表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
蛊真人  作者: 魏臣栋
青茅山
35/569

第三十五節: 泣き喚け

方源ほうげん優位ゆうい長続ながつづきしなかった。

拳脚けんきゃく応酬おうしゅういきみだれる少年しょうねんたいし、高碗こうわん呼吸こきゅうふか安定あんていしていた。


「ガキ、おれてるわけねえだろ! 族規ぞくき学舎がくしゃでの使用しよう禁止きんし! おまえはもうわりだ!」高碗こうわんして嘲笑ちょうしょうする。


方源ほうげん瞳孔どうこうつめたいみずうみのようにしずかにひかる。「月光蛊げっこうこ

てのひら青藍せいらんかがやきがみなぎると、後方こうほうかるやかに退しりぞいた。


族規ぞくき違反いはんだと!?」高碗こうわん顔色かおいろえる。

方源ほうげん薄笑うすわらいしつつてのひら虚空こくう一閃いっせん。ズバッと空気くうきけるおとひびいた。


シュッ!あお月刃げつじん高碗こうわん顔面がんめん目指めざしてした。

高碗こうわんいしばり、両腕りょううでかおまえわせてうでたてつくり、あしめずに方源ほうげん突進とっしんした。こうめて速戦即決そくせんそっけつはかろうとする。


ズブッ!

月刃げつじんうでたると、肉片にくへん月明つきあかりのなか飛散ひさんし、激痛げきつう高碗こうわん神経しんけいつらぬいた。予想よそうはずれのいたみに、高碗こうわん卒倒そっとうしそうになる。


「まさか…!?」突進とっしん急停止きゅうていしした高碗こうわん恐怖きょうふふるえながら、両前腕りょうぜんわんふか横切よこぎきずはいっているのを発見はっけんした。傷口きずぐちからはなくながよこかられば血塗ちまみれの筋肉きんにくのぞき、しろれた腕骨わんこつまでえる状態じょうたいだった。


高碗こうわん心底しんそこから震撼しんかんした:「ありない! 一転初階いってんしょかい月刃げつじんなら、せいぜい皮肉ひにくきずつける程度ていどだ! ほねまでれるなんて…これは二転中階にてんちゅうかいでしかできないはずだ!!」


かれにはよしもなかった——方源ほうげん一転初階いってんしょかいながら、酒虫しゅちゅうによる真元しんげん精製せいせい中階ちゅうかいレベルの真元しんげんゆうしていたことを。


月光蛊げっこうこ中階真元ちゅうかいしんげん発動はつどうされれば、月刃げつじん威力いりょく当然とうぜん初階しょかい凌駕りょうがする。


「やべえ…! こいつ普通ふつうじゃねえ!!」不意打ふいうちをらった高碗こうわん戦意せんい完全かんぜん喪失そうしつし、即座そくざ撤退てったい決意けついした。


げられるとでも?」方源ほうげん嘲笑ちょうしょうしながら、から次々(つぎつぎ)と月刃げつじんはなつ。


たすけてくれええっ!!!」高碗こうわん金切かなきごえげながらまよこえが、静寂せいじゃくした学舎がくしゃとおくまでひびわたった。


なにさわぎだ? だれたすけをもとめてる!」こえおどろいた近隣きんりん学舎警備がくしゃけいびける。「漠家ばくけ漠顔ばくがん嬢様じょうさまのこしていった家僕かぼくだ」


警備員けいびいんたちは追跡ついせき状況じょうきょう目撃もくげきするや、あしめた。


たんなる家僕かぼくごとき、まも価値かちなし!」

「こいつを放置ほうちするだけで、漠家ばくけへの義理ぎりつ」

「でも油断ゆだんするなよ、められて方源ほうげんさまきずつけるかも」


緊張きんちょうした警備けいびたちが包囲ほういしながらもさず、傍観者ぼうかんしゃとしてくした。


高碗こうわんという家僕かぼくんでも自分達じぶんたちには関係かんけいない。しかし方源ほうげん死亡しぼうしたり負傷ふしょうしたりすれば、自分達じぶんたち責任せきにんとなるのだ。


この光景こうけい高碗こうわんこころそこからり、金切かなきごえげてさけんだ:「俺達おれたちみんな外様とざまものだろうが! 見殺みごろしにするんか!」


失血しっけつすすむにつれ、あし取りがにぶくなる。

背後はいごからせま方源ほうげんこえこおりついたやいばのようにひびいた:「わめいても無駄むだだ」


てのひら反転はんてんさせ、二連にれん月刃げつじん飛翔ひしょうする。

シュン、シュン!

やいば首筋くびすじつらぬいた瞬間しゅんかん高碗こうわん深淵しんえんとされるような寒気かんきかんじた。


視界しかいがぐるりと回転かいてんし、自分じぶんあしむね背中せなか――そして切断面せつだんめんからくび断面だんめん目撃もくげきする。

やがて全て(すべて)がやみつつまれた。


ゴロリ

くびころがり、胴体どうたい十米じゅうメートルはしたおれた。切断面せつだんめんから鮮血せんけつ噴水ふんすいのようにし、周囲しゅうい草花くさばな真紅しんくめた。


人殺ひとごろしだ…!」

方源ほうげんひとを…!」

警備けいびたちがひくうめごえらす。すべてを目撃もくげきしたものたちは身震みぶるいし、恐怖きょうふ戦慄せんりつおそわれた。


十五歳じゅうごさい痩躯そうく少年しょうねん無表情むひょうじょうのまま巨漢きょかんほふった――これが蛊師こしちからだった。


戦局せんきょくけっした。


方源ほうげんあしゆるめ、ゆっくりとあるした。

平然へいぜんとした顔色かおいろは、まるで日常茶飯事にちじょうさはんじませたかのようで、警備けいびたちの背筋せすじつめたいあせはしらせた。


ころがる高碗こうわんくび見開みひらいたまま。方源ほうげん無表情むひょうじょうばすと、警備けいびたちが目尻めじりをピクつかせた。


痙攣けいれんつづける胴体どうたいちかづくと、血溜ちだまりが石畳いしだたみひろがっていた。ふか傷口きずぐち凝視ぎょうしする方源ほうげん表情ひょうじょうけわしくなる――中階真元ちゅうかいしんげん存在そんざい露見ろけんしかねない傷跡きずあとだった。


目撃者もくげきしゃおおすぎる」周囲しゅうい警備けいび十数人じゅうすうにん瞥見べっけんし、高碗こうわん足首あしくびつかんでさかさまに引きはじめた。


方源様ほうげんさま、ここは私共わたくしどもに…」ふるえるこえちかづく警備けいびを、方源ほうげんしずかな視線しせんせいする。


かたなをよこせ」

威圧的いあつてき命令めいれい最前列さいぜんれつ警備けいび反射的はんしゃてき佩刀はいとうす。


東雲しののめ学舎がくしゃ石段いしだんめるなか蒼白そうはく少年しょうねん左手ひだりてかたな右手みぎて首無くびな死体したいきずりながらあるいていく。青黒あおぐろいしかれた血路けつろ朝日あさひらされ、警備けいびたちはこごえついたように立ちつくした。


ゴクリ。

だれかのつばきおとが、てついた空気くうきふるわせた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ