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蛊真人  作者: 魏臣栋
青茅山
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第百九十四節:血幕天华

古月一代こげついちだい血走ちばしったきばをキシリキシリとみしめ、もがくもうごけもせず。


突如とつじょ、またひとつの黄光こうこう符面ふめんから抽出ちゅうしゅつされ、地面じめんちて一枚いちまい太極たいきょく光球こうきゅうわった。白黒しろくろ模様もようのこの光球こうきゅうの中で、二匹にひき特異とくい蛊虫こちゅうたがいに旋回せんかいし、われつつ回転かいてんつづけ、かすかに大道だいどうただよい、数多あまたもの瞠視どうしさせた。


「これはなんだ⁉」白凝冰はくぎょうひょうらが驚疑きょうぎこえげる。


「これはまさか四转してんの…」方源ほうげんらす。


陰陽轉身蠱いんようてんしんこ!!」天鶴上人てんかくじょうにん絶叫ぜっきょうし、顔面がんめんあきらかな震撼しんかんいろはしる。呆然ぼうぜん一瞬いっしゅんこわばったのちてんあおいで哄笑こうしょうする:「親愛しんあいなる師兄しけいよ、よくもまあこれほどのつけたものだ!ガハハハッ!ひと転生てんせいしようとはなォ?しいことをした、本当ほんとう残念ざんねんだったなァ!おれ台無だいなしにされちまってよォ!」


古月一代こげついちだいあせくるあし乱暴らんぼうし、うなごえなくげる完全かんぜん失態しったいぶり。血髑蠱けつどくこ陰陽轉身蠱いんようてんしんこも、かれ千年せんねんちか画策かくさくした肝心かんじんものであった。いま封印ふういんされ拘引こういんされるにいたり、辛苦しんくたくらみは崩壊ほうかい寸前すんぜんとなった。


天鶴上人てんかくじょうにん哄笑こうしょうさらたかまる。古月一代こげついちだい無様ぶざま姿すがたに、復讐ふくしゅう快感かいかんたされていくのをいたいほどかんっている。


さら一筋ひとすじ黄芒こうぼうされ、地面じめんちる——それは猩々しょうじょうひで、半透明はんとうめい水玉みずたまのようだった。


古月一代こげついちだいはこのるや、動作どうさがピタリとまり、たちま狂喜きょうきした。血走ちばしったくちひらきばし、えるようにさけんだ:「いそげ!だれい!この蛊虫こちゅうくだけッ!」


数名すうめい蛊师こしことけ、ただちにすすくだした。


この符底抽薪蠱ふていちゅうしんこ封印ふういんされているため、古月一代こげついちだい思念しねん制御せいぎょするのは不可能ふかのうだ。表層ひょうそうにも黄芒こうぼう封印ふういんおおい、鉄血冷てっけつれい本人ほんにん特殊とくしゅ蛊虫こちゅう使つかわねば解封かいふうできない。


しかし消耗蛊しょうもうこであるこのは、本質的ほんしつてき特殊とくしゅ性質せいしつを持つ——使用しようするにはこれをにぎつぶさねばならなかった。


数名すうめい蛊師こしおろす。黄芒封印こうぼうふういん蛊虫こちゅう封印ふういんしているのみで、防御ぼうぎょ機能きのうなどそなわっていなかった。幾度いくどかの攻撃こうげきけるや、たちま瓦解がかいし、封印ふういんされていた蛊虫こちゅうもこの蛮力ばんりきにより破壊はかいされた。


ブーンッ!


かすかな共鳴音きょうめいおんひびき、光芒こうぼうほとばしる。またたく間に拡大かくだいし、球状きゅうじょう護罩ごしょう形成けいせいした。


古月一代こげついちだい護罩ごしょう内側うちがわ天鶴上人てんかくじょうにん外側そとがわ隔絶かくぜつされた。


真紅しんく護罩ごしょう半径はんけい六畝(ろくほ:約180坪)にもおよび、白凝冰はくぎょうひょう方源ほうげんとも内側うちがわ熊驕嫚ゆうきょうまんらは護罩外ごしょうがいという配置はいちになった。


最大さいだい歓喜かんきは、白眉はくび護罩ごしょう接触せっしょくし、れるおと同時どうじふたつとなったことだ。白眉はくび崩壊ほうかい消散しょうさんし、方源ほうげんらはすべ自由じゆうとなったのだ!


「この護罩ごしょう気配けはい五转ごてんたっしているが…まさか水幕天華蠱すいまてんかこか?」方源ほうげんくびかしげた。このかれすらたことがないものだ。


天鶴上人てんかくじょうにん護罩ごしょうはばまれ、よろめきながらがる。嘲笑あざわらいやさない:「師兄しけい随分ずいぶんやるなァ、これでも反撃はんげきし、おれ揚眉吐氣蠱ようびときこやぶるとはな。しいことだ、この程度ていど防御ぼうぎょおれはばせると思うのか? 一時凌いちじしのぎにぎん!」


古月一代こげついちだいぎゃく高笑たかわらいする:「では師弟していめてみたらどうだ?」


のぞむところよッ!」天鶴上人てんかくじょうにんひとみ殺気さっきはしる。無数むすう飛鶴ひかくおそかり、同時どうじ両眼りょうがんから白焔はくえんほとばらせ、鳥翼箭雨ちょうよくせんう豪雨ごううごとこうそそいだ。


されど真紅しんく球状護罩きゅうじょうごしょう微動びどうだにせず、盤石ばんじゃくごと悠然ゆうぜんかまえている。


天鶴上人てんかくじょうにん顔色かおいろ険悪けんあくくもり、攻撃こうげきめてう:「…これはなんだ⁉」


古月一代こげついちだいあおあおいで哄笑こうしょうする:「そなたにおしえておくがな、これはひとりで合煉ごうれん血幕天華蠱けつまくてんかこだ!水幕天華すいまてんか四転してんぎず、五転蠱ごてんこ攻撃こうげきふせげる。この五轉ごてんいきたっし、防御ぼうぎょさら堅固けんごだ。水幕天華蠱すいまてんかこ使用者しようしゃすら出入でいりをゆるさぬが、この血幕天華蠱けつまくてんかこることはできど入れず。兄弟弟子きょうだいでしよ、ゆっくりたたけ、ちからいっぱい叩け。恢復かいふくて、ふたたでて貴様きさまの犬のいぬのあたまってくれる!ウォッハッハッ!」


下郎げろう分際ぶんさい大風呂敷おおぶろしきひろげおって!」天鶴上人てんかくじょうにん逆上ぎゃくじょうした。十中八九じっちゅうはっく確実かくじつだった勝負しょうぶが、まさか古月一代こげついちだい一城いちじょうを取り戻されるとは、ふたた膠着状態こうちゃくじょうたい逆戻ぎゃくもどりしてしまったのだ。


かれ狂乱きょうらん攻撃こうげきくわえ、その猛攻もうこう凄絶せいぜつきわめ、護罩外ごしょうがい蛊師こしたちは、熊驕嫚ゆうきょうまん筆頭ひっとう一切合財いっさいがっさいいのちとした。


だが血幕天華けつまくてんか内側うちがわ安穏あんのんそのもの。風平浪静ふうへいらんせい真紅しんく護罩ごしょう泰山たいざんごと微動びどうせず、蛊师こしたちのこころも徐々(じょじょ)にやすらいでいった。


初代しょだい流石さすが英雄蓋世えいゆうがいせいなり!」


ついたすかった…あと初代しょだい神威しんいあれば、相手あいて必敗ひっぱいなるぞ」


「ふう…これが五轉蛊師ごてんこしちからか?なん強大きょうだいな、よくもわたしは生きびたものだ!」


人々(ひとびと)は歓呼かんこし、叫喚きょうかんする。


しかし白凝冰はくぎょうひょうだけがひややかにはならした。十絶体じゅうぜつたい限界げんかい必死ひっしであるかれには、この膠着状態こうちゃくじょうたい物足ものたりず、内心ないしんこころよくなかった。


天鶴上人てんかくじょうにん半日はんにち攻撃こうげきつづけてもなん効果こうかもなく、突如とつじょ攻勢こうせいめハッとわれかえった。


古月一代こげついちだいのこの言葉は、かれ真元しんげん浪費ろうひさせるための"逆撫さかで"だった。血幕天華けつまくてんかへの攻撃こうげき注力ちゅうりょくさせるためだ。推測すいそく通りならば、この血幕天華蠱けつまくてんかこ水幕天華蠱すいまてんかこたようなものだが、合煉ごうれん代償だいしょうきわめてたかく、消耗品しょうもうひんとしての防御ぼうぎょかたいものの、有効時間ゆうこうじかん制限せいげんがある。


持続時間じぞくじかんぎれば、みずか消散しょうさんする運命うんめいなのだ。


ここまでさっすると、天鶴上人てんかくじょうにんただちに二個にこ元石げんせきを取りとりだし、掌中しょうちゅうにぎり、端座たんざして真元回復しんげんかいふく開始かいしした。


われたすけよ! ともに生きびるみちはそれしかない!元石げんせきだ、大量たいりょう元石げんせきこせッ!」古月一代こげついちだいさけぶと、またた周囲しゅうい蛊師こしたちが元石げんせきあつかれまわりにげた。


古月一代こげついちだい血走ちばしった大口おおぐちひらき深々(ふかぶか)と吸息きゅうそくする——元石げんせき口内こうないまれ、わせるバリバリというおとともくだかれる。膨大ぼうだい天然真元てんねんしんげん空窓くうそう奔流ほんりゅうごとながんだ!


天鶴上人てんかくじょうにんはこの光景こうけいにして焦燥しょうそうし、さけんだ:「これ以上いじょう元石げんせきわたすなッ!この愚者共ぐしゃどもめ!こいつがうごせば、貴様きさまらのみずからの資質ししつ洗練せんれんしようとし、皆殺みなごろしにするだけだ!自滅じめつへのみちみずかえらんでいるゥ!」


「フンフン、この程度ていど稚拙ちせつ仲間割なかまわれの策略さくりゃく今更いまさらか?見苦みぐるしいにもほどがある!」


いそげ!老獪ろうかいめろというなら尚更なおさら元石げんせきわたすんだ!」


いっばち古月一代様こげついちだいさまたのむのみ!」


蛊师こしたちはきそって元石げんせきり、大量たいりょう元石げんせき古月一代こげついちだいくちはなまれる。方源ほうげん白凝冰はくぎょうひょう冷眼れいがんでこれを傍観ぼうかんしていた。


もし凡体ぼんたいならばこれほどの真元しんげん貫注かんちゅうえられないが、血鬼屍けっきしむくろ強靱きょうじんかつ堅固けんごだ。空窓くうそうない真元海しんげんかい急速きゅうそく増水ぞうすいしていく。


鎮魔鉄鎖蠱ちんまてっさこ威力いりょく次第しだいおとろえ、半刻はんときたぬうちに液体えきたいわって完全かんぜん消滅しょうめつした。


古月一代こげついちだい束縛そくばくからかれ、長嘯ちょうしょう一声いっせいはな血鬼屍本命蠱けっきしほんめいこ駆動くどうした。大量たいりょう生臭なまぐさ液体えきたいせられ、またたかれ強健きょうけん両腕りょううでふたたえ、するどつめやいばごとびた。


かれ高笑たかわらいしながらがる。


丁度ちょうどそのときひたいられていた符底抽薪蠱ふていちゅうしんこ水溜みずたまりわり、完全かんぜん消散しょうさんした。


てんわれ見捨みすてず!」古月一代こげついちだいあおあおいで哄笑こうしょうする。


御先祖様ごせんぞさま、どうか老賊ろうぞくせを!」


一代様いちだいさま御出手ごしゅってあれば、かなら一気呵成いっきかせいに!」


人々(ひとびと)は歓喜かんきいた。


古月一代こげついちだいわらごえじょおさまり、眼窩がんかほのおがる。悠々(ゆうゆう)とした口調くちょうう:「てきつのは当然とうぜんだか、そのまえひとつせねばならぬことがある。」


「しまった…」方源ほうげんはその口調くちょうくと、むねうちこおりつくようになり、あし群集ぐんしゅうそと目立めだたないようにうごかした。


周囲しゅういものたちは理解りかいできず、あいわらず闘志とうしやしていた:「いかなるおことでござろうか?もしちからおよぶなら、かなら御先祖様ごせんぞさまのためにつくしまする!」


古月一代こげついちだいあおあお高笑たかわらいする:「ハッハ!そのこととは貴様きさまらからいのちうばうことだッ!」


なんだと⁉︎」一同いちどう顔色かおいろうしなった。


だが古月一代こげついちだい容赦ようしゃなくした。


ズブッ!


鋭爪するどいつめばし、瞬時またたとなり三转蛊师さんてんこしむねつらぬいた。てのひらさいには、すで鮮血せんけつれドクドク脈打みゃくう心臓しんぞうつかんでいた。


この蛊师こし古月族こげつぞくもので、しんじられない表情ひょうじょうかべ断末魔だんまつま悲鳴ひめいげると、鮮血せんけついずみごとげ、仰向あおむけにくずちた。


「良い血だ、無駄にはできん」古月一代こげついちだいわらいながら心念しんねんうごかすと、血髑蠱けつどくこ飛翔ひしょうし、この蛊师こし屍体したい旋回せんかいした。


蛊师こし死体したい痙攣けいれんし、全身ぜんしん血液けつえき血髑蠱けつどくこ吸収きゅうしゅうされる。そして全て(すべて)がその空洞くうどう眼窩がんかへとまれた。


をたっぷりとった血髑蠱けつどくこは、水晶すいしょうのような頭蓋骨ずがいこつに、鮮烈せんれつあか血管紋様けっかんもんようかびがった。


御先祖様ごせんぞさま、なんと!?」群衆ぐんしゅう爆散ばくさんし、だれかが悲鳴ひめいげる。


さわがしい!」古月一代こげついちだいかげひらめき、そのもの眼前がんぜん出現しゅつげんするや、てのひら斬撃ざんげき閃光せんこうはなち、躯体くたいふたつに切断せつだんした。ほとばし鮮血せんけつがまたも血髑蠱けつどくこ吸収きゅうしゅうされる。


一代いちだい人非人ひにんめ!我々(われわれ)が元石げんせきたすけなければ、おまえ戦力せんりょくなどあるものか!?」


「こいつもろくなものじゃねえ!みんなでかかって始末しまつするぞッ!」


「そうだ!多人数たにんずうちからだ…ぐぁっ!」


まみれの虐殺ぎゃくさつはじまった。古月一代こげついちだい五轉ごてん頂点ちょうてん空窓くうそう真元しんげん完全回復かんぜんかいふくしていた。たいする蛊师こし大半たいはん一轉いってん二轉にてんで、三轉さんてんでさえ少数しょうすうではとても相手あいてにならない。


この血幕天華けつまくてんかうちそと隔絶かくぜつし、閉塞へいそくされた空間くうかんつくげている。その主人しゅじんである古月一代こげついちだいのみがそとられるが、一度外いちどそとればふたたうちはいるには血幕天華けつまくてんか破壊はかいするか、消散しょうさんするまでつしかない。


蛊师こしたちは逃亡とうぼうもできず、戦闘せんとうでの勝利しょうりもおぼつかず、またたく間に総崩そうくずれとなり、古月一代こげついちだい一匹残いっぴきのこらずほうむられた。


白家はくけ熊家くだけ蛊师こしのぞき、古月族人こげつぞくじん一人殺ひとりごろたび血髑蠱けつどくこ血液けつえき吸尽すいじんした。数百人すうひゃくにん殺害さつがいしたあと四转してん血髑蠱けつどくこ極限きょくげんまで赤々(あかあか)とかがやいた。


古月一代こげついちだい哄笑こうしょうし、血髑蠱けつどくこ頭上ずじょう召還しょうかんする。


「このよ!この瞬間しゅんかんよ!


わたくし数百年すうひゃくねんはかってつづけたときが、ついきたった!」満足まんぞくげな長嘆ちょうたんともに、血髑蠱けつどくこかたじていたくちひらき、いずみした。


しかしいずみ生臭なまぐさくなく、かえって芳香ほうこうただよい、ものこころ爽快そうかいにした。


古月一代こげついちだいはその血泉けっせんあたまからあしまでびっしょりとれた。


だがこの血泉けっせん玄妙げんみょうで、不思議ふしぎにも一滴いってき地面じめんちず、全て(すべて)古月一代こげついちだい体表たいひょう付着ふちゃくした。そして徐々(じょじょ)に浸透しんとうし、つい空窓くうそうたっする。


古月一代こげついちだい黙然もくぜんとそのち、片時かたとき低頭ていとうしてかんると、突如とつじょ狂喜きょうきわらごえ爆発ばくはつさせた:「ガハハハ!


資質ししつ上昇こうしょうした!


まさしく昇華しょうかしたのだ!」


のこりの蛊师こしたちもみな震撼しんかんした。


血幕ちまくそとで、天鶴上人てんかくじょうにんゆび古月一代こげついちだい激怒げきどする:


血髑蠱けつどくこを、今直いますぐにかえせえッ!!」




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