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蛊真人  作者: 魏臣栋
魔子出山
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第六十三節:売れ残っている

三百十(さんびゃくとお)?」


()いたる蛊师(こし)(しめ)した数字(すうじ)()て、方源(ほうげん)(かす)かに(まゆ)をひそめた。


酒虫(しゅちゅう)相場(そうば)五百八十元石(ごひゃくはちじゅうげんせき)書虫(しょちゅう)(とき)により六百元石(ろっぴゃくげんせき)()えることもある。黒白豕蛊(こくびゃくしこ)六百元石(ろっぴゃくげんせき)だ。しかしこれらは全て(すべて)一転(いってん)珍稀蛊(ちんきこ)であり、数量(すうりょう)(すく)ないため高値(たかね)()く。


普通(ふつう)一転蛊(いってんこ)二百五十元石(にひゃくごじゅうげんせき)前後(ぜんご)


生機葉(せいきよう)のような消耗類(しょうもうるい)一転蛊(いってんこ)一枚(いちまい)五十元石(ごじゅうげんせき)だ。


骨槍蛊(こつそうこ)売値(うりね)三百十元石(さんびゃくとおげんせき)見積(みつ)もるのは、まずまずの値段(ねだん)()える。幽玄商会(ゆうげんしょうかい)()いたる蛊师(こし)不当(ふとう)値切(ねぎ)ってはいない。


だがそれでもなお、方源(ほうげん)出来(でき)(かぎ)値段(ねだん)()()げようとする。


値切(ねぎ)()わすことに(かん)しては、(かれ)前世(ぜんせ)(すで)熟練(じゅくれん)(いき)(たっ)していた。


二言三言(にごんさんごん)()わすうちに、()いたる蛊师(こし)仕方(しかた)なく、値段(ねだん)をさらに十元石(じゅうげんせき)()げた。


骨槍蛊(こつそうこ)一匹(いっぴき)につき三百二十元石(さんびゃくにじゅうげんせき)


「よし、この()取引(とりひき)しよう」方源(ほうげん)()()げると、空窺(くうこう)から(ひかり)(つぶ)(よもぎ)のように()()した。


五十六匹(ごじゅうろっぴき)骨槍蛊(こつそうこ)()いたる蛊师(こし)眼前(がんぜん)浮遊(ふゆう)し、()(じん)(すこ)(おどろ)かせた。


「こ、こんなに…」(かれ)瞬時(しゅんじ)後悔(こうかい)(ねん)(いだ)いた。一匹(いっぴき)()たり十元石(じゅうげんせき)値上(ねあ)げしたのだから、追加(ついか)六百元石(ろっぴゃくげんせき)(ちか)支払(しはら)わねばならぬ。


(じつ)方源(ほうげん)白骨山(はっこつざん)二百匹(にひゃっぴき)もの骨槍蛊(こつそうこ)入手(にゅうしゅ)していた。


しかし旅路(たびじ)(えさ)()らず、大半(たいはん)()んでしまい、(のこ)りはこれだけだった。


五十六匹(ごじゅうろっぴき)で一万七千九百二十元石(いちまんななせんきゅうひゃくにじゅうげんせき)。さっそく元石(げんせき)()って()させます」()いたる蛊师(こし)骨槍蛊(こつそうこ)(ふところ)(おさ)めた。


(あわ)てるな。この()()てくれ」方源(ほうげん)(ほほ)えみながら螺旋骨槍蛊(らせんこつそうこ)召喚(しょうかん)した。


「これは二転蛊(にてんこ)か?どうやら骨槍蛊(こつそうこ)の…」()いたる蛊师(こし)(かお)驚異(きょうい)(いろ)()かんだ。


(しか)り。骨槍蛊(こつそうこ)合錬(ごうれん)成功(せいこう)すれば螺旋骨槍蛊(らせんこつそうこ)()る。穿孔(せんこう)(きょう)()ち、威力(いりょく)は中々(なかなか)だ」方源(ほうげん)適時(てきじ)説明(せつめい)する。


()いたる蛊师(こし)(ため)()ちをし、(たし)かに方源(ほうげん)()(とお)りだと(みと)め、七百八十元石(ななひゃくはちじゅうげんせき)()()けた。


数度(すうど)駆引(かけひき)(すえ)方源(ほうげん)価格(かかく)一匹(いっぴき)八百元石(はっぴゃくげんせき)まで()()げた。


螺旋骨槍蛊(らせんこつそうこ)()()れが()(とど)いており、空窺(くうこう)(なか)二十匹(にじっぴき)保持(ほじ)していた。


これで一万六千元石(いちまんろくせんげんせき)売上(うりあげ)となる。


(つぎ)はこの()七千元石(ななせんげんせき)だ」方源(ほうげん)()()()し、骨棘蛊(こっきょくこ)を取り(とりだ)(つづ)けて説明(せつめい)した。


()いたる蛊师(こし)骨棘蛊(こっきょくこ)(つま)()るも(ため)すのを躊躇(ちゅうちょ)い、苦笑(にがわら)いを()かべて()った:「三転蛊(さんてんこ)とはいえ、(てき)(せん)()せば(おのれ)八百(はっぴゃく)穿(うが)つ。骨棘(こっきょく)皮肉(ひにく)(つらぬ)けば、(いた)みは(ばん)(およ)ぶ。使(つか)うには治療蛊(ちりょうこ)必須(ひっす)七千(ななせん)高過(たかす)ぎる。六千五百元石(ろくせんごひゃくげんせき)なら適正価格(てきせいかかく)というものだ…」


値切(ねぎ)()いは()めよう。六千七百元石(ろくせんななひゃくげんせき)まで()げてやる」方源(ほうげん)()った。(さき)二度(にど)駆引(かけひき)方源(ほうげん)手強(てごわ)さを(さと)った()いたる蛊师(こし)(ひたい)(あせ)(ぬぐ)い、()()いしばった:「取引(とりひき)成立(せいりつ)だ」


総計(そうけい)四万六百二十元石(よんまんろっぴゃくにじゅうげんせき)だな」方源(ほうげん)目玉(めだま)がくるりと(うご)き、正確(せいかく)数字(すうじ)(くち)にした。


()いたる蛊师(こし)突然(とつぜん)(こし)()り、方源(ほうげん)(ふか)一礼(いちれい)した:「貴客様(きかくさま)、お()(いただ)蛊虫(こちゅう)どもは小老(しょうろう)(みせ)(あず)かって以来(いらい)()たこともございません。しかもそれらが(たが)いに連関(れんかん)し、段階的(だんかいてき)進化(しんか)する様子(ようす)一脈相承(いちみゃくそうしょう)(ごと)し。お(うかが)いしたい、これらは(おな)伝承(でんしょう)(ぞく)するものなのでしょうか」


方源(ほうげん)(うなず)いた:「()()がある(もの)なら()かるはずだ。(しか)り、(えん)あって(わたし)(ひと)つの伝承(でんしょう)()ぎ、これらの()()たのだ」


()いたる蛊师(こし)顔色(かおいろ)驟然(しゅうぜん)(あか)るくなった:「それなら貴客(きかく)(さま)()には、(かなら)ずや相応(そうおう)炼蛊秘方(れんこひほう)がおありでしょう。お(うん)()さは(じつ)(うらや)ましい(かぎ)りです。その秘方(ひほう)弊店(へいてん)へお()(いただ)けませんでしょうか?」


方源(ほうげん)(まゆ)をひそめた。


(もの)(まれ)なるほど(とうと)し。骨槍蛊(こつそうこ)螺旋骨槍蛊(らせんこつそうこ)骨棘蛊(こっきょくこ)は、(かれ)()つだけでなく百家(ひゃっか)()つ。()っても(かま)わない。


しかし完全(かんぜん)合錬秘方(ごうれんひほう)肉囊秘閣(にくのうひかく)から()たもので、天下(てんか)にこれ(ひと)つ。こうしたものは(かる)々(がる)しく手放(てばな)せるものではない。


六転(ろくてん)未満(いか)蛊虫(こちゅう)秘方(ひほう)なら、値段(ねだん)()けられるものだ。だが、お(まえ)(いく)()せる?」方源(ほうげん)一考(いっこう)した(あと)()(かえ)した。


()さえ適切(てきせつ)なら、この秘方(ひほう)()れないこともない。


(かれ)には(かね)必要(ひつよう)だった。


骨槍蛊(こつそうこ)などを()って()四万元石(よんまんげんせき)など、(かれ)計画(けいかく)には(はる)かに()りない。


()いたる蛊师(こし)(ゆび)二本(にほん)()てた:「二十万元石(にじゅうまんげんせき)!」


方源(ほうげん)()った蛊虫(こちゅう)はあれだけの(かず)でも、たった四万(よんまん)無形(むけい)秘方(ひほう)二十万(にじゅうまん)もの価値(かち)があるとは。



(さかな)(あた)えるより(さかな)()(かた)(おし)えよ。


(さかな)()方法(ほうほう)は、(さかな)そのものより(はる)かに価値(かち)がある。


(さかな)()(すべ)()てば、(さかな)()きることなく()()るからだ。


幽玄商会(ゆうげんしょうかい)にとって、秘伝(ひでん)()()れれば骨槍蛊(こつそうこ)などを()()なく(しょう)(さん)できる。


それは当店独占(とうてんどくせん)交易品目(こうえきひんもく)となり、白骨秘伝(はっこつひでん)()(たか)()くのも当然(とうぜん)だ。


だが方源(ほうげん)冷笑(れいしょう)一声(いっせい)()らした:「二十万(にじゅうまん)?よくもまあこの値段(ねだん)提示(ていじ)できたものだ」


()いたる蛊师(こし)(かお)(あか)らんだ。(たし)かに()(ひく)すぎた。(かれ)即座(そくざ)()(なお)した:「三十万(さんじゅうまん)!」


方源(ほうげん)(くび)()り、無言(むごん)のまま()()ろうとする。


()いたる蛊师(こし)がぐっと()()いしばった:「五十万(ごじゅうまん)!」


「これならまあ()れる。六十八万(ろくじゅうはちまん)()ってやろう」方源(ほうげん)は悠々(ゆうゆう)と(ちゃ)(すす)った。


()いたる蛊师(こし)(にが)表情(ひょうじょう)()かべた:「五十万(ごじゅうまん)小老(しょうろう)裁量権限(さいりょうけんげん)限界(げんかい)です。貴客様(きかくさま)、これだけの骨槍蛊(こつそうこ)()って(いただ)いた以上(いじょう)弊店(へいてん)秘方大師(ひほうだいし)(やと)って秘方(ひほう)逆推(ぎゃくすい)することもできます。五十万(ごじゅうまん)本当(ほんとう)妥当(だとう)なお値段(ねだん)だと…」


方源(ほうげん)(くび)()り、強硬(きょうこう)態度(たいど)()せた:「()()にあるこの秘伝(ひでん)天下(てんか)唯一(ゆいいつ)のものだ。最低(さいてい)六十五万(ろくじゅうごまん)、でなければ()らぬ。商家城(しょうかじょう)(みせ)はお(まえ)(ところ)だけではあるまい?」


貴客様(きかくさま)、ご存知(ぞんじ)ないようですが、商家城(しょうかじょう)店舗(てんぽ)はどれも商家(しょうか)若様(わかさま)支配下(しはいか)にあります。当店(とうてん)()れぬものは他店(たてん)でも()れません。もし秘伝(ひでん)をお()りにならなければ、これらの蛊虫(こちゅう)()れなくなるでしょう」()いたる蛊师(こし)拱手(きょうしゅ)して(れい)をし、(やわ)らかい口調(くちょう)(なか)(つよ)さを()めた(おど)しを()めた。


「ほう?なら(ため)してみよう」方源(ほうげん)蛊虫(こちゅう)を全て(すべて)回収(かいしゅう)し、()()がると即座(そくざ)()ろうとした。


貴客様(きかくさま)善意(ぜんい)助言(じょげん)です。どうかお(とど)まりください、お()りください」()いたる蛊师(こし)最後(さいご)()()めをした。


方源(ほうげん)(かれ)無視(むし)し、(あし)()()して部屋(へや)()た。白凝冰(はくぎょうひょう)仕方(しかた)なく(あと)()った。


貴客様(きかくさま)(かなら)ずや(もど)って()られますよ」()いたる蛊师(こし)冷笑(れいしょう)()かべ、方源(ほうげん)たちが幽玄商会(ゆうげんしょうかい)()るのを見送(みおく)った。


二人(ふたり)()った途端(とたん)()いたる蛊师(こし)密室(みっしつ)()かい、真元(しんげん)()()てて一匹(いっぴき)()(はな)った。


その()一筋(ひとすじ)(ひかり)()し、密室(みっしつ)(かべ)()かった銅鏡(どうきょう)()()まれた。


鏡面(きょうめん)波紋(はもん)(ひろ)がり、(つぎ)瞬間(しゅんかん)(わか)(もの)面差(おもざ)しが(うつ)()された。


下僕(げぼく)若頭(わかがしら)御目(おめ)にかかります」(わか)蛊师(こし)姿(すがた)()るや、()いたる蛊师(こし)(あわ)てて(ひざまず)()()した。


用件(ようけん)は?」その若者(わかもの)こそ商家(しょうか)若頭(わかがしら)一人(ひとり)商睚眦(しょうがいし)である。(とし)十八(じゅうはち)青春(せいしゅん)()(さか)りだが、(なが)酒色(しゅしょく)(おぼ)れ、(かお)()(おとろ)え、肌色(はだいろ)青白(あおじろ)く、両目(りょうめ)には生気(せいき)がなかった。


()いたる蛊师(こし)方源(ほうげん)(けん)報告(ほうこく)した。


商睚眦(しょうがいし)(ひとみ)に、突如(とつじょ)(くる)おしい(かげ)りの(ひかり)(はし)った。


素晴(すば)らしい!(てん)(みち)()しと(いえど)も、まさに(われ)(ため)(ひら)けり!若頭(わかがしら)()(まも)(さく)(なや)んでいたところへ、(てん)(おお)きな(おく)(もの)(とど)けてくれたのだ!この伝承(でんしょう)(かなら)()()れよ。この大功績(だいこうせき)今年(ことし)査定(さてい)()()れる!」


下僕(げぼく)全力(ぜんりょく)()くします。しかし小老(しょうろう)管轄(かんかつ)するのは幽玄商会(ゆうげんしょうかい)のみで、他店(たてん)は…」


「それは(わたし)手配(てはい)する。フン、あの二人(ふたり)蛊虫(こちゅう)()ろうと(おも)えば、(かなら)(われ)(こうべ)()れることになる!」商睚眦(しょうがいし)見下(みくだ)したように(はな)(わら)った。


八宝商店(はっぽうしょうてん)にて:


「お二人様(ふたりさま)(もう)(わけ)ありません。(うえ)からのお(たっ)しで、蛊虫(こちゅう)をお()りになるなら幽玄商会(ゆうげんしょうかい)へと…」


元芳楼(げんぽうろう)にて:


「おや、お二人様(ふたりさま)ですか。秘伝(ひでん)をお()りいただけるなら、(なん)でも相談(そうだん)()りますが…」


不倒閣(ふとうかく)にて:


「お客様(きゃくさま)商売(しょうばい)(みち)(きゃく)()()すわけがありません。ですが…こればかりはどうしようもなくて」


三軒続(さんけんつづ)けて(まわ)ったが、方源(ほうげん)一匹(いっぴき)蛊虫(こちゅう)()れなかった。


「ははっ、(きみ)出涸(でが)らしを()(とき)があるんだな。どうやらあの()いぼれの()う通り、ここは(かれ)らの縄張(なわば)りらしい」白凝冰(はくぎょうひょう)方源(ほうげん)(あざけ)るのを()しまなかった。


(みせ)(ことわ)られ(つづ)ける方源(ほうげん)だが、顔色(かおいろ)は淡々(たんたん)としていた:「商家(しょうか)族長(ぞくちょう)商燕飛(しょうえんひ)には()(おお)いが、少族長(しょうぞくちょう)()は一つ(ひとつ)、若様(わかさま)(せき)(じゅう)のみ。毎年(まいとし)族長(ぞくちょう)査定(さてい)し、少族長(しょうぞくちょう)(えら)び、若様(わかさま)十人(じゅうにん)(なか)最下位(さいかい)(はず)し、()いた(せき)(ほか)()()める」


白凝冰(はくぎょうひょう)脳裏(のうり)閃光(せんこう)(はし)った:「つまり、(うら)()(まわ)した商家(しょうか)若様(わかさま)は、少族長(しょうぞくちょう)()(ねら)うか、若様(わかさま)()(まも)るかのどちらか。でなければ、ここまで(おお)がかりな()()たない」


方源(ほうげん)(てのひら)(かる)(たた)きながら(わら)った:「ここは商家第三内城(しょうかだいさんないじょう)武力行使(ぶりょくこうし)(きん)じられている。たとえ百家(ひゃっか)追手(おって)であろうと、ここで()()すことはできぬ。商家(しょうか)若様(わかさま)ともなれば、なおさら制約(せいやく)(きび)しい。査定(さてい)目前(もくぜん)一挙一動(いっきょいちどう)()(もの)に虎視眈々(こしたんたん)と監視(かんし)されているのだ。(あせ)ることはない。まずは宿(やど)()ろう」


商家城(しょうかじょう)()れば、蛊虫(こちゅう)(えさ)(こま)ることはない。


せいぜい骨槍蛊(こつそうこ)数日(すうじつ)余計(よけい)(やしな)うまでだ。(だれ)最後(さいご)まで()(こた)えられるか、()ものだな!


その(ころ)第一内城(だいいちないじょう)では——


「すべて調査(ちょうさ)()んだか?」商燕飛(しょうえんひ)窓辺(まどべ)()ち、庭園(ていえん)景色(けしき)(なが)めながら(たず)ねた。


「その(むすめ)(たし)かに族長(ぞくちょう)(じつ)(むすめ)でございます。(たましい)にも異常(いじょう)なく、()(うつ)りを()けた形跡(けいせき)はありません。張家(ちょうか)一族(いちぞく)とも連絡(れんらく)を取り(とり)、身元(みもと)確認(かくにん)しました。ただ一点(いってん)奇妙(きみょう)なことが…彼女(かのじょ)商隊(しょうたい)(くわ)わって商量山(しょうりょうざん)()たとのことですが、同行(どうこう)(しゃ)(だれ)一人(ひとり)として()つからないのです」外姓(がいせい)家老(かろう)魏央(ぎおう)(あたま)()れて報告(ほうこく)した。


商燕飛(しょうえんひ)()いても言葉(ことば)(はっ)せず、(こころ)の中で(ふか)嘆息(たんそく)した:「(てん)よ、この()いを(つぐな)機会(きかい)(さず)けてくれて感謝(かんしゃ)する。すでに一人(ひとり)女性(じょせい)裏切(うらぎ)ってしまった。この(むすめ)だけは(けっ)して(ふたた)裏切(うらぎ)ったりはせぬ!」


……


商心慈(しょうしんじ)(つくえ)(まえ)(すわ)り、(ちゃ)からゆらゆら()()がる湯気(ゆげ)をぼんやりと()つめていた。(ひとみ)には生気(せいき)がなかった。


小蝶(しょうちょう)から、商燕飛(しょうえんひ)身分(みぶん)()らされたのだ。


まさか自分(じぶん)(ちち)商家(しょうか)族長(ぞくちょう)だなんて——南疆(なんきょう)全体(ぜんたい)(うご)かす権勢(けんせい)(てん)()(おとこ)だとは!


「なぜ母上(ははうえ)()いに()なかったのか?」


商心慈(しょうしんじ)(かしこ)く、すぐに商燕飛(しょうえんひ)(はは)自分(じぶん)()てた理由(りゆう)(さっ)しがついた。


だが(はは)最期(さいご)瞬間(しゅんかん)まで、その(おとこ)()()んでいた。


商心慈(しょうしんじ)(むね)には(かな)しみと(いきどお)り、そして(なに)よりも(むな)しさが渦巻(うずま)いていた。


突然(とつぜん)(あらわ)れた(ちち)に、どう()()えばよいのか()からなかった。


だが()げることはできない。(とびら)(そと)からノックの(おと)がして、「慈児(じじ)(はい)ってもよいか?」と(こえ)がした。


小蝶(しょうちょう)瞬時(しゅんじ)緊張(きんちょう)した。


商燕飛(しょうえんひ)だった。









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