ドン!
炸裂音が響き渡り、煙と埃が散った後に、洞口が現れた。
「やはり入り口がある!」
「道理で奴らは消えたわけだ。絶対にここの穴へ入ったに違いない!」
「怪しい…なぜこんなところに仕掛けが? おっ、族長が来たぞ」
百家の女族長が現場に駆け付けた時、
丁度壁を破壊して密道が露になる場面を目撃した。
「ここはおそらく伝承の地だろう」
同に来ていた鉄刀苦は一目見ただけで推測した。
「なるほど…どうやら二人の賊の真の目的はここにあったわけだ!」
百家族長は歯を食いしばり、目に冷たい光を宿していた。
まったく…名演技だったわ。
行く道の途上で、彼女はこの数日の共に過ごした情景を回想した。
思えば思うほど怒りが湧き、名門百家の族長としての私が、二人の少年に騙されていたのだ。そして一族の者全員が、後輩二人の手に掛かるとは!
もしこれが外に漏れれば、百家の威信へ重大な打撃となるだろう。
「若輩の私どもが役目を果たせず、少主お二人をお守りできませず、如何なる罰をもお受け致します」
百蓮や百盛景らは恐れ慄きながら地に跪いて詫びを入れた。
「皆立ち上がれ。これもお前たちに私が命じたことだ。責めるならあの薄汚れた小僧二人の狡猾さだけを責めよ!」
百家族長のこの一言で、百蓮らは大きく息をついた。
「ここ数日、お前たちはあの賊どもと日夜共にしてきたのだから、本当にわずかな疑いも持てなかったのか?」
鉄刀苦が問い質した。
三人の少女がガシッと立ち上がった。彼女らの顔には皆複雑な表情が浮かんでいた。
特に百蓮は、元は方白の二人を己の掌中にある玩具としか思っていなかった。まさか自らが奴らに弄ばれるとは。
「不自然な点など」
「あの二人は本当によくもまあ演じ切れたものよ!」
「今思い返せば、我々(われわれ)百家を利用していたのね。まったく卑劣で陰険**!」
三人の少女は皆首を横に振った。これで鉄刀苦の問への否定の返答となった。
この道中、鉄刀苦も百家族長の口から事情の大筋は聞いていた。もとより百家の元泉のことなど漏らされるはずもない。
「うむ…そういうことなら、二人の小僧の真の狙いはここを見つけることにあったのだな。彼らの実力は白骨山を放浪するほどでなく、だからこそ百家の力を借りたのだろう」
鉄刀苦が傍若無人に分析を始めた。
その言葉を聞き、周囲の百家の蛊師たちは皆顔色を曇らせた。
確かにその通りであった。
ここ数日間、白骨山に通路を整備するために、彼の者らは多くの犠牲を払い、膨大な代償を払っていた。しかし蓋しを開けてみれば、方白の二人のために道を舗装しているに過ぎなかったのだ。
「まったくもって死すべきものよ!」
「あの小僧ども、もし我が手に落ちれば、必ずや八つ裂きにしてくれるわ!」
「族長、我が部隊に出撃を!この二人の極悪人を捕らえて斬り、この屈辱を晴らします!」
瞬時のうちに、洞窟内に怒号が沸き上がる。
百家族長は洞窟を見回し、微かに肯いた。
彼女だって方・白の二人を千切り刻みたい思いでいっぱいだった。
百生と百花の母として、今この瞬間にも我が子たちの前に駆け付けたい衝動に駆られている。
軍心は用いるに足り、士気は頂点に達している。
百家族長が最後に自ら志願した家老を見る:
「ならば貴様の部隊に出動を命ずる。必ずや眼前の密道を打通せよ!」
「承知した!」
家老が低く喝し、命令を受け立った。
「待て。この密道は骨刺が不揃いに突き出し、完全に封鎖されている。あの小僧二人はいったいどうやって入った?必ず仕掛けがある。試させてもらおう」
鉄刀苦が進み出て異議を唱えた。
命令を受けた家老がキッと睨みつける:
「今は緊急事態だ!二人の少主は命が風前の灯!
のろのろと仕掛けを探って、一体いつまで待てと?!」
……
「骨刺蛊…」
方源はその蛊を掌に載せ、弄びながら観察した。
この蛊は仙人掌のようで、拳大きさ、表面には針のような骨刺が生えている。手に載せると少し重い。
これは三転蛊であり、典型的な「敵を千切るも自らは八百を損なう」類の蛊だ。
蛊師が使用すると、全身の骨格が変異し、鋭く剛硬な骨刺が生える。
これらの骨刺で敵を攻撃するには、まずこれらの骨刺が蛊師自身の皮膚を突き破り血肉を貫かねばならない。痛みはさておき、対応する治療蛊を併用しなければ、事態は深刻になる。
下手をすれば敵は死なずに、骨刺蛊を使った蛊師自身が逆に重傷を負う羽目になるのだ。
「これはどんな蛊だ?」
白凝冰が興味深そうに覗き込んだ。
しかし方源の説明を聞くと、途端に興味を失った。
別に痛みを恐れているわけではない。
自身が既に氷肌蛊を使い切しているからだ。
今彼女の全身の肌は、氷肌蛊の力によって永久に「氷肌」へと改造されている。
防御の機能があるばかりか、汗を抑え止血する効能も備えている。
白凝冰がこの骨刺蛊を使うなら、まず骨刺が氷肌を破らねばならない。
彼女にとっては全く割に合わないのだ。
方源もこの骨刺蛊にさほど興味はなかった。
だが結局は三転蛊であるから、煉化した後、方源の空窍に一時的に収められた。
「行くぞ」
方源は最後に現れた暗門を選んだ。
相変わらず白凝冰が先頭で道程を探る。
門内へ入ると、下方へ伸びる灰骨の階段があった。この階段は長大で、少なくとも千メートルはあろう。
後半に差しかかると、周囲の光が次第に薄れ、階段も徐々(じょじょ)に狭くなっていった。
闇の中、方・白の二人は階段の終点に行き着いた。
一つの閉ざされた門が彼ら二人の眼前に現れた。
門には四文字の大書が刻まれていた──
肉囊秘閣。
……
「こんちくしょう…骨がちっとも砕ねえ!」
百家の家老が額の汗をごしごしと拭い、憎々(にく)しく罵った。
時間はすでに一刻過ぎたが、この秘道は半分しか打通できていない。
不揃いに密生した骨刺は、白骨山の山石と見分けがつかない。しかし実際に攻撃してみると、この骨の剛硬さに思わず息を飲むほどだ。
百家族長の顔色も芳しくなかった。
時間が経つほど、自らの二人の子が危険に晒されることになる。
過ぎ去った一刻の間、この母親はまるで百年のように苛まれた。しかし族長として、少なくとも表向きは泰然自若を装い、族の者に信頼感を与えねばならなかった。
ガリッ!
突然軽やかな音と共に、仕掛けが作動し、残りの骨刺がするりと洞壁に引き込まれた。
一同は凍りついたように一瞬硬直し、続いて動き出した張本人へ目を向けた。
鉄刀苦が顎を撫で回しながら独り言のように分析した:
「この仕掛けはなかなか巧妙だ。最初に洞口を開くには螺旋骨刺を捻る必要があった。これが人に強い印象を残す。だからこそ、この密道の前に来ると、先入観に基づいて周りの螺旋紋の骨刺を再び捻ろうとする。残念ながら、この仕掛けを閉じるには螺旋骨刺を引っ張る必要があったのだ」
瞬時に、全員が沈黙に包まれた。
先に命令を受けたあの家老は、顔を赤らめ、気まずさと恥ずかしさで居たたまれない様子だった。
この秘道を抜けると、百家の者たちは最初の広間に到着した。
「こ、これは?!」
多くの者が呆然とした。
彼らが見たのは床一面の蛊虫の粉砕死体だった。
白凝冰が大甕の中の蛊虫を全て(すべて)握り潰した結果である。
「骨槍蛊に違いない…さらに、螺旋骨槍蛊も混じっている」
直ちに家老がこの蛊を見分けた。
「ここは正に伝承の地だ!我が人生で初めて経験したぞ!」
興奮する者もいる。
「見ろよ、中央にまだ大きな甕がある!中には何があるんだ?」
好奇に目を輝かす者もいる。
甕の中には、乳泉水の外は何も残されてはいなかった。
百家の一行は失望と怒りに満ちていた。
「あの賊どもはやり過ぎだ!何一つ残していない!」
「畜生め!天の理を踏みにじるとは!こんなに多くの蛊を…みんな握り潰しやがって!」
多くの者が泣き叫びながら呪い、怒り心頭だった。
家老たちの目にも惜しむ色が浮かんでいた。
「急ぐんだ!早く奴らを捕らえれば、皆の損失は少なくて済む」
鉄刀苦のこの一言で、一同の目が輝いた。
この言葉に励まされ、士気は更に高まり、一刻も早く方白の二人と相対したいという気持ちでいっぱいになった。
一同は二番目の広間に到着し、三本の石柱を目にした。
「蛊が残されている!」
先頭の蛊師が思わず歓声を上げた。
「族長、ご覧ください」
間もなく、腕骨翼蛊と肋骨盾蛊が百家族長の眼前に並べられた。
百家族長は一瞥しただけで、人に収めさせ、心には一片の喜びもなかった。
蛊虫より何よりも我が子たちの安否が気にかかるのだ。
「見たか?今の二匹、どちらも三転蛊だぞ!」
「この伝承、実に期待できるな」
「禍福は糾える縄の如し…古の言葉は正しかった」
一同は感嘆の声を上げたり驚いたりしていた。
「お前ら、不自然に思わないか?なぜ奴らはわざわざ蛊を残したんだ?」
傍観者として冷静な鉄刀苦が不審点に気づいた。
「三つより一つを選び、満足せよ。白骨山の伝承は、更なる後人に」
間もなく、石柱に刻まれた文字が発見された。「どうやらこれは魔道の伝承ではなく、正道の人物が遺したものらしい」
「へっ、満足だと?我々(われわれ)は全く満足などしていないぞ!」
「急げ!まずは二人の少主を救出だ。見物はそれからでも遅くはない!」
互いに催促し合いながら、一同は第三の広間へ到着した。
あぐらをかいた骸骨と巨大な骨書が、衆人の視界に映った。
「灰骨才子…なんと、この方だったのか!」
骨書を広げた家老がはっと気づいた──これは確かに正道の伝承であった。
百家族長の深く刻まれた眉間の皺が微かに緩んだ。
これが彼女が今までに聞いた中で唯一の良い知らせだった。
正道の伝承は概ね温和な場合が多く、魔道の伝承のような険悪さはない。
だが鉄刀苦は次第に眉をひそめた。心の中でますます違和感を覚え、先程の石柱の刻み文字が漠然とした不安を湧かせてくるのだ。
一同は骸骨の頭蓋骨を割り、中から一つの骨刺蛊を取り出した。
直後に、一つの石壁が滑るように開き、新たな暗の通路が現れると、衆人は列を成して入っていった。
……
「肉囊秘閣…」
白凝冰が呟きながら、面前の門扉を押し開こうとした。
鍵は掛かっておらず、軽く押すだけで開いた。
門の奥は小さな密室だったが、非常に異様だった。
密室の上下左右の壁はすべて肉で出来ており、方白の二人が中へ入ると、まるで怪獣の腹の中に迷い込んだような感覚だった。
肉の壁は温かく、規則的に微かに鼓動している。壁の奥に心臓が隠れているかのようだ。
人の気配を感じ取ったのか、肉壁に突然裂け目が走り、無数の白い歯が現れた!
白凝冰は思わず息を呑んだ。
肉壁の中には、無数の巨大な口がぎっしりと嵌め込まれているようだった。
口は大きく開けられ、整った歯並びの歯を見せつつ、歯の間はぎゅっと閉められていた。
「歯を剥き出して口を歪める」という四字熟語で表現するのが最も適切だろう。
くくく…ははは…ふふふ…
これらの口が様々(さまざま)な種類の笑い声を発している。
笑い声が入り乱れ、狭い秘閣の壁に反響して、聞く者は思わず背筋が凍るのを感じた!