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蛊真人  作者: 魏臣栋
青茅山
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第二十三節: 蠱を飼いならすように情人を飼う

太陽たいようしずんだ。

夕焼ゆうやけがまだ天辺てっぺんえていて、とおくの連山れんざんあつ灰色はいいろつつまれ、くろへとうつわりつつあった。


学堂がくどう一日いちにち授業じゅぎょうわり、生徒せいとたちが三々五々(さんさんごご)に建物たてものていく。


今日きょう本当ほんとうたのしかった! 月光蛊げっこうこの使いつかいかたおぼえたし」

月刃げつじんんでるの、ちょうカッコよかった。でもおれ資質ししつじゃ戦場せんじょうにはけねえな」少年しょうねんたちが興味津々(きょうみしんしん)にはなう。


仲間なかまさそこえこえる。

めしいにこうぜ。ついでに米酒よねざけでもむか?」

「いいねえ、そんじゃこっか」

「おまえさきってろ。おれ草人形くさびとかたいに学堂がくどうみせまでるから」


……


方源ほうげん一人ひとり蛊室こしつた。

学堂がくどう蛊室こしつには多種多様たしゅたよう一転蛊いってんこ保管ほかんされており、かれ月光蛊げっこうこもここから無料むりょうえらばれたものだ。


生徒せいとたちは定期的ていきてき無料むりょう獲得かくとくする権利けんりがあるが、追加ついか入手にゅうしゅするさい有料ゆうりょうとなる。


方源ほうげん短期間たんきかんほか煉化れんかするはなかった。隣接りんせつするちいさな店舗てんぽはいると、七人しちにん生徒せいと店主てんしゅ草人形くさびとかた値段ねだん交渉こうしょうをしていた。


「おう、学弟がくていか」二十代はたちだい一転蛊師いってんこしである店主てんしゅ――宿屋やどや狩人かりゅうどしかけた江牙こうが――が方源ほうげんこえけた。


先輩せんぱいだったのか」方源ほうげん無表情むひょうじょううなずいた。


江牙こうがたなから草人形くさびとかたしながらわらけた:「学弟がくてい草人形くさびとかたうのか? さん元石げんせきっときゃあいいぞ。のこ七体しちたいしかねえからな、れたらわりだぜ」


かれ凡人ぼんじんには横柄おうへいだが、蛊師仲間こしなかまには親切しんせつだった。


方源ほうげん内心ないしん失笑しっしょうした:『商売上手しょうばいじょうずだな。草人蛊そうじんこ材料費ざいりょうひ真元しんげんコストを合算がっさんしても一個半いっこはん元石げんせき程度ていどなのに』


先輩せんぱい、それってフェアじゃないぜ。おれらがさきたんだぞ」

「そうだよ! 商売しょうばいにもルールがあるだろ」

「まあいいや、さんうよ。ほら元石げんせき草人形くさびとかたくれ」


のこ七体しちたいという言葉ことばあせった生徒せいとたちは値切ねぎりをめ、あらそうように購入こうにゅうした。


またたく間に七人しちにん満足まんぞくげにみせった。


学弟がくていわねえか? じつ八体目はちたいめ仕舞しまいにあるんだ。いまのがすと後悔こうかいするぞ」江牙こうが営業笑顔えいぎょうえがおせまる。


方源ほうげん草人形くさびとかたまった興味きょうみがなく、元石げんせきひとつをカウンターにいた:「月蘭花げつらんか花弁はなびら十枚じゅうまいう」


江牙こうが一瞬いっしゅんおどろき、方源ほうげんのぞむようにあと元石げんせきつかんで抽斗ひきだしから紙包かみづつみをした:「十枚じゅうまいきっちりだ。かぞえてみろ」


方源ほうげんはその中身なかみ確認かくにんし、問題もんだいないことをたしかめてみせあとにした。


えさあたえねばならない。

蛊師こしり、使つかい、同時どうじやしな義務ぎむがある。


るのは困難こんなんで、反噬はんせい危険きけんともなう。使つかうのも容易よういではなく、かえしの練習れんしゅう必要ひつようだ。養育よういく学問がくもんは特に奥深おくぶかく、種類しゅるい多様たようなため、えさ千差万別せんさばんべつだからだ。


つちうもの、星明ほしあかりを吸収きゅうしゅうするもの、なみだむもの、九天きゅうてん雲気うんき摂取せっしゅするもの――じつに様々(さまざま)である。


現在げんざい方源ほうげん三種さんしゅたとえよう。月光蛊げっこうこ月蘭花げつらんか花弁はなびら一日二回いちにちにかい朝夕あさゆうかく二枚にまいずつう。酒虫しゅちゅうさけ必要ひつようとし、青竹酒せいちくしゅ一壺ひとはこ四日間よっかかんつ。春秋蝉しゅんじゅうせんさら特異とくいで、ときかわから直接ちょくせつみずんで生命せいめい維持いじする。


ときかわはこの世界せかいうごかす根源こんげんであり、とお存在そんざいではない。万物ばんぶつものそばながれ、あらゆる動作どうさ時間じかんながれをあたえている。


無形むけい無色むしょくのこのかわの中で、全て(すべて)の生命せいめいらしているのだ。


月蘭花げつらんか花弁はなびら購入こうにゅうした方源ほうげんは、つぎ宿屋やどや青竹酒せいちくしゅもとめた。


酒虫しゅちゅう濁酒だくしゅ米酒よねざけでもやしなえるが、低品質ていひんしつさけだと一日いちにち数壺すうこ必要ひつようになる。方源ほうげん計算けいさんしてみると、青竹酒せいちくしゅ直接ちょくせつ購入こうにゅうする方が経済的けいざいてきで、周囲しゅういうたがいをまねかずにむと判断はんだんした。



公子様こうしさま、いらっしゃいませ!」宿屋やどや店員てんいん方源ほうげんかおおぼえしていた。


方源ほうげんみっつの元石げんせきわたし、れた口調くちょうめいじた:「青竹酒せいちくしゅ一壺ひとはこ料理りょうりせ。せん月末げつまつ清算せいさんする。あまりはかえし、不足ふそくがあればって支払しはらう」


学堂がくどうりょううつったいまでも、さけさいにはかならずここで食事しょくじ習慣しゅうかんがあった。


「かしこまりました! すぐご用意よういいたします」店員てんいん方源ほうげんせき案内あんないし、かた雑巾ぞうきんつくえ念入ねんいりにいてからがった。


ほどなくさけ料理りょうりはこばれると、方源ほうげん計算けいさんはじめた:「月蘭花げつらんか十枚じゅうまいいっ元石げんせき月光蛊げっこうこ一日いちにち四枚よんまい消費しょうひ青竹酒せいちくしゅ四日分よっかぶん。つまり二匹にひきだけで一日いちにちいっちかくの元石げんせきえる」


凡人ぼんじん三人家族さんにんかぞくつき生活費せいかつひいっ元石げんせきであることをかんがえると、この出費しゅっぴ膨大ぼうだいだった。煉化れんかして十六日じゅうろくにち飼育費しいくひだけで十四個半じゅうよんこはん使ついやしていた。


花酒遺産かしゅいさんおとうとからうばった元石げんせき首位報酬しゅいほうしゅう四十四個半よんじゅうよんこはんあった資産しさんが、煉化れんか六個半ろっこはん生活費せいかつひはんのこりは二十個にじゅっこか」


錢袋ぜにぶくろひらくと、鴨卵かもらんおおきさの灰白色かいはくしょく元石げんせき二十個にじゅっこならんでいた。


漠北ばくほく赤城あかぎのような資産家しさんかちがい、収入源しゅうにゅうげんい。今度こんど月刃審査げつじんしんさ十個じゅっこ報酬ほうしゅうらねば」方源ほうげん料理りょうりたいらげながら思案しあんした。


青竹酒せいちくしゅりょうかおうとしたとき店員てんいんった:「公子様こうしさまひとつき商隊しょうたい青竹酒せいちくしゅめにます。在庫ざいこくなれば…」


「そうか」方源ほうげんまゆせた。江牙こうが虚偽きょぎちがい、店員てんいん言葉ことば真実しんじつだと五百年ごひゃくねん経験けいけん見抜みぬいた。


追加ついか購入こうにゅうする。りょうまではこべ」十個じゅっこ元石げんせきすと、店員てんいんたちが床下ゆかした酒壺さけつぼならべた。


蛊師こしみち金食かねくむしだ」錢袋ぜにぶくろかるさに嘆息たんそくする方源ほうげん春秋蝉しゅんじゅうせんときかわから直接ちょくせつやしなわれることが唯一ゆいいつすくいだった。


二転蛊にてんこなら一日いちにちいっ以上の元石げんせきえる。ましてや市場しじょう食糧しょくりょう必要ひつようとするなど…」


ぞくう「一寸いっすんきん一寸いっすん光陰こういんえぬ」。かず制限せいげんいとえど、普通ふつう蛊師こしが四、五匹(し、ごひき)しかわない理由りゆう明白めいはくだ。


やしなうのは愛人あいじんかこうようなもの。衣装いしょう食事しょくじ住居じゅうきょかねけるようにえる。ましてや使つかれないかずえば、破産はさんまえだ」


蛊師こし階級かいきゅうがれば食糧しょくりょうしつ上昇じょうしょうする。ゆえに、たとえ無限むげん煉化れんかできようと、現実げんじつでは同級どうきゅうを四、五匹(よん、ごひき)うのが限界げんかいなのだ。


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