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蛊真人  作者: 魏臣栋
魔子出山
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第百七十節:鉄家の栄光

鉄若男(てつじゃくなん)(ひとみ)(かす)かに(うご)いた。ゆっくりと(かお)()げ、眼前(がんぜん)見知(みし)らぬ老人(ろうじん)()つめた——その姿(すがた)には、()()れぬ(した)しみが(かん)じられた。


()鉄家(てつけ)は、創立(そうりつ)以来(いらい)剛毅(ごうき)果断(だんかん)で、(てつ)意志(いし)公正(こうせい)さをもって()()られている。代々(だいだい)、正義(せいぎ)(まも)り、犯罪(はんざい)(たたか)(つづ)けてきた。数多(あまた)(もの)(いのち)(ささ)げ、このように犠牲(ぎせい)になってきた。今日(きょう)ここに()った鉄家(てつけ)若者(わかもの)たちは、最初(さいしょ)犠牲者(ぎせいしゃ)ではない、そして最後(さいご)でもない。()かるか?」老人(ろうじん)(かた)(つづ)けた。


鉄若男(てつじゃくなん)(くち)をわずかに(ひら)いたが、結局(けっきょく)(なに)()わずに沈黙(ちんもく)した。


(わたくし)(こころ)から(なぐさ)められる、なぜなら(かれ)らの()無駄(むだ)ではなかったからだ。しかし同時(どうじ)失望(しつぼう)している——お(まえ)(いま)無駄(むだ)()きているからだ。鉄若男(てつじゃくなん)()かっているのか? 犯罪者(はんざいしゃ)はまだ野放(のばな)しで、まだ悪事(あくじ)(はたら)いている。あの小獣王(しょうじゅうおう)方正(ほうせい)という(もの)については…」


鉄慕白(てつぼはく)老人(ろうじん)はここで一息(ひといき)つき、(からだ)(まわ)して鉄若男(てつじゃくなん)()()った。淡々(たんたん)と()う:「お(まえ)は、正義(せいぎ)実現(じつげん)するために()()がりたいか?」


鉄若男(てつじゃくなん)老人(ろうじん)見上(みあ)げるその()に、ついに(さと)りの(ひかり)(とも)った——はっ!この老人(ろうじん)こそ、あの伝説(でんせつ)の…


鉄慕白(てつぼはく)——五转巅峰(ごてんてんぽう)蛊師(こし)鉄家(てつけ)前代(ぜんだい)族長(ぞくちょう)で、南疆(なんきょう)縦横(じゅうおう)し、一方(いっぽう)(ゆう)として君臨(くんりん)した。在位中(ざいいちゅう)鉄家(てつけ)鉄壁(てっぺき)(ごと)勢力(せいりょく)(きた)え上げ、武家(ぶけ)商家(しょうか)諸家(しょか)圧倒(あっとう)し、正道(せいどう)(さきがけ)となった。その()魔道(まとう)(ふる)()がらせた!


鉄若男(てつじゃくなん)()のようだった(ひとみ)に、一筋(ひとすじ)()()(とも)った。()()(のど)から、かすれた(こえ)(しぼ)()した:「…(ねが)います」


()い」老人(ろうじん)(かろ)(うなず)いた。()(おだ)やかだが、その(こえ)には()るぎない(ちから)宿(やど)っていた:「今日(きょう)から、()鉄家(てつけ)南疆(なんきょう)()べる金道(きんどう)蛊術(こじゅつ)を、お(まえ)伝授(でんじゅ)しよう」


八日後(ようかご)


三王伝承(さんおうでんしょう)(ふたた)(ひら)かれた。(あか)()(あお)三色(さんしょく)巨大(きょだい)光柱(こうちゅう)が、雲天(うんてん)(つらぬ)き、千里(せんり)四方(しほう)から()ることができた。


しかし三叉山(さんさざん)は、()のよう(しず)まり(かえ)っていた。物音(ものおと)一つない。


正道(せいどう)魔道(まとう)も、数多(あまた)(ひと)山頂(さんちょう)(あお)()ていた——そこには、一見(いっけん)普通(ふつう)()せた老人(ろうじん)()っていた。(しわ)だらけの(かお)白髪(しらが)()じりの(あたま)両手(りょうて)背中(せなか)()んで、(おだ)やかに(たたず)んでいる。


(かれ)(ちか)くには、易火(いか)孔日天(こうじってん)龍青天(りゅうせいてん)翼冲(よくちゅう)武神通(ぶしんつう)五人(ごにん)がいた。(かれ)らは(みな)(あお)ざめた顔色(かおいろ)をしていた。


ついさっき、この老人(ろうじん)は、(かれ)五人(ごにん)()()ってかかっても(かる)圧倒(あっとう)した。いとも簡単(かんたん)()()かしたのだ。


(つよ)すぎる、まったく(つよ)すぎる!」


鉄慕白(てつぼはく)鉄家(てつけ)前代(ぜんだい)族長(ぞくちょう)だ!あの御方(おかた)がまだ御健在(ごけんざい)とは!!」


(おそ)るべき実力(じつりょく)だ。これが五转巅峰(ごてんてんぽう)蛊師(こし)(つよ)さか? 易火(いか)孔日天(こうじってん)など、足元(あしもと)にも(およ)ばない。我々(われわれ)を(ころ)すのは、(あり)(つぶ)すように容易(ようい)だろう」


「まさか鉄家(てつけ)が、あの老族長(ろうぞくちょう)派遣(はけん)するとは!これで商家(しょうか)武家(ぶけ)も、鉄家(てつけ)(かな)相手(あいて)ではない!」


「これは(ふる)世代(せだい)蛊師(こし)強者(きょうしゃ)だ。小獣王(しょうじゅうおう)など、(くつ)()げる資格(しかく)すらない。当時(とうじ)(かれ)南疆(なんきょう)縦横(じゅうおう)した(ころ)鉄家(てつけ)はその指導(しどう)のもとで(いきお)いが(ほか)(あっ)し、武家(ぶけ)さえも(しの)ぎ、(せい)正道(せいどう)首領(しゅりょう)となろうとしていた!」


(かれ)鉄家歴代(てつけれきだい)でも(もっと)強勢(きょうせい)族長(ぞくちょう)一人(ひとり)鉄家(てつけ)栄光(えいこう)正道(せいどう)模範(もはん)正義(せいぎ)象徴(しょうちょう)だ。その戦績(せんせき)(いま)色褪(いろあ)せず、(かがや)かしく鮮烈(せんれつ)だ!」


(みじか)静寂(せいじゃく)(あと)三叉山(さんさざん)騒然(そうぜん)とした——賞賛(しょうさん)(こえ)歓呼(かんこ)(こえ)畏怖(いふ)(こえ)渦巻(うずま)いた。


鉄慕白(てつぼはく)出現(しゅつげん)が、三叉山(さんさざん)勢力図(せいりょくず)天地(てんち)がひっくり(かえ)るほど()えてしまったのだ!


さらに三日後(みっかご)、ようやく情報(じょうほう)(はい)ってきた。


なんと、神偷(しんとう)陸鑽風(りくさんぷう)鉄家(てつけ)大暴(おおあば)れし、何度(なんど)鎮魔塔(ちんまとう)(ひそ)かに侵入(しんにゅう)したため、退位(たいい)して閉関(へいかん)していた鉄慕白(てつぼはく)()きたのだという!


鉄慕白(てつぼはく)(みずか)出動(しゅつどう)し、神偷(しんとう)巨匠(きょしょう)である陸鑽風(りくさんぷう)激突(げきとつ)——(おな)五转蛊師(ごてんこし)でありながら、陸鑽風(りくさんぷう)重傷(じゅうしょう)()い、(かろ)うじて()()びた。(いのち)だけは(ひろ)ったというわけだ。


鉄家(てつけ)態勢(たいせい)()(なお)すと、その()三叉山(さんさざん)(ねら)いを(さだ)めた。


鉄霸修(てつはしゅう)()に、鉄家(てつけ)上層部(じょうそうぶ)(いか)りに()えた。鉄家四老(てつけしろう)援護(えんご)するため、精鋭(せいえい)派遣(はけん)しようとしたその(とき)鉄慕白(てつぼはく)(みずか)名乗(なの)りを()げた——「(すこ)(そと)()てくるか」


(かれ)三叉山(さんさざん)()て、絶頂(ぜっちょう)実力(じつりょく)で、軽々(かるがる)と正道(せいどう)魔道(まとう)(もの)たちを圧倒(あっとう)した。易火(いか)孔日天(こうじってん)らでさえ、一蹴(いっしゅう)されるしかなかった。


今日(きょう)から、魔道蛊師(まとうこし)は、三王伝承(さんおうでんしょう)(あし)()()れてはならない」(みね)(いただき)()鉄慕白(てつぼはく)は、五人(ごにん)四转巅峰(してんてんぽう)(たお)した(あと)(おおやけ)宣言(せんげん)した。


(かれ)(ひと)りの(ちから)で、三叉山(さんさざん)魔道蛊師(まとうこし)を、根絶(こんぜつ)やしにするつもりだった!


魔道蛊師(まとうこし)たちは(みな)憤慨(ふんがい)したが、五转巅峰(ごてんてんぽう)鉄慕白(てつぼはく)という、世俗的(せぞくてき)頂点(ちょうてん)()最強(さいきょう)(しゃ)(まえ)では、たとえ数千人(すうせんにん)魔道蛊師(まとうこし)(あつ)まろうとも、(あらが)うことなどできなかった。その()孔日天(こうじってん)龍青天(りゅうせいてん)(かお)(くも)らせ、()(さき)(やま)()りた。


(つづ)いて、李閑(りかん)狐媚児(こびじ)らも、(やみ)(しず)むように退場(たいじょう)した。


天網恢恢(てんもうかいかい)(おろそ)かにして()らさず。正義(せいぎ)(さか)える。たとえ三王伝承(さんおうでんしょう)魔道(まとう)伝承(でんしょう)であろうとも、正道(せいどう)(ちから)となれるのだ。(みな)(もの)よ、団結(だんけつ)しよう。一点(いってん)一点(いってん)灯火(とうか)集積(しゅうせき)すれば、光明(こうみょう)(かがや)き、三叉山(さんさざん)全体(ぜんたい)()らすだろう。もはや(やみ)存在(そんざい)する場所(ばしょ)などないのだ」


鉄慕白(てつぼはく)(ふか)(おも)いを()めて()()えると、ゆっくりと一歩(いっぽ)()()し、()(さき)三王伝承(さんおうでんしょう)へと(はい)っていった。


三叉山(さんさざん)歓声(かんせい)(なみ)のように()()がった。正道(せいどう)(もの)たちは(みな)(よろこ)(おど)り、(みち)両側(りょうがわ)()って(いわ)()った。その(こえ)()えることなく(つづ)いた。


今回(こんかい)三王伝承(さんおうでんしょう)は、半月以上(はんつきいじょう)(つづ)いた。


鉄慕白(てつぼはく)(ひと)りの(ちから)三叉山(さんさざん)勢力図(せいりょくず)一変(いっぺん)させ、正道(せいどう)結束(けっそく)させ、魔道(まとう)駆逐(くちく)した。風雲(ふううん)(きゅう)()げる(なか)()いた(からだ)に、かつて鉄家(てつけ)族長(ぞくちょう)としての雄大(ゆうだい)気魄(きはく)(みなぎ)っていた。


魔道(まとう)(もの)たちは全員(ぜんいん)()(はら)われ、()るに(しの)びず、三叉山(さんさざん)周囲(しゅうい)を取り(とりかこ)むしかなかった。ただ三本(さんぼん)光柱(こうちゅう)(ほそ)くなるのを、じっと見守(みまも)るしかなかったのだ。


伝承(でんしょう)()じられた(あと)鉄慕白(てつぼはく)宴席(えんせき)(もう)け、ほぼ一万人(いちまんにん)正道蛊師(せいどうこし)(まね)いた。


露天(ろてん)宴席(えんせき)が、広大(こうだい)山腹(さんぷく)(おお)()くした。蛊師(こし)たちは岩肌(いわはだ)(つくえ)椅子(いす)に、大空(おおぞら)天蓋(てんがい)に、()座布団(ざぶとん)にし、(さけ)料理(りょうり)(かんば)しい(かお)りの(なか)(わら)(ごえ)談笑(だんしょう)(つつ)まれていた。


若輩(じゃくはい)易火(いか)(つつし)んで老前輩(ろうせんぱい)一献(いっこん)()()げます」易火(いか)()()がり、両手(りょうて)(さかずき)(ささ)げ、主座(しゅざ)鉄慕白(てつぼはく)(ふか)(こうべ)()れた。


諸家(しょか)(なか)でも、商家(しょうか)は代々(だいだい)才人(さいじん)輩出(はいしゅつ)する。()くところによると、(いま)商燕飛(しょうえんひ)采配(さいはい)()っているとか? (かれ)幼少(ようしょう)(ころ)から天賦(てんぷ)(さい)(めぐ)まれていた、お(まえ)(わる)くない。(すわ)れよ」鉄慕白(てつぼはく)(さかずき)(かる)(くち)をつけると、(おだ)やかに()った。


鉄慕白(てつぼはく)(まえ)では、商燕飛(しょうえんひ)でさえも(ひと)りの後輩(こうはい)()ぎない。


五转巅峰(ごてんてんぽう)(かれ)実力(じつりょく)(たい)し、商燕飛(しょうえんひ)がどれほど驚異的(きょういてき)才能(さいのう)()(ぬし)でも、(およ)ばないのは(あき)らかだ。


易火(いか)はただうなずくのみで、ゆっくりと(せき)()いた。(こころ)(うち)(ふか)嘆息(たんそく)した——


鉄慕白(てつぼはく)登場(とうじょう)は、(かれ)三叉山(さんさざん)制覇(せいは)するという野望(やぼう)が、もはや水泡(すいほう)()したことを意味(いみ)していた。この()いた強者(きょうしゃ)(まえ)では、易火(いか)もただ(こうべ)()れるしかなく、とても刃向(はむか)うことなどできなかった。


(てつ)老族長(ろうぞくちょう)翼家(よくけ)代表(だいひょう)し、御出関(ごしゅっかん)(つつし)んでお(いわ)(もう)()げます」翼家(よくけ)家老(かろう)翼冲(よくちゅう)は、普段(ふだん)気性(きしょう)(あら)いが、(いま)鉄慕白(てつぼはく)(まえ)では、(まご)のように従順(じゅうじゅん)()()っていた。


蛊仙(こせん)とやらは、(つね)神龍(しんりゅう)(ごと)く、その(かしら)()えても()()えず、仙跡(せんせき)は飄々(ひょうひょう)として(とら)えがたい。一般(いっぱん)に、四转蛊師(してんこし)一方(いっぽう)(ゆう)として君臨(くんりん)し、五转蛊師(ごてんこし)世俗的(せぞくてき)頂点(ちょうてん)君臨(くんりん)する帝王(ていおう)()なされている。


鉄慕白(てつぼはく)出関(しゅっかん)は、まさに帝王(ていおう)巡幸(じゅんこう)である——諸侯(しょこう)たる(もの)(こし)(かが)()(まる)めて、ひれ()して謁見(えっけん)するしかないのだ!


(てつ)老族長(ろうぞくちょう)貴方(あなた)は我々(われわれ)南疆(なんきょう)正道(せいどう)(ほこ)りです!お一言(ひとこと)で、何万(なんまん)もの魔道(まとう)(ぞく)どもを退散(たいさん)させるとは、末輩(まっぱい)(わたくし)()()して敬服(けいふく)するばかりです。ただ残念(ざんねん)なことに、方正(ほうせい)という小僧(こぞう)は、あなたが()数日前(すうじつまえ)に、さっさと三叉山(さんさざん)から()()してしまいました」武神通(ぶしんつう)(いん)()もった(こえ)()った。


小獣王(しょうじゅうおう)のことを()っているのか?」鉄慕白(てつぼはく)(あわ)(わら)い、(おこ)様子(ようす)もない。


「あの若造(わかぞう)は、(じつ)優秀(ゆうしゅう)だ。(かれ)事跡(じせき)()けば、並々(なみなみ)ならぬものがある。(ひと)りで()()て、裸一貫(はだかいっかん)から、電光石火(でんこうせっか)(ごと)台頭(たいとう)し、魔道(まとう)新星(しんせい)となった。()かけは無鉄砲(むてっぽう)だが、(じつ)(ふか)(はか)りを(さだ)めてから(うご)く、謀略(ぼうりゃく)()けている。鉄家(てつけ)若者(わかもの)たちが、(かれ)()()かったのも、無理(むり)もないことだ」鉄慕白(てつぼはく)(つづ)けた。


(かれ)言葉(ことば)は、人々(ひとびと)を(おどろ)かせた。被害者(ひがいしゃ)であり、権威(けんい)冒涜(ぼうとく)された鉄家(てつけ)老族長(ろうぞくちょう)が、(おおやけ)()(てき)称賛(しょうさん)するとは!


鉄家(てつけ)老族長(ろうぞくちょう)は、(うわさ)では気性(きしょう)(あら)く、(あく)(にく)むと()いていたが…実際(じっさい)()ってみると、(うわさ)とは(ちが)って、温厚(おんこう)上品(じょうひん)()(しず)みにも(どう)じない。一体(いったい)どういうことだ?」武神通(ぶしんつう)(ひそ)かに(おどろ)き、(くち)(ひら)こうとしたその(とき)鉄慕白(てつぼはく)()(みずか)らを(とら)えたのに()づいた。


その眼差(まなざ)しは、歳月(さいげつ)(おも)みを()び、(はか)()れない(ふか)さがあった——俗世(ぞくせ)一切(いっさい)見透(みすか)す、(さと)りの智慧(ちえ)宿(やど)っていた。


武神通(ぶしんつう)はその視線(しせん)()らされ、まるで(こころ)(うち)()まれたかのように(かん)じ、全身(ぜんしん)()(あせ)()()した。もはや(くち)(ひら)くのが(むずか)しくなった。


(みな)さんは不思議(ふしぎ)(おも)うだろうか?」鉄慕白(てつぼはく)()みを()かべ、ゆっくりと周囲(しゅうい)見渡(みわた)した——「鉄家(てつけ)栄光(えいこう)(たた)えられる(わたし)が、なぜ(おおやけ)()鉄家(てつけ)不倶戴天(ふぐたいてん)(てき)称賛(しょうさん)するのか?」


「ふふふ… (てき)()めるのは、相手(あいて)威風(いふう)()からしめ、(みずか)らの志気(しき)(ほろ)ぼす行為(こうい)だと思う(おもう)か? しかし(こころざし)ある(もの)(こころ)志気(しき)など、こんな言葉(ことば)(くじ)けるものか? むしろ(てき)賞賛(しょうさん)するからこそ、その長所(ちょうしょ)発見(はっけん)し、()(ぶん)欠点(けってん)警戒(けいかい)し、(てき)慎重(しんちょう)(あつか)えるのだ。(けっ)して憎悪(ぞうお)に、知恵(ちえ)()(くも)らせてはならない」


鉄慕白(てつぼはく)(うし)ろに()鉄若男(てつじゃくなん)は、この言葉(ことば)()いて全身(ぜんしん)(ふる)えた。


彼女(かのじょ)()かっていた——老族長(ろうぞくちょう)言葉(ことば)半分以上(はんいじょう)は、自分(じぶん)()()かせるものだということを。


鉄慕白(てつぼはく)伝承(でんしょう)から()以来(いらい)連日(れんじつ)彼女(かのじょ)()(みちび)いていた。金道(きんどう)蛊虫(こちゅう)(さず)け、使(つか)(かた)(おし)え、さらに処世(しょせい)哲理(てつり)をも(つた)えていた。


憎悪(ぞうお)に、知恵(ちえ)()(くも)らせてはならない…


(みずか)らの仇敵(きゅうてき)賞賛(しょうさん)せよ…


鉄若男(てつじゃくなん)はこれらの言葉(ことば)咀嚼(そしゃく)し、(こころ)(うち)(ふか)(かんが)(つづ)けた。


若男(じゃくなん)、お(まえ)方正(ほうせい)という(もの)をどう(おも)う?」鉄慕白(てつぼはく)突然(とつぜん)名指(なざ)しした。


「はい」鉄若男(てつじゃくなん)一歩(いっぽ)(すす)()て、(つつし)んで()べた:「(わたし)心底(しんそこ)(にく)んではいますが、(みと)めざるを()ません——方正(ほうせい)(たし)かに非凡(ひぼん)なところがあります。危険(きけん)(おか)勇気(ゆうき)がありながら、(ふか)(はか)ってから(うご)く。力道蛊師(りきどうこし)でありながら、強力(きょうりょく)並外(なみはず)れた偵察能力(ていさつのうりょく)()っているに(ちが)いありません。これは、(かれ)が我々(われわれ)を迎撃(げいげき)した(さい)正確(せいかく)さからも(あき)らかです」


(わたし)鉄霸修(てつはしゅう)家老(かろう)(えら)んだ道筋(みちすじ)は、いかに隠密(おんみつ)だったことか! (ほか)(もの)(すべ)(だま)(とお)したのに、方源(ほうげん)だけは(かん)づき、正確(せいかく)迎撃(げいげき)してきた。老族長(ろうぞくちょう)(さま)(ひそ)かに三叉山(さんさざん)()られたことも、(だれ)()らなかったのに、方正(ほうせい)だけは事前(じぜん)(とお)ざかっていた。小獣王(しょうじゅうおう)という(おとこ)は、表立(おもてだ)って目立(めだ)存在(そんざい)でありながら、その(じつ)(ふか)(ひそ)んでいる——(けっ)して軽視(けいし)できません」


()い、立派(りっぱ)分析(ぶんせき)だ」鉄慕白(てつぼはく)(かろ)(うなず)き、()賞賛(しょうさん)(いろ)()かべた。


(かれ)(つづ)けた:「この()には、(いのち)よりも(とうと)いものがある。それが栄光(えいこう)だ。(はる)(むかし)人祖(じんそ)太子(たいし)太日陽莽(たいじつようもう)という(もの)がいた。(かれ)栄光(えいこう)()(もと)めて、(みずか)らの(いのち)()てたのだ」


若男(じゃくなん)よ、この方正(ほうせい)はお(まえ)への試練(しれん)だ。(かれ)(つか)まえよ、あるいは()て。そうすれば、お(まえ)汚名(おめい)()れ、やがてお(まえ)だけの栄光(えいこう)勲章(くんしょう)となるだろう。(おお)くの(もの)(わたし)鉄家(てつけ)栄光(えいこう)()ぶが、()っておこう——鉄家(てつけ)栄光(えいこう)(わたし)一人(ひとり)ではない。お(まえ)たち、代々(だいだい)が(まも)()いてきたものなのだ」


鉄慕白(てつぼはく)はそう()うと、()宴席(えんせき)全員(ぜんいん)()けた。(こえ)(きゅう)力強(ちからづよ)(ひび)いた——


同様(どうよう)に、正道(せいどう)栄光(えいこう)も、我々(われわれ)全員(ぜんいん)(まも)()くものだ!さあ、この(さかずき)()そう!正義(せいぎ)(ひかり)天下(てんか)()らすように、太陽(たいよう)光輝(こうき)のように、(やみ)退散(たいさん)させ、魔道(まとう)をこの()から()()らせよう!」


(やみ)()らせ!」


魔道(まとう)(ほろ)ぼせ!」


ほぼ一万人(いちまんにん)正道蛊師(せいどうこし)(さかずき)(かか)げ、(こえ)(そろ)えて(さけ)んだ。その威勢(いせい)(すさ)まじく、千里(せんり)彼方(かなた)まで(とどろ)(わた)り、数多(あまた)魔道(まとう)(もの)たちは顔色(かおいろ)()えた。


「ちくしょう… この鉄慕白(てつぼはく)め…!」


鉄家(てつけ)栄光(えいこう)は、歳月(さいげつ)すらその(かがや)きを(あら)(なが)せない。まことに(おそ)るべき存在(そんざい)だ」


「まるで太陽(たいよう)のようだ——あんなに(まぶ)しくて… はあ、(かれ)出関(しゅっかん)したとなれば、これも魔道(まとう)不運(ふうん)というものか!」









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