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蛊真人  作者: 魏臣栋
魔子出山
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第百八十六節:彼はも死た

「もう四十八関(よんじゅうはちかん)か……」武神通(ぶしんつう)(こころ)の中で(かぞ)えた。


(かれ)武家(ぶけ)(もの)——南疆(なんきょう)随一(ずいいち)(ちょう)名門(めいもん)だ。武家(ぶけ)正道教(せいどうきょう)巨大(きょだい)権力(けんりょく)で、その基盤(きばん)(ふか)い。武神通(ぶしんつう)武家(ぶけ)(おも)(てん)(いく)(せい)する奴道(ぬどう)蛊師(こし)で、奴道(ぬどう)腕前(うでまえ)(なら)はずれている。


武神通(ぶしんつう)という()豪快(ごうかい)だが、本人(ほんにん)(ほね)(かわ)ばかりの痩身(そうしん)顔色(かおいろ)(ろう)のように()ばんでいる——(やま)書生(しょせい)のようだ。


(じつ)は、かつては(おおかみ)背中(せなか)のように幅広(はばひろ)く、(はち)(こし)のように(ほそ)逆三角形(ぎゃくさんかくけい)体躯(たいく)()っていた。だが、ある(たたか)いで龍青天(りゅうせいてん)碧空蛊毒(へきくうこどく)()たった。


(かれ)聖手神医(せいしゅしんい)(たず)ねて治療(ちりょう)(もと)めた。


聖手神医(せいしゅしんい)(かれ)(むね)()()て、()(かがや)かせながら嘆息(たんそく)した:「(おそ)すぎた……蛊毒(こどく)骨髄(こつずい)まで浸透(しんとう)している。(いのち)実力(じつりょく)(たも)てるが、(どく)(ふか)()()ろし、(のぞ)くのは困難(こんなん)だ。今後(こんご)定期的(ていきてき)(かよ)って治療(ちりょう)()けよ——(わたし)(どく)()いてやる」


この碧空蛊毒(へきくうこどく)のため、武神通(ぶしんつう)日増(ひま)しに()(ほそ)り、(いま)姿(すがた)となったのだった。


(つぎ)(てき)は、()たして(だれ)か……」武神通(ぶしんつう)(きり)(なか)(ある)きながら、(ふか)(するど)()(ひか)らせた。


ついさっき、()つに()かれた(みち)(まえ)で、(かれ)(まよ)わず正面(しょうめん)(みち)(えら)んだ。


犬王伝承(けんおうでんしょう)は、(おく)になるほど選択肢(せんたくし)()える。だが大抵(たいてい)蛊師(こし)は、安全(あんぜん)()って犬群(いぬむれ)(みち)(えら)ぶ——(ほか)蛊師(こし)との(たたか)いは、最後(さいご)手段(しゅだん)だ。


犬群(いぬむれ)(かず)(おお)くても、所詮(しょせん)畜生(ちくしょう)()ぎない。だが蛊師(こし)指揮(しき)すれば、(すくな)(かず)でも一定(いってい)脅威(きょうい)となる。


しかし武神通(ぶしんつう)は、()えて(ぎゃく)(おこな)った——蛊師(こし)との対戦(たいせん)可能(かのう)(かぎ)り、そちらを(えら)ぶのだ。


奴道(ぬどう)造詣(ぞうけい)において、南疆(なんきょう)(わたし)一流(いちりゅう)だ。この三叉山(さんさざん)では、ほぼ間違(まちが)いなくトップレベルと()える。脅威(きょうい)となる相手(あいて)(ふた)()だけだ——一人(ひとり)巫鬼(ふき)五转蛊師(ごてんこし)で、かつて奴道蛊師(ぬどうこし)だったが、奴道(ぬどう)資源(しげん)()()くすため、途中(とちゅう)流派(りゅうは)()えた。もう一人(ひとり)章三三(しょうさんさん)純粋(じゅんすい)奴道蛊師(ぬどうこし)だが、修為(しゅうい)では(わたし)(およ)ばない」


武神通(ぶしんつう)奴道(ぬどう)において圧倒的(あっとうてき)優位(ゆうい)()つ。章三三(しょうさんさん)(いた)っては、(かれ)後輩(こうはい)(かく)だ。犬王伝承(けんおうでんしょう)(なか)では、(たと)巫鬼(ふき)()(こう)から(たたか)うことになっても、微動(びどう)だにしない自信(じしん)があった。


これほどの実力(じつりょく)()(かれ)は、当然(とうぜん)優先的(ゆうせんてき)(てき)(たた)き、競争相手(きょうそうあいて)可能(かのう)(かぎ)排除(はいじょ)する。


最終的(さいしゅうてき)に、ただ一人(ひとり)犬王伝承(けんおうでんしょう)独占(どくせん)する——これが武神通(ぶしんつう)緻密(ちみつ)戦略(せんりゃく)だ。


(かぞ)えてみれば、(つぎ)相手(あいて)は、(わたし)始末(しまつ)する二十三人目(にじゅうさんにんめ)か。ふんふん、お(まえ)不運(ふうん)だな」


武神通(ぶしんつう)(こころ)()ややかに(わら)い、(あし)()めた。


周囲(しゅうい)では、(いぬ)()れが秩序正(ちつじょただ)しく(かれ)守護(しゅご)していた。


(かれ)(きり)(おく)凝視(ぎょうし)した——(きり)(なか)にぼんやりとした(かげ)(あらわ)れ、次々(つぎつぎ)と全身(ぜんしん)青紫色(あおむらさきいろ)皮膚(ひふ)腐敗(ふはい)した犬型(いぬがた)(けもの)(あらわ)れた。


「ふん……屍食(ししょく)(けん)か」武神通(ぶしんつう)(かる)(わら)った。


初期(しょき)(せき)突破(とっぱ)では有効(ゆうこう)だが、後期(こうき)になればなるほど役立(やくだ)たなくなる——この屍食犬(ししょくけん)死体(したい)()らうことで(きず)急速(きゅうそく)回復(かいふく)できるからだ。


しかし(はや)さは電文狗(でんぶんく)(おと)り、防御(ぼうぎょ)鉄甲犬(てっこうけん)(およ)ばず、結束力(けっそくりょく)菊花秋田犬(きっかあきたいけん)(はる)かに(おと)る。


奴道(ぬどう)中途半端(ちゅうとはんぱ)(あつか)蛊師(こし)たちだけが、こんな無用(むよう)食屍犬(しょくしかん)(くる)うんだ。(へだ)たれた業界(ぎょうかい)など理解(りかい)できず——奴道蛊師(ぬどうこし)でなければ、数十年(すうじゅうねん)(ひた)らねば、奴道(ぬどう)奥義(おうぎ)()るはずがない」


武神通(ぶしんつう)はそんな蛊師(こし)たちを(おも)()かべ、嘲笑(あざわら)いを()かべた。


しかし次の瞬間(しゅんかん)(かれ)(まゆ)(かす)かにひそんだ——


前方(ぜんぽう)(きり)(なか)で、食屍犬(しょくしかん)がまだ(あら)われ(つづ)けているのだ。


(かず)想定(そうてい)より(おお)いな……勝利(しょうり)には(すこ)犠牲(ぎせい)(ともな)うか」武神通(ぶしんつう)(こころ)(つぶや)いた。


しかしその直後(ちょくご)大量(たいりょう)食屍犬(しょくしかん)()じって、(こと)なる犬獣(けんじゅう)視界(しかい)(あらわ)れた。


(きく)秋田犬(あきたいぬ)か……(かず)(すく)なくない。ふむ……奴道(ぬどう)(すこ)しは心得(こころえ)があるようだ」武神通(ぶしんつう)は淡々(たんたん)と(うなず)いた。


相手(あいて)食屍犬(しょくしかん)菊秋田犬(きくあきたいぬ)混成(こんせい)部隊(ぶたい)——(かず)(おお)いが、陣形(じんけい)(もろ)い。(あと)犬王(けんおう)数頭(すうとう)突撃(とつげき)させれば、()れは簡単(かんたん)(くず)れる。強行突破(きょうこうとっぱ)決着(けっちゃく)をつけてやる」


「……おや? まさか針鼠犬(はりねずみいぬ)までいるとは?」


武神通(ぶしんつう)(きり)(なか)に、針鼠犬(はりねずみいぬ)(あらわ)れるのを(みと)めた。


この(いぬ)全身(ぜんしん)(するど)(はり)()やしており、攻撃(こうげき)すれば(みずか)らが(きず)つく。


防御(ぼうぎょ)(りょく)(たか)鉄甲犬(てっこうけん)硬骨(こうこつ)なら、針鼠犬(はりねずみいぬ)(とげ)のある(ほね)だ——これを()()むには、(のど)()される覚悟(かくご)()る。


針鼠犬(はりねずみいぬ)がこんなに(おお)い! こいつは(うん)()いな……こんな大群(たいぐん)()()れるとは。なぜ(おれ)には、こんな幸運(こううん)(おとず)れないんだ?」


武神通(ぶしんつう)嘆息(たんそく)し、即座(そくざ)戦術(せんじゅつ)調整(ちょうせい)した。


相手(あいて)針鼠犬(はりねずみいぬ)がいるなら、鉄甲犬群(てっこうけんぐん)前衛(ぜんえい)に、両翼(りょうよく)電文犬群(でんぶんけんぐん)配置(はいち)しよう。戦端(せんたん)(ひら)かれ次第(しだい)鉄甲犬(てっこうけん)は徐々(じょじょ)に前進(ぜんしん)させ、両翼(りょうよく)から電文犬(でんぶんけん)包囲(ほうい)すれば——勝利(しょうり)()まったも同然(どうぜん)だ!」


しかし針鼠犬(はりねずみいぬ)(あと)(きり)(なか)から大群(たいぐん)電文犬(でんぶんけん)(あらわ)れた。


武神通(ぶしんつう)表情(ひょうじょう)(けわ)しくなった——


電文犬群(でんぶんけんぐん)出現(しゅつげん)は、(かれ)戦術(せんじゅつ)(すで)通用(つうよう)しなくなることを意味(いみ)していた。相手(あいて)高速(こうそく)電文犬(でんぶんけん)()てば、同様(どうよう)反包囲(はんほうい)してくるからだ。


電文犬(でんぶんけん)までこんなに(おお)いとは!」視界(しかい)(うつ)電文犬(でんぶんけん)()えるほど、武神通(ぶしんつう)顔色(かおいろ)(けわ)しくなった。


(かれ)(さと)った——これほどの犬獣(けんじゅう)(よう)する相手(あいて)は、(うん)()いだけでは説明(せつめい)できない。(あき)らかに、奴道(ぬどう)精通(せいつう)する蛊師(こし)だ——もはや脅威(きょうい)()べる存在(そんざい)だ。


相手(あいて)(だれ)だ? 巫鬼(ふき)か? それとも章三三(しょうさんさん)か? ともかく、これは苦戦(くせん)になる。戦術(せんじゅつ)臨機応変(りんきおうへん)()えねば。だが(さいわ)い、()()には切り(きりふだ)がある!」


そう(かんが)えると、武神通(ぶしんつう)(こころ)()()いた。


(かれ)自軍(じぐん)中央(ちゅうおう)()をやった——そこには(やく)百二十頭(ひゃくにじゅうとう)犬獣(けんじゅう)がうずくまっている。


それらの(いぬ)は、通常(つうじょう)犬獣(けんじゅう)(ばい)巨体(きょたい)()つ。(するど)(つめ)、雄々(おお)しく(ひろ)(あつ)背中(せなか)獅子(しし)(ごと)鼻先(はなさき)


これが重泰犬(じゅうたいけん)だ。


防御力(ぼうぎょりょく)鉄甲犬(てっこうけん)匹敵(ひってき)し、団結力(だんけつりょく)(きく)秋田犬(あきたいぬ)(おと)らない。


犬王伝承(けんおうでんしょう)(あらわ)れる百種(ひゃくしゅ)犬獣(けんじゅう)(なか)で、主力(しゅりょく)部隊(ぶたい)となれるのは数種(すうしゅ)のみ——重泰犬(じゅうたいけん)はその(ひと)つだ。電文犬(でんぶんけん)菊秋田犬(きくあきたいぬ)鉄甲犬(てっこうけん)などは、長所(ちょうしょ)短所(たんしょ)極端(きょくたん)で、(たよ)りにならない。重泰犬(じゅうたいけん)こそが、(しん)(たの)みの(つな)だ——(かず)()えれば、戦力(せんりょく)幾何級数(きかきゅうすう)(てき)膨張(ぼうちょう)する」


武神通(ぶしんつう)(みずか)らの重泰犬(じゅうたいけん)(なが)め、(こころ)から満足(まんぞく)していた。


これらは、苦労(くろう)(すえ)辛抱(しんぼう)(づよ)(あつ)め上げた、大切(たいせつ)戦力(せんりょく)だ——普段(ふだん)(けっ)して使(つか)わず、温存(おんぞん)(つづ)けてきた。


「この苦戦(くせん)、ついに重泰犬(じゅうたいけん)(おこ)(とき)()たようだ。出撃(しゅつげき)すれば、相手(あいて)驚愕(きょうがく)した(かお)()られるだろうな。ははは……」


(おも)わず(わら)みが(こぼ)れ、口元(くちもと)(ゆる)んだ。


だが次の瞬間(しゅんかん)、その()みは(こわ)まった——


(きり)()こう(がわ)にも、重泰犬(じゅうたいけん)姿(すがた)(あらわ)れていたのだ。


相手(あいて)重泰犬(じゅうたいけん)を? なるほど……奴道(ぬどう)(たか)()なら、重泰犬(じゅうたいけん)優秀(ゆうしゅう)さを理解(りかい)し、蓄積(ちくせき)するのは当然(とうぜん)か」


(きり)から(あらわ)れる重泰犬(じゅうたいけん)()えるにつれ、武神通(ぶしんつう)()(ほそ)くなり、(まゆ)(ふか)(きざ)んだ。


(おお)すぎる……なぜ相手(あいて)重泰犬(じゅうたいけん)はこんなに多い?」


最強(さいきょう)の切り(きりふだ)(たの)重泰犬(じゅうたいけん)を、相手(あいて)()事実(じじつ)が、武神通(ぶしんつう)心理的(しんりてき)重圧(じゅうあつ)をかけた。


(とつ)(ぜん)武神通(ぶしんつう)(ひとみ)(ちぢ)んだ——(きり)(おく)(にら)みつけている。


そこには、気迫(きはく)()ちた一頭(いっとう)犬王(けんおう)()っていた。


重泰犬王(じゅうたいけんおう)! まさか相手(あいて)重泰犬王(じゅうたいけんおう)を!?」この光景(こうけい)()て、武神通(ぶしんつう)(こころ)がズシリと(しず)んだ。


犬王(けんおう)がいれば、犬群(いぬむれ)戦力(せんりょく)数倍(すうばい)()()がる。(さら)致命的(ちめいてき)なのは——武神通(ぶしんつう)には対抗(たいこう)できる重泰犬王(じゅうたいけんおう)がいないことだ。つまり、(かれ)の切り(きりふだ)である重泰犬群(じゅうたいけんぐん)は、相手(あいて)犬王(けんおう)威圧(いあつ)()け、戦力(せんりょく)低下(ていか)する。


相手(あいて)()びれば、こちらの戦力(せんりょく)()ちる——こうして(かれ)最強(さいきょう)部隊(ぶたい)無力化(むりょくか)される。


苦戦(くせん)だ……前代未聞(ぜんだいみもん)苦戦(くせん)になる! 相手(あいて)(だれ)だ? 巫鬼(ふき)か? 章三三(しょうさんさん)か? 間違(まちが)いなくそのどちらかだ——巫鬼(ふき)可能性(かのうせい)(たか)い」


武神通(ぶしんつう)はもはや戦局(せんきょく)(なが)れを把握(はあく)できていなかった。


相手(あいて)戦力(せんりょく)()(ぐん)上回(うわまわ)る……(はい)(せん)濃厚(のうこう)だ。()()てたとしても、辛勝(しんしょう)()わるだろう——犠牲(ぎせい)(はか)()れず、もはや試練(しれん)(すす)められなくなる」


武神通(ぶしんつう)後悔(こうかい)(ねん)(おそ)われた。


しかしその感情(かんじょう)は、(またた)く間に変質(へんしつ)した——


(かれ)()見開(みひら)かれ、(くち)無意識(むいしき)半開(はんかい)きになった。


眼球(がんきゅう)()()さんばかりに突出(とっしゅつ)し——まるで目玉(めだま)(うら)(だれ)かが(こぶし)()るっているようだ。顔面(がんめん)表情(ひょうじょう)は、(おどろ)きから震撼(しんかん)へ、さらには恐怖(きょうふ)(いろ)()まっていった。


(きり)(なか)から、重泰犬(じゅうたいけん)(つづ)いて、次々(つぎつぎ)と(あら)たな犬獣(けんじゅう)()()てきた——


青華犬(せいかけん)——全身(ぜんしん)青鱗(せいりん)(まと)い、神駿(しんしゅん)()(はな)つ。


煙嵩犬(えんこうけん)——鼻口(びこう)から硝煙(しょうえん)(ごと)(いき)()き、傲岸不遜(ごうがんふそん)(そう)


恒光犬(こうこうけん)——純白(じゅんぱく)体毛(たいもう)(つつ)まれ、(やわ)らかな(ひかり)(はな)つ。


星衡犬(せいこうけん)——颯爽(さっそう)とした体躯(たいく)孤高(ここう)気品(きひん)(ただよ)わせる。


「まさか!」武神通(ぶしんつう)絶叫(ぜっきょう)した:「青華(せいか)煙嵩(えんこう)恒光(こうこう)星衡(せいこう)重泰(じゅうたい)——これら五岳犬(ごがくけん)は、各々(おのおの)が傑出(けっしゅつ)し、優劣(ゆうれつ)付け(がた)い。五種(ごしゅ)(そろ)えば、浩瀚(こうかん)なる軍陣(ぐんじん)()めるというのに!どうしてこんなに(あつ)められた!?」


しかし、(かれ)をさらに震撼(しんかん)させたのは——五岳犬(ごがくけん)()れの(なか)に、(かく)犬種(けんしゅ)統率(とうそつ)する犬王(けんおう)姿(すがた)確認(かくにん)されたことだった。


一体(いったい)(だれ)だ? どうやってこんな大軍(たいぐん)(よう)している? (しん)じられない!まさか(まぼろし)か?」(きり)(なか)からなおも()()犬獣(けんじゅう)()れに、武神通(ぶしんつう)精神(せいしん)(はげ)しく()さぶられた。


自軍(じぐん)戦力(せんりょく)は、相手(あいて)(くら)べれば、巨人(きょじん)足元(あしもと)にいる嬰児(えいじ)のようだ。


(くら)べるべくもない。


武神通(ぶしんつう)(こころ)から、もはや戦意(せんい)()()せていた——この(たたか)いに勝利(しょうり)可能性(かのうせい)は、微塵(みじん)もない。


相手(あいて)(かろ)()()るえば、犬群(いぬむれ)()()せる——どれほど指揮術(しきじゅつ)(すぐ)れていようと、無駄(むだ)になる。両軍(りょうぐん)戦力差(せんりょくさ)は、もはや技巧(ぎこう)()()わせられる領域(りょういき)()えている。


一体(いったい)(だれ)だ? まさか三叉山(さんさざん)に、五转奴道蛊師(ごてんぬどうこし)(あらわ)れたのか? いや、ありえない! (たと)五转蛊師(ごてんこし)でも、これほどの大軍(たいぐん)(よう)せるはずがない!この()(たし)かめる——(かなら)相手(あいて)正体(しょうたい)見極(みきわ)める!」


武神通(ぶしんつう)片手(かたて)保命(ほめい)令牌(れいはい)(にぎ)りしめ、もう片方(かたほう)()(きり)(にら)(つづ)けた。


(きり)(なか)に、次第(しだい)(ひと)(かげ)()かび()がる。


「ついに正体(しょうたい)(あらわ)すのか?」武神通(ぶしんつう)(ひたい)(あせ)をぬぐい、ゴクリと(つば)()()んだ。


サッ。


その瞬間(しゅんかん)(かろ)やかな(おと)(とも)に、方源(ほうげん)不意(ふい)(かれ)背後(はいご)から(あらわ)れた。


何者(なにもの)だ!?」武神通(ぶしんつう)異変(いへん)察知(さっち)したが、()(かえ)()もなかった。


方源(ほうげん)()(かれ)(あたま)()れた——その(てのひら)(にぎ)りしめられる。


ズシャッ!


頭蓋骨(ずがいこつ)(くだ)け、脳漿(のうしょう)飛散(ひさん)した。


(かれ)もまた()んだ。


(きり)()こうから、白凝冰(はくぎょうひょう)がのんびりと(あらわ)れた。


「ああ……まだ何関(なんかん)あるの?」彼女(かのじょ)方源(ほうげん)()欠伸(あくび)をし、背伸(せの)びしながら()った——()半分(はんぶん)(ねむ)そうに(ほそ)められていた。

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