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蛊真人  作者: 魏臣栋
青茅山
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第二十八節: 無本商売

「なぜめる必要ひつようがある?」学堂家老がくどうかろうまゆわらった。ゆび方源ほうげん指差しながらつづけた。「あの完全かんぜん局面きょくめん掌握しょうあくしている。くび左右さゆうだけをねらい、後頭部こうとうぶ攻撃こうげきしないのは致命傷ちめいしょうけるためだ」


護衛頭領ごえいとうりょうひたいあせかべて進言しんげんした:「家老様かろうさま、あの横暴おうぼうさは学風がくふう悪影響あくえいきょうを――」


「フン、おまえたち自身じしん尊厳そんげんきずつけられたとでもおもうのか?」学堂家老がくどうかろう不愉快ふゆかいそうに舌打したうちし、やいばのような眼光がんこう護衛ごえいたちをにらけた。「この小僧こぞう無視むしされたと?」


護衛ごえいたちが一斉いっせいあたまれ「けっして!」とこえそろえた。


喧嘩けんかわるいってのか? 人命じんめいさえさねば、戦意せんいきたえる良薬りょうやくとなる!」家老かろうこえこおりのようにつめたくひびいた。「いままでのとどけに喧嘩けんかがなかったとでもうのか? 毎年まいとし後半こうはんになればちからおぼれた若造わかぞうあばまわっていた。そのときはなぜめなかった?」


例年れいねんいさかいは一対一いったいいちおおく、今回こんかいほどの規模きぼは――ですが、方源ほうげんのやりかたあきらかにやりすぎです!」護衛頭領ごえいとうりょうこたえた。


「いや、ちがう」学堂家老がくどうかろうくびる。「おまえたちが阻止そしできぬからだ。半年後はんとしごには蠱師こし凡人ぼんじんえた戦闘力せんとうりょくる。ちりほどの身分みぶんものなに阻止そしできよう? いま方源ほうげんめようとするのは、やつ未熟みじゅくだとあなどり、下僕しもべ尊厳そんげんきずつけられたとかんじたからか? おぼえよ、かれらは古月こげつく――おまえたちのあるじだ!」


家老かろうこえ雷鳴らいめいのようにとどろいた。

古月こげつたぬもの何様なにさまのつもりだ? 忠義ちゅうぎんで下僕しもべ地位ちいめぐんだだけ。本質ほんしつ依然いぜんとして奴隷どれい奴隷どれいあるじこと口出くちだしするとは!」


護衛ごえいたちが土下座どげざしてふるがった:

「そのような――!」

おそります!」


家老かろう護衛頭領ごえいとうりょう指差ゆびさし「不義理ふぎりつみ解任かいにんする」。つづいて「半月後はんつきご新頭領しんとうりょうめる」と宣言せんげん


護衛ごえいたちの貪欲どんよくひかった:

頭領とうりょうになればつき元石げんせきはん個増こまし!」

人上ひとうえになれる! あるじ以外いがいには平伏ひれふすぞ」

おれ頭領とうりょうになったら…」


家老かろうゆかり「まだ居座いすわっておるか! 騒動そうどうわったら掃除そうじしろ!」

護衛ごえいたちがあわてて退出たいしゅつ:「承知しょうちしました!」


階段かいだんりる途中とちゅうだれかがあしすべらせ「ドタン!」ところぶ。連鎖的れんさてき護衛ごえいたちがくずちたが、家老かろう威光いこうおそわらいをころした。


階下かいかにぶおとひびく。家老かろうわらいながらおもった『下僕しもべむちあめならすもの。頭領とうりょうなどいぬほね同然どうぜんよ』


護衛ごえいたちが欲望よくぼうかがやかせ退出たいしゅつするなか家老かろうまどから門前もんぜんながめた。地面じめんにはあたらしく十数人じゅうすうにん生徒せいとたおれていた。


三人さんにん少女しょうじょかべ背中せなかふるえていた。

「き、ないで!」

本気ほんき月刃げつじんはなつわよ!」


方源ほうげんわらった:「学規がくき蠱虫こちゅう使つかえば除籍じょせきだ。覚悟かくごはあるか?」

少女しょうじょたちのひかりえた瞬間しゅんかん方源ほうげん二人ふたり後頸部こうけいぶつんざいた。


のこりの少女しょうじょくずれ「おねがい…ゆるして!」と懇願こんがんする。

方源ほうげんかげのようにおおかぶさり「元石げんせきいっだ」とつめたくはなった。

少女しょうじょ財布さいふさかさまにり「すべてあげる!」とよっした。


方源ほうげん無表情むひょうじょう右手みぎてばし、人差ひとさゆび親指おやゆび少女しょうじょから元石げんせきいっつまった。

少女しょうじょ全身ぜんしんふるわせながら、その蒼白そうはくほそ指先ゆびさきつめのようにかんじていた。


最初さいしょった通り(どおり)、いっだけだ」方源ほうげんが淡々(たんたん)とげる。「ってよろしい」

少女しょうじょ呆然ぼうぜんすわんだままうごけず、恐怖きょうふあしえていた。


学堂家老がくどうかろうくびる。かれ観察目的かんさつもくてきひとつは、生徒せいとたちの戦闘適性せんとうてきせい見極みきわめることだった。この少女しょうじょ丙等へいとう資質ししつでもこころよわさから戦場せんじょう不向ふむきと判断はんだんされた。


「しかし方源ほうげんは…」家老かろうあごでながらほそめた。戦闘せんとうさいくわ節度せつどわきまえるさま興味きょうみおぼえていた。いっというせんえなかったことが評価ひょうかのポイントだった。


最終組さいしゅうぐみ五人ごにん到着とうちゃくなかには双子ふたごおとうと方正ほうせい姿すがたもあった。

兄貴あにきなんてことを! 家老かろうあやまらないと除籍じょせきだぞ!」

方源ほうげん薄笑うすわらいする:「もっともな意見いけん)だ」


方正ほうせい安堵あんどいきいた途端とたんあにつづけた:「一人ひとりいっだ」

「え!? おれはらうのか?」

いとしきおとうとよ、こばんでもかまわん」方源ほうげんたおれた生徒せいとたちを指差ゆびさす。「ただしあのさまになるがね」


周囲しゅういから非難ひなんく:

肉親にくしんにも容赦ようしゃない!」

くるってる…!」


てっこないんだ。ながものにはかれろ。いまはらって切りけよう」

「そうだな。いっくらい我慢がまんして、あと親分おやぶんにチクってやれば逆襲ぎゃくしゅうできるぜ!」


先例せんれいまえ、のこりの少年しょうねんたちはくやしげな表情ひょうじょう元石げんせきした。「て」方源ほうげんかれらをめる。


方源ほうげん約束やくそくやぶか!?」少年しょうねんたちが緊張きんちょう硬直こうちょくする。


方源ほうげん地面じめんころがる生徒せいとたちを見下みおろし「おれみずからポケットをあさるとでもおもったか?」とつめたくはなった。


少年しょうねんたちは赤面せきめんしつつ躊躇ちゅうちょした。方源ほうげんほそめ、つめたいひかりまたたくと、五人ごにん背筋せすじ寒気さむけおぼえた。


「わ、かったよ…」

手伝てつだってやるよ…」


方源ほうげん威圧いあつくっして、少年しょうねんたちはたおれたものふところから元石げんせきあつした。


57ごじゅうしちめい生徒せいとから1いっこずつげた結果けっか方源ほうげんには56ごじゅうろっこが。すでっていた20にじゅっこ(10じゅっこ竹酒ちくしゅ購入こうにゅう)と補助金ほじょきん合算がっさんすると、総額そうがく79ななじゅうきゅうこ元石げんせきとなった。


強請ゆすりほどもうかる商売しょうばいはないな」方源ほうげんふところふくらんだふくろたしかめながら大手おおてってった。


呆然ぼうぜん見送みおく方正ほうせいのこし、護衛ごえいたちがあわただしくうごまわる。

いそげ!」

若旦那わかだんなたちを手当てあてしろ!」

治療蠱師ちりょうこしはまだか!?」


頭領とうりょうけ、護衛ごえいたちはやる気満々(まんまん)で奔走ほんそうしていた。





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