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蛊真人  作者: 魏臣栋
魔子出山
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第四十三節:暗黙の駆け引き

不審(ふしん)だと?」商心慈(しょうしんじ)()睫毛(まつげ)(した)(ひとみ)(うつ)ろわせた。


張柱(ちょうちゅう)(うなず)き、(つつし)(ぶか)()べた。「(じつ)匪猴山(ひこうざん)(はい)った()から、(かれ)らを(うたが)っておりました。お嬢様(じょうさま)百五十(ひゃくごじゅう)(まい)元石(げんせき)褒賞(ほうしょう)されようとした(とき)(かれ)らは(かす)かにも()しそうにしなかった。これは(ふか)(かんが)えさせられる(てん)です」


一呼吸(いっこきゅう)()いて(つづ)けた。「幾日(いくひ)(ひそ)かに観察(かんさつ)する(なか)で、(さら)なる疑点(ぎてん)発見(はっけん)しました。まず、(かれ)らは(まわ)りの家僕(かぼく)(ほとん)()わらず、()(とお)った人間(にんげん)のごとく目立(めだ)たないよう(つと)めている。(つぎ)に、(いく)つもの家族(かぞく)からの勧誘(かんゆう)を、たとえ条件(じょうけん)如何(いか)優遇(ゆうぐう)されようと(こば)(つづ)けています」


「お嬢様(じょうさま)、あの(よる)(かれ)()商隊(しょうたい)(すく)われた姿(すがた)(おぼ)えておいでですか? 黒土(くろつち)がかほどの怪力(かいりき)()(ぬし)なら、なぜ重傷(じゅうしょう)()うまでに(いた)ったのか? そして(なに)より」(かれ)(こえ)(ひと)(そう)(ひく)(しず)んだ。「観察(かんさつ)する(かぎ)り、(かれ)相棒(あいぼう)たる白雲(はくうん)は、男装(だんそう)してはいるものの、(じつ)女子(おなご)にございます!」


陣営(じんえい)(ない)静寂(せいじゃく)(つつ)まれていた。


しばらくして、商心慈(しょうしんじ)がようやく微笑(ほほえ)みながら()った。「(ちから)(つよ)くても、(かなら)ずしも()てるとは(かぎ)りませんよね?双拳(そうけん)四手(ししゅ)(かな)わず、黒土(くろつち)(きず)()うのも当然(とうぜん)ですわ。(じつ)貴方(あなた)指摘(してき)した疑点(ぎてん)(わたし)も全て(すべて)気付(きづ)いていましたよ」


張柱(ちょうちゅう)(おどろ)きの(いろ)(かす)かにも()せなかった。(かれ)商心慈(しょうしんじ)()()っており、彼女(かのじょ)聡明(そうめい)さを理解(りかい)していた。


「お嬢様(じょうさま)…」


商心慈(しょうしんじ)(まばた)きし、優美(ゆうび)(かお)一筋(ひとすじ)茶目(ちゃめ)()()かべた:「張柱(ちょうちゅう)叔父(おじ)さん、何日(なんにち)()()んでいたでしょう?(わたし)がずっと処置(しょち)しなかったのを()て、今日(きょう)注意(ちゅうい)()たのね」


張柱(ちょうちゅう)(わら)()した:「お嬢様(じょうさま)(なん)もかもお見通(みとお)しですな。ですが何故(なぜ)、あの二人(ふたり)(そば)(はな)っておくのですか?」


(かれ)らに悪意(あくい)はないと(わたし)(おも)うからよ」商心慈(しょうしんじ)(ひとみ)知恵(ちえ)(ひかり)(はし)った。「匪猴山(ひこうざん)(うたが)われていた。当時(とうじ)(だま)っていれば疑点(ぎてん)露見(ろけん)しなかった。それなのになぜ(すす)()(わたし)(たす)けたのか?」


「それは…」


「もし悪意(あくい)(いだ)いているなら、傍観(ぼうかん)するか、百五十枚(ひゃくごじゅうまい)元石(げんせき)を受け(うけと)っていたでしょう。だが(かれ)らはそうしなかった。黒土(くろつち)恩返(おんがえ)しを(くち)にした(とき)、その表情(ひょうじょう)誠実(せいじつ)だった。本心(ほんしん)からこの(おん)(かえ)したいのだと、(わたし)本気(ほんき)でそう(おも)う」


張柱(ちょうちゅう)言葉(ことば)()まった:「しかし(かれ)らは間違(まちが)いなく単純(たんじゅん)(もの)ではない。(かなら)秘密(ひみつ)(かか)えている」


商心慈(しょうしんじ)(はな)のような笑顔(えがお)()かせた:「(だれ)にだって秘密(ひみつ)はあるわ。(わたし)にも秘密(ひみつ)がある。秘密(ひみつ)があるからといって悪人(あくにん)とは(かぎ)らないでしょう?この()(あか)るいもの。(おん)()(むく)いる(こころ)があれば、どんな悪党(あくとう)でも(わる)さには限界(げんかい)があるのでは?」


「そうは()っても、やはり(かれ)らには(なに)目的(もくてき)がある()がしてならぬ。陰謀(いんぼう)(たくら)んでいるのかもしれん…()て、()かった!きっと匪徒(ひと)内通者(ないつうしゃ)だ。商隊(しょうたい)(ひそ)み込み、魔道(まどう)(もの)(とも)略奪(りゃくだつ)(はたら)うつもりだ!」


「それも(ことわり)()わないわ」商心慈(しょうしんじ)(くび)()った。「内通者(ないつうしゃ)なら尚更(なおさら)(かく)れるはず。匪猴山(ひこうざん)目立(めだ)行動(こうどう)など()必要(ひつよう)が?あれほど(おお)くの()(ぞく)勧誘(かんゆう)したのだから、(ほか)(たい)(くわ)われば(さら)(かく)(やす)かったでしょうに。なぜわざわざ()張家(ちょうか)(とど)まるの?きっと(なに)()(がた)事情(じじょう)があるのだと思う。(わたし)たちが(たす)けたから、恩返(おんがえ)しをしているのよ。(いま)(かれ)らが正体(しょうたい)(かく)そうとしているなら、もう(ひと)(たび)手助(てだす)けすべきでは…」


張柱(ちょうちゅう)(くび)()(なげ)いた:「お嬢様(じょうさま)、どうしていつも他人(たにん)のことばかり(かんが)えるのですか?(ひと)(ふせ)(こころ)不可欠(ふかけつ)だと()っておいてください…」


張柱(ちょうちゅう)叔父(おじ)さん」商心慈(しょうしんじ)(しず)むように()った。「もし本当(ほんとう)(おお)がかりな略奪(りゃくだつ)()ったら、貨物(かもつ)(まも)るためだけに(たたか)わないでください。品物(しなもの)()くなっても(かま)いません、(たい)したことではないのです。(はは)遺言(ゆいごん)は、信物(しんぶつ)(たずさ)えて商家城(しょうかじょう)(だれ)かを(たず)ねること。でも(はは)はこうも()っていました――もしその(ひと)(わたし)たちを受け()れてくれなければ、この財貨(ざいか)()きていきなさいと」


(はは)(きゅう)()ってしまい、(わたし)(たず)ねるべき(ひと)(だれ)なのか、はっきり説明(せつめい)できませんでした。でも(おも)うのです、お(かね)品物(しなもの)所詮(しょせん)()(そと)(もの)だと。母上(ははうえ)はもう(わたし)のそばにいません、張柱(ちょうちゅう)叔父(おじ)さんと小蝶(こちょう)(のこ)された唯一(ゆいいつ)家族(かぞく)です。貴方(あなた)たちに(なに)()こるのを()たくありません」


「お嬢様(じょうさま)、どうかそんなことをおっしゃらないで…」張柱(ちょうちゅう)()(ふち)(あか)くなり、(こえ)()まらせた。


「さあさあご(らん)あれ、本物(ほんもの)沈家(しんか)(きぬ)!」


各種(かくしゅ)美酒(びしゅ)皆様(みなさま)試飲(しいん)をお()ちしております」


一気(いっき)金光(こんこう)()、たったの五十枚(ごじゅうまい)元石(げんせき)!」


……


()()りの(こえ)が次々(つぎつぎ)と()()がり、(ひと)(なが)れが渦巻(うずま)く。この臨時(りんじ)設営(せつえい)(いち)喧噪(けんそう)(つつ)まれていた。


商隊(しょうたい)到着(とうちゃく)する(たび)に、山寨(さんさい)(まつ)りの()(むか)えたかのようになる。


商隊(しょうたい)販売(はんばい)するだけでなく、金家寨(きんかさい)(もの)品物(しなもの)()りに()る。


最も(おお)いのは大量(たいりょう)黄金(おうごん)彫刻(ちょうこく)器具(きぐ)だ。


(なべ)(わん)柄杓(ひしゃく)(ぼん)、それに人物(じんぶつ)動物(どうぶつ)(ぞう)(たく)みな彫刻(ちょうこく)()()きとし、(あか)(みどり)黄色(きいろ)(あお)宝石(ほうせき)真珠(しんじゅ)(はい)すことで、より一層(いっそう)華麗(かれい)精巧(せいこう)(おもむき)()えている。



黄金山(おうごんざん)天恵(てんけい)()()により、黄金(おうごん)がそこら(じゅう)(ころ)がっている。


ここで()らす(もの)は、たとえぼろをまとった家僕(かぼく)でも、(きん)指輪(ゆびわ)首飾(くびかざ)りを(すこ)しばかり()()けている。


(おお)くの少女(しょうじょ)たちは、(かんざし)耳飾(みみかざ)り、腕輪(うでわ)(きん)きらきらと(かがや)かせ、(にしき)のように(はな)やかだ。三々五々(さんさんごご)()れをなし、小鳥(ことり)のようにさえずりながら(ある)(さま)独特(どくとく)風情(ふぜい)(かも)している。


金家(きんか)蛊师(こし)(いた)っては、()()ける(もの)青茅山(せいぼうざん)大差(たいさ)ない。(うえ)(みじか)上着(うわぎ)(した)(なが)ズボン、(こし)には帯紐(おびひも)(あし)には脚絆(きゃはん)履物(はきもの)(あお)竹皮(たけかわ)草鞋(わらじ)だ。


ただし、脚絆(きゃはん)金糸(きんいと)()ぜた麻紐(あさひも)使(つか)(もの)もいれば、(おび)上着(うわぎ)袖口(そでぐち)、ズボンの(すそ)金縁(きんぶち)(ほどこ)した(もの)もいる。これが黄金山(おうごんざん)ならではの特色(とくしょく)()えよう。



南疆(なんきょう)家族(かぞく)における蛊师(こし)服装(ふくそう)は、(みな)大同小異(だいどうしょうい)である。魔道(まどう)蛊师(こし)となれば、様々(さまざま)な奇抜(きばつ)服装(ふくそう)()(まと)っている。


方源(ほうげん)白凝冰(はくぎょうひょう)人波(ひとなみ)(くぐ)()けながら、(すで)に三、四人(よにん)金家寨(きんかさい)(もの)()つけ、牛乳(ぎゅうにゅう)羊乳(ようにゅう)()()んだ。


空腔(くうこう)(なか)骨槍蛊(こつそうこ)(やしな)うため、方源(ほうげん)全力(ぜんりょく)()くした。しかしそれでも、骨槍蛊(こつそうこ)三分(さんぶん)()餓死(がし)してしまった。


「そんなに(おお)っぴらに()()んで、正体(しょうたい)露見(ろけん)するのを(おそ)れないのか?」白凝冰(はくぎょうひょう)(うたが)わしそうに()うた。


偽装(ぎそう)(かなら)(あば)かれるものだ。(わたし)はどうでもよいが、お(まえ)(ほう)(あな)だらけだ」方源(ほうげん)白凝冰(はくぎょうひょう)一瞥(いちべつ)して()った。



白凝冰(はくぎょうひょう)即座(そくざ)()ややかな鼻息(はないき)()らした。


彼女(かのじょ)(みずか)らの弱点(じゃくてん)(なに)()かっていた――性別(せいべつ)だ。


当時(とうじ)(むら)老婆(ろうば)でさえ見抜(みぬ)けた。女性(じょせい)男性(だんせい)身体的(しんたいてき)特徴(とくちょう)(こと)なり、偽装(ぎそう)には特定(とくてい)蛊虫(こちゅう)不可欠(ふかけつ)だが、残念(ざんねん)ながら白凝冰(はくぎょうひょう)()っていなかった。


(ゆえ)に、ゆったりした(ふく)()麦藁帽子(むぎわらぼうし)(かぶ)り、(かお)(すす)()り、(むね)()いても、(とき)()つにつれ正体(しょうたい)露見(ろけん)するのは()けられなかった。


方源(ほうげん)(つづ)けて()った:「だから、(かく)(つづ)けるより、むしろ(みずか)(すこ)(あば)いた(ほう)が良い(よい)。相手(あいて)(おお)くを見抜(みぬ)かせ、状況(じょうきょう)掌中(しょうちゅう)にあると(おも)わせれば、(かれ)らは安心(あんしん)するだろう」


露見(ろけん)必然(ひつぜん)であり、(けっ)して(わる)いことではない。(かれ)らに(ちか)づくには正体(しょうたい)(あば)かねばならず、信頼(しんらい)()唯一(ゆいいつ)方法(ほうほう)だ。


方源(ほうげん)(みずか)()(うち)()かすことは不可能(ふかのう)だった。それは(かれ)らがこれまで(えん)じてきた役柄(やくがら)(まった)()わず、不自然(ふしぜん)すぎる。


相手(あいて)主導(しゅどう)して発見(はっけん)し、(さぐ)りを()れてきた(とき)(はじ)めて方源(ほうげん)はその(だん)()りて、自然(しぜん)(いく)つかを(あば)くことができた。


白凝冰(はくぎょうひょう)(さと)った:「つまり、わざと(かれ)らに気付(きづ)かれるのを()ち、それから対処(たいしょ)するつもりだったのか?」


「やっと(ひと)(たび)(かしこ)くなったな」


「ふん!」


しかし三日(みっか)()っても、方源(ほうげん)()(のぞ)反応(はんのう)(さぐ)りは一向(いっこう)()なかった。


白凝冰(はくぎょうひょう)(つい)方源(ほうげん)(あざけ)機会(きかい)()た:「どうやら貴方(あなた)にも計算(けいさん)(ちが)いがあるようね」


方源(ほうげん)(ひや)やかに(はな)()らし、(こころ)(かんが)えた:「張柱(ちょうちゅう)表情(ひょうじょう)挙動(きょどう)から(さっ)するに、とっくに(うたが)ってはいた。以前(いぜん)(さぐ)りを()れなかったのは、道中(どうちゅう)危険(きけん)()可能性(かのうせい)があったため、()(しの)んでいたのだろう。だが(いま)商隊(しょうたい)金家寨(きんかさい)(たよ)安定(あんてい)している。(さぐ)りはとっくに(はい)っていてもおかしくない。除非(よせ)ば…」


方源(ほうげん)(こころ)商心慈(しょうしんじ)(かお)()かんだ。


(じつ)(かしこ)(ひと)だ。(きも)(だま)()わっている。おそらく彼女(かのじょ)張柱(ちょうちゅう)()めたのだろう。(すこ)厄介(やっかい)だ。(かしこ)すぎるのも(なん)があるな」


方源(ほうげん)はため(いき)をついた。


商心慈(しょうしんじ)(やさ)しさや善良(ぜんりょう)さに、(すこ)(しょう)(じょ)聡明(そうめい)さを過小評価(かしょうひょうか)していたのだ。


商心慈(しょうしんじ)方源(ほうげん)賢人(けんじん)同士(どうし)暗黙(あんもく)了解(りょうかい)(むす)び、(たが)いに()っていながら()らぬ()りをしようとしていた。しかし方源(ほうげん)目的(もくてき)(こと)なり、この了解(りょうかい)(かえ)って障害(しょうがい)となっていた。


「そうであるなら、(みずか)(うご)くしかない」その(そう)(おも)(いた)り、方源(ほうげん)はため(いき)をつきながら、(みずか)商心慈(しょうしんじ)(たず)ねた。


(わたし)提携(ていけい)したいと?」天幕(てんまく)(なか)来意(らいい)(あき)らかにした方源(ほうげん)()て、商心慈(しょうしんじ)張柱(ちょうちゅう)怪訝(けげん)そうな表情(ひょうじょう)()かべた。


自分(じぶん)からは(さが)していなかった二人(ふたり)が、(ぎゃく)(みずか)(おとず)れてきたのだ。


これは(すこ)少女(しょうじょ)予想(よそう)(はず)れていた。


一方(いっぽう)張柱(ちょうちゅう)(こころ)の中で(おも)った:「ついに()()せる(とき)()たか?提携(ていけい)だと…ふん!」


(ちょう)嬢様(じょうさま)(くち)(おも)いのですが、(わたし)たちは元石(げんせき)必要(ひつよう)です。商売(しょうばい)(みち)については(すこ)心得(こころえ)があると自負(じふ)しております。貨物(かもつ)(ひと)(しな)()()れ、(かせ)いだ元石(げんせき)折半(せっぱん)するというのは如何(いかが)でしょうか?」方源(ほうげん)()をわずかに(かが)め、卑屈(ひくつ)にもならず尊大(そんだい)にもならぬ態度(たいど)()った。


元石(げんせき)()無一物(むいちもつ)で、(にわとり)()りて(たまご)()ませようと?随分(ずいぶん)自信過剰(じしんかじょう)だな!」張柱(ちょうちゅう)()(つめ)たい(ひかり)(はし)る。「どうして(かなら)(もう)けられると()える?(さら)に、どうして()張家(ちょうか)()()けると(おも)うのだ?」


商売(しょうばい)(もう)かる(とき)(そん)する(とき)もある。()たり(まえ)だが(かなら)(もう)かる(わけ)ではない。なぜ()してくれると(おも)うかと()われれば、(ちょう)嬢様(じょうさま)()(ひと)だからだろうと(こた)えるしかない。(かん)じたままを(もう)()げている。もし(かん)(ちが)いなら、この(はなし)()かったことにして(くだ)さい」方源(ほうげん)(わら)った。


片耳(かたみみ)()全身(ぜんしん)火傷(やけど)痕跡(こんせき)(のこ)(かれ)笑顔(えがお)(すこ)しばかり(おそ)ろしかった。


だが商心慈(しょうしんじ)(かれ)(ひとみ)()つめ、その(なか)()(しん)決断(けつだん)采配(さいはい)()るう(かがや)きを()いだした。その(かがや)きが、(かえ)って(みにく)さの(なか)異彩(いさい)(はな)魅力(みりょく)()かび()がらせていた。


(じつ)興味深(きょうみぶか)い。どうやら(かれ)も我々(われわれ)の疑念(ぎねん)気付(きづ)いているようだ。つまり、賢者(けんじゃ)同士(どうし)暗黙(あんもく)了解(りょうかい)(わたし)(むす)ぼうとしているのか?」商心慈(しょうしんじ)(ひとみ)()らめいた。


しばらくして、彼女(かのじょ)(わら)()した。


この異様(いよう)な「率直(そっちょく)さ」を(とも)った交流(こうりゅう)方法(ほうほう)が、彼女(かのじょ)()()れぬ安心感(あんしんかん)新鮮感(しんせんかん)(いだ)かせた。


黒土(くろつち)さんがいなければ、(わたし)貨物(かもつ)四分(よんぶん)(いち)(のこ)らなかったでしょう。匪猴山(ひこうざん)であの(さる)どもに(うば)われていたはず。そのお(かんが)えがあるなら、これらの貨物(かもつ)は全て(すべて)貴方(あなた)にお(まか)せしましょう」彼女(かのじょ)()った。


侍女(じじょ)小蝶(こちょう)同席(どうせき)していれば、間違(まちが)いなく(さわ)()てていただろう。


方源(ほうげん)表向(おもてむ)きは一瞬(いっしゅん)呆気(あっけ)にとられた様子(ようす)()せ、()(すこ)(かが)めて感謝(かんしゃ)(ひょう)した。


「お嬢様(じょうさま)?これは一体(いったい)…」方源(ほうげん)天幕(てんまく)()るのを()ち、張柱(ちょうちゅう)(つい)()()れずに(くち)(ひら)いた。


商心慈(しょうしんじ)はいたずらっぽく(まばた)きし、()(ども)のように()った:「面白(おもしろ)くない?さっき(かれ)()った言葉(ことば)()いてよ。商売(しょうばい)(はじ)まっていないのに、(はや)くも折半(せっぱん)しようだなんて。その口調(くちょう)、まるで(かなら)(もう)かると()()んでいるみたいに…」


「ふん、あの無骨者(ぶこつもの)にどれほどの(さい)があるというのか?」張柱(ちょうちゅう)(いや)しむように(はな)(わら)った。「商才(しょうさい)()ては、お嬢様(じょうさま)(みぎ)()(もの)がいるか?何年(なんねん)もの(あいだ)、お嬢様(じょうさま)家業(かぎょう)(ささ)え、立派(りっぱ)発展(はってん)させてきた姿(すがた)を、(ろう)()は目の()たりにしてきた。張家(ちょうか)()(じん)どもが(ねた)まなければ…」


「もう、()ぎたことを()っても仕方(しかた)がないわ。張柱(ちょうちゅう)叔父(おじ)さんが(わたし)(さい)(みと)めてくれるなら、(しん)じてほしいの。(たと)黒土(くろつち)さんが貨物(かもつ)をすっかり(うしな)っても、(わたし)はゼロから再出発(さいしゅっぱつ)できる。そうではありませんか?」


勿論(もちろん)だ!」張柱(ちょうちゅう)(はがね)()つように()()った。




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