「なるほど、三王伝承にはこんな逃げ道があったのか！もし令牌を手に入れれば、もっと大胆に挑めるのに、途中で退場することもないだろうに」包同は深く感嘆した。
一方李強は進んで杯を掲げ、方源に献杯した：「小獣王様の一言一句が、まさに一字千金！ この杯は、百歳童子という力道の恥知らずを討ったことを祝って！」
茶は冷めるが如く——ついさっきまで李強は百歳童子と親しげに話していたのに、今方源の前では、即座に百歳童子を恥知らず呼ばわりして、手のひらを返したのだった。
「はっはっはっ、構わん」方源は杯に手を伸べず、百歳童子の養子・養女たちを冷やかに見渡し、嫌そうに手を振った：「今日、大元の悪党を始末して機嫌がいいから、お前たちの命は取らんでやる。残りたい者はともかく、邪魔になる奴はさっさと消え失せろ！ 早く、早く！ 目障りだ！」
百歳童子が死んでから、これらの養子たちは内心で不安でいっぱいだった。この言葉を聞いて、顔を見合わすしかなかった。
「どうした？ 残るということは、わしに斬られたいのか？」方源が淡々(たんたん)と冷笑を零した。
瞬間、人々(ひとびと)が騒ぎ立ち、多くの者が慌てふためいて逃げ出した。宴席は瞬く間に半分が空いた。
しかし、百歳童子の養子たちの中には、少しばかり残る者もいた。
「方正様！あなた様は私の命の恩人です！」一人の養子が突然跪き、涙と鼻水を混ぜて叫んだ：「私は百歳童子という奴に脅されて賊を父と崇めたのです！小獣王様の威光は四海を照らし、気魄は八方を圧する——この水火の中から救ってくださいました！まさに再生の親です！」
「小獣王様、あなた様の強さに心を奪われました。どうかお側に置いてください、お仕えさせてくださいませ」美しい養女が甘えた口調で哀願した。
「小獣王様！この災難から救っていただき、その大恩は永えに忘れません！命を再生していただいたも同然、どうか『干爹』とお呼びさせてください！」七十歳の老翁が地面にひれ伏し、声を震わせて叫んだ。
ざわざわ…
瞬時に、方源の前に跪く者が続出した。
百歳童子の死で、この勢力は頭を失ない、瞬く間に崩壊した。多くの者は逃げ出したが、一部は鞍替えして、方源にすがろうとした。
「はっはっはっ…」方源は大笑いした——「実に麗しい言葉だ、良い良い」
養子養女たちの顔にも、安堵の色が浮かんだ。
しかし方源の笑い声が突然止み、顔色が険しく沈んだ。低く呟くように言った：「阿諛追従の輩め！ 殺すのは殺す、悪は悪だ、恩も徳もない。そんな偽りの賛辞は、最初から唾棄すべきものだ。わしは人を殺すのが好きだ、悪を好きだ——聞け、どれほど直截で純粋か。お前たちもさっさと消え失せろ！ 復讐したいなら、力を蓄えろ、挑んで来るのを待ってやる！」
養子養女たちは驚愕と恐怖で凍り付いた。
「ふん？」方源が鼻で冷やかに哼った。心の内で思うや、獣影が飛び出し、一人を瞬殺した。
人々(ひとびと)は夢から覚めたように悲鳴を上げ、洞窟外へと慌てふためいて逃げ出した——恐怖のあまり失禁する者もいた。
残った蛊師たちの顔色は、一様に青ざめていた。
方源は気まぐれで殺人を繰り返す、側にいる者は皆重い圧迫感を感じていた。百歳童子も憎むべき存在だが、彼と比べれば、何倍も可愛らしく思えるほどだ。
ただ一人、白凝冰だけが方源の左隣に端座し、青い瞳を半ば閉じ、氷のように静かな表情を保っていた。
李強は杯を掲げたまま固ばっていたが、気まずさを押し切って無理に笑みを作った：「小獣王様、草を刈るなら根まで絶やさねば。逃がした奴らが、後日羽振りを良くするかもしれません。万全を期して、皆殺しにされるのがよろしいかと。お顔を覚えきれなくても、私が覚えております。ぜひ、この私に、さきほどの情報へのお礼としまして、奴らを始末させてください！」
「構わん」方源は背もたれに凭れ、淡く笑った。
これらの者を逃がしたのには、彼なりの思惑があった。しかし口に出すわけにはいかない。
少し考えて、方源は言った：「わしが魔道を歩む以上、人を敵に回すことなど恐れてはいない。己が絶えず強くなり続ける限り、復讐など何のその？ 十人が復讐に来れば十人斬り、百人来れば百人斬る。もし全世界が敵となれば——全世界を殺してやる！ もし復讐に成功されるなら、それはわしが弱く、努力が足りず、修行を怠った証拠だ。そんな時は死んでも当然だ！」
方源がそう言う間、目には鋭い凶光がたびたび走り、左右を睥睨した——まさに悪虎猛獣の如し。誰一人として、彼の視線に立ち向かえる者はいなかった。
「小獣王は他人以上に自らに厳しい！」
「この方正の魔性は強すぎる！報復も死も恐れず、生死を度外視している…」
「方正は完全に狂魔じみている！心理が尋常でない。こんな者と敵対するなんて、絶対に悪夢だ！」
方源の言葉を聞いた人々(ひとびと)は、心の底から冷え切った。方源は見事に彼らを威圧し、程良く手を引いた。顔をほころばせて言った：「さあ、酒を酌もうではないか」
人々(ひとびと)は杯を掲げたが、手は微かに震え、まるで人喰い虎の隣に座っているようだった。自らの安危を思えば、かつての美酒も味もそっけもなくなってしまった。
しかし、方源が三王伝承について語り始め、次々(つぎつぎ)と秘められた真実を暴露すると——
たちまち人々(ひとびと)の心は完全に奪われた。一つ一つの秘密が耳に飛び込むにつれ、多くの者が興奮して鼻息を荒くした。
ただ一人、李閑だけが眉をひそめていた：「小獣王は一体何を企んでいる？ 貴重極まりない情報を自ら暴露するとは…はたして何を狙っている？」
一刻後、宴は終わった。
方源は百歳童子を殺し、その座を奪い、宴を主催した。参加者たちは未練が残りつつも、この宴は十分に価値があったと感じていた。
洞窟を出る時、彼らは皆、名残惜しそうに方源を振り返り、もっと情報を聞き出せないかと考えていた。
宴の元の主——百歳童子の遺体は二つに裂かれたまま地面に転がり、血は土に染み込んでいた。月明かりの下、惨たらしい白骨が冷たい光を放っていた。
人々(ひとびと)は談笑しながら、その死体の横を通り過ぎた。誰一人として、この敗者に一瞥すら与えなかった。
これが魔道の敗者の末路だ。
勝てば王、負ければ賊。
魔道の蛊師たちは、多かれ少なかれ、この覚悟を持って生きているのだった。
…
空はしとしとと小雨を降らせている。
曇り空、肌寒い風が吹きすさぶ。
細やかな雨粒が少女の髪の毛に、肩に、背中に、そして全身に降り注ぐ。雨粒が頬を伝い落ちる、それが涙なのか雨なのか、見分けがつかない。
「若男様、亡くなった者は帰ってきません。どうかお嘆きの念を抑えてください」鉄家四老の首領が少女の後ろに立ち、気遣わしげに慰めた。
しかし少女は何も言わない。かつては星のように輝いていた瞳は、今は虚ろで、焦点を失なっている。あの確固たる意志と鋭さを宿した眼差しは、どこにもない——まるで抜け殻のようだった。
鉄若男は呆然と眼前の墓石を見つめていた。
それらの墓石は山の岩を切り出したもので、上には眠りについた者たちの名が刻まれている。
鉄沐、鉄刀苦、鉄線花、鉄傲開、鉄霸修…
一つ一つの名が、鉄若男の心の奥底に眠る、鮮明で深き記憶を引き出す。
しかし、かつて彼女と肩を並べて戦い、共に歩んだ仲間たちは、今は土の中の冷たい屍となってしまった。まるで鉄若男の心のように、温もりは微塵もない。
「私が皆を死なせてしまった…リーダーとしての責任を果たさなかった！」
「あなたたちは死に、私だけが生き残った。なんて臆病者なんだろう…」
「まるで悪夢のようだ。父上、私はあなたの顔を潰してしまいました」
鉄若男は深い自責の念に苛まれていた。後悔と迷いが、彼女の心を覆い尽くしていた。
かつて天の寵児と讃えられた彼女は、父を失った苦しみを乗り越え、昇りゆく正道の新星として、数多の注目と祝福を集めていた。
しかし数ヶ月前の一戦、方源が自ら彼女を頂点から奈落へと打ち落とした。今や彼女は、陰鬱な片隅で、地面に叩きつけられ、全身にひび割れた灰色の隕石と化していた。
「はあ…」鉄家四老の筆頭、鉄鉉之は、陰雨の中に佇む少女の細く頼りなげな背中を眺め、深い嘆息を漏らした。
その時、老いた声が、静かに彼の背後から響いた：「もう数ヶ月になるというのに、若男はまだあの様子なのか？」
鉄鉉之は背筋に寒気が走るのを感じた！
何者だ？こん(こん)なに近づかれているのに、全く気づかなかったとは…！
瞬時く間に、全身の毛が逆立ち、電光石火で振り返ろうとした。無意識に戦闘態勢に入ろうとするその時——
一つの枯れ枝のような痩せた手が、軽く彼の肩に触れた。同時に、声が続いた：「鉉之よ、落ち着け」
鉄鉉之の全身が瞬く間に硬直した。空窍の内で沸騰していた真元の海が、強大な無形の力に覆い被された。
まるで千丈の青山が突如として押し潰してくるようだ。
堂堂たる鉄家四老の筆頭、四转高阶の鉄鉉之ですら、この瞬間、身動き一つ取れない。全身が拘束され、琥珀に閉じ込められた小虫のようだった！
しかし、彼が来訪者の顔を認めた時、鉄鉉之の心を満たしていた驚愕と恐怖は、一瞬にして狂喜へと変わった。
「あっ、老族長様！」鉄鉉之は思わず叫んだ。
眼前に立つ痩せた老人こそ、鉄家の前代族長——鉄慕白だった！
「族長の座など、とっくに退いて賢者に道を譲った。今や私は家老でもない。鉉之よ、遠慮せず慕白と呼んでくれればよい」老人は穏やかに手を振り、笑って言った。
「何の徳も能もない身でございます、どうしてお名前を直接呼ぶなんて！」鉄鉉之は深く腰を折り、恭しく礼を取った。
この老人に対して、鉄鉉之の心は尊敬と慕情で満ちていた。
「名など、単なる符牒に過ぎぬ。鉄慕白という名も、呼ばれるためにある。何の差し支えもない」老人の言葉は淡々(たんたん)としていた。その目には歳月の重みが刻まれ、もはや名誉や利益など見透している。
鉄鉉之が口を開こうとしたが、老人は軽く手を振り、ゆっくりと歩き出した。鉄若男の傍まで来て、墓石の前に立つ。
彼は若男に背を向け、手を伸ばして石碑の表面を撫でながら、かすかに嘆いた：「鉄家の者は、死んだ場所に葬られる。これが鉄家創立以来の不文律だ。その理由を、知っているか？」
鉄若男は相変わらず膝をついたまま、何も聞こえていないかのように無反応だった。
老人は語り続けた：「なぜなら、鉄家の者にとって、戦場で散ることは、これ以上ない栄光だからだ！鉄霸修、鉄沐、鉄刀苦、鉄線花、鉄傲開——彼らもそうだった。お前の父、鉄血冷もそうだった。将来私が死んでもそうなる。お前が死んでもそうなるのだ」
