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蛊真人  作者: 魏臣栋
青茅山
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第三十一節: 方源!お前にやばいことになってる

基本拳脚きほんけんきゃく七日間なのかかん猛特訓もうとっくんしたのに…方源ほうげん二招にしょうでまた気絶きぜつするなんて! 恥辱ちじょくだ!」古月漠北こげつ ばくほくくやしさでむねけそうだった。


にわ木人傀儡もくにんくぐつをバンバンとつづけていると、背後はいごからわらこえがした:「おとうと人形にんぎょううらみでもあるの?そんなにたたいて」


なつかしいこえくと、あね古月漠顔こげつ ばくがんっていた。「ねえさん!かえってきたの!?」


「ああ、一族いちぞく偵察任務ていさつにんむ十数日じゅうすうにちてたわ…」彼女かのじょ二転中階にてんちゅうかい蛊師こしだったが、またたく間に表情ひょうじょうけわしくした。「そのかおきずだれにやられたの!?」


「い、いや…ころんだだけだよ!」漠北ばくほくあわててうそをついた。祖父そふである古月漠塵こげつ ばくじんまご二度にどなぐたおされた事実じじつあねられたくなかった。さいわい他のやつらも同様どうようにやられていたが。


漠顔ばくがんまゆり上げ「防御ぼうぎょたないなら、ぬのいて手足てあし保護ほごしなさい」と忠告ちゅうこくし、っていった。


「お嬢様じょうさま、ご機嫌麗きげんうるわしゅう」

「お嬢様じょうさま、おかえりでございます」

「お嬢様じょうさま御帰還ごきかんこころよりおよろこもうげます」


古月漠顔こげつ ばくがんつめたい表情ひょうじょう書斎しょさいいそぎ、無断むだんとびらけた。


背中せなかけて書道しょどうたしな古月漠塵こげつ ばくじんう:「狼のおおかみのす状況じょうきょうは?」


祖父様そふさま、どうしてわたしだと?」

「このいえ無作法ぶさほうえるのはわし寵愛ちょうあいされた貴女きじょだけよ」漠塵ばくじん苦笑にがわらいしながら椅子いすこしろした。


漠顔ばくがんくちびるとがらせる:「おとうとの方が寵愛ちょうあいふかいくせに。将来しょうらい当主とうしゅだからきびしくしてるだけでしょう?」


「ところでおとうとだれなぐられたの? 祖父様そふさまってるでしょ!」


漠塵ばくじん顔色かおいろただす:「狼のおおかみのす報告ほうこくは?」


雷冠頭狼らいかんとうろう三頭さんとう来年らいねん襲来しゅうらいけられません」


三頭さんとうなら他寨たさい分担ぶんたんできる」漠塵ばくじん安堵あんどいきをつき、「おとうと方源ほうげんという丙等へいとう同窓どうそう二度にどなぐたおされた」とあからかにした。


祖父様そふさまなんてことを! おとうとまごですよ!」漠顔ばくがん見開みひらく。


おんなにはからんかもれんが」漠塵ばくじん深遠しんえん目差めざしでさとす。「敗北はいぼくこそおとこきたえる砥石といしだ。方源ほうげんわし漠北ばくほくあたえたかたきなのだ」


貴女きじょ介入かいにゅうすれば、それは漠家ばくけはじとなる。かったか?」


漠顔ばくがんうつむき「承知しょうちしました」とこたえるも、書斎しょさい彼女かのじょひとみには異様いようかがやきが宿やどっていた。


祖父様そふさま、これがあなたのあいかたなのですね。でもわたしにはわたしりゅうおとうとへのおもいがあるわ」


……


宿屋やどや食堂しょくどうでは数卓すうたくきゃくすわり、にぎやかな雰囲気ふんいきただよっていた。

店員てんいんさらはこびながらたくあいだたくみにするなか窓際まどぎわすわった方源ほうげん夕景ゆうげながめながら食事しょくじっていた。


西空にしぞらではほのおのような夕焼ゆうやけがしずかにえ、山並やまなみは暮色ぼしょくしずはじめていた。みちく人々(ひとびと)――どろまみれの農夫のうふ薬篭くすりかご背負せお採薬師さいやくし山鶏やまどりいのししかつ狩人かりゅうど、そしてあお武闘服ぶとうふく)つつんだ蛊師こしたち。


蛊師こしたちの腰帯こしおび階級かいきゅうしめしていた。

一転蛊師いってんこし青銅色せいどういろおびに「一」の刻印こくいん

二転蛊師にてんこし赤鉄せきてつおびに「二」の文字もじ


まどから観察かんさつする方源ほうげんうつったのは、若者わかもの一転蛊師いってんこし六人ろくにんと、中年ちゅうねん二転蛊師にてんこし一人ひとり

一族いちぞく実力じつりょくまちながめればかるものだ」五百年ごひゃくねん経験けいけんおしえる真理しんり再確認さいかくにんした。


青茅山せいぼうざん南疆なんきょう片隅かたすみぎず、いま一転初階いってんしょかい実力じつりょくでは脱出だっしゅつなどかなわない。三転さんてんきょういたってはじめてそとられる――方源ほうげんさいくちはこびながらおもう。


「ははっ、古月方源こげつほうげん、ついにつけたぞ」

不気味ぶきみわらこえともに、小豆色あずきいろはだをした巨漢きょかんせまってきた。がったまゆした細長ほそながひかる:「おまえおおきなわざわいまねしたとってるか? 漠家ばくけわかさまなぐりやがって…いま漠顔ばくがんじょう貴様きさまさがまわってるぞ」


おとこ腕組うでぐみをしたまま、すわった方源ほうげん見下みおろすようにふさがった。そのからだからは二転蛊師にてんこし威圧感いあつかんにじていた。


……


宿屋やどや食堂しょくどうには数卓すうたくきゃくすわり、食事しょくじをしながらにぎやかだった。

店員てんいんさらはこび、テーブルあいだをスムーズにしている。


窓際まどぎわせきすわった方源ほうげんは、注文ちゅうもんした料理りょうりべながらまどそとながめていた。

西空にしぞらほのおのようにあかまり、太陽たいよう半分はんぶんしずんだあと名残惜なごりおしそうに大地だいちつめる残照ざんしょうひろがっていた。とおくの山々(やまやま)は夕闇ゆうやみつつまれ、ちかくのみちには帰宅きたくする人々(ひとびと)――どろまみれの農民のうみん薬篭やくろう背負せおった薬師くすし山鳥やまどりいのししかつ猟師りょうし、そしてあお武闘服ぶとうふく蛊師こしたちがいた。蛊師こしたちはあたま鉢巻はちまきめ、ふと腰帯こしおびをしていた。


この腰帯こしおび階級かいきゅうしめしており、一転蛊師いってんこしあおおびどうのプレート(「一」の文字もじ)、二転蛊師にてんこしあかおびてつのプレート(「二」の文字もじ)がいていた。


方源ほうげんまどから観察かんさつすると、20だい若者わかもの一転蛊師いってんこしが6~7にん、そして中年ちゅうねん二転蛊師にてんこしが1いちにんえた。三転蛊師さんてんこし家老かろう四転蛊師よんてんこし族長ぞくちょうクラス。五転蛊師ごてんこしきわめてまれで、古月一族こげついちぞく歴史れきしでも初代しょだい四代目よんだいめ族長ぞくちょうだけだ。


一族いちぞく実力じつりょく見極みきわめるのは簡単かんたんだ」

方源ほうげんは500年分ごひゃくねんぶん経験けいけんまえ思索しさくした。「街中まちなかで1時間じかんほどひと観察かんさつし、一転いってん二転にてん蛊師こしかずかぞえばいい」


古月山寨こげつさんさいでは、20にんあるけば6ろくにん蛊師こし。そのうち1ひとりは半分の確率かくりつ二転蛊師にてんこしだ。この戦力せんりょく青茅山せいぼうざん最良さいりょう資源地しげんちさえ、地域ちいきのトップにっている。しかし南疆なんきょう全体ぜんたいれば、古月一族こげついちぞく中下位ちゅうかい勢力せいりょくぎない。


一転初階いってんしょかいじゃ南疆なんきょうわたある資格しかくもない。最低さいてい三転さんてん必要ひつようか…」

方源ほうげん料理りょうりくちはこび、しずかに嘆息たんそくした。青茅山せいぼうざんかれ野望やぼうおさめきれず、いずれ旅立たびだ運命うんめいだった。


「ハハーン!古月方源こげつほうげん、ようやく)つけたぜ」

不気味ぶきみわらこえともに、小豆色あずきいろはだをした巨漢きょかんちかづいてきた。がったまゆ筋肉質きんにくしつからだ腕組うでぐみをしてすわった方源ほうげん見下みおろす姿すがた――細目ほそめつめたいひかりはなっていた。


方源ほうげん、やばいことになってるのってる? 漠家ばくけのボンボンなぐったから、漠顔ばくがんねえさんがマジでさがまわってんだぞ」

中年ちゅうねんおとこ二転蛊師にてんこし威圧感いあつかん全開ぜんかいにし、方源ほうげんをジロリと見据みすえた。

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