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蛊真人  作者: 魏臣栋
魔子出山
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第二十三節:白骨山伝承(上)

密道(みつどう)(なが)くなく、方源(ほうげん)白凝冰(はくぎょうひょう)二人(ふたり)はほどなくして(ひと)つの広間(ひろま)到着(とうちゃく)した。


純白(じゅんぱく)広間(ひろま)は、すべて(ほね)(つく)られていた。広間(ひろま)中央(ちゅうおう)には、(おお)きな(かめ)があった。


その(かめ)(なか)には、(しろ)液体(えきたい)()たされており、まるで牛乳(ぎゅうにゅう)のようで、(かお)りを(はな)っていた。


方源(ほうげん)(かめ)(ちか)づくと、関連(かんれん)する記憶(きおく)自然(しぜん)()かび()がった。


前世(ぜんせ)百花(ひゃっか)(はなし)によれば、この(かめ)(した)には泉眼(いずみ)連結(れんけつ)しているはずだ。


この(いずみ)は、奶泉(にゅうせん)と呼ばれるものだ。


(いずみ)(みず)牛乳(ぎゅうにゅう)のようで、(あじ)清涼(せいりょう)(あま)く、口当(くちあ)たりが()い。最上級(さいじょうきゅう)()(もの)であるばかりか栄養豊富(えいようほうふ)で、()どもが()めば発育(はついく)促進(そくしん)でき、老人(ろうじん)()めば(からだ)(つよ)くなる。


奶泉(にゅうせん)白骨山(はっこつざん)特産品(とくさんひん)だ。


前世(ぜんせ)方源(ほうげん)(とき)百家(ひゃっか)がここに移住(いじゅう)した(あと)(いつ)つの奶泉(にゅうせん)開発(かいはつ)した。奶泉(にゅうせん)百家(ひゃっか)特産品(とくさんひん)にするとともに(しょう)(ひん)として取引(とりひき)し、毎年(まいとし)(おお)くの商隊(しょうたい)を引き(ひきつ)けて貿易(ぼうえき)(おこな)わせていた。


「この(かめ)(なか)には()がいる…」


方源(ほうげん)()いながら白凝冰(はくぎょうひょう)()くばせした。


たとえ記憶(きおく)によればこの場所(ばしょ)にはまったく危険(きけん)がないと()かっていても、


方源(ほうげん)慎重(しんちょう)性分(しょうぶん)ゆえに、(みずか)らの体験(たいけん)ではなく、


(つて)(きき)()情報(じょうほう)()ぎないことを()にかけていた。


(あぶ)ないことは(ひと)にやらせるのが得策(とくさく)だ。


白凝冰(はくぎょうひょう)(ひや)やかな鼻息(はないき)()らし、防御(ぼうぎょ)(ととの)えて


(かめ)()()ばした。


(なか)()がたっくさん!」


ほどなく(まゆ)()()(おどろ)いた表情(ひょうじょう)()せた。


()()(もど)すとき、白凝冰(はくぎょうひょう)()にはすでに


()(つか)()れないほど()ちていた。


これらの()は、(ひと)示指(ひとさしゆび)ほどの(おお)きさで、


(からだ)(すべ)てが純白(じゅんぱく)(ひと)つの(はし)(まる)みを()び、もう(ひと)つの(はし)(するど)(とが)っていて、まるでミニチュアの長槍(ちょうそう)のようだった。


これが骨槍蛊(こっそうこ)である。


「この()一転(いってん)だが、(かず)半端(はんぱ)じゃない。この(おお)きな(かめ)が、ほぼこんな蛊虫(こちゅう)()まってる」


白凝冰(はくぎょうひょう)(すこ)興奮(こうふん)した様子(ようす)()った。


骨槍蛊(こっそうこ)は、古月山寨(こげつさんさい)月刃蛊(げつじんこ)()ている。


この白骨伝承(はっこつでんしょう)における基礎的(きそてき)存在(そんざい)だ。


前世(ぜんせ)百家(ひゃっか)がこの伝承(でんしょう)発見(はっけん)した(あと)


一族(いちぞく)(おお)くの蛊師(こし)がこの()装備(そうび)した。


骨槍蛊(こっそうこ)百家蛊師(ひゃっかこし)特徴(とくちょう)(ひと)つとなったのだ。


「もっと(さぐ)ってみろ。この(かめ)には二転(にてん)()もいるはずだ」


方源(ほうげん)(そば)()つつも、無表情(むひょうじょう)なまま()った。


白凝冰(はくぎょうひょう)何度(なんど)(さぐ)(つづ)けるうちに、ついに二転(にてん)()発見(はっけん)した。


この()骨槍蛊(こっそうこ)()ているが、骨槍(こっそう)表面(ひょうめん)螺旋(らせん)刻印(こくいん)(もん)がある——螺旋骨槍蛊(らせんこっそうこ)である。


この()骨槍蛊(こっそうこ)進化型(しんかがた)で、発射(はっしゃ)すれば攻撃力(こうげきりょく)がさらに(たか)く、骨槍蛊(こっそうこ)直進(ちょくしん)攻撃(こうげき)よりも貫通力(かんつうりょく)()す。


大甕(おおがめ)(なか)は、骨槍蛊(こっそうこ)圧倒的多数(あっとうてきたすう)()め、螺旋骨槍蛊(らせんこっそうこ)はごく一部(いちぶ)()ぎない。


「これでようやく、常規的(じょうきてき)安定(あんてい)した攻撃(こうげき)手段(しゅだん)()にした」


方源(ほうげん)螺旋骨槍蛊(らせんこっそうこ)一匹(いっぴき)()まみ、(こころ)の中で(おも)った。


焦雷土薯蛊(しょうらいいもこ)は非常に不安定で、地面(じめん)()()ける必要(ひつよう)があり、(ほか)(もの)()まなければ、()えても無駄(むだ)になる。記憶力(きおくりょく)(わる)蛊師(こし)が、自分(じぶん)()()けた焦雷土薯蛊(しょうらいいもこ)場所(ばしょ)(わす)れてしまえば、(みずか)らも(わざわ)いに()()まれることになる。


また焦雷土薯蛊(しょうらいいもこ)使用(しよう)には制限条件(せいげんじょうけん)がある。土壌(どじょう)使用(しよう)せねばならず、土壌(どじょう)肥沃(ひよく)であるほど()い。白骨山(はっこつざん)のような特殊(とくしゅ)場所(ばしょ)では、焦雷土薯蛊(しょうらいいもこ)使用(しよう)不可能(ふかのう)だ。さもなければ、方源(ほうげん)もまた(ひと)(ふた)つの(わな)(もう)けることを躊躇(ちゅうちょ)しなかっただろう。


残念(ざんねん)ながら三転蛊(さんてんこ)はない」


白凝冰(はくぎょうひょう)は非常に残念(ざんねん)そうに、螺旋骨槍蛊(らせんこっそうこ)一匹(いっぴき)(えら)び、(ころも)(ふところ)にしまい、(あと)煉化(れんか)しようと考え(かんがえ)た。


しかしこの二転蛊(にてんこ)彼女(かのじょ)にとって、新奇(しんき)さを(あじ)わうためだけのものに()ぎない。実際(じっさい)戦闘(せんとう)使用(しよう)しても、三転蛊師(さんてんこし)実力(じつりょく)発揮(はっき)することはできない。


大甕(おおがめ)(なか)危険(きけん)()いと見定(みさだ)め、方源(ほうげん)(うご)()した。


一掴(ひとつか)み、また一掴(ひとつか)みと蛊虫(こちゅう)をすくい()げ、春秋蝉(しゅんじゅうせみ)気配(けはい)(たよ)って、


真元(しんげん)奔流(ほんりゅう)(ごと)(そそ)()み、(またた)く間に煉化(れんか)した。


「あ、あなた…これって…?」


白凝冰(はくぎょうひょう)()()(ひら)いて呆然(ぼうぜん)とした。


ほんの(みじか)(あいだ)に、方源(ほうげん)数十匹(すうじゅっぴき)もの蛊虫(こちゅう)煉化(れんか)し、


なおも(つづ)けていた!


春秋蝉(しゅんじゅうせみ)によって蛊虫(こちゅう)瞬時(しゅんじ)煉化(れんか)され、


(てん)才能(さいのう)天元宝蓮(てんげんほうれん)真元(しんげん)回復速度(かいふくそくど)煉化(れんか)消費速度(しょうひそくど)上回(うわまわ)らせたため、


(かれ)動作(どうさ)途切(とぎ)れることなく(つづ)くのだった。


まるで(くる)えるようなパフォーマンス!


方源(ほうげん)空窍(くうこう)には二百匹(にひゃっぴき)骨槍蛊(こっそうこ)二十余匹(にじゅうよひき)螺旋骨槍蛊(らせんこっそうこ)()えた。


()煉化(れんか)蛊師(こし)にとって(つね)難関(なんかん)であり、白凝冰(はくぎょうひょう)方源(ほうげん)蛊虫(こちゅう)瞬間的(しゅんかんてき)煉化(れんか)するのを数度(すうど)目撃(もくげき)しているものの、これほどの視覚的衝撃(しかくてきしょうげき)(かん)じたことは一度(いちど)もなかった。


方源(ほうげん)()(なか)では、蛊虫(こちゅう)煉化(れんか)はまるで(めし)()(みず)()むような、(いや)()のひらを(かえ)すか(まばた)きする程度(ていど)容易(ようい)なことに(うつ)る。


まったくもってたやすくて仕方(しかた)ない!


「いったい(かれ)はどんな手札(てふだ)(かく)しているんだ?」白凝冰(はくぎょうひょう)(こころ)驚疑(きょうぎ)でいっぱいだった。この瞬間(しゅんかん)方源(ほうげん)彼女(かのじょ)(なか)での印象(いんしょう)は、一層(いっそう)深遠(しんえん)(はか)()れないものへと()わった。


しかし表向(おもてむ)きは、(くち)をへの()()げ、淡々(たんたん)とした口調(くちょう)()った:


「こんなに大量(たいりょう)()一度(いちど)(かか)()んで、(やしな)っていけるとでも?」


方源(ほうげん)(わら)った:「もちろん(やしな)えない」


骨槍蛊(こっそうこ)にせよ螺旋骨槍蛊(らせんこっそうこ)にせよ、エサとして(ちち)(みず)必要(ひつよう)とする。そのためこの乳槽(にゅうそう)(なか)飼育(しいく)されていたのだ。


たとえ乳泉(にゅうせん)(みず)がたっぷり一杯(いっぱい)状態(じょうたい)であっても、実際(じっさい)消費量(しょうひりょう)莫大(ばくだい)だ。(そう)(そこ)泉眼(いずみ)()(みず)連結(れんけつ)されているからこそ、これだけの(りょう)維持(いじ)できているに()ぎない。


方源(ほうげん)がこれほど(おお)くの()飼育(しいく)しようとすれば、(みずか)らが乳泉(にゅうせん)保有(ほゆう)しているでもなければ不可能(ふかのう)だ。


「養えないにしても、できるだけ多く持っていくのが好きだ。さもなくば百家(ひゃっか)連中(れんちゅう)にただで()っていかれることになるからな」


方源(ほうげん)(わら)いながら大甕(おおがめ)指差(ゆびさ)し、(つづ)けた:


「さあ、(のこ)りの()破壊(はかい)してしまえ」


大甕(おおがめ)(なか)蛊虫(こちゅう)本当(ほんとう)(おお)く、方源(ほうげん)多量(たりょう)煉化(れんか)したが、一転(いってん)空窍(くうこう)()えられる(りょう)(かんが)(りょ)して相当数(そうとうすう)(のこ)された。


ほどなくして、白凝冰(はくぎょうひょう)複雑(ふくざつ)表情(ひょうじょう)床一面(ゆかいちめん)()残骸(ざんがい)()つめた。彼女(かのじょ)(こころ)の中で(いた)いほど理解(りかい)していた──これらの蛊虫(こちゅう)(はか)()れない価値(かち)を。


これらを破壊(はかい)するのは、まるで元石(げんせき)()()げた小山(こやま)を粉々(こなごな)に(くだ)くようなものだった。冷酷非情(れいこくひじょう)白凝冰(はくぎょうひょう)ですら(むね)(いた)んだ。


しかし、これらを(のこ)せば百家(ひゃっか)()(わた)ってしまう。(てき)()するくらいなら、破壊(はかい)するほかなかった。


二人(ふたり)はこの広間(ひろま)(はな)れ、(べつ)密道(みつどう)沿()って二番目(にばんめ)白骨(はっこつ)広間(ひろま)へと(ある)(はい)った。


広間(ひろま)中央(ちゅうおう)に、三本(さんぼん)白骨柱(はっこつばしら)()っていた。


(はしら)頂上(ちょうじょう)人手(ひとで)(かたち)()られており、皮肉(ひにく)()()とされ、白骨(はっこつ)だけが(のこ)されていた。


それぞれの白骨(はっこつ)(ひと)()(なか)に、一匹(いっぴき)ずつ蛊虫(こちゅう)(にぎ)られていた。


三本(さんぼん)(はしら)には、三匹(さんびき)蛊虫(こちゅう)(ねむ)りについていた。


(ほう)(はく)(ちか)づくと、(はしら)表面(ひょうめん)(きざ)まれた文字(もじ)()(はい)る──それはこの(みっ)つの蛊虫(こちゅう)についての説明(せつめい)だった。


肋骨(ろっこつ)(たて)()飛骨(ひこつ)(たて)()腕骨(わんこつ)(よく)()…」


白凝冰(はくぎょうひょう)()(はし)らせ、(くち)ずさむように()った。


やがて彼女(かのじょ)視線(しせん)(ひと)(てん)()る、一行(いちぎょう)(きざ)文字(もじ)()()()んだ──

(みっ)つより(ひと)つを(えら)び、満足(まんぞく)せよ。白骨山(はっこつざん)伝承(でんしょう)は、(さら)なる後人(こうじん)(ゆず)る。」


その意図は明らかだ──蛊虫(こちゅう)(ひと)つしか(えら)べない。


この機縁(きえん)将来(しょうらい)有縁者(うえんしゃ)(ゆず)るというのだ。


肋骨盾蛊(ろっこつたてこ)蛊師(こし)二列(にれつ)肋骨(ろっこつ)(むね)(まえ)()やさせ、卓越(たくえつ)した防御力(ぼうぎょりょく)発揮(はっき)する。三転(さんてん)蛊虫(こちゅう)であり、利点(りてん)はこうだ:初期成長段階(しょきせいちょうだんかい)大量真元(たいりょうしんげん)消費(しょうひ)(のぞ)けば、その(あと)真元(しんげん)(そそ)がなくても維持(いじ)できる。天元宝蓮(てんげんほうれん)のように、煉化(れんか)さえ()ませれば真元(しんげん)(そそ)必要(ひつよう)なく使用可能(しようかのう)だ。


飛骨盾蛊(ひこつたてこ)使用(しよう)すると、三面(さんめん)()(まわ)(ほね)(たて)形成(けいせい)され、小さく精巧(しょうこう)面積(めんせき)蛊師(こし)周囲(しゅうい)浮遊(ふゆう)する。


臂骨翼蛊(ひこつよくこ)前腕部(ぜんわんぶ)一対(いっつい)(ほね)(つばさ)()やし、これを()ばたかせて移動速度(いどうそくど)(すこ)向上(こうじょう)させられる。最も(おも)なのは、出手速度(でてそくど)への強化(きょうか)にある。


肋骨盾(ろっこつたて)以前(いぜん)背甲(はいこう)()と組み(くみあ)わせれば前後防御(ぜんごぼうぎょ)となるが、背甲蛊(はいこうこ)など(けっ)して使(つか)わぬ。肋骨盾(ろっこつたて)だけでは防御範囲(ぼうぎょはんい)(せま)すぎる。跳跳草(ちょうちょうそう)もある(わたし)(もっぱ)近接戦(きんせつせん)をせぬゆえ、臂骨翼蛊(ひこつよくこ)はあまり(やく)()たぬだろう」


方源(ほうげん)一考(いっこう)し、飛骨盾蛊(ひこつたてこ)(えら)んだ。


白骨(はっこつ)()(にぎ)(つぶ)し、飛骨盾蛊(ひこつたてこ)煉化(れんか)して空窍(くうこう)(おさ)めた。


しかし(のこ)りの(ふた)つの蛊虫(こちゅう)には微動(びどう)だにしない。


これは正道(せいどう)伝承(でんしょう)であり、ここでは有縁者(うえんしゃ)欲望制御力(よくぼうせいぎょりょく)(ため)されるのだ。もし(こころ)貪慾(どんよく)(おさ)()れずに(みっ)つの()()れば、(あと)密道(みつどう)(ひそ)かに変化(へんか)する。致命(ちめい)(わな)はないが、()られるものは大幅(おおはば)減少(げんしょう)する。


正道(せいどう)伝承(でんしょう)は、魔道(まとう)伝承(でんしょう)とは(こと)なる。


通例(つうれい)仁厚(じんこう)(こころ)(もっ)設計(せっけい)されている。蛊師(こし)(えん)あって出会(であ)えれば、(かなら)(なに)かしら収穫(しゅうかく)()る。ただその(りょう)(こと)なるだけのことだ。


白凝冰(はくぎょうひょう)方源(ほうげん)()()さないのを()て、軽率(けいそつ)には(うご)かなかった。なにか仕掛(しか)けが存在(そんざい)するのではないかと警戒(けいかい)したためだ。


二人(ふたり)密道(みつどう)沿()って、第三(だいさん)広間(ひろま)(はい)った。


この広間(ひろま)には(ほか)出口(でぐち)はなく、洞壁(どうへき)(ひと)つの人骨(じんこつ)胡座(あぐら)()んでいた。


その()(まえ)に、巨大(きょだい)一冊(いっさつ)(ほん)()かれている。


この(ほん)(ほね)(つく)られ、(なが)一臂(いっぴ)(はば)半臂(はんぴ)(あつ)八寸(はっすん)もある。



方源(ほうげん)白凝冰(はくぎょうひょう)(ひろ)()げるよう()くばせし、危険(きけん)がないと(たし)かめてから(みずか)らの()()った。


この(ほん)は、前世(ぜんせ)百家(ひゃっか)兄妹(きょうまい)によって「灰骨巨書(はいこつきょしょ)」と名付(なづ)けられていた。(なか)には(おお)くの()(れん)(せい)秘方(ひほう)記載(きさい)されており、同時(どうじ)にこの伝承(でんしょう)(ぬし)である灰骨才子(はいこつさいし)生涯(しょうがい)事績(じせき)、そして伝承(でんしょう)設立(せつりつ)した理由(りゆう)なども(しる)されている。


方源(ほうげん)(ひら)いて()ると、()たしてその(とお)りだった。


これは(いつわ)りなき正道(せいどう)伝承(でんしょう)であった。


書中(しょちゅう)最後(さいご)にこう(しる)されていた:


「この遺体(いたい)こそ灰骨才子(はいこつさいし)本人(ほんにん)である。(のち)有縁者(うえんしゃ)、もし(こころ)あらば(まつ)りを(ささ)げよ。(ひたい)三度(さんど)()(めん)()()けて叩頭(こうとう)せよ。


(まつ)()われば、頭骸骨(とうがいこつ)()れ。そこに(ひと)つの()()えよう。


この()こそ灰骨才子(はいこつさいし)本命蛊(ほんめいこ)なり。(のち)(もの)がこれを()たならば、


()のため(ぜん)(ほどこ)し、正義(せいぎ)(ささ)えんことを」


方源(ほうげん)はこれを()一笑(いっしょう)し、灰骨巨書(はいこつきょしょ)(かる)白凝冰(はくぎょうひょう)手渡(てわた)すや、(ひざまず)いて恭謹(きょうきん)三度(さんど)(ひたい)()(めん)()()けた。


これは()(せま)った叩頭(こうとう)であった。


(かた)地面(じめん)(ひたい)()れ、ドンドンドンと(みっ)つの(にぶ)(おと)()てた。


白凝冰(はくぎょうひょう)呆然(ぼうぜん)とした──方源(ほうげん)にこんな一面(いちめん)があったとは思いもよらなかった!


方源(ほうげん)叩頭(こうとう)()えて()()がると、広間(ひろま)には(かす)かな(うご)きも()えなかった。


(かれ)()(かい)せず、(ほほ)()みを()かべている。


この広間(ひろま)には(ほか)密道(みつどう)はないが、終点(しゅうてん)ではない。ここでは(のち)(もの)(こころ)(さが)(ため)されており、心根(こころね)(きよ)らかで(おん)()(もの)であれば、(かなら)叩頭(こうとう)するであろう。


もしも(ひたい)本気(ほんき)(みっ)()()らす」ことができれば、(あら)たな密道(みつどう)(あらわ)れるのだ。


だがこれで第一段階(だいいちだんかい)()わりではない──


もしも叩頭(こうとう)するだけでなく、遺骸(いがい)(ゆび)一本(いっぽん)()わらず、先人(せんじん)遺体(いたい)(うやま)態度(たいど)(しめ)せば、第二(だいに)密道(みつどう)出現(しゅつげん)するのだった!


前世(ぜんせ)百生(ひゃくせい)百花(ひゃっか)両方(りょうほう)とも(ひたい)()()()けたが、百花(ひゃっか)(いた)みを(こわ)がって(おと)()てなかった。百生(ひゃくせい)第一層(だいいっそう)仕掛(しか)けを起動(きどう)したのだ。しかし百生(ひゃくせい)頭骸骨(ずがいこつ)()って()()ろうとしたところ、百花(ひゃっか)(はば)まれ、先人(せんじん)(やす)らかな静寂(せいじゃく)(のこ)すように説得(せっとく)された。そのため百花(ひゃっか)第二層(だいにそう)仕掛(しか)けを起動(きどう)したのだ」


方源(ほうげん)回想(かいそう)(ひた)りながら、百花(ひゃっか)百生(ひゃくせい)一瞥(いちべつ)した。


()(もの)らは白凝冰(はくぎょうひょう)()()げられたまま、依然(いぜん)として昏睡状態(こんすいじょうたい)だった。


白凝冰(はくぎょうひょう)もまた二人(ふたり)()て、嘆息(たんそく)()じりに()った:


「これからもどうやらこの二人(ふたり)()きた(たて)として使(つか)(つづ)けるようだね。だが、一つ()になる──この灰骨才子(はいこつさいし)本命蛊(ほんめいこ)はいったい(なん)なのか。さあ、頭蓋骨(ずがいこつ)()って()()ろうじゃないか」


方源(ほうげん)(くび)()った:「これこそが、ここに(ほどこ)された巧妙(こうみょう)細工(さいく)なのだ。好奇心(こうきしん)(ひと)頭蓋骨(ずがいこつ)(なか)()無用(むよう)(うつく)しく(おも)(えが)かせ、実物(じつぶつ)()るよりも(こころ)(うご)かすものだ。(あせ)るな」


その言葉(ことば)()わらぬうちに、(ひと)つの骨壁(こつへき)(おく)()()み、(すべ)るように(ひら)けて(まった)(あら)たな密道(みつどう)(あら)わにした。


成程(なるほど)


白凝冰(はくぎょうひょう)(さと)った様子(ようす)で、まさに()(うご)かそうとしたが、(ふたた)方源(ほうげん)(せい)される。


「この入口(いりぐち)(たし)かに正解(せいかい)だが、(もっと)価値(かち)ある(みち)ではない。もう(すこ)()て」


()時間(じかん)ほど(なが)くじれったく(おも)えるものはない。


(とく)方源(ほうげん)白凝冰(はくぎょうひょう)百家(ひゃっか)包囲(ほうい)されている状況(じょうきょう)ではなおさらだ。


半刻(はんとき)ほど()ったか、白凝冰(はくぎょうひょう)(こころ)()りが(しょう)(はじ)めた(とき)、もう(ひと)つの暗門(あんもん)(すべ)()し、密道(みつどう)(しず)かに(あらわ)れた。


「ははっ、これだ」


方源(ほうげん)(たか)らかに(わら)いながら(まえ)(すす)み、(あし)(たか)()げて灰骨才子(はいこつさいし)遺骸(いがい)()(くだ)いた。


この密道(みつどう)(あらわ)れた以上(いじょう)、この遺骸(いがい)はもはや(よう)なしだ。


方源(ほうげん)頭蓋骨(ずがいこつ)内側(うちがわ)から一匹(いっぴき)()を取り(とりだ)した──


三転(さんてん)骨刺蛊(こっしこ)であった。




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