「しかし、たとえ方源が苦力蛊を持っていても、爆発できる力は最大で八獣力が限界だ。苦力蛊は無限に力を増幅するわけではない」
「商家族長が全力以赴蛊の要求を許さなくても、この苦力蛊を選ぶ道は残されている!」この考えに、巨開碑の両眼が輝いた。
全力以赴蛊であれ、苦力蛊であれ、力道蛊師にとっては、どちらも圧倒的な魅力を放っている。
「まだ負けていない! 私は四转初階で、真元の面で優位がある。何より、まだ奥の手が残されている!」
巨開碑は戦闘経験が豊富で、少し考えれば、すぐに気持ちを整え、態勢を立て直し、少し衰えていた士気を自ら奮い立てた。
両者は再び激突した。
戦いは、もはや激烈という言葉では形容し尽くせず、惨烈と表すのが適切だ。
拳と脚が入り乱れ、攻めと守りが交錯した。
巨開碑の象牙白甲は砕けては修復し、修復しては砕け、鮮血が度々(たびたび)口から噴出した。
方源も同様に惨めだった。自力更生蛊の使用を控えめにしたため、全身の皮肉が裂け、血まみれとなり、肋骨は断裂し、波のように押し寄せる無限の痛みが神経を襲い続けた。
しかし、傷が深ければ深いほど、彼の力は増大した。間もなく、五つの獣力虚影を同時に発現できるまでになった。
巨開碑の状況は更に切迫し、方源に圧倒され、反撃の機会すら見出せなかった。
これは彼が演武場で経験したことのない感覚だった。
炎突と戦った時でさえ、互角の勝負だった。
「小僧、図に乗りすぎだ!」巨開碑は怒りに任せ、両拳を横に掃った。
三龍象!
彼は突然爆発し、龍象の巨体が半空に湧き上がった。
方源は疑いもなく吹き飛ばされた。
三龍象が五獣影を圧倒したのだ。
防ごうとした方源の両腕は、不気味に歪み、完全に骨折していた。左腕は直角に折れ、砕けた骨が皮を突き破って露出し、血まみれになっていた。
方源は歯を食いしばり、自力更生蛊を発動した。
この程度の傷は、もはや戦闘力に影響を及ぼす。治療せざるを得ない。
まず右腕を治療し、次に歪み果てた左腕を無理やりに真っ直ぐに伸ばし、強引に組み合わせて、自力更生蛊を再駆動した。
折れた骨は速やかに成長し始め、骨組織が増殖して再結合した。続いて砕けた血肉が再生し、最後に皮膚が修復された。
回復期間、方源は絶え間なく巨開碑の攻撃を回避し続けた。横衝蛊と直進蛊を連続使用し、一心三用で巨開碑と渡り合った。
攻撃時は威風堂々(いふうどうどう)として剛猛、防御時は全く異なる冷静沈着な作風で、泥鰌のように滑るように危うい攻撃をかわした。
周囲の黒石林を極限まで活用し、巨開碑の龍行虎歩蛊は速度で上回るが、彼を捕らえることはできなかった。
方源が回復すると、即座に反転して再戦に臨んだ。
時間が経つにつれ、戦況はますます惨烈さを増し、方源は五獣影から、次第に六獣影、七獣影、遂には八獣影を打ち出せるまでになった!
戦いの始めの頃、周囲の観客は時折歓声を上げていたが、このような状況に至って、次第に沈黙が広がり、声一つ聞こえなくなった。
方源と巨開碑の放つ恐怖の力は、人々(ひとびと)を心臓が凍るほど震え上がらせ、背筋に寒気が走った。
「恐ろしい…」
「この巨力こそ、上古の力道の風采だろう」
「私がどちらと戦っても、とっくに肉団子にされてしまっている」
…
人々(ひとびと)は舌を巻き、心の底から方源と巨開碑の硬骨ぶりに敬服した。この二人こそ、まさに鋼鉄の硬漢だ。
誰もこの戦いの結末を予測できない。
方源は八獣影を駆使し、大部分の時間で巨開碑を圧倒している。
しかし巨開碑も弱くはない。彼の治療蛊は驚異的な回復力を発揮し、更に龍胆蛊、龍行虎歩蛊、龍象蛊の三つが、法則の欠片を共鳴させ、道紋共鳴を起こした。これにより、龍象虚影が現れる確率が大幅に向上した。
商心慈は両手が汗で濡れるほど握りしめていた。
魏央の眉間には、深い皺が刻まれていた。
彼には分かっていた——方源が疲れ切っていることを。
八獣影の全力爆発は、鉄の体でも耐え切れない。今や彼は滝のような汗を流し、筋肉が悲鳴を上げている。
さらに大きな危険が潜んでいた。
八獣影を爆発させられるということは、同時に彼の傷が極限まで深く、自ら危ない橋を渡っていることを意味する。
方源はまさに綱渡りをしている。もし巨開碑の三龍象を食らえば、命を落とすことさえある!
彼は命を賭けて戦っているのだ!
これは実に苛酷な死闘だ。
始まりから今まで、二時間が経過した。
戦いは徐々(じょじょ)に最終段階に移り、両者とも限界に達し、攻勢は明らかに緩慢になってきた。
しかし、場面は一層緊迫し、白凝冰さえ厳粛な面持ちを見せた。
場内は水を打ったように静まり返り、無数の人が息を潜めて場中を見つめていた。
巨開碑は遂に堪え切れなくなった。
彼は三龍象を打ち出せるが、運に左右され、発揮が不安定だ。時には、発現したとしても、時機が悪く、方源に軽がるしく避けられたり防がれたりする。
「なぜ彼の真元は尽きないのだ?」
戦い続けてきた今、四转の力道蛊師である巨開碑でさえ、真元は底を突きかけている。
しかし方源は三转の頂点に過ぎないのに、相変わらず真元が充満している様子で、まだまだ元気溌剌としている。
「まさか本当に天元宝蓮蓮を持っているのか?」巨開碑の脳裏に、商燕飛の密書が浮かんだ。
「もし方正が本当に持っているなら、その運の良さは天を逆さまにするほどだ!」巨開碑は歯を食いしばった。予想していた優位が存在せず、彼の闘志は思わず萎んでいった。
「負けられない! どうやら、奥の手を使うしかないようだ!」巨開碑は心に決めた。
龍行虎歩蛊!
彼は突然後退した。この異常な動きに、方源は即座に警戒を強めた。
しかし、追撃が間に合わなかった。龍行虎歩蛊の速度は、横衝蛊や直進蛊を遥かに上回り、加えてこの地形は追撃に不利だった。
瞬く間に、全ての視線が巨開碑に集まった。多くの者が何かを察した。
「しまった…」魏央はこの光景を見て、顔色が一変し、思わず叫び声を上げた。
「何が?」商心慈は慌てて振り返った。
「巨開碑が奥の手を使おうとしている! この勝負が、遂に最も重要な瞬間を迎えた」魏央の声は低く沈み、額に汗の粒が浮かんでいた。
彼は非常に緊張しており、言葉が早口になった:「巨開碑の奥の手には、一つの隙がある。方正がこの隙を捕らえられれば、勝利を決できる! もし逃せば、恐らく巨開碑が勝つだろう」
魏央の言葉が終わるか終わらぬか、場内で異変が起きた。
巨霊心蛊!
巨霊身蛊!
巨霊意蛊!
三つの四转蛊が同時に駆動された。
心と身と意が一つに合わさり、精と気と神が同流する!
巨開碑の体が急に三倍に膨張し、全身が白い霊光を放ち、天から降臨した神のようだった。威勢は瞬く間に高まり続けた。
これが彼の奥の手——巨霊変だ!蛊師の力を三倍に増幅できる。同時に精神力も三倍になる。
蛊を操るには精神力を消耗する。長く使えば精神が萎れる。
しかし巨開碑は今精神力が増幅したため、再び活気づき、興奮した。
同時に、力も三倍に増大し、三龍象の力が九龍象の力となる!
もし九龍象を爆発させれば、八獣影など通用せず、方源は必ず敗れる。
巨開碑は最強の状態に達した。
しかし、まさにこの瞬間!
彼の全身を覆う象牙白甲が、自らの膨張に耐え切れず、砕け散った。
多くの防御蛊は伸縮性を持たない。象牙白甲もその一つだ。
「今だ! この瞬間こそ、彼は無防備だ!最強の時が、実は最大の弱点なのだ!この唯一の勝機を捕らえよ!」魏央は両眼を大きく見開き、拳を握り締め、声を潜めて叫んだ。
傍らで、白凝冰の瞳も鋭く光った。
魏央の叫びを聞いたかのように、方源は動き出そうとしたが、突然動作を止めた。
魏央の顔に浮かんだ期待と喜びは、瞬く間に凍り付いた。
「動け!」彼は思わず叫んだが、防音結界に阻まれて声は届かず、周囲から怪訝な目で見られた。
方源は微動だにせず、静かに見守っていた。
砕け散った象牙白甲が、再び徐々(じょじょ)に生え始めた。新しい鎧が形作られ、巨開碑の全身を隙間なく覆った。
方源の勝機は刻一刻と失われ、見えなくなりつつあった。
魏央は焦って地団太を踏んだが、無駄だった。
彼は天を仰いで嘆息した:「ああ、方正は敗れた。唯一の勝機を逃してしまった…」
方源が攻撃しなかったことに、巨開碑は少し驚いた。彼は方源が攻撃してくるものと予想し、準備を整えていたのに、方源は微動だにしなかった。
これには、巨開碑も残念に思った!
なぜなら、ついさっき、彼は硬気蛊を発動していたからだ。
硬気蛊は無形の気流と化し、彼の全身を包んだ。あの瞬間、彼は無防備に見えたが、実は防御が極めて堅固で、岩のように堅かった。
硬気蛊を駆動することで、彼の最大の弱点は補われた。
もし方源が強攻を仕掛けていれば、巨開碑の痛烈な反撃を食らい、散々(さんざん)な目に遭い、高い確率で敗北していただろう。
しかし方源は動かなかった。
たとえ巨開碑が象牙白甲の再生速度を意図的に遅くして、方源を誘い出そうとしても、後者は微動だにせず、ただ静かに見守っているだけだった。
「気づいたのか? まさか。硬気蛊は無形無色で、私が手にしたばかりで、一度も使ったことがない」
「ふん、お前が攻めてこないなら、こっちから仕掛けるまでだ」巨開碑の目に鋭い光が爆発した。
巨霊変は奥の手だ。三つの四转蛊を同時に操るため、黄金真元も精神力も激しく消耗する。
力と精神力は三倍に増えるが、同時に三倍の速さで消耗していく。巨開碑は巨霊変を長く維持できない。
龍行虎歩!
巨開碑は方源に向かって突進した。
猪突猛進だ。
方源は自ら後退し、その鋭い勢いを避けた。
巨開碑は思わず驚きと疑いを感じた。
方源が突然作風を変え、後退したのは、時間稼ぎのためか?
無駄だ!
「今の俺の体は普段の三倍の大きさだ。歩幅も元の三倍だ。さらに龍行虎歩蛊を使えば、速度はさらに速い!」巨開碑は心で冷やかに嘲笑った。
たとえ方源が黒石林の地形を利用しても、何の役にも立たない。
戦い続けてきた今、場内の黒石林はほぼ全て破壊されている。何より、巨霊変状態の彼にとって、眼前は見渡す限りの平地も同然だ!