「马嘉祺でさえ敗れ、演武場で命を落とした」
「こいつは手が苛烈だ。容赦というものを知らん!」
「全力以赴蛊は流石に強力だ……」
演武場の外で、人々(ひとびと)が騒然と噂し合った。
方源は水牢を蹴破り、一撃で突進し、青服の巨漢を即死させた。戦いは瞬く間に終結した。
青服の巨漢の胸は完全に陥没し、白く浮き出した肋骨が露になっていた。間もなく、鮮血が演武場の地面を真赤に染めた。
主審の蛊師が場内に進み出て、方源の勝利を公やかに宣言した。
青服の巨漢の遺体は、当分の間放置されたままだった。
主審から藤訊蛊を受け取ると、方源は心神を探り、今や十七戦十七勝、無敗の戦績を確かめた。
何と言っても、ここは第五内城の演武区。二转の蛊師が圧倒的に多く、方源の三转の修為が有利に働いていた。加えて全力以赴蛊を有し、初戦の数回を除けば、残りの試合は数合で勝敗が決まっていた。
これらの勝利が方源に膨大な元石をもたらした。
演武場での勝利は、相手の蛊を奪い取れるだけでなく、場から元石の褒賞も得られる。観客が多ければ多いほど、褒賞は増える。
「李然、ここに五万元石ある。後でごまかされぬよう、公衆の面前で渡しておく」
方源は衆人の見守る中、山と積んだ元石を取り出した。
李然が人ごみから進み出、羨望の眼差しを浴びながら、笑みを浮かべて元石を受け取った。
「方正、君は本当に誠実な男だ。先に八万、今五万、合わせて十三万もらった。恩に着るよ」
彼は軽く拱手し、そう言うと去っていった。
人々(ひとびと)は再び騒然となった。
「この方正、前回は八万、今度は五万、一体どこにそんな大金があるんだ?」疑問に思う者がいた。
「驚くことではない。こいつはここ三週間、演武場で連勝を重ねてきた。全力以赴蛊の名に惹かれて観客も大勢集まっている。戦い一つで少なくとも数千の元石を得ているのだ。数試合もすれば万単位の元石だ」と答える者の声には悔しさが滲んでいた。
「それだけじゃない。こいつは冷酷非道で、ほぼ毎試合相手を殺している。無傷で帰れる者はまずいない。だから毎回二、三匹(に、さんびき)の蛊を奪い、売ればさらに金になる」冷ややかな口調で暴露する者が、方源の暴虐を明かした。
「この方正は度が過ぎる。我々(われわれ)の屍を踏み台に前進しているのだ」憤慨する者がいた。
「魔道の蛊師同士ではないか。共食いする必要がどこにある? はあ…」嘆息混じりの声も漏れた。
「しかし改めて言えば、方正にも長所はある。李然に二十万元石を渡すと約束し、本当に渡している。正直、自分が彼の立場だったら…」
この発言で、人ごみは一気に静まり返った。
直ちに反論の声が上がる:
「二十万全額を渡したわけではあるまい。全額渡してからそう言うんだな」
方源の去り際の背中を見ながら、人ごみの中で冷やかに笑う者がいた:「こいつの良い日々(ひび)も終わりだ。五日後には、李好が無理矢理挑戦する日だ」
「李好?あの男、第四内城に昇格したんじゃなかったのか?」
「あと一歩だ。ふん、この好い芝居を楽しみにしているぞ!」
「へへ、こいつは本当に天狗だ。李好に存分懲らしめてもらおう」
ザーザー……
空窍の中で、潮が満ち引き、淡銀色の真元の海面が、波の花を次々(つぎつぎ)と立てている。
鋼筋蛊が海中を泳ぎ回り、淡銀色の真元を絶え間なく吸収しながら、黒い幽かな光を放っている。
鋼筋蛊の形は蚯蚓のようで、全身墨色一色だが、表面は蚯蚓のように柔らかくはなく、強靭で油照りのする甲殻に覆われている。
その放つ幽光は、空窍を透して、直接方源の体の隅々(すみずみ)まで照らし出す。
幽光の作用で、方源の全身の肉筋は淡い墨色に染まり、より一層強靭で剛強になった。
丸半日が経って、ようやく方源は鋼筋蛊の催動を止めた。全身汗だくで、鼻息は荒く、少し目眩がしていた。
鋼筋蛊を使う感覚は快いものではない。痺れ、疼き、痛み、痒みといった感覚が次々(つぎつぎ)と神経を襲い、蛊師の忍耐力を極限まで試す。
普通の蛊師なら、鋼筋蛊を完成させるのに少なくとも半年はかかる。
だが方源の計画では、その期間を一ヶ月に凝縮している。
つまり彼は毎日、常人の六倍も長く鋼筋蛊を使い続けることになる。これは意志と忍耐力への苛烈な試練だ。
「一瞬一瞬を大切に、修練に励まねばならぬ!実力を一日も早く高めるのだ!」
「元石が必要だ。演武場が最速の稼ぎ場だ。だが一度でも負ければ、全力以赴蛊を奪われる。紫荊令牌で阻止できるかもしれないが、代償として他の面で大きな犠牲を払わねばなるまい!」
「負けるわけにはいかない!今の俺は疾走する軍馬のようだ。実力が飛躍的に伸びている。しかし一度敗れれば、大きな転落だ。上昇の勢いは頭を殴られるように止まるだろう」
「商家城は単なる新たな出発点に過ぎない。ここで転落してなるものか?この世では必ず蛊仙となり、七转、八转、九转へと突き進み、頂点に登り、前世で見えなかった風景を見渡すのだ。伝えでは、九转の先には永遠の生を保つ至高の境があるという。長生は容易だが、永生は未だ誰も成し得ていない」
「一つの生命にとって、最高の境は永生であり、最大の欲望は永生だ。富などとるに足らぬ収集癖に過ぎない。男女の情など原始の欲望に過ぎぬ。名声など他人の吐く腐臭を放つ屁のような言葉だ!」
「富、美しい女性、名声、地位を追い求める者は、全く目先しか見えない。地球では仕方がない。誰もが必ず死ぬのだから、こうしたもの(もの)を追い求めるしかない。そうでなければ人生が面白くないからだ。しかしこの世界では、霊気が満ち溢れ、永生の可能性がある。なぜ追い求めないのか?」
「永生のためなら、富も美しい女性も名声も地位も、利用し尽くし、捨て去ることもできる!永生のためなら、恐怖は私を阻めない。突き進むのみだ!永生のためなら、怠惰は私を阻めない。一瞬も怠ることはない!永生のためなら、痛みは私を阻めない。神魔も私を阻めない。天地すらも私を阻めない!」
このように考えると、方源の漆黒の瞳に、殷紅の魔炎が燃え上がっているかのようだった。
休息時間が終わるや否や、彼は躊躇なく再び鋼筋蛊を催動した。
黒い幽光が体の隅々(すみずみ)を照らし、肌膚を透かして射し出した。
静寂の密室で、彼の顔は冷酷の極みに達し、鋼鉄で鋳造された彫刻のごとく、頑固一徹の強硬さを放っていた。
どんな痺れや疼き、痛みや痒みも、心の湖に浮かぶ小さな波紋に過ぎない。
他人が耐えられないからとて、方源が耐えられないわけがない!
もし偏執が魔であるなら、方源は魔中の魔だ。
何度死のうとも、彼の意志は決して変わらない。挫折が多ければ多いほど、それらは薪となり、彼の心の中の野望の魔炎をますます盛んに燃やし立てるのだ。
……
ドゴォーン!
巨大な轟音が演武場に響き渡った。
土石が舞い上がり、衝撃波が渦巻く。相手は致命の一撃を辛うじて避けたが、衝撃波に吹き飛ばされ、十数歩も後退した。
煙りが散り、この一撃の原因が姿を現した。
それは巨大な蝦蟇だった!
その巨体は猛獣を凌ぎ、膨らんだ両眼は石臼のようだ。全身は青灰色で、大きな腹、強靭な四肢、皮膚には青緑色の苔が生え、岩が嵌め込まれている。
最も目を引くのは、その背中だ。
背中は高く盛り上がり、まるで小さな山を背負っているかのよう!
この山は本物そっくりで、堅い岩ばかり。高さは一丈半(約4.5m)。幾重にも積み重なり、刃物で削ったような岩肌には、苔や草が生い茂り、二、三本(に、さんぼん)の若木も生えている。
これは三转の蛊、背山蝦蟇である。重厚でどっしりとしており、最も得意とする技は高く跳び上がり、泰山压卵の如く落ちてくることだ。
さきほど演じた十八番の技で、演武場全体が地震に襲われたかのように揺れ、周囲の観客は足場を失い、東に倒れ西に傾いた。
「こ、こんな攻撃は強すぎる!」
「威勢がすごい。見ているだけで心臓が飛び出そうだ」
「背山蝦蟇は要塞そのものだ。攻防一体で、唯一の欠点は速度が遅いことだが、その主人が見事に穴を埋めた!」
人々(ひとびと)が騒ぎ立ち、視線はまず背山蝦蟇に集まり、やがて揃って別の蛊師へ移った。
その蛊師は花柄の袍を着て、痩身で端整な顔立ちをしている。
男でありながら白粉と口紅を付け、演武場の反対側に立って、長く綺麗な爪を整えていた。
彼の名は李好。三转の修為を持ち、戦闘経験が豊富で、特に力の道の蛊師を相手にするのを得意とする。
「お前ごときが、俺に挑むつもりか?ふふ、時間の無駄だから、さっさと降参しろよ」李好は爪を眺めながら、相手を一瞥もせずに言った。
「嫌な野郎め!俺を舐めるな!命懸けでかかってやる!」相手も演武場で名の通った者だ。公衆の面前で侮辱され、顔を歪め、歯を食いしばり、李好に襲いかかった。
李好は静かに、猛進してくる相手を見つめ、口元に冷笑が浮かんだ:「まだ懲りないのか?教訓が足りないようだな。ならば、もう一度あの特別な味を味わわせてやろう」
移形蛊!
李好の両目が異彩を放ち、背山蝦蟇を凝視した。
息を一つ吸う間に、彼は瞬く間にその場から消え、背山蝦蟇の位置に現れた。
同時に、背山蝦蟇が彼の元いた位置に現れる。
移形蛊によって、彼と背山蝦蟇は位置を交換したのだ。
相手は李好目指して突進していたが、一瞬にして眼前に背山蝦蟇が現れた。
ドッ!
背山蝦蟇が跳び上がり、山が横飛びする如く、相手を軽々(かるがる)と吹き飛ばした。
戦いは衆人の予想通りの結末で決着した!
「背山蝦蟇に移形蛊を組み合わせる戦術は、まさに無敵だ」
「その通りだ。移形蛊は背山蝦蟇だけでなく、相手の位置も置換できる。これで背山蝦蟇の移動不足という弱点が完全に補われる」
「この勝ちで李好は二十九戦無敗だ。あと一勝すれば第四内城へ昇格する」
「早く昇格してほしい。こいつはもう第五内城で手に負えない」
「次の相手は誰だ?おや、なんと伝説の蛊をまぐれ当たりした、例幸運児か」