表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
蛊真人  作者: 魏臣栋
魔子出山
259/547

第六十節:父娘

商燕飛(しょうえんひ)思念(しねん)(はし)るや、漆黒(しっこく)(なか)瞬時(しゅんじ)()えた。


(ふたた)(あらわ)れた(とき)(かれ)商家外城(しょうかがいじょう)只中(ただなか)()っていた。


喧噪(けんそう)(またた)()(みみ)()()み、街路(がいろ)両側(りょうがわ)には様々(さまざま)な露店(ろてん)(なら)んでいた。


周囲(しゅうい)通行人(つうこうにん)は、()のように(あか)(ほのお)(ひらめ)くと、虚空(こくう)から漆黒(しっこく)(ころも)血染(ちぞ)めの長髪(ちょうはつ)(なび)かせた美丈夫(びじょうふ)(あらわ)れたのを目撃(もくげき)した。


「うわっ!びっくりした!」


何者(なにもの)だ?商家城(しょうかじょう)勝手(かって)蛊虫(こちゅう)使(つか)うとは?」


怪訝(けげん)そうな視線(しせん)(あつ)まる(なか)数人(すうにん)商燕飛(しょうえんひ)気付(きづ)いたが、即座(そくざ)には確信(かくしん)できずにいた。


商燕飛(しょうえんひ)はそれらの視線(しせん)()(かい)さず、()(つな)がりを感知(かんち)して(するど)眼差(まなざ)しを商心慈(しょうしんじ)へと()けた。


二人(ふたり)女性(じょせい)露店(ろてん)(まえ)(あし)()めていた。


「お嬢様(じょうさま)、この(かんざし)素敵(すてき)ですわ!」小蝶(しょうちょう)露店(ろてん)から翡翠(ひすい)(かんざし)()()し、商心慈(しょうしんじ)(つや)やかな黒髪(くろかみ)()ててみた。


商心慈(しょうしんじ)はかすかに微笑(ほほえ)んだ。方源(ほうげん)との(わか)以来(いらい)彼女(かのじょ)(こころ)(しず)んでいた。


小蝶(しょうちょう)(しろ)繁華(はんか)光景(こうけい)魅了(みりょう)され、(ふたた)活気(かっき)づいていた。


突然(とつぜん)商心慈(しょうしんじ)(むね)(さわ)いだ。()り返ると──


最初(さいしょ)一瞬(いっしゅん)商燕飛(しょうえんひ)存在(そんざい)(かん)()った。


人混(ひとご)みの(なか)漆黒(しっこく)(ころも)()のように(あか)長髪(ちょうはつ)商燕飛(しょうえんひ)は、鶏群(けいぐん)()(つる)(ごと)異彩(いさい)(はな)っていた。


しかし商心慈(しょうしんじ)(こころ)(とら)えたのは、その容姿(ようし)ではなく、()(つな)がりから()()がる神秘(しんぱい)的な(きずな)(さけ)びだった。


(ひと)(こと)()わさず、一目(ひとめ)()瞬間(しゅんかん)彼女(かのじょ)はこの中年(ちゅうねん)(おとこ)正体(しょうたい)(さと)った。


──これが(わたし)(ちち)であると。


(ちち)…この言葉(ことば)商心慈(しょうしんじ)にとって、(なん)神秘(しんぴ)(てき)(とお)く、(かな)しみに()ち、(つら)さが()もり()もったものだったか。


(おさな)き日々(ひび)、幾度(いくど)(はは)(ちち)のことを(たず)ねた。だが(はは)(くち)()ざした。(いま)(つい)(ちち)対面(たいめん)した。


母上(ははうえ)臨終(りんじゅう)(さい)商家城(しょうかじょう)()いと…そういう(わけ)だったのか!」


彼女(かのじょ)合点(がてん)し、(なみだ)(せき)()ったように(あふ)()た。


商燕飛(しょうえんひ)商心慈(しょうしんじ)(かお)()るや、彼女(かのじょ)(はは)(おも)()し、その身分(みぶん)(さと)った。


()ている、(じつ)()ている!


この()眉間(みけん)()かぶ(やさ)しさは、彼女(かのじょ)瓜二(うりふた)つだ。


商燕飛(しょうえんひ)(むね)突如(とつじょ)()め付け(つけ)られるようだった。(またた)()(かれ)視界(しかい)にかつての彼女(かのじょ)面影(おもかげ)がかすんで()かんだ。


あれは春雨(はるさめ)(けむ)午後(ごご)蓮池(はすいけ)(ほとり)(やなぎ)(かぜ)(なび)いていた。商家(しょうか)(わか)後継(こうけい)(しゃ)だった商燕飛(しょうえんひ)は、()屋根(やね)(した)雨宿(あまやど)りする張家(ちょうか)少女(しょうじょ)邂逅(かいこう)した。


才子(さいし)佳人(かじん)一目(ひとめ)(こい)()ち、(こころ)()()()い、(ひそ)かに(ちぎ)りを()わした…


しかし()(つね)として、江山(こうざん)美人(びじん)(うお)(くま)(てのひら)(ごと)く、両立(りょうりつ)(がた)い。


(わか)商燕飛(しょうえんひ)胸中(きょうちゅう)には、(おとこ)天性(てんせい)たる強大(きょうだい)権勢(けんせい)への野望(やぼう)(ほのお)()やしていた。


野望(やぼう)柔情(じゅうじょう)か、責務(せきむ)逍遥(しょうよう)か、強敵(きょうてき)(おど)しか佳人(かじん)との(ちか)いか——


(かれ)最終的(さいしゅうてき)前者(ぜんしゃ)(えら)び、後者(こうしゃ)()てた。


(ゆえ)に、(かれ)兄弟姉妹(きょうだいしまい)()(やぶ)商家(しょうか)族長(ぞくちょう)()()いた。


(ゆえ)に、五転蛊师(ごてんこし)となり美妾(びしょう)(かこ)まれ子女(しじょ)(めぐ)まれた。


(ゆえ)に、(ふたた)彼女(かのじょ)(たず)ねることは(かな)わぬ——張家(ちょうか)商家(しょうか)宿敵(しゅくてき)間柄(あいだがら)ゆえに。


世間(せけん)()()けば、(おのれ)意志(いし)ならず。


族長(ぞくちょう)()(かれ)()()げると(とも)に、(しば)()けている。


為政者(いせいしゃ)一挙手一投足(いっきょしゅいっとうそく)風雲(ふううん)(うご)かし、世間(せけん)注視(ちゅうし)(あつ)める。商家(しょうか)族長(ぞくちょう)たる(かれ)が、どうして私情(しじょう)(なが)家族(かぞく)への影響(えいきょう)(かえり)みられようか?


長年(ながねん)(みずか)らを説得(せっとく)し、悔恨(かいこん)不安(ふあん)奥底(おくそこ)(ふう)()め、大義(たいぎ)責任(せきにん)麻痺(まひ)させようとした。


すでに(わす)れたと(おも)()んでいたが、商心慈(しょうしんじ)姿(すがた)()にした途端(とたん)(こころ)最深部(さいしんぶ)仕舞(しま)()んだ記憶(きおく)(ぬく)もりが春雨(はるさめ)のように()(そそ)ぎ、(またた)()胸中(きょうちゅう)(つつ)()んだ。


(いま)(かれ)(こころ)(はげ)しく()さぶられ、()(くる)っていた!


()(みず)よりも()い。その親情(しんじょう)大河(たいが)となり、悔恨(かいこん)(さら)(うみ)()して瞬時(しゅんじ)(かれ)()()んだ。


(かれ)(かろ)一歩(いっぽ)()()すと、一瞬(いっしゅん)にして()え、次の瞬間(しゅんかん)商心慈(しょうしんじ)()(まえ)(あらわ)れた。


「きゃっ!」小蝶(しょうちょう)悲鳴(ひめい)()げ、周囲(しゅうい)(もの)驚愕(きょうがく)眼差(まなざ)しを()けた。


しかし(とう)()(しゃ)である二人(ふたり)(まった)()づかない。


「お(まえ)()(まえ)は?」商燕飛(しょうえんひ)(こえ)(しぼ)る。磁石(じしゃく)のような(こえ)に、()温情(おんじょう)(にじ)んでいた。


商心慈(しょうしんじ)(こた)えなかった。


彼女(かのじょ)美眸(びぼう)から(なみだ)(たま)のように(ころ)()ちる。一歩(いっぽ)後退(こうたい)し、(くちびる)をきつく(むす)んで商燕飛(しょうえんひ)をじっと()つめ(かえ)した。その眼差(まなざ)しには強情(ごうじょう)(ひかり)宿(やど)っていた…


この(おとこ)こそが、(はは)(こころ)(きず)つけた張本人(ちょうほんにん)だ。


この(おとこ)こそが、(わたし)(おさな)(ころ)から差別(さべつ)(いじ)めに(さら)した元凶(げんきゅう)だ。


この(おとこ)こそが、(はは)(たましい)生涯(しょうがい)(うば)(つづ)け、臨終(りんじゅう)瞬間(しゅんかん)まで(おも)()がれさせた。


この(おとこ)こそが、(わたし)の…(ちち)なのだ。


この瞬間(しゅんかん)彼女(かのじょ)感情(かんじょう)極限(きょくげん)まで(たか)ぶり、渦巻(うずま)感情(かんじょう)(あらし)精神(せいしん)()()んだ。


彼女(かのじょ)()(うしな)った。


「お嬢様(じょうさま)!」商燕飛(しょうえんひ)気迫(きはく)()され(かた)まっていた小蝶(しょうちょう)(われ)(かえ)り、金切声(かなきりごえ)()げた。


しかし商燕飛(しょうえんひ)一足先(ひとあしさき)商心慈(しょうしんじ)(うで)(かか)()んでいた。


(しろ)()(そく)公然(こうぜん)(やぶ)蛊虫(こちゅう)使(つか)うとは、牢屋(ろうや)()りがお()きか?」衛兵隊(えいへいたい)異変(いへん)察知(さっち)し、罵声(ばせい)()びせながら()()けた。


「あっ、族長(ぞくちょう)(さま)!?」商燕飛(しょうえんひ)姿(すがた)()るや、(かれ)らは顔色(かおいろ)(うしな)い、一斉(いっせい)平伏(ひれふ)した。


(まち)全体(ぜんたい)騒然(そうぜん)となる。


「あ、あなた(さま)はまさか商家(しょうか)の…!?」小蝶(しょうちょう)(した)(まわ)らず、言葉(ことば)(つづ)かない。


商燕飛(しょうえんひ)小蝶(しょうちょう)(うで)(つか)むと、血炎(けつえん)一閃(いっせん)三人(さんにん)姿(すがた)瞬時(しゅんじ)()えた。


……


(れつ)(ととの)え、一人(ひとり)ずつ順番(じゅんばん)(すす)め!商家城(しょうかじょう)(はい)るには元石(げんせき)十枚(じゅうまい)(おさ)めよ!城内(じょうない)では蛊虫(こちゅう)濫用(らんよう)することを厳禁(げんきん)違反者(いはんしゃ)最低(さいてい)七日間(なのかかん)牢屋(ろうや)()きだ!」城門(じょうもん)(がい)衛兵(えいへい)(たか)らかに宣告(せんこく)した。


城門(じょうもん)(かべ)には数多(あまた)手配書(てはいしょ)()られていた。(ふる)びて()ばんだ手配書(てはいしょ)(した)()かれ、(はし)だけを(のぞ)かせるものもあれば、真新(まあたら)しい手配書(てはいしょ)無造作(むぞうさ)(うえ)(かさ)ねられていた。


方源(ほうげん)白凝冰(はくぎょうひょう)人波(ひとなみ)()じって城門(じょうもん)(ちか)づき、(あん)(じょう)白家寨(はくかさい)発行(はっこう)自身(じしん)らを()手配書(てはいしょ)発見(はっけん)した。


白家寨(はくかさい)め…」それを()方源(ほうげん)はひそかに冷笑(れいしょう)した。


「お二人様(ふたりさま)()まれ」城門衛(じょうもんえ)方源(ほうげん)たちの(まえ)(あゆ)()る。


二人(ふたり)とも普通(ふつう)麻服(あさふく)をまとい、白凝冰(はくぎょうひょう)麦藁帽子(むぎわらぼうし)(ふか)くかぶった。


二十枚(にじゅうまい)元石(げんせき)だ」方源(ほうげん)()()いて金袋(かねぶくろ)()()した。


衛兵(えいへい)中身(なかみ)確認(かくにん)すると、即座(そくざ)(みち)()けた。


(かれ)真横(まよこ)城壁(じょうへき)には、(かお)()(くら)べしやすいように数多(あまた)手配書(てはいしょ)()られていたが、衛兵(えいへい)終始(しゅうし)一瞥(いちべつ)もせず。


それらの手配書(てはいしょ)など、表向(おもてむ)きの体裁(ていさい)()ぎない。


商家城(しょうかじょう)利益(りえき)最優先(さいゆうせん)元石(げんせき)(はら)える(もの)(だれ)でも入城(にゅうじょう)(ゆる)される。


毎日(まいにち)大勢(おおぜい)魔道蛊师(まどうこし)衛兵(えいへい)()(まえ)平然(へいぜん)(とお)()ける。これが暗黙(あんもく)了解(りょうかい)だ。


魔道蛊师(まどうこし)(うば)()った戦利品(せんりひん)商家城(しょうかじょう)()(さば)かれ、(かれ)らが蛊虫(こちゅう)補給(ほきゅう)する(さい)にも、商家城(しょうかじょう)最良(さいりょう)選択肢(せんたくし)となるわけだ。



()ってみれば、商家城(しょうかじょう)繁栄(はんえい)は、魔道蛊师(まどうこし)巨大(きょだい)支柱(しちゅう)一本(いっぽん)としているのだ。


無論(むろん)魔道蛊师(まどうこし)大手(おおて)()って堂々(どうどう)と入城(にゅうじょう)できるわけではない。商家城(しょうかじょう)正道(せいどう)(もん)であり、多少(たしょう)体面(たいめん)考慮(こうりょ)せねばならないからだ。


二人(ふたり)巨門(きょもん)(くぐ)()けると、眼前(がんぜん)(きわ)めて(ひろ)大路(おおじ)(ひろ)がった。


街路(がいろ)には人波(ひとなみ)がうごめき、両側(りょうがわ)には(たか)()()ぐな緑樹(りょくじゅ)()えられている。陽光(ようこう)(そそ)ぎ、緑陰(りょくいん)(ひろ)がる(なか)各種(かくしゅ)麺類屋(めんるいや)焼餅(やきもち)()り、豆腐脳(とうふのう)()り、野菜(やさい)()り、装飾品(そうしょくひん)()りの行商人(ぎょうしょうにん)たちが木陰(こかげ)(ちぢ)こまり、多種多様(たしゅたよう)露店(ろてん)(なら)べていた。


しばらく(すす)むと、街路(がいろ)両側(りょうがわ)には高層(こうそう)竹楼(ちくろう)黄土(おうど)土壁(つちかべ)(いえ)白壁(しらかべ)瓦葺(かわらぶ)きの煉瓦(れんが)(づく)りの建物(たてもの)(あらわ)(はじ)めた。


商店(しょうてん)酒楼(しゅろう)宿屋(やどや)鍛冶屋(かじや)が次々(つぎつぎ)と視界(しかい)(はい)ってくる。


旦那(だんな)さん、宿泊(しゅくはく)されませんか?(あた)りは破格(はかく)値段(ねだん)で、一晩(ひとばん)たったの(はん)元石(げんせき)ですよ」


中年(ちゅうねん)(おんな)笑顔(えがお)()かべて(ちか)づいてきた。


方源(ほうげん)彼女(かのじょ)(にら)()け、無言(むごん)()っていった。


その醜怪(しゅうかい)容貌(ようぼう)(おんな)(きも)()やし、(あきら)めて(うし)ろの白凝冰(はくぎょうひょう)()()けた。


旦那(だんな)さん、(たび)道中(どうちゅう)大変(たいへん)でしょう?うちの宿(やど)(やす)(うえ)に、(よる)は'お(いもうと)さん'も()きますよ。遊郭街(ゆうかくがい)なんて()ったら、散財(さんざい)しますわ。凡人(ぼんじん)商人(しょうにん)命懸(いのちが)けで(かせ)いだ()(あせ)結晶(けっしょう)を、あんな(ところ)無駄(むだ)(づか)いするなんて勿体(もったい)ない!


うちの'(いもうと)さん'たちは(やす)くて()品揃(しなぞろ)え。(じゅく)した(もも)もあれば、()()ての(つぼみ)もあるわ。(この)みはどっち?」


(おんな)(こえ)(ひそ)めて(ふく)(わら)いを()かべた。方源(ほうげん)たちの質素(しっそ)()なりのため、彼女(かのじょ)二人(ふたり)凡人(ぼんじん)商人(しょうにん)誤認(ごにん)していた。


白凝冰(はくぎょうひょう)彼女(かのじょ)言葉(ことば)(ひたい)青筋(あおすじ)()かべた。


(しっ)せえ」()ややかな冷笑(れいしょう)(ひと)()らす。その(こえ)(ほね)(ずい)まで(こお)りつくようだった。


中年(ちゅうねん)(おんな)顔色(かおいろ)一変(いっぺん)し、(からだ)硬直(こうちょく)してその()(くぎ)づけになった。


(めす)かよ」


「ハハハ!(ちょう)(あね)さん、今度(こんど)見間違(みまちが)えたなあ…」


周囲(しゅうい)客引(きゃくひ)仲間(なかま)哄笑(こうしょう)する(なか)(おんな)苦笑(にがわら)いを()かべるしかなかった。この旅路(たびじ)白凝冰(はくぎょうひょう)変装(へんそう)(じゅつ)格段(かくだん)上達(じょうたつ)し、ベテランの客引(きゃくひ)きすら(だま)(いき)(たっ)していたのだ。


四季酒楼(しきしゅろう)


半刻(はんこく)()方源(ほうげん)五層(ごそう)()ての高楼(こうろう)(まえ)(あし)()めた。


白壁(しらかべ)黒瓦(くろがわら)(しゅ)(もん)巨柱(きょちゅう)(さけ)(かお)りが(ただよ)い、料理(りょうり)(かんば)しい(かお)りが(あた)りに(あふ)れる。商家城(しょうかじょう)名高(なだか)酒楼(しゅろう)である。


「お二人様(ふたりさま)、どうぞ(なか)へ!」給仕(きゅうじ)機転(きてん)()かせ、方源(ほうげん)たちを()るや()()(まね)()れた。


半日(はんにち)(ある)(つづ)け、階段(かいだん)(のぼ)ってきた二人(ふたり)空腹(くうふく)だったため、素直(すなお)(みせ)(はい)った。


「お客様(きゃくさま)、こちらへどうぞ」給仕(きゅうじ)先導(せんどう)する。


方源(ほうげん)(かす)かに(まゆ)をひそめた:「下座(したざ)(さわ)がしすぎる。上座(かみざ)()く」


給仕(きゅうじ)(こま)った表情(ひょうじょう)()かべた:「(じつ)上座(かみざ)には個室(こしつ)がございますが…蛊师(こし)(さま)専用(せんよう)でして」


方源(ほうげん)(はな)(わら)い、雪銀色(ゆきぎんいろ)真元(しんげん)一筋(ひとすじ)(あらわ)した。


給仕(きゅうじ)(あわ)てて(ふか)(きゅう)(きゅう)した:「()(たま)なしと(ぞん)じ、何卒(なにとぞ)上階(じょうかい)へ!」


階段(かいだん)()(ぐち)給仕(きゅうじ)退(しりぞ)き、()わって(わか)(うつく)しい少女(しょうじょ)(あま)(こえ)(ちか)づいた:「お二人様(ふたりさま)何階(なんかい)へお()しですか?当酒楼(とうしゅろう)五階(ごかい)までございまして——


一階(いっかい)凡人(ぼんじん)(よう)


二階(にかい)一転蛊师(いってんこし)(さま)料金(りょうきん)二割引(にわりびき)


三階(さんかい)二転蛊师(にてんこし)(さま)二割引(にわりびき)


四階(よんかい)三転蛊师(さんてんこし)(さま)半額(はんがく)


五階(ごかい)四転蛊师(よんてんこし)(さま)無料(むりょう))です」


方源(ほうげん)(かる)(わら)った:「四階(よんかい)で」


少女(しょうじょ)表情(ひょうじょう)一層(いっそう)(うやうや)しくなり、万福(まんぷく)(れい)をしつつ()った:「(おそ)()りますが、お二方(ふたかた)真元(しんげん)拝見(はいけん)(ねが)えますでしょうか」






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ