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蛊真人  作者: 魏臣栋
青茅山
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第三十六節:解体贈れ!

いたか? 方源ほうげんひところしたって!」生徒せいと一人ひとりとなりせきすわ同級生どうきゅうせい小声こごえささやいた。


おれいたよ。本当ほんとう人殺ひとごろしをしたんだって」同級生どうきゅうせいむねてながら、顔色かおいろ青白あおじろくしていた。


大勢おおぜい警備けいび目撃もくげきしたんだってさ。方源ほうげんやついかけまわして、たすけてくれって哀願あいがんするこえ無視むしして、ぐにくびねたんだよ!」

「それだけじゃないぜ。ころしたあと首無くびなしの死体したいまでりょうに引きんで、ミンチにくみたいにきざんだらしい!」

本当ほんとうかよ?」

うそじゃない! 今朝けさはやとき青黒あおぐろ石畳いしだたみ隙間すきま血痕けっこんにじんでるのをたんだから!」

「なんでうそつく必要ひつようがあんだよ! さっき学堂家老がくどうかろう方源ほうげんけたのも、まさにこの事件じけんのためだって!」


学舎がくしゃ教室きょうしつでは少年しょうねんたちが授業じゅぎょうかず、小声こごえささやっていた。殺人さつじん――この十五歳じゅうごさい少年少女しょうねんしょうじょたちにとっては、まだ未知みちおそろしい世界せかい出来事できごとだった。


かれらはまれてからずっと一族いちぞく庇護ひごのもとでそだち、せいぜいこぶしのやりりやにわとりいぬほふ程度ていどしか経験けいけんがなかった。ひところすなど、まだかれらにはとおはなしだった。


方源ほうげんだれころしたんだ?」

漠家ばくけ分家ぶんけ家僕かぼくらしいぜ」

「おい、おれ一番いちばんくわしいぞ。昨夜ゆうべ漠家ばくけ漠顔ばくがん先輩せんぱい手下てしたれて方源ほうげん因縁いんねんをつけてたのをこのたんだ!」

漠家ばくけだと…? まずいな、漠北ばくほく厄介やっかいなことにまれるぞ」


おおくの視線しせん古月漠北こげつ ばくほくあつまった。青白あおじろかお椅子いすすわかれは、今朝けさになって方源ほうげんひところし、しかも自分じぶんがよく高碗こうわんころしたというらせをけたばかりだった。


この高碗こうわん漠北ばくほくにとって馴染なじぶか存在そんざいだった。家僕かぼくなかでも特に目立めだち、びへつらうのが上手じょうずで、拳法けんぽうきたえ上げた有能ゆうのう腰巾着こしぎんちゃくだった。


ほんの二週間前にしゅうかんまえまで、高碗こうわん漠北ばくほく組手くみて稽古けいこをしていた。そんなおとこ方源ほうげんころされるなんて!


このため漠北ばくほくこころ渦巻うずま衝撃しょうげき疑念ぎねんは、ほかものたちよりもばいほどつよかった。衝撃しょうげきほかには、不安ふあん恐怖きょうふつのっていた。


方源ほうげんのような殺人鬼さつじんきまえにして、十五歳じゅうごさい漠北ばくほくこわくないとえばうそになる。実際じっさいかれだけではなくほか少年しょうねんたちもみなおそれをなしていた。


方源ほうげん二度にどかれらをおそい、一人残ひとりのこらず全員ぜんいん方源ほうげんこぶしわしていたのだ。


おれはあんな凶悪きょうあくきわまる殺人鬼さつじんきんだのか? それでもまだ生きてるなんて…」おおくのものむねろし、おそればせながらの恐怖きょうふかんじていた。


方源ほうげんひところしたこと自体じたいよりも、問題もんだいはその遺体いたい切断せつだんし、肉片にくへんたたきざんだことだった。なんという残虐ざんぎゃくさ!


このような恐怖きょうふちた犯罪事実はんざいじじつは、少年しょうねんたちの無垢むく精神せいしんふかきずつけていた。


……


部屋へやには学堂家老がくどうかろう方源ほうげん二人ふたりだけがいた。

学堂家老がくどうかろう椅子いすすわり、方源ほうげんくしたまま。沈黙ちんもくおもめている。


学堂家老がくどうかろう複雑ふくざつ眼差まなざしで方源ほうげん凝視ぎょうししていた。朝早あさはやくから警備けいび方源ほうげん殺人さつじん報告ほうこくしてきたことに、驚愕きょうがく疑念ぎねんじっていた。


三転さんてん古参蛊師こさんこしであるかれは、一転初階いってんしょかい戦闘力せんとうりょく熟知じゅくちしている。方源ほうげん高碗こうわんたおしたのはあきらかな「弱勝強じゃくしょうきょう」だった。


じつ前日ぜんじつ夕暮ゆうぐれ、警備けいびから漠顔ばくがん方源ほうげん脅迫きょうはくして学舎がくしゃ乱入らんにゅうしたとの報告ほうこくけていた。当時とうじは特ににかけず、制止せいしもしなかった。


かれ役目やくめ未来みらい蛊師こし育成いくせいすることで、過保護かほごではない。死傷者ししょうしゃさえさなければ、暗黙あんもく競争きょうそう奨励しょうれいしていた。


漠顔ばくがん干渉かんしょう放置ほうちした理由りゆうふたつ。

第一だいいちに、戦闘せんとう経験けいけん方源ほうげん成長せいちょう有益ゆうえきだとかんがえたから。

第二だいにに、連続れんぞくして学舎がくしゃ制圧せいあつした方源ほうげんいきおいをぎたいとおもったからだ。


しかし予想よそうはんして――

漠顔ばくがん空振からぶりにわり、のこされた家僕かぼく高碗こうわんさえ方源ほうげん敗北はいぼくし、殺害さつがいされる結果けっかまねいてしまったのだった。


この世界せかいではちからこそが全て(すべて)だ。人殺ひとごろしもめずらしくなく、特に蛊師こしにとっては日常茶飯事にちじょうさはんじえる。


だが十五歳じゅうごさいはじめてひところすとなるとはなしべつだ。学堂家老がくどうかろう自分じぶんはじめてひところした時の情景じょうけい鮮明せんめいおぼえていた。当時とうじかれ二転蛊師にてんこし十九歳じゅうきゅうさい白家寨はくけさい蛊師こし衝突しょうとつ斬殺ざんさつした。


ひところしたあとかれ嘔吐おうとくるしみ、こころみだくるった。数日間すうじつかん食欲しょくよくかず、ねむりにつけばころした相手あいてにらみつける悪夢あくむさいなまれた。


いま目のまえ方源ほうげん表情ひょうじょう一片いっぺん動揺どうようもなく、まるで昨夜ゆうべ熟睡じゅくすいしただけのような平然へいぜんとした様子ようすだ。


特に学堂家老がくどうかろうおよんだのは、方源ほうげん家僕かぼく殺害さつがいしたあと遺体いたいりょうに引き乱刀らんとう肉片にくへんにしたという残忍ざんにんきわまる手口てぐちだった。そのはなしいたとき戦慄せんりついまよみがえる。


学堂家老がくどうかろう視線しせんには複雑ふくざつ感情かんじょう渦巻うずまいていた。


一方いっぽう方源ほうげんいのちへの無関心むかんしん驚嘆きょうたんし、こおりのような冷徹れいてつさをかんじる。他方たほうで、月光蛊げっこうこ習得しゅうとくした短期間たんきかん殺人さつじん活用かつようする戦闘才覚せんとうさいかくぼうかの賞賛しょうさんおぼえる。甲等こうとう天才てんさいでもないこのさいを、一族いちぞく戦力せんりょくとしてそだてればてき悪夢あくむとなるだろう。


第三だいさん危惧きぐ苦悩くのう存在そんざいした。


方源ほうげんいきおいをおさえきれなくなるのではないかという懸念けねん族規ぞくきやぶ学舎がくしゃ使つかい、しかも殺人さつじんまでおかすこの無法者むほうもの制御せいぎょできなければ、学舎がくしゃ運営うんえいなどたない。


あたまなやませているのは、本家ほんけばく一脈いちみゃくとの関係かんけい考慮こうりょした処理しょり方法ほうほうだった。


方源ほうげん、わしがおまえをびつけた理由りゆうかっているのか?」学堂家老がくどうかろうひくいたこえで、部屋へやめた沈黙ちんもくやぶった。


ぞんじております」方源ほうげんかるうなずこたえた。「学舎がくしゃない月光蛊げっこうこ使用しようし、族規ぞくき違反いはんいたしました。さだめにしたがい、初回しょかい違反いはん三十枚さんじゅうまい元石げんせき賠償ばいしょうすべきでしょう」

核心かくしんである高碗こうわんには一切いっさいれず、問題もんだい矮小わいしょうする回答かいとうだった。


学堂家老がくどうかろうまばたきして言葉ことばまった。まゆしかめながら怒声どせいげる:「小癪こしゃくな! 老夫ろうふまえ言葉ことばにごすな! 高碗こうわんけん説明せつめいせよ!」


方源ほうげんほそめて反論はんろんする:「あの下僕しもべ身分みぶんわすれ、昨夜ゆうべわが部屋へや封鎖ふうさいのちねらってまいりました。自衛じえいのため月光蛊げっこうこ発動はつどうし、かろうじて逆賊ぎゃくぞく仕留しとめた次第しだい他寨たさい間諜かんちょう可能性かのうせいおおいにあり、家老かろうのご明察めいさつあおぎたい」


学堂家老がくどうかろうひたいふかしわきざんだ。んだ外姓がいせい家僕かぼくなどるにりぬ。しん問題もんだい漠家ばくけへの説明責任せつめいせきにんにあった。


「では遺体いたいをどう処分しょぶんしたかもうせ」

方源ほうげんくちびるつめたいわらみをかべる:「切りきざ木箱きばこおさめ、東雲しののめとき漠家ばくけ裏門うらもんいてまいりました」


なんと!?」学堂家老がくどうかろう椅子いすふちけてしそうになる。これは露骨ろこつ挑発ちょうはつ行為こういそのものだ!


(この災厄さいやくもとが!)あたまれるようにいたむ。「すできたことくつがえせぬ。数日中すうじつちゅう処分しょぶんくだす。覚悟かくごしておくがよい」


ひらはらうように方源ほうげん退しりぞけた家老かろうは、つくえひじをついてふか嘆息たんそくした。漠家ばくけ怒涛どとう反応はんのう想定そうていすれば、学舎がくしゃ秩序ちつじょみだれ、みずからの権威けんいちる――この厄介者やっかいものをどうあつかうべきか。


くら執務室しつむしつに、すみかしたようなかげめた。


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