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蛊真人  作者: 魏臣栋
魔子出山
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第百二十七節:九眼酒虫

(とき)刻一刻(こくいっこく)()ぎ、三王伝承(さんおうでんしょう)(めぐ)り、三叉山(さんさざん)一帯(いったい)風雲急(ふううんきゅう)()げ、動揺(どうよう)()まない。


数多(あまた)魔道(まどう)梟雄(きょうゆう)正道(せいどう)人物(じんぶつ)、様々(さまざま)な勢力(せいりょく)が、怒涛(どとう)(ごと)()()せた。


最初(さいしょ)商家(しょうか)局面(きょくめん)掌握(しょうあく)し、増援(ぞうえん)(かさ)ねて、伝承(でんしょう)()(ぐち)占拠(せんきょ)し、必勝(ひっしょう)意気込(いきご)みを()せていた。


(つづ)いて武家(ぶけ)(うご)()し、商家(しょうか)封鎖(ふうさ)()(やぶ)った。


その()三王伝承(さんおうでんしょう)()が、当時(とうじ)六转蛊仙(ろくてんこせん)福地洞天(ふくちどうてん)であるという情報(じょうほう)(なが)れ、世間(せけん)騒然(そうぜん)となった。無数(むすう)の人々(ひとびと)が三叉山(さんさざん)殺到(さっとう)し、(ほか)超一流家族(ちょういちりゅうかぞく)も、軒並(のきな)(おどろ)き、陣容(じんよう)(つよ)蛊師隊(こしたい)派遣(はけん)した。


これには、商家(しょうか)武家(ぶけ)も、この(おお)きな潮流(ちょうりゅう)()()められなかった。


三叉山(さんさざん)情勢(じょうせい)は、完全(かんぜん)混迷(こんめい)(おちい)った。


毎日(まいにち)のように死者(ししゃ)がでる。伝承(でんしょう)()機会(きかい)(あらそ)って、正道(せいどう)魔道(まどう)魔道(まどう)同士(どうし)正道(せいどう)同士(どうし)(はげ)しく(たたか)()い、(すさ)まじい(いくさ)()(ひろ)げられた。


三叉山(さんさざん)情勢(じょうせい)一変(いっぺん)一変(いっぺん)が、(おお)くの(もの)(こころ)(ふる)わせた。


方源(ほうげん)一貫(いっかん)して、この状況(じょうきょう)密接(みっせつ)注視(ちゅうし)(つづ)けていた。


伝承(でんしょう)(ひら)かれてから、半月以上(はんつきいじょう)経過(けいか)した。(すで)に、伝承(でんしょう)(なか)()成果(せいか)()(もの)(あらわ)れ、これが人々(ひとびと)の探求熱(たんきゅうねつ)にさらに拍車(はくしゃ)をかけた。


しかし、これらの成果(せいか)は、方源(ほうげん)眼中(がんちゅう)にはない。(かれ)前世(ぜんせ)記憶(きおく)()ち、三王伝承(さんおうでんしょう)(しん)精髄(せいずい)が、伝承(でんしょう)最奥(さいおう)にあることを()っている。


そこに到達(とうたつ)するには、(すく)なくとも(ひゃく)もの関門(かんもん)突破(とっぱ)しなければならず、膨大(ぼうだい)時間(じかん)労力(ろうりょく)(よう)する。(とき)には(みち)(まよ)い、(きり)(なか)出口(でぐち)見失(みうしな)うこともある。(とき)には犬群(いぬむれ)包囲攻撃(ほういこうげき)()い、(おお)くの蛊師(こし)が、(いぬ)(きば)()()かれて(みじ)めな最期(さいご)()げている。


三王(さんおう)魔道(まどう)()であり、これは魔道伝承(まどうでんしょう)だ。


魔道伝承(まどうでんしょう)は、(むかし)から危険(きけん)()ちている。(つね)(いのち)()けて、探索(たんさく)しなければならないのだ。


(いま)三叉山(さんさざん)()()けるのは、まだ(はや)すぎる。時機(じき)(じゅく)していない。むしろ、ここは成果(せいか)()して()ち、(ちから)(たくわ)えるべきだ。(かれ)らが関門(かんもん)()()き、障害(しょうがい)(のぞ)いた(あと)、その成果(せいか)奪取(だっしゅ)しに()こう。(いま)こそ、()煉成(れんせい)する(とき)だ」方源(ほうげん)(こころ)(はかり)(ごと)(めぐ)らせた。


今回(こんかい)(かれ)煉成(れんせい)するのは、(ほか)でもない酒虫(しゅちゅう)だ。


一転酒虫(いってんしゅちゅう)は、青銅真元(せいどうしんげん)一小境(いっしょうきょう)精錬(せいれん)できる。


二転四味酒虫(にてんしみしゅちゅう)は、赤鉄真元(せきてつしんげん)一小境(いっしょうきょう)精錬(せいれん)する。


三転七香酒虫(さんてんしちこうしゅちゅう)は、白銀真元(はくぎんしんげん)一小境(いっしょうきょう)精錬(せいれん)する。


四転九眼酒虫(してんきゅうがんしゅちゅう)は、黄金真元(おうごんしんげん)一小境(いっしょうきょう)精錬(せいれん)する。

九眼酒虫(きゅうがんしゅちゅう)(うえ)には、五转(ごてん)酒虫(しゅちゅう)存在(そんざい)しない。当時(とうじ)酒虫秘方(しゅちゅうひほう)研鑽(けんさん)していた秘方大師(ひほうたいし)は、天資(てんし)卓絶(たくぜつ)(わか)かったが、(てき)先回(さきまわ)りされて()(ころ)され、若死(わかじ)にしてしまった。


天才(てんさい)というのは、(たん)(ひと)つの可能性(かのうせい)(あらわ)しているに()ぎない。


成長(せいちょう)する(まえ)()(ころ)される天才(てんさい)も、(すく)なくない。


しかし(いま)方源(ほうげん)白凝冰(はくぎょうひょう)(すで)成長(せいちょう)しきっている。(かれ)らを消滅(しょうめつ)するのは、容易(ようい)なことではない。


方源(ほうげん)酒虫(しゅちゅう)四味酒虫(しみしゅちゅう)合煉(ごうれん)した(あと)、ずっと放置(ほうち)したまま、無駄(むだ)()(つづ)けていた。


その理由(りゆう)は、(かれ)骨肉団圓蛊(こつにくだんえんこ)()()れたからだ。白凝冰(はくぎょうひょう)(たす)けもあり、四味酒虫(しみしゅちゅう)利用価値(りようかち)(うしな)っていた。しかし(いま)状況(じょうきょう)(こと)なる。


白凝冰(はくぎょうひょう)四转(してん)昇格(しょうかく)し、方源(ほうげん)三转頂点(さんてんちょうてん)だ。(とお)くない将来(しょうらい)(かれ)四转初階(してんしょかい)到達(とうたつ)するだろう。その(とき)二人(ふたり)(しゅ)()(しん)(おな)水準(すいじゅん)になる。


骨肉団圓蛊(こつにくだんえんこ)方源(ほうげん)にもたらす(たす)けは、(おお)いに()るだろう。この(とき)、もし四转(してん)九眼酒虫(きゅうがんしゅちゅう)一匹(いっぴき)あれば、修行(しゅぎょう)非常(ひじょう)容易(ようい)になるはずだ。


九眼酒虫(きゅうがんしゅちゅう)合煉(ごうれん)せよ!


商心慈(しょうしんじ)(しゅう)(ぜん)(まね)きを(はじ)めるのと同時(どうじ)に、方源(ほうげん)蛊煉成(これんせい)のため閉関(へいかん)することを(えら)んだ。


白凝冰(はくぎょうひょう)(なに)煉成(れんせい)するかは不明(ふめい)だが、同様(どうよう)閉関(へいかん)()めた。


四味酒虫(しみしゅちゅう)合煉(ごうれん)するには、一転酒虫(いってんしゅちゅう)二匹(にひき)酸味(さんみ)甘味(かんみ)苦味(くみ)辛味(からみ)四種(よんしゅ)美酒(びしゅ)必要(ひつよう)だ。


七香酒虫(しちこうしゅちゅう)合煉(ごうれん)するには、四味酒虫(しみしゅちゅう)二匹(にひき)(くわ)えて七種(ななしゅ)香料(こうりょう)()る。


九眼酒虫(きゅうがんしゅちゅう)(いた)っては、七香酒虫(しちこうしゅちゅう)二匹(にひき)、さらに百獣王(ひゃくじゅうおう)九種(きゅうしゅ)眼玉(めだま)必須(ひっす)となる。


方源(ほうげん)(いま)商家城(しょうかじょう)にいる。この()は、地理的環境(ちりてきかんきょう)天恵(てんけい)(めぐ)まれている。もし(ほか)場所(ばしょ)なら、酒虫(しゅちゅう)合煉(ごうれん)材料(ざいりょう)(そろ)えるのに、膨大(ぼうだい)労力(ろうりょく)(つい)やして探索(たんさく)しなければならないだろう。しかし商家城(しょうかじょう)では、(かね)さえあれば、(なん)でも()えるのだ。


方源(ほうげん)(すで)に、一匹(いっぴき)四味酒虫(しみしゅちゅう)()にしている。(かれ)二匹(にひき)酒虫(しゅちゅう)購入(こうにゅう)し、まず第二(だいに)四味酒虫(しみしゅちゅう)合煉(ごうれん)した。


(つぎ)に、二匹(にひき)四味酒虫(しみしゅちゅう)使(つか)って、最初(さいしょ)七香酒虫(しちこうしゅちゅう)合煉(ごうれん)した。ここまで、(かれ)作業(さぎょう)順調(じゅんちょう)だった。しかし、(つづ)いて第二(だいに)七香酒虫(しちこうしゅちゅう)合煉(ごうれん)する過程(かてい)で、困難(こんなん)直面(ちょくめん)した。


(かれ)は、(さん)匹目(びきめ)四味酒虫(しみしゅちゅう)七香酒虫(しちこうしゅちゅう)合煉(ごうれん)する過程(かてい)で、それぞれ一度(いちど)ずつ失敗(しっぱい)した。その(たび)に、投入(とうにゅう)した元石(げんせき)(まる)ごと水泡(すいほう)()し、副材料(ふくざいりょう)(あらた)めて購入(こうにゅう)せねばならず、(いち)からやり(なお)羽目(はめ)になった。


(さいわ)い、最終的(さいしゅうてき)二匹(にひき)七香酒虫(しちこうしゅちゅう)合煉(ごうれん)は、順調(じゅんちょう)(すす)んだ。三日後(みっかご)方源(ほうげん)見事(みごと)九眼酒虫(きゅうがんしゅちゅう)()にした。


九眼酒虫(きゅうがんしゅちゅう)は、(かいこ)幼虫(ようちゅう)のような姿(すがた)で、全身(ぜんしん)真珠(しんじゅ)のように(しろ)(なめ)らかだ。頭部(とうぶ)には()がなく、()わりに(きゅう)つの()が、(あか)(だいだい)()(みどり)(あお)(あい)(むらさき)など(いろ)とりどりに(かがや)き、あたかも瑪瑙(めのう)宝石(ほうせき)()()まれたようだ。


九眼酒虫(きゅうがんしゅちゅう)は、黄金真元(おうごんしんげん)一小境(いっしょうきょう)精錬(せいれん)できる!


このため、方源(ほうげん)多大(ただい)代償(だいしょう)(はら)った——総額(そうがく)二十万(にじゅうまん)(ちか)元石(げんせき)(つい)やしたのだ。


()煉成(れんせい)における失敗(しっぱい)は、蛊師(こし)なら(だれ)()けられない。方源(ほうげん)何度(なんど)失敗(しっぱい)したが、全体(ぜんたい)として()れば、(うん)(めぐ)まれていたと()える。


(かれ)失敗(しっぱい)は、四味酒虫(しみしゅちゅう)七香酒虫(しちこうしゅちゅう)合煉(ごうれん)過程(かてい)集中(しゅうちゅう)しており、全工程(ぜんこうてい)前半(ぜんはん)()きた。最終段階(さいしゅうだんかい)仕上(しあ)(どき)には、一発(いっぱつ)成功(せいこう)した。


蛊煉成(これんせい)(もっと)(こわ)いのは、後半(こうはん)での失敗(しっぱい)だ。その場合(ばあい)(こうむ)損害(そんがい)(はか)()れない。


九眼酒虫(きゅうがんしゅちゅう)()()れた」方源(ほうげん)はしばらく賞玩(しょうがん)した(のち)満足(まんぞく)げに酒虫(しゅちゅう)空窍(くうきょう)(おさ)めた。


(かれ)(いま)、まだ三转頂点(さんてんちょうてん)()ぎない。九眼酒虫(きゅうがんしゅちゅう)は、四转(してん)昇格(しょうかく)するまで使用(しよう)できない。


白凝冰(はくぎょうひょう)なら使用可能(しようかのう)だが。


しかし、黄金中階(おうごんちゅうかい)真元(しんげん)は、空窍(くうきょう)(かべ)温養(おんよう)する効果(こうか)一層(いっそう)強力(きょうりょく)だ。白凝冰(はくぎょうひょう)北冥冰魄体(ほくめいひょうはくたい)であり、彼女(かのじょ)自身(じしん)(こと)によれば、現在(げんざい)資質(ししつ)九割六分(きゅうわりろくぶ)まで上昇(じょうしょう)している。九眼酒虫(きゅうがんしゅちゅう)は、彼女(かのじょ)にとっては、(がい)()上回(うわまわ)ると()える。


(わたし)四转初階(してんしょかい)(たっ)した(とき)、この九眼酒虫(きゅうがんしゅちゅう)使(つか)えば、黄金中階(おうごんちゅうかい)真元(しんげん)()られる。そうなれば、後発(こうはつ)ながら(さき)んじ、真元(しんげん)(めん)(はじ)めて白凝冰(はくぎょうひょう)凌駕(りょうが)するだろう」方源(ほうげん)四转(してん)(きょう)(かい)目前(もくぜん)(せま)っていると(かん)じていた。


盟約(めいやく)を「締結(ていけつ)」したとはいえ、(かれ)(けっ)して白凝冰(はくぎょうひょう)という禍根(かこん)(わす)れたことはなかった。


日々(ひび)が()ぎる(なか)三叉山(さんさざん)では孔日天(こうじつてん)(つづ)き、魔道(まどう)からまた大物(おおもの)(あらわ)れた。


その(もの)こそ、「(かつ)蒼穹(そうきゅう)碧空(へきくう)()めし」と(うた)われる龍青天(りゅうせいてん)——毒道(どくどう)名手(めいしゅ)だ。(かれ)登場(とうじょう)するや、商家(しょうか)家老(かろう)三人(さんにん)毒殺(どくさつ)し、魔道(まどう)(いきお)いを(おお)いに()()げた。


(さいわ)い、二日後(ふつかご)武家(ぶけ)から派遣(はけん)された四转家老(してんかろう)武通神(ぶつうしん)登場(とうじょう)し、龍青天(りゅうせいてん)対抗(たいこう)した。これにより、三叉山(さんさざん)情勢(じょうせい)(ふたた)均衡(きんこう)(てん)(もど)った。


一方(いっぽう)商心慈(しょうしんじ)(しゅう)(ぜん)(まね)きは、(おも)った(とお)挫折(ざせつ)した。進展(しんてん)は遅々(ちち)として(すす)まない。(しゅう)(ぜん)(ほこ)(たか)く、態度(たいど)一切(いっさい)緩和(かんわ)せず、口調(くちょう)にも妥協(だきょう)余地(よち)など微塵(みじん)もないようだった。


方源(ほうげん)九眼酒虫(きゅうがんしゅちゅう)合煉(ごうれん)成功(せいこう)した(あと)、ひたすら潜修(せんしゅう)(はげ)んでいた。


白凝冰(はくぎょうひょう)()えず黄金真元(おうごんしんげん)供給(きょうきゅう)し、(かれ)補助(ほじょ)したため、方源(ほうげん)四转(してん)(きょう)(かい)にますます(ちか)づいていた。


しかし、ここ数日(すうじつ)春秋蝉(しゅんじゅうせみ)回復速度(かいふくそくど)(きゅう)加速(かそく)し、三转空窍(さんてんくうきょう)にかかる圧力(あつりょく)目立(めだ)って増大(ぞうだい)してきた。


そんな(なか)商家城(しょうかじょう)利市節(りしせつ)(むか)えた。


これは商家(しょうか)伝統的(でんとうてき)(まつ)りで、千年(せんねん)(まえ)商家(しょうか)創建(そうけん)した先祖(せんぞ)(はじ)めて露店(ろてん)(ひら)いたことを記念(きねん)する重大(じゅうだい)祭典(さいてん)だ。


商家(しょうか)先祖(せんぞ)は、伝説的(でんせつてき)人物(じんぶつ)だ。


もともと(ぼん)()で、(まず)しい生活(せいかつ)(おく)り、露店(ろてん)()して生計(せいけい)()てていた。ある取引(とりひき)(さい)偶然(ぐうぜん)蛊師(こし)伝承(でんしょう)(しるし)()()れた。


(かれ)はこの(しるし)(たよ)りに、伝承(でんしょう)継承(けいしょう)し、(ひと)(じょう)(あら)たな舞台(ぶたい)()った。一歩一歩(いっぽいっぽ)着実(ちゃくじつ)前進(ぜんしん)し、勢力(せいりょく)(ざい)(さん)拡大(かくだい)させ、(つい)には商家城(しょうかじょう)創建(そうけん)したのだった。


この()商家城(しょうかじょう)内城(ないじょう)外城(がいじょう)には、提灯(ちょうちん)(かざ)りが街中(まちじゅう)(かざ)られ、(おお)きな店舗(てんぽ)妓楼(ぎろう)酒楼(しゅろう)などは営業(えいぎょう)(やす)んだ。人々(ひとびと)は歓喜(かんき)し、陽気(ようき)街頭(がいとう)()()し、露店(ろてん)(ひら)いた。(おとこ)(おんな)()いも(わか)きも、(まつ)りの熱気(ねっき)(ひた)り、この()(あきな)いを、(ひと)つの(たの)しい競争(きょうそう)ゲームと()なしていた。


しかし、(まつ)りの(たの)しい雰囲気(ふんいき)は、商心慈(しょうしんじ)には感染(かんせん)していないようだった。


少女(しょうじょ)(つくえ)(まえ)(すわ)り、秀眉(しゅうび)(かす)かにひそめ、(つくえ)(うえ)()かれた数通(すうつう)招待状(しょうたいじょう)凝視(ぎょうし)し、(うれ)いを()びていた。


これらの招待状(しょうたいじょう)は、九大若様(きゅうだいわかさま)全員(ぜんいん)から(とど)いたものだ。利市節(りしせつ)には、若様(わかさま)たちは盛大(せいだい)(うたげ)(ひら)き、功労者(こうろうしゃ)(ねぎら)い、様々(さまざま)な関係者(かんけいしゃ)招待(しょうたい)する。


黒土兄(こくどあに)さま、(わたし)、どうすればいいの?」商心慈(しょうしんじ)板挟(いたばさ)みの気持(きも)ちで、(おも)わず(かたわ)らの方源(ほうげん)助言(じょげん)(もと)めた。


心慈(しんじ)今回(こんかい)投機的買占(とうきてきかいし)めで、十万元石(じゅうまんげんせき)元手(もとで)三倍(さんばい)()やした。(いま)(きみ)若様(わかさま)()(あらそ)最有力候補(さいゆうりょくこうほ)一人(ひとり)だ。(かれ)らが(きみ)招待(しょうたい)するのは当然(とうぜん)のことだ」


方源(ほうげん)(わら)いながら、(つづ)けて()った:「しかし、九通(きゅうつう)招待状(しょうたいじょう)のうち、我々(われわれ)は(ひと)つしか(えら)べない。表向(おもてむ)きは和気藹々(わきあいあい)の(うたげ)だが、(じつ)は、(まつり)ごとにおける帰属(きぞく)()める()なのだ」


方源(ほうげん)招待状(しょうたいじょう)(うら)(ひそ)(ふか)(せい)()(てき)意味(いみ)(あば)いた。


商家(しょうか)には十人(じゅうにん)若様(わかさま)がいる。十人(じゅうにん)(あいだ)には、協力(きょうりょく)もあれば、内輪(うちわ)対決(たいけつ)もある。


商心慈(しょうしんじ)若様(わかさま)()(あらそ)い、しかも最有力候補(さいゆうりょくこうほ)一人(ひとり)である以上(いじょう)当然(とうぜん)他の九人(きゅうにん)若様(わかさま)から(つよ)注視(ちゅうし)されている。商心慈(しょうしんじ)がまだ若様(わかさま)になっていないのに、(かれ)らは(はや)くも彼女(かのじょ)懐柔(かいじゅう)しようと(こころ)みているのだ。


(ごう)()れば(ごう)(したが)え。


商家(しょうか)高層(こうそう)()()けば、否応(いやおう)なく(せい)()(うず)()()まれる。


(わたし)商螭吻(しょうりこん)招待状(しょうたいじょう)(えら)ぶべきかしら? 彼女(かのじょ)演武場(えんぶじょう)(つかさど)っているから、(いま)後の計画(けいかく)(おお)いに役立(やくだ)つと思うの」商心慈(しょうしんじ)(くち)(ひら)いた。


方源(ほうげん)(くび)()った:「表向(おもてむ)きは九通(きゅうつう)招待状(しょうたいじょう)だが、(じつ)はそうではない。商家(しょうか)若様(わかさま)たちの(なか)で、(もっと)(おお)きな派閥(はばつ)商囚牛(しょうきゅうぎゅう)だ。嫡長子(ちゃくちょうし)という身分(みぶん)が、(かれ)最大(さいだい)(つよ)みだ。(つぎ)(いきお)いがあるのは、商蒲牢(しょうほろう)商狻猊(しょうさんげい)商贔屓(しょうひき)派閥(はばつ)だ。第三(だいさん)勢力(せいりょく)は、商嘲風(しょうちょうふう)商負屓(しょうふき)で、(いま)()(しの)んで(とき)()っている。(のこ)りの(もの)は、商螭吻(しょうりこん)野心(やしん)(まった)くなく、商貔貅(しょうひきゅう)(あそ)(ごころ)(つよ)すぎる……」


心慈(しんじ)(きみ)商家城(しょうかじょう)での基盤(きばん)(もろ)すぎる。(えら)ぶなら、この上位三派(じょういさんぱ)(なか)からにしなさい。そうすれば、(きみ)(よわ)みを(おぎな)える。商螭吻(しょうりこん)については、(えら)んでも(えら)ばなくても、結果(けっか)大差(たいさ)はない」


「なるほど…」商心慈(しょうしんじ)はこの言葉(ことば)()き、()(かがや)かせた。


方源(ほうげん)助言(じょげん)で、彼女(かのじょ)(きり)()れたような気分(きぶん)になった。


(さき)までの(まよ)いは一掃(いっそう)された。彼女(かのじょ)(すこ)(かんが)えた(あと)選択(せんたく)(くだ)した。


第三派(だいさんぱ)(なか)から、商嘲風(しょうちょうふう)招待状(しょうたいじょう)(えら)んだのだった。


(いま)三大派(さんだいは)のうち、第一(だいいち)第二派(だいには)(たが)いに()()っている。(わたし)がどちらか一方(いっぽう)(くわ)われば、(かなら)他方(たほう)(おこ)らせる。ならば、第三派(だいさんぱ)(えら)ぼう。この(せい)()(うず)()(とう)じつつも、当分(とうぶん)(あいだ)事外(じがい)()っていられる」商心慈(しょうしんじ)方源(ほうげん)にそう説明(せつめい)した。彼女(かのじょ)(ゆき)のように聡明(そうめい)で、(ひと)()いて(じゅう)(さと)る。


これに(たい)し、方源(ほうげん)(こころ)安堵(あんど)(おぼ)えると同時(どうじ)に、(すこ)奇妙(きみょう)(かん)じも(いだ)いた。


(かれ)前世(ぜんせ)では、商嘲風(しょうちょうふう)商心慈(しょうしんじ)商家族長(しょうかぞくちょう)()(あらそ)死敵(してき)同士(どうし)だった。まさか今生(こんじょう)では、この二人(ふたり)(とも)()つことになるとは。




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