表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
蛊真人  作者: 魏臣栋
青茅山
192/453

第百九十二節:扬眉吐气

「どうやって見付みつけたのかって?ハッハッハッ!」白眉はくび老人ろうじん大笑おおわらいする、わらごえ狂喜きょうきち、眼光がんこうには猟奇りょうき宿やどっていた。てのひらひろげてせれば、つのあらわれた。


まさに至親血虫ししんけつちゅうだった。


至親血虫ししんけつちゅうとおりで、紅瑪瑙べにめのうごとかがやきをはなつ。あたかもせみのようで、いま脈打みゃくうつようにひかつづけ、せみ頭部とうぶごと古月一代こげついちだいしていた。


師兄しけい貴様きさま機縁きえんうばい、暗算あんざんし、蛊虫こちゅううばくしたが、れも秘法ひほう手中しゅちゅうおさめた。ゆえにこの至親血虫ししんけつちゅう合煉ごうれんたのだ。どんな材料ざいりょうげたかりたいか?ホホホ、貴様きさまふたり人の実子じっし心血しんけつだよ。そのらはわずか五歳六歳ごさいろくさいおさなすぎたな。心血ししん充分じゅうぶんでなかったので、薬人やくじんとしてい、つきいち心血しんけつり、数十年すうじゅうねんついやしたのだ。もりもった心血しんけつで、はじめてこのたのだ!」白眉はくび老人ろうじん流暢りゅうちょうはなすすめ、得意満面とくいまんめん口調くちょうであった。


「ああ、わすれたが、貴様きさま二人ふたりもなくんだ。ガハハハ!至親血虫ししんけつちゅうげたあと長年ながねんまえさがした。だが天下てんかひろすぎて、おまえ痕跡こんせき途絶とだえた。至親血虫ししんけつちゅう五转ごてんであれど、探索範囲たんさくはんいには限界げんかいがあった。ついれもいぼれ、存息玉葬蠱ぞんそくぎょくそうこ死中しちゅうしょうを求めみずからをふうじた。つい先頃さきごろ、やむなくこおりやぶってあらわれ、最後さいごけにたのだ。なんと偶然ぐうぜんにもおまえつけ、師兄しけい、あのとき狂喜きょうき想像そうぞうできるか!」


「その鉄血冷てっけつれいのことか?ウフフフ、たしかにわたくし手紙てがみでおびきせた。かれると、むかしの我々(われわれ)の姿すがたおもすよ。なつかしいなあ…


あのころ兄弟弟子きょうだいでし魔道まどうぞくち、『正道双鹤せいどうそうかく』とうたわれ一世いっせい風靡ふうびしたものだよ」


白眉はくび老人ろうじん述懐じゅっかいし、顔面がんめんには追憶ついおくじょうかんでいた。


その表情ひょうじょう悠然ゆうぜんとしているものの、思いおもいだせばこそ双眸そうぼう殺意さついはよりしん充溢じゅういつしていった。


この白眉はくび老人ろうじん中洲ちゅうしゅうから天鶴上人てんかくじょうにんごうす。


むかし五轉ごてん御鶴蠱ぎょかくこ万獣王級ばんじゅうおうきゅう鶴王かくおう駆使くしせた。万獣王ばんじゅうおう制御せいぎょできるということは、万単位まんたんい大規模だいきぼ禽群きんぐん掌中しょうちゅうおさめたことを意味いみした。


このちからは、かれひとりで山寨さんさい一つを壊滅かいめつさせるのを可能かのうならしめた。


天鶴上人てんかくじょうにん古月一代こげついちだいは、とも中洲ちゅうしゅう仙鶴門せんかくもん師事しじした兄弟弟子きょうだいでしである。数百年前すうひゃくねんまえ紙一重かみひとえ間柄あいだがらであり、魔道蛊师まどうこし斬殺ざんさつするも協力きょうりょくい、絶妙ぜつみょう連携れんけいせていた。


あるとき魔道蛊師まどうこし追撃ついげきする途中とちゅうひとつの伝承でんしょう発見はっけんする。


それは血海老祖けっかいろうそ設置せっちした伝承でんしょうの一つだった。もし普通ふつう伝承でんしょうならば、問題もんだいにはならず、兄弟きょうだい反目はんもくすることもなかったであろう。


ところがそこにおさめられたたからは、ばん貴重きちょうで、ひとどうさせてんのぼらせ、凡人ぼんじんせんへと昇華しょうかさせるものだった!兄弟二人きょうだいふたりしくならぬはずがない。


伝説でんせつでは、血海老祖けっかいろうそ数十万すうじゅうまん伝承でんしょう天下てんかのこした。しかし真実しんじつ目的もくてきはそのなかかくされたかず真宝しんぽうであった。それらの真宝しんぽうこそ、かれ看板かんばんとなる蛊虫こちゅうであり、まこと奥義おうぎふうじていたのだ。


兄弟弟子きょうだいでし出会であったこの伝承でんしょうは、血海老祖けっかいろうそ真宝伝承しんぽうでんしょうであった。


天鶴上人てんかくじょうにん一足先ひとあしさき伝承でんしょうる。欲望よくぼうくらみ、古月一代こげついちだい暗算あんざん仕掛しか蛊虫こちゅううばり、天鶴上人てんかくじょうにん殺害さつがいせんとしたが、成功せいこうせずがれてしまう。


古月一代こげついちだい露見ろけんさとり、姓名せいめい潜伏せんぷくせざるをなかった。師門しもんからの追跡ついせきけながら数十年すうじゅうねんも転々(てんてん)と逃亡とうぼうした。寿命延命じゅみょうえんめい寿蛊じゅこつけられず、老後ろうご南疆なんきょう青茅山せいぼうざん定住ていじゅうせざるを得なかった。姿形すがたかたちえ、「古月こげつ」と名乗なのり、古月山寨こげつさんさいきずいたのだ。


天鶴上人てんかくじょうにん探索たんさく手掛てがかりをたれ、怨念おんねんえた。仙鶴門せんかくもん血海真伝けっかいしんでんおおきな興味きょうみいだいていた。師門しもん支援しえんて、存息玉葬蠱ぞんそくぎょくそうこもちみずからを沈眠ちんみんさせ、一縷いちるいのちつなめるしかなかった。


存息玉葬蠱ぞんそくぎょくそうこ手口てくちも、無論むろん邪道じゃどうぞくする。古月一代こげついちだい僵屍化きょうしばきわめて類似るいじし、みなよこしま手段しゅだんで、瀕死ひんしいのちつなぐにぎない。


僵屍化きょうしばをもってせいわろうとするもの。存息玉葬蠱ぞんそくぎょくそうこ命綱いのちづなであって、まこと寿命延長じゅみょうえんちょうではない。


この唯一ゆいいつ寿命じゅみょうやす方法ほうほうがある。それは方源ほうげん前世ぜんせおこなったように寿蛊じゅこ消耗しょうもうし、根本こんぽんからみずからの命数めいすう増加ぞうかさせることだ。これこそ正道せいどうである。ほかみちにはすべ弊害へいがいがあり、天地てんちみとめられず、むをさくぎない。


師兄しけい!この恥知はじしらずの卑劣漢ひれつかんめ!


当時とうじ暗算あんざんしたときにまさか今日きょうのことをおもえがいたか?


ハッハ!てんみずかたすくるものたすく、ついにおまえ見付みつけたぞ。今日きょうこそ貴様きさま子孫しそんやし、千年せんねんはかりごとを無為むいせしめる。さらうばわれし機縁きえん奪還だっかんする!


このつこと、れは長過ながすぎるほどえてきたのだ!!」


天鶴上人てんかくじょうにん回想かいそうわり、あめあおいで長嘆ちょうたんし、殺気さっきがみなぎる。


しかしかれいまうごさぬうちに、古月一代こげついちだい先手せんてった!


地面じめん血水けっすい激流げきりゅうごとがり、狼群ろうぐんうねるいきおいにって、またたく間にてんかんばかりとなった。


生臭なまぐさ血腥ちなまぐさにおいがはなき、粘稠ねんちゅう血水けっすいから、幾千幾万いくせんいくまん血滴子けってきしがブーンと飛翔ひしょうし、密集みっしゅうしてう。


バサバサッ…


羽音はおとなかで、無数むすう刀翅血蝙蝠蛊とうしけっぷこがり、あまおおくして、半空はんくう鶴群つるむれおそいかかる。


鶴群つるむれはたちまち大混乱だいこんらんおちいった。


血滴子けってきし刀翅血蝙蝠蛊とうしけっぷこ鉄嘴飛鶴てつくちひかくよりもはるかにちいさく、戦闘せんとうで非常に有利ゆうりだった。


天鶴上人てんかくじょうにん激怒げきどし、咆哮ほうこうげてまたがる飛鶴王ひかくおうり、古月一代こげついちだい急降下きゅうこうかした。


はや退しりぞけ!」蛊師こし悲鳴ひめいげる。


かぜおとがヒュウヒュウとり、万獣王ばんじゅうおう体当たいあたりの威勢いせいはまさに驚天動地きょうてんどうち隕石いんせき墜落ついらくするがごとひと畏怖いふねんいだかせる。


だが突如とつじょ津波なみてんき、ひそんでいた血河蟒けっかわうわばみがその遮蔽しゃへいじょうじて奇襲きしゅう仕掛しかけた。巨口おおぐちひらき、無理むりやり鉄嘴飛鶴王てつくちひかくおうながくびくだき、同時どうじ長大ちょうだい胴体どうたいをぐるぐるときつけ、地面じめん血溜ちたまりへと鶴王つるおうもうとする。


天鶴上人てんかくじょうにんつめややかに「フンッ」とはならした。血河蟒けっかわうわばみ性質せいしつ理解りかいしているかれは、血水けっすいこそがこのにとって至上しじょう回復薬かいふくやくであり、絶対ぜったい接触せっしょくさせてはならないことをっていた。


ゆえ心念しんねんはたらかせた——飛鶴王ひかくおう鉄爪てっそうばし血河蟒けっかわうわばみむようにとらえる。同時どうじつばさひとばたきさせて逆方向ぎゃくほうこう飛翔ひしょうした。血河蟒けっかわうわばみ鉄血冷てっけつれいとの戦闘せんとう傷跡きずあとが累々(るいるい)とのこり、ちからおとろえていた。飛鶴王ひかくおうにこう着状態じょうたいのまま高々(こうこう)とげられ、漸次ぜんじ山寨さんさいからはなれていった。


いのちをよこせ!」天鶴上人てんかくじょうにん怒号どごうし、白虹はっこうごとえ、赤棺せきかんおさまる古月一代こげついちだいへなおもおそいかかる。


古月一代こげついちだい一脚いっきゃくひつぎからすと、ドンッという衝撃音しょうげきおんともに、背中せなかつばさひろがった。この二枚にまいつばさ幅広はばひろ力強ちからづよく、蝙蝠こうもりはねおもわせる漆黒しっこくのものだった。


僵屍蠱きょうしこ天下てんかひろつたわるもっと古典的こてんてき蛊虫体系こちゅうたいけい二転にてん游僵蠱ゆうきょうこ三転さんてん毛僵蠱もうきょうこ四転してん跳僵蠱ちょうきょうこ五轉ごてん飛僵蠱ひきょうこ血鬼屍けっきし飛僵蠱ひきょうこひとつ、自然しぜん飛翔ひしょう自在じざい


古月一代こげついちだい眼窩がんかほのおやすごとくにらぎ、両手りょうてひろげればごと凶悪きょうあく鉤爪かぎづめとなる。つばさ一振ひとふるいさせたかと思うと、倏地しゅうととしててんく。ゴォオォン!


半空はんくう天鶴上人てんかくじょうにん激突げきとつした。


両者りょうしゃ互角ごかくちから五分ごぶ五分ごぶおのおの距離きょり態勢たいせいなおすや、ふたた相手あいて殺到さっとうした。


ドゴォオオオオ…


双方そうほう半空はんくう激闘げきとうし、人影ひとかげなく激突げきとつする。五轉蠱師ごてんこしおそるべき威厳いげんまえには、無数むすう竹楼ちくろうがなぎたおされた。


たたかいが片刻へんこくつづくと、古月一代こげついちだい一声いっせいさけぶや、血影重重けつえいじゅうじゅうわって攻勢こうせい急増きゅうぞうし、またたくに数倍すうばい凌烈りょうれつさをせた。


天鶴上人てんかくじょうにん両眼りょうがん玄妙げんみょうひかりほとばし、飛刀斬撃ひとうざんげきごとく、仙剣鑽突せんけんさんとつごとく、血影けつえいひとつまたひとやぶっていった。


古月一代こげついちだいふたた血霧けつむすと、天鶴上人てんかくじょうにん蛊虫こちゅうあやつ光輪防壁こうりんぼうへき形作かたちづくり、血霧けつむ侵食しんしょくはばんだ。


ふたた片刻へんこくぎるころには、天鶴上人てんかくじょうにんおとろからだよわり、膂力りょりょくおとろえ、古月一代こげついちだい次第しだい圧倒あっとうされ、劣勢れっせいたされた。


数百年すうひゃくねんっても、まったく進歩しんぽしていないな!」古月一代こげついちだい嘲笑ちょうしょうとどろかせた。


「くそったれがッ!」天鶴上人てんかくじょうにん逆上ぎゃくじょう罵倒ばとうした。古月一代こげついちだいがかくも強悍きょうかんになるとは予想よそうもしていなかった——血滴子けってきし刀翅血蝙蝠蛊とうしけっぷこも、もとおのれものだったのだ!


その思考しこうがさらにかれいかりにをつけた。


「フン、おくときだ」天鶴上人てんかくじょうにんこころひややかにはならし、ゆきのようにしろまゆかすかにげると、変貌へんぼうはじまった——


眉尻まゆじり突如とつじょくるしげり、二束ふたつか長眉ちょうび数十米すうじゅうメートルひろがる。左右さゆうから霊蛇れいじゃ洞穴どうけつよりあらわるがごと神速しんそく伸展しんてんし、古月一代こげついちだいしばけた。


古月一代こげついちだい身悶みもだえしたがだっせず、つめこうとしても——このまゆ見掛みかけはもろいが、じつ精鋼せいこうくさり匹敵ひってきする強靭きょうじんさ。ひとたびからまれれば、老木ろうぼくごとうごきがれなかった!


「なんと揚眉吐氣蠱ようびときこだとは!」古月一代こげついちだい口調くちょうはじめてわり、驚愕きょうがく憤怒ふんどちた。


この揚眉吐氣蠱ようびときこくのは、普通ふつうではなく元気げんきである。蛊师こし空窓くうそう真元しんげん元気げんきとして散逸さんいつさせる。だがこのめずらしく、傷敵一千しょうてきいっせん自損八百じそんはっぴゃく代物しろものだ。


天鶴上人てんかくじょうにん使つかえば、古月一代こげついちだい真元しんげんだけでなくみずからの真元しんげん消耗しょうもうする。揚眉吐氣蠱ようびときこはしごとく、両者りょうしゃ空窓くうそうむすび、真元しんげん相互消耗そうごしょうもうさせる。修爲しゅういたか蛊师こしよわものしのぐための手段しゅだんだ。もし修爲しゅういみずからよりもたかもの使つかえば、自殺行為じさつこういひとしい。


だがいま状況じょうきょうは、すこことなる。


天鶴上人てんかくじょうにん古月一代こげついちだいとも五轉ごてん頂点ちょうてんだが、古月一代こげついちだい僵屍きょうし変貌へんぼうしているため、空窓くうそうすでに、ふたたみずか真元しんげん回復かいふくできない。天鶴上人てんかくじょうにんおとろ寿命じゅみょうすくないが、空窓くうそうには生気せいきがあり、真元しんげん回復かいふくさせる能力のうりょくのこっていた。これこそが古月一代こげついちだい最大さいだい弱点じゃくてんいていたのだ!


天鶴上人てんかくじょうにん真元しんげんはなお徐々(じょじょ)に回復かいふくしていくが、古月一代こげついちだい空窓くうそう真元しんげん使つかえば使うほど一方いっぽうだった。


古月一代こげついちだい必死ひっし後退こうたいしても、白眉はくび無限むげんつづけるように対応たいおうする。同時どうじ天鶴上人てんかくじょうにん接近せっきんしてきた。


古月一代こげついちだいうなごえげ、心念しんねんはしらせ血滴子けってきし刀翅血蝙蝠蛊とうしけっぷこ招集しょうしゅうする。白眉はくびろうとしたがこうそうしなかった。白眉はくび鋼鉄こうてつよりも強靭きょうじんで、数本すうほんれても即座そくざ再生さいせいした。


空窓くうそう真元しんげん消耗しょうもうつづけるなか、このままでは確実かくじつ敗北はいぼくする。かれ流石さすが梟雄きょうゆうめられて覚悟かくごめ、戦術せんじゅつ転換てんかんして血滴子けってきし刀翅血蝙蝠蛊とうしけっぷこすべてを天鶴上人てんかくじょうにんけた。


揚眉吐氣蠱ようびときこ制御せいぎょ神経しんけいそそ天鶴上人てんかくじょうにんは、この全方位ぜんほうい攻撃こうげきに対し、防御光輪ぼうぎょこうりんはげしく駆動くどうするほかなく、受動的じゅどうてき防御ぼうぎょ余儀よぎなくされた。


しろ光輪こうりんがゆらゆらとあやうくなると、天鶴上人てんかくじょうにんむね不安ふあんはしった——


この調子ちょうしでは、古月一代こげついちだい真元しんげん枯渇こかつさせる以前いぜんに、みずからの光輪こうりんやぶれてころされてしまう!





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ