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蛊真人  作者: 魏臣栋
魔子出山
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第十一節:企画

土石どせきり、煙塵えんじんのぼる。


白凝冰はくぎょうひょう爆風ばくふうばされたが、鯉魚打挺りぎょだてい要領ようりょう反動はんどう利用りよう素早すばやがった。


天蓬蛊てんほうこ防御ぼうぎょにより、肉体的損傷にくたいてきそんしょうかったが、空竅くうきょうない天蓬蛊てんほうこ衝撃しょうげきけ、しろひかり虚甲きょこう三分さんぶうすくなった。


何物なにものけたのだ!?」白凝冰はくぎょうひょうのろいの言葉ことばき、らす。


爆発ばくはつ地点ちてんには直径ちょっけい二三米にさんメートル陥没かんぼつくちけていた。


洞窟内どうくつないから魔道まどう女蛊师おんなこし高笑たかわらいする:


い! 今回こんかいけなかったが、つぎなおいや」


小娘こうむすめ、根性こんじょうがあるならっていや!?」


「ふん」白凝冰はくぎょうひょうつめややかにはならす。


心中しんちゅうにはいかりが渦巻うずまくが、彼女かのじょけっして衝動的しょうどうてき人間にんげんではない。



今度こんど爆発ばくはつは、天蓬蛊てんぼうこ防御ぼうぎょしのげたものの。もし同種どうしゅ攻撃こうげきをもう数回すうかいければ、天蓬蛊てんぼうこ破壊はかいされてしまうかもしれない。


今度こんど爆発ばくはつ一体いったいなん手口てぐちだ?」


白凝冰はくぎょうひょう心中しんちゅう分析ぶんせきする——


地面じめんから突如起とつじょおきる爆発攻撃ばくはつこうげきなら、もし地面じめんからはなれれば回避かいひできるのか?」


彼女かのじょおろかではなかった。他の分野ぶんやでは不案内ふあんないながらも、戦闘せんとうとなればきわめて鋭敏えいびんだった。


飛行蛊ひこうこっていない。跳躍移動ちょうやくいどうしても最終的さいしゅうてきには地面じめん着地ちゃくちせざるをない…」


て!無理強襲きょうしゅうせねばならぬわけではない!」


あのおんな言葉ことばあきらかに、自分じぶん挑発ちょうはつして突撃とつげきさせようとするわなだ!


ここまで思考しこうした白凝冰はくぎょうひょういびつわらいをかべる:


洞窟どうくつんだところで安全あんぜんだとでもおもうのか?」


おれがここで見張みはっていれば、おまえみずかてくるのをてばいいだけだぞ!」


魔道まどう女蛊师おんなこし即座そくざ反論はんろんする:


「はははっ! 存分ぞんぶんまもっているがいいさ!」


「こっちはたんまり食糧しょくりょう準備じゅんびしてあるんだぜ」


そとかぜつよあめまでり出す始末しまつだ」


ものだぜ…つのは結局けっきょくどっちかよ!?」


白凝冰はくぎょうひょう冷笑れいしょうかべだまむ。時間じかん経過けいかすればするほど、緑蟒毒りょくもうどくおかされた魔道蛊師まどうこし弱体化じゃくたいかするのだから有利ゆうりだった。


だがそのとき方源ほうげん魔道蛊師まどうこしかってこぶしこまねきながらう:


野中のなか偶然ぐうぜん出会であいだ。我々(われわれ)はたんなる通行人つうこうにんぎぬ」


無理むりいればみずからをめることになる」


二度にどわぬことをねがう。失礼しつれい!」


そうのこすと、かれきびすかえした。


なんだって?!」


白凝冰はくぎょうひょうまゆげる。


やつ三転さんてんぎん。爆発ばくはつ仕掛しかけさえ見破みやぶればかくだ!」


方源ほうげんひややかにはならす:


「おまえ三転さんてんだが、おれ一転いってんだ」


厄介やっかいごとより移動優先いどうゆうせんだ」


「フンッ…用心ようじんしたことはない」


白凝冰はくぎょうひょう一瞬いっしゅん呆然ぼうぜんとしたが、ただちに方源ほうげん演技えんぎさとる。なにたくらんでいるかくわしくはからぬが、かれ理解りかいしている白凝冰はくぎょうひょう協調きょうちょうえらび、わざといかった口調くちょうおうじた:


「おまえという臆病病おくびょうやは、いつもそうやってげるんだな!」


「まあいい…今回こんかいだけいのちかしてやるぞ」


魔道蛊師まどうこしふかにらみつけ、殺意さつい露骨ろこつしめすと、方源ほうげんうしろにいてもりはいり、魔道女まどうおんな視界しかいからえた。


十分じゅうぶん距離きょりったあと白凝冰はくぎょうひょう沈黙ちんもくやぶる:


やつ爆発ばくはつ手口てぐちはさほど脅威きょういではない」


先程さきほど戦闘せんとうまった使つかわなかった」


洞窟どうくつ退しりぞき、わたし特定とくてい地点ちてんんだときはじめて起動きどうした」


「これは彼女かのじょ事前じぜん設置せっちした移動不能いどうふのう蛊虫こちゅうだろう」


「だから野獣やじゅうむれ誘導ゆうどうして洞窟どうくつおそわせ、やつ手段しゅだん踏破とうはさせるんだ!」


その一言ひとこと白凝冰はくぎょうひょう戦闘的才覚せんとうてきさいかく露呈ろていする。


だが方源ほうげんわらいながら反問はんもんした:


「そのは?」


白凝冰はくぎょうひょう言葉ことばまる。


方源ほうげん細目ほそめおく知恵ちえのきらめきを宿やどらせる:


きみ作戦さくせん通り(どおり)野獣やじゅうやつ手口てぐちあばいたとしても――」


絶体絶命ぜったいぜつめいになれば、やつは死に物狂ものぐいでたたかう」


んでも道連みちづれにしようとするだろう」


「我々(われわれ)がいのちたすかっても、確実かくじつ損耗そんもうる」


さらつづけて:


たと最後さいごたおせたとしても」


やつは『なにわたさぬ』と、蛊虫こちゅうを全て破壊はかいするにまっている」


蛊師こし蛊虫こちゅう破壊はかいするのは、たった一瞬いっしゅんおもいでりる」


阻止そしするすべない以上いじょう――」


やつころしてすら、なに利益りえきがあるというのか?」


白凝冰はくぎょうひょうかすかにまゆひそめる。


当初とうしょ二人ふたりがこの魔道蛊師まどうこし警戒けいかいしていたのは、彼女かのじょ不意打ふいうちをおそれていたため、自衛じえいのためだった。


だが実態じったい見極みきわめたいまかれらの思惑おもわく自然しぜん変化へんかした——


この衰弱すいじゃくした魔道蛊師まどうこしち、彼女かのじょ蛊虫こちゅううばい、おのれつよめようというのだ!


野生やせい蛊虫こちゅう種類しゅるい豊富ほうふだが、階位かいい適切てきせつで、かつ飼育しいくしやすいものはすくない。


蛊師こし所持しょじする蛊虫こちゅうは、かならぬし厳選げんせんしたものだ。


飼育難度しいくなんど戦闘適性せんとうてきせい進化しんか可能性かのうせいなど、あらゆるめん考慮こうりょしたうえ選択せんたくだろう。


これをられれば、野生種やせいしゅ捕獲ほかくするよりはるかに確実かくじつだ。


しかしながら——


てきたおしたあとで、蛊虫こちゅううばくせるものなどほとんどいない。


戦闘消耗せんとうしょうもうくわえ、蛊師こしひとつのおもいで蛊虫こちゅう自爆じばくさせられる。敗者はいしゃの多くは充分じゅうぶん反応時間はんのうじかんさえあれば、おのれてきわたすことなどけっしてない。


この魔道蛊師まどうこしころすこと自体じたいむずかしくないが——


彼女かのじょ蛊虫こちゅう最大限さいだいげん奪取だっしゅするのは容易よういではない。


「おまえ強取蛊ごうしゅこっていなかったか?」白凝冰はくぎょうひょう突然とつぜん指摘してきする。


一匹いっぴき強取蛊ごうしゅこなにができる?」


方源ほうげんくびる。「野獣やじゅう相手あいてならまだしも」


蛊師こしから強奪ごうだつしようとすれば、過酷かこく条件じょうけんそろわねば成功せいこうしない」


白凝冰はくぎょうひょうあらたな懸念けねんくちにする:


「こんなふうに立ちたちさった場合ばあい


ぎゃく彼女かのじょを楽々(らくらく)がす結果けっかにならないか?」



方源ほうげん嗤笑ししょうともだんくだす:


みじか期内きないやつげるはずがない」


正道蛊师せいどうこしは——


家族伝承かぞくでんしょうであれ流派師門りゅうはしもんであれ、


一定いってい素養そようつちかわれておりしつたかい。


一方いっぽう魔道蛊师まどうこし玉石混淆ぎょくせきこんこうだ:


正道からの叛逆者はんぎゃくしゃ逃亡者とうぼうしゃなかには、


訓練くんれんけた底力そこぢからを持つものもいれば、


農民のうみん猟師りょうし偶然ぐうぜん空竅くうきょうひらき、


継承けいしょう半道出家はんどうしゅっけものもいる。


「この魔道女まどうおんなは——


言葉遣ことばづかいが卑俗ひぞく戦技せんぎ未熟みじゅく


生存せいぞん知恵ちえすらりない」


野営やえいたび痕跡こんせき露呈ろていし、


負傷時ふしょうじ血痕けっこんかくそうとしない」


岩肌いわはだからびた褐色かっしょくして:


体格たいかくがごつく手足てあしが大きい様子ようすからして、


もと農婦のうふでしょ」と推察すいさつする:


ちいさな継承けいしょうひろっただけだろう」


方源ほうげん分析ぶんせきつづける:


さきほどの爆発ばくはつは、やつ事前じぜんめた二転草蛊にてんそうこだろう」


焦雷土豆しょうらいどころという」


んだものだれであれ、即座そくざ炸裂さくれつする」


軽蔑けいべつめて:


農村婦人のうそんふじんなにかる?」


蟒毒ぼうどく浸透しんとうし、処置しょちできぬまま傷勢しょうせい悪化あっかする」


恐怖心きょうふしんられ、安全あんぜんもとめて洞窟口どうくつぐち焦雷土豆しょうらいどころらしたのだ」


戦略せんりゃくく:


強攻きょうこうすれば彼女かのじょ極端きょくたん行動こうどうる」


「だが撤退てったいすることで、やつ一息ひといきつかせる」


かならうたがうだろう、我々(われわれ)が本気ほんきったかどうかを」


結論けつろんたたける:


そと危険きけんだ…再遭遇さいそうぐう恐怖きょうふがある」


焦雷土豆しょうらいどころこそが最大さいだい精神的支柱せいしんてきしちゅうだ」


「だからやつしばくはうごかない!」


白凝冰はくぎょうひょう無表情むひょうじょうだまっていている。


不本意ふほんいながらも、方源ほうげん分析ぶんせきかなっており、その洞察どうさつするど本質ほんしつ穿うがつことに——自分じぶんおよばないことをみとめざるをなかった!


分析ぶんせきまとているが」白凝冰はくぎょうひょう冷淡れいたん反論はんろんする:


蛇毒じゃどく体中からだじゅう浸透しんとうしている」


遅延ちえん解決策かいけつさくにならない」


「いずれ洞窟どうくつからざるをなくなるだろう」


方源ほうげんうなずき、みずからの右耳みぎみみ指差ゆびさす:


ゆえ監視かんし必要ひつようだ」


かれ地聴肉耳草じちょうにくみそう二転にてんながらも、その探知範囲たんちはんい数多あまた三转蛊さんてんこ匹敵ひってきする。


白凝冰はくぎょうひょうかすかにくびる:


ふん、これにも欠点けってんがある」


地聴肉耳草じちょうにくみそう真元しんげん持続的じぞくてき消耗しょうもうさせる」


「おまえ天元宝莲てんげんほうれん真元回復しんげんかいふくできても」


ひと集中力しゅうちゅうりょくには限界げんかいがある」


挑戦的ちょうせんてきせまる:


休息きゅうそく睡眠すいみん必要ひつようだ」


永遠えいえん盗聴とうちょうつづけることなど不可能ふかのうではないか?」


そんな疑問ぎもん方源ほうげんあきれたように白目しろめをむく:


なに馬鹿ばかなこと言ってるんだ?」


こうは一人ひとりだが、こっちは二人ふたりだぞ」


蛊虫こちゅう互貸たがが可能かのうなため、地聴肉耳草じちょうにくみそう交互こうご使つかい、交代こうたい休息きゅうそくすればよいのだ。


白凝冰はくぎょうひょう表情ひょうじょうかたまり、直後ちょくご両眼りょうがんずかしさとくやしさがはしる。


「くそっ! こんな簡単かんたんなことにづかなかったのか?」


いしばり、みずかおかした幼稚ようちあやまちをのろう。


方源ほうげんかすかにわらいをころす。


結局けっきょく白凝冰はくぎょうひょう方源ほうげん頭角とうかくあらわされたくないがため、無意識むいしきかれ発言はつげん反駁はんばくしたがったのだ。


そのはんに、眼前がんぜん要点ようてん見失みうしない、陣脚じんきゃくみだしてしまったのだった。


方源ほうげんはこうした反駁はんばくこのんでている——


白凝冰はくぎょうひょう反論はんろんするたび失敗しっぱいし、彼女かのじょを徐々(じょじょ)に屈服くっぷくさせる絶好ぜっこう機会きかいだからだ。


この支配しはいづかないほどかすかで、らずらずのうちに浸透しんとうしていく。


当人とうにん白凝冰はくぎょうひょうすら自覚じかくがないほどだ。


いたときには——


彼女かのじょすで無自覚むじかくのまま方源ほうげんこまとなっているだろう。


方源ほうげんにとって、魔道蛊師まどうこしたんなる標的ひょうてきの一つ(ひとつ)にぎず、白凝冰はくぎょうひょうこそがしん獲物えものとしての二番目にばんめ目標もくひょうなのだ。


……


陳翠花ちんすいか恐怖きょうふふるえていた。


もともと農婦のうふだった彼女かのじょは、田畑たはたたがやしている最中さいちゅう不運ふうんにも地穴ちあなちてしまった。


あなそこ)つけたのは死体したいひとつ——


当惑とうわくしながら伝承でんしょう蛊师こしとなったのだった。


蛊师こし


陳翠花ちんすいかみずからが、いつか『蛊师大入こしだいじん』という高貴こうき存在そんざいになるとはゆめにもおもわなかった!!


だがみじか狂喜きょうきあとに、悪夢あくむおとずれる。


耕作牛こうさくぎゅうごと巨豹きょひょうが、あお旋風せんぷうまとって彼女かのじょむら襲撃しゅうげきしたのだ。


村人むらびと全員ぜんいん死亡しぼうし、彼女かのじょだけが蛊虫こちゅうを使ってかろうじてびた。


野宿のじゅくつづける日々(ひび)が半年余はんとしあまぎ、彼女かのじょのこ蛊虫こちゅうすくなくなっていった。そして近頃ちかごろ青緑色あおみどりいろ巨蟒きょわに遭遇そうぐうする——これを仕留しとめたものの蟒毒ぼうどくおかされたのだった。


さら今日きょう二人ふたり蛊师こしとも出会であってしまう。


これで三度目さんどめ蛊师遭遇こしそうぐうだ。前二回ぜにかいいた教訓きょうくんが、自衛じえい必要性ひつようせい彼女かのじょおしえたのだった。


しかし半道出家はんどうしゅっけ彼女かのじょは、蛊师こしとしての基礎きそいていた。


先程さきほど戦闘せんとうおもかえすと、陳翠花ちんすいかむね高鳴たかなる。


「あのむすめかなうわけがない!」


さいわいなことに、事前じぜん数多あまた焦雷土豆蛊しょうらいどところこめてあった。


さら幸運こううんだったのは、あの少年しょうねん臆病おくびょうしたことだ。


陳翠花ちんすいか二人ふたり姿すがた山林さんりん完全かんぜんえるのを見届みとどけ、ホッといきいた。


だが彼女かのじょ確信かくしんできなかった——本当ほんとうったのかどうかを。


彼女かのじょ偵察蛊ていさつこ三百五十歩さんびゃくごじゅっぽさきまで見通みとおせた。


鮮明せんめいさは眼前がんぜんものがあるようだが、しかし透視能力とうしのうりょくはなかった。


「やはりつべきだ…もうみっってからよう」


陳翠花ちんすいかこころつぶやいた。いま彼女かのじょには、ようやく慎重しんちょうさと忍耐にんたい会得えとくしていたのだ。






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