三日後。
「身を低くして回避するのがフックへの対抗策だ。敵が攻撃してきたら素早くしゃがみ込み、反撃で股間や腹部を狙え。フックを恐れるな。最初からフックを使ってくる奴は脳味噌なしの衝動的な輩ばかりだ」
演武場で拳脚教官が説明しながら実演していた。木人傀儡が右拳を横殴りに振り回すと、教官は猛然としゃがんで回避。続けて傀儡の腹部をドンドンと殴打し、見事に倒した。
生徒たちは輪になって見学していたが、大半が退屈そうな表情で、全く乗り気ではなかった。
学堂では様々(さまざま)な授業が行われ、この時間は基礎格闘技を教えていた。汗だくになって拳を振るう作業は、カッコいい月刃攻撃と比べると地味極まりなく、少年たちの集中力は散漫気味だった。
「次の授業は月光蛊の実技試験だよ。最近の練習どう?」
「まあね。三発全部発射できるけど、全部当たることは少ない。二発は草人形に当たるかな」
「俺も似たようなもん。練習用に草人形買っちゃったよ」
……
少年たちはひそひそ話を交わし、心は既に次の授業に飛んでいた。試験に向けて課外で猛練習を重ねた彼らは、今や全員が闘志を燃やしているところだった。
生徒たちの噂話が教官の耳に入ると、拳脚教頭が振り返り怒鳴りつけた:「授業中に私語するな! 黙って見学しろ!」
二転蛊師である彼は筋肉隆々(きんにくりゅうりゅう)の上半身を露わにし、古銅色の肌に傷痕が刻まれていた。威嚇の一声で演武場全体を圧した。
場内が水を打ったように静まり返る中、教頭は続けた:「基礎拳脚は最重要だ。特に蛊師修行の初期において、他の何よりも重要なものだ。集中しろ!」
叱責した後、淡黄色の二メートル級木人傀儡を呼び寄せた。傀儡が青石の床をガシガシ踏み鳴らし襲い掛かると、教頭は腰を抱え込んで地面に押し倒し、馬乗りになって頭部を鉄拳の雨で粉砕した。
「接近戦で大柄な敵に遭遇しても恐れるな。相手の重心を崩すのが賢明な戦術だ」教頭は平然とした呼吸で解説した。「腰を抱え込み、骨盤を制御して押し倒せ。その後は躊躇なく連打を浴びせろ」
生徒たちは形だけ頷いたが、瞳の奥に不満そうな光を宿していた。教頭は内心で苦笑いした――毎年の新入生が華やかな技に惹かれるのは当然だった。
実戦で血と涙で得た教訓を伝える声が続く:
「……目線は敵の目ではなく肩を見ろ。拳や足を出す前に必ず肩が動く」
「……移動速度こそ命。攻撃速度じゃない」
「……距離を取るのが最良の防御」
「……足は弾力性を保て。瞬発力の要だ」
「……攻撃時は三角支持を維持。下半身が崩れたら逆に倒される」
しかし生徒たちの関心は既に月刃試験へ移り、再び私語が始まっていた。
ただ一人、方源だけが一言一句も漏らさず聞き続けていた。他の者が学んでいるのに対し、彼は復習していたのだ。その戦闘経験は拳脚教頭よりもはるかに豊富であったが、他者の講義を聴くことも修行上の確認となるのだった。
蛊師の戦闘様式は通常、近接戦と遠距離攻撃に分類される。
月刃攻撃は遠距離型だが厳密には中距離攻撃と言える。有効射程距離が十メートルしかないためだ。
近接型の例である拳脚教頭は、自身を強化する蛊を選択する。銅皮蛊の効果で古銅色の肌は防御力が倍増し、通常より多くの攻撃に耐えられる。
「月刃一発で一割の真元を消費する。一転蛊師が戦闘中に何回発射できる? ましてや初心者なら有効打を決められず、威嚇手段にしかならない」方源は周囲の同年代を冷たい目で見下ろし、嘲笑うように唇を歪めた。
基礎拳脚の授業が終わり、待ち焦がれた月刃審査が始まった。学堂家老が竹壁沿いに並んだ草人形を指差す:「今日は成果確認の日だ。五人一組で順番に来て、月刃を三回使え」
第一陣の五名が前へ出ると、空中に月刃が舞った。三巡後、九発しか草人形に命中せず、家老は不満そうに首を振る:「練習不足だ。特にお前とお前はもっと鍛えろ」
叱責を受けた少女は目を赤く染めながら下がった。丙等の資質で元石を節約したため、三日間の練習量が足りなかったのだ。「どうせ一位は無理だし、元石を貯めた方が良いかも」と自分を納得させた。
同様の考えを持つ生徒が多く、審査結果は散々(さんざん)だった。家老の眉間に深い皺が刻まれる中、方源は内心で嘆息いた:「目先の元石に囚われ未来を捨てる愚か者ども。元石は使うためにあるのに」
視野の端で古月漠北が自信満々(まんまん)の笑みを浮かべ場に立つ。馬面の長い顔が勝利を確信していた。
彼はがっしりとした体つきで荒々(あらあら)しい気配を放ち、場に立つや三発の月刃を連続で放った。三発全て(ぜんぶ)が草人形に命中――胸郭に二発、左腕に一発が食い込み、青い草屑を飛ばした。
この成績に少年たちから感嘆の声が湧き上がる。家老も眉の皺を緩め「良くやった」と褒めた。
次の組に登場した古月赤城は小柄で痘痕の目立つ顔に緊張を滲ませていた。三発の月刃を胸に叩き込み、深さの異なる三本の傷跡を刻んだ。草人形の自己再生で傷は瞬く間に消えたが、古月漠北と同じ成績を収め家老の称賛を獲得した。
赤城は誇らしげに場を下がりながら、漠北へ挑発的な視線を投げつけた。場外で「フン!」と鼻で笑う漠北は、赤城ではなく未だ未登場の古月方正を見据えた。内心では真の脅威は赤城と方正だけだと悟っていた――前者は自分同様乙等だが元石を潤沢に使える。後者は甲等の回復力で短期集中の練習を可能にする。
最終組近く、方正が遂に姿を現した。