少年たちは驚愕と怒りで顔を歪めた。
「なにっ! 聞き間違いか?」
「方源、頭おかしくなったのか? 学堂の玄関先で恐喝だって!?」
「金に困り果てたか? 誰のツテで俺らを狙う気だ!」
「失せろ! 丙等の分際で俺様の道を塞ぐな! 蹴飛ばすぞ…ぐふっ!」
方源が突然動いた。
右掌を鋭く振り下ろし、罵倒していた少年の首筋を直撃。少年は目を白黒させて崩れ落ちた。
「マジでやったぞ!?」 群衆が爆発し、少年たちが後退する。
「古月北巨が気絶した! どうすんだ!?」 恐怖に震える声。
「こっちは人数で圧倒だ! 一斉に殴りかかれ!」 怒号が響く。
だが彼らが動くより早く、方源が人混みに突っ込んだ。
掌打で首を叩き折り、蹴りを股間に食らわせ――
「ギャーッ!」 甲高い悲鳴が響き、少年が地面を転がった。
虎が羊の群れに飛び込む如き展開――五百年の戦闘経験を有する方源に、青二才が敵うはずもない。
瞬く間に十数人が昏倒し、呻き声だけが残された。
「何が起きた!?」 遅れて到着した古月漠北が絶叫した。
「あいつ…元石を巻き上げようとして…!」 腹を押さえる少年が吠える。方源は無表情でその腹を蹴り上げた。「がふっ!」 少年がエビのように体を丸める。
「さあ、一人一個の元石を出せ。さもなくば――」 方源が冷たい声で迫る。
「ふざけるな! 乙等の俺が丙等に負けるか!」 漠北が怒り狂って突進する。
方源は軽く身をかわし、左指で漠北の鎖骨下を突く。
「ぐぁ…!」 漠北が黒目を翻して倒れる。
「ひいい…!」 残りの少年たちが凍えつく。
方源の攻撃ポイント――首、脇腹、股間――は全て(すべて)人体の急所だった。授業で習った「基本の戦闘」を彼らが軽視していた結果だ。
「渡すか? それとも…」 方源が再び迫る。
少年たちは歯を食いしばって襲いかかったが、掌と蹴りの嵐に次々(つぎつぎ)と倒されていった。
「ひ、酷すぎる…!」
「死んでないよね!?」
参加しなかった少女たちが震え上がり、方源が視線を向けると金切り声を上げた:「や、やる! 渡すから!」
方源は数個の元石を受け取ると少女たちを解放した。
彼女らはよろめきながら学堂を出ると、続々(ぞくぞく)と新たな生徒が門前に集まり始めた。
「マジかよ!何が起きてんだ!?」
「古月漠北が倒れてる…!?」古月赤城が目を丸くする。
方源が要求を突き付けると、少年たちは怒号を上げて襲い掛かり――瞬く間に敗残兵のようになった。
「家老様、このまま見て見ぬ振りですか? 死者が出たら…」
「方源めが! 我々(われわれ)の眼前で同輩を脅すとは! 命令一下で捕縛します!」
騒動は最初から護衛の目に留まっていた。しかし規律上、彼らに処罰権はなく、家老への報告を待つしかなかった。
楼閣から状況を眺める家老の目が輝いた。「戦闘の才があるようだな」
方源が単身で生徒たちを圧倒する様は、まるで戦場の猛将の如し。月刃試験での不審が氷解した。
「生まれながらの戦闘蠱師よ。惜しむらくは丙等の資質…」家老が嘆息を零す。
側近の護衛が焦燥した面持ちで訴える:「この茶番を放置してよろしいのですか? 悪影響が懸念されますが」