼閣は山寨の心臓部に聳え、警護兵が厳重に守る。閣内に古月一族の祖霊牌位が鎮座し、歴代族長が居住する権力の中枢だ。
「良くぞ遅れずに来た。今日の開竅大典はお前たちの命運を分ける。余計な話は抜きにして来い」学堂家老が白髪をなびかせ地下へ導く。
螺旋状の石段を降りた先に現れたのは、鍾乳洞の幻想世界。七色に輝く石筍が少年たちの顔を虹色に染めた。
方源は群衆に紛れながら冷徹に分析する。「古月一族が中土から南疆へ遷った真の目的は、この霊泉から産出される元石にある」
数百歩進むと闇が濃くなり、水音が響く。三丈幅の地下川が現れると、川面は幽玄な青藍色に光り、夜空の銀河のようだ。透き通った水中では魚影が揺れ、対岸には月蘭花の絨毯が広がる。花弁は三日月形の薄藍色、花芯は真珠のような柔光を放っていた。
「月蘭花は多くの蠱虫の餌だ。この花畑こそが一族最大の培養場だろう」方源は冷めた視線で花海を見下ろした。
「美しい…」
「幻想的だわ」
少年たちの瞳が一斉に輝きだした。未知の世界に触れる緊張と期待が混ざり合う中、家老の声が洞窟に響いた。「これより名を呼ぶ者から順に川を渡り、対岸へ進め。歩ける限り前進せよ。距離こそがお前たちの資質を測るものさしだ」
「はい!」一斉の返事が反響する。事前に家族から「歩行距離が長いほど修行適性が高い」と聞かされていた少年たちは、淡く青く輝く水面を見つめながら拳を握りしめた。
「古月陳博」家老が名簿を手に最初の名を呼んだ。
三丈幅の川は膝丈の深さ。陳博は厳しい表情で花畑に足を踏み入れるや、不可視の霊圧に阻まれた。月蘭花の間から湧き上がった純白の光粒が少年の体内に吸収されると、霊壁が柔化した。
「ぐっ...!」三歩進んだ瞬間、再び霊圧が鋼の如く増大。家老は硯に筆記しながら宣告した。「古月陳博、歩数三。蠱師の素質なし。次、古月藻榭」
陳博の顔面が蒼白に変わり、歯を食いしばりながら元の位置へ戻った。資質なき者は凡人のまま家族の最下層に留まる定めだ。その体は風前の灯のようによろめき、生涯の希望を断たれた衝撃は大きすぎた。
周囲から憐憫の視線が注がれる中、人々の関心は第二の少年へ移る。だが彼も四歩で阻まれ、無情の宣告を受けた。「古月藻榭、歩数四。蠱師の素質なし」
修行資質を持つ者は稀で、通常十人中五人が修業可能なら上々だ。だが古月一族では血脈の恩恵により、その確率は十人中六人に達する。
初代族長・古月伝奇が遺した「力の遺伝子」が血脈に刻まれているためだ。この伝説級の強者は修行により自身のDNAを進化させ、子孫に優れた霊根を継承させた。
連続した無資質の判定に、陰で見守る家老たちの表情が険しくなる。老練な古月族長でさえ眉間に皺を寄せた。
「古月漠北!」学堂家老の名呼びが溶洞に反響した。
「ここに!」麻布の衣をまとった面長の少年が列から飛び出た。同年代を凌駕する逞しい筋骨に、荒々しい気配を漲らせている。
三歩両歩で川を渡り対岸に立つや、十歩、二十歩、三十歩と進むにつれ、月蘭花から湧き出す微光が持続的に体内に吸収されていった。三十六歩目で遂に足が止まると、観衆席からは驚愕の吐息が漏れた。
「よし!古月漠北、乙等資質!」学堂家老は硯を床に叩きつける勢いで歓喜した。「来い!元海を診てみる」
家老が少年の肩に掌を当て真元を巡らせると、瞼の裏で虹色の光脈が走った。「元海六分六厘...重点育成が必要だな」と呟きながら、特製の霊墨で羊皮紙に記録を残した。
この世の資質は甲・乙・丙・丁の四等に分かれる。
丁等資質の少年は三年を培養すれば一転の資深蠱師へ昇格し、家族の礎となる。
丙等資質ならば二年ほどで二転蠱師へ至り、多くは家族の中核を担う存在となる。
乙等資質は手塩にかけて育てねばならず、通常は未来の家老候補として位置付けられる。六、七年の歳月を経て三転蠱師に到達する。
甲等資質は例え一人現れても家族全体の幸運とされる。細心の庇護と資源の傾斜配分を受け、十年ほどで四転蠱師へ至れば、族長の座を争う資格を得るのだ!
つまり古月漠北は成長さえ遂げれば、将来必ず古月一族の家老となる。道理で学堂長老は歓喜して笑い、密かに注視していた諸家老たちも一斉に安堵の息をついた後、ある特定の家老へ羨望の眼差し(まなざし)を集中させたのである。
その家老もやはり馬面の風貌で、古月漠塵と名乗る古月漠北の祖父であった。皺の刻まれた顔には既に笑みが波紋のように広がり、宿敵に向かって挑発的な視線を投げかけた。「どうだ、我が孫の器量は及第点だろう、古月赤練よ」
赤髪をなびかせる家老古月赤練は鼻で冷笑を漏らすのみで返答せず、顔色は陰鬱な雲に覆われだった。
半刻を経過する頃には、少年たちの半数が既に花海を踏破し、丙等・丁等の資質保持者が続々(ぞくぞく)と出現。ただし無資質者が全体の49.7%を占めるという統計結果が判明した。
「嘆かわしいことよ。血脈が薄れるにつれ、ここ数年家族に四転強者も現れず、血統強化が滞っている。四代族長ただ一人が五転に至ったが、花酒行者と相打ち滅ぼし合い、子孫を残さぬまま逝ってしまった。古月一族の後継者の資質は加速度的に劣化している」族長は深淵の底から湧き上がるような嘆息を漏らした。
その刹那、学堂家老の声が洞窟内に響き渡った。「古月赤城を召す!」
この名に反応し、諸家老たちの視線が一斉に古月赤練へ集中した。赤城は赤練の直系孫にあたる。
小柄で痘痕だらけの少年は拳を固く握り締め、額に脂汗を浮かべながら進み出た。明らかに過剰な緊張に苛まれている様子だ。
対岸に足を踏み入れるや、月蘭花の微光が稲妻のように彼の体内に吸収され始めた。天罡数に則る三十六歩を完遂した瞬間、ようやくその歩みは止まった。
「またしても乙等!」学堂家老の叫びが洞窟を揺るがした。
少年たちの列が騒然となり、古月赤城へ羨望の眼差しが集中砲火のように降り注いだ。
「はっはっは!三十六歩、天罡歩数を完遂じゃ!」古月赤練が勝鬨を上げながら、古月漠塵へ挑戦的な眼光を炸裂させた。
これを受けて古月漠塵の顔色が鉛色に変貌
「古月赤城か…」群衆の中、方源は顎に手を当てて考え込んでた。覚えてるぞ、こいつ覚醒式でインチキしたせいで家族からめっちゃ怒られたんだよな。実際の資質は丙等なのに、爺さんの古月赤練が裏で細工して乙等に見せかけてたんだ。インチキ方法なら、方源の頭の中に何十通りも浮かんでる。赤城のやつより完璧な方法だってあるわ。もし乙等か甲等のフリしたら、家族からガッツリサポートされるけど…でもな。
まず第一に、俺が転生してからの時間が短すぎて、準備する余裕なんてなかった。第二に、たとえインチキ成功したって、修行のスピードは隠しきれない。いずれバレるに決まってる。
でも赤城の場合は違う。爺さんの赤練が家族の実力者二人組の家老だから、ツケが回ってこないんだ。赤練と漠塵の確執は家族内でも最大派閥争い。相手を押さえつけるために、孫の資質を良く見せたいんだろう。裏でカバーしてるから赤城も一時的にはごまかせてる。記憶じゃ、あの事件がなきゃバレてなかったはず。
目を細めながら、どうやったらこの情報を最大限に利用できるか考えを巡らせてる。今すぐバラしても、ちょっとの褒美はもらえるけど、権力者の赤練に睨まれたら終わりだ。たかりを仕掛けるのも、今の実力じゃ逆にやられるだけ。
考え込んでたところに、いきなり学堂家老の声が飛び込んできた。「古月方源、出てまいれ!」
この作品は中国の作者・蛊真人によって翻訳されました。