「どうやって見付けたのかって?ハッハッハッ!」白眉の老人が大笑いする、笑い声は狂喜に満ち、眼光には猟奇が宿っていた。掌を広げて見せれば、一つの蛊が現れた。
まさに至親血虫だった。
至親血虫は透き通りで、紅瑪瑙の如き輝きを放つ。あたかも蝉のようで、今も脈打つように光り続け、蝉の頭部は見事に古月一代を指していた。
「師兄、貴様は我が機縁を奪い、暗算し、蛊虫を奪い尽くしたが、我れも秘法を手中に収めた。故にこの至親血虫を合煉し得たのだ。どんな材料で煉り上げたか知りたいか?ホホホ、貴様の二人の実子の心血だよ。その子らはわずか五歳六歳、幼すぎたな。心血が充分でなかったので、薬人として飼い、月に一度心血を抽き取り、数十年も費やしたのだ。積もり積もった心血で、はじめてこの蛊を煉り得たのだ!」白眉の老人は流暢に話し進め、得意満面の口調であった。
「ああ、言い忘れたが、貴様の二人の子も間もなく死んだ。ガハハハ!至親血虫を煉り上げた後、長年お前を探した。だが天下は広すぎて、お前の痕跡は途絶えた。至親血虫は五转であれど、探索範囲には限界があった。遂に我れも老いぼれ、存息玉葬蠱で死中に生を求め自らを封じた。つい先頃、やむなく氷を押し破って現れ、最後の賭けに出たのだ。なんと偶然にもお前を見つけ、師兄、あの時の我が狂喜を想像できるか!」
「その鉄血冷のことか?ウフフフ、確かに私が手紙でおびき寄せた。彼を見ると、昔の我々(われわれ)の姿を思い出すよ。なつかしいなあ…
あの頃、兄弟弟子で魔道の賊を討ち、『正道双鹤』と謳われ一世を風靡したものだよ」
白眉の老人は述懐し、顔面には追憶の情が浮かんでいた。
その表情は悠然としているものの、思い出せばこそ双眸の殺意はより森く充溢していった。
この白眉の老人は中洲から来た天鶴上人と号す。
昔、五轉の御鶴蠱で万獣王級の鶴王を駆使し名を馳せた。万獣王を制御できるということは、万単位の大規模な禽群を掌中に収めたことを意味した。
この力は、彼が独りで山寨一つを壊滅させるのを可能ならしめた。
天鶴上人と古月一代は、共に中洲の仙鶴門に師事した兄弟弟子である。数百年前、紙一重の間柄であり、魔道蛊师を斬殺するも協力し合い、絶妙な連携を見せていた。
ある時、魔道蛊師を追撃する途中、一つの伝承を発見する。
それは血海老祖が設置した伝承の一つだった。もし普通の伝承ならば、問題にはならず、兄弟が反目することもなかったであろう。
ところがそこに納められた宝は、万に貴重で、人を道に得させ天へ昇らせ、凡人を仙へと昇華させるものだった!兄弟二人が欲しくならぬはずがない。
伝説では、血海老祖は数十万の伝承を天下に残した。しかし真実の目的はその中に隠された数の真宝であった。それらの真宝こそ、彼の看板となる蛊虫であり、真の奥義を封じていたのだ。
兄弟弟子が出会ったこの伝承は、血海老祖の真宝伝承であった。
天鶴上人が一足先に伝承を得る。欲望に目が眩み、古月一代は暗算を仕掛け蛊虫を奪い取り、天鶴上人を殺害せんとしたが、成功せず逃がれてしまう。
古月一代は露見を悟り、姓名を変え潜伏せざるを得なかった。師門からの追跡を避けながら数十年も転々(てんてん)と逃亡した。寿命延命の寿蛊を見つけられず、老後に南疆の青茅山に定住せざるを得なかった。姿形を変え、「古月」と名乗り、古月山寨を築いたのだ。
天鶴上人は探索の手掛かりを断たれ、怨念に燃えた。仙鶴門も血海真伝に大きな興味を抱いていた。師門の支援を得て、存息玉葬蠱を用い自らを沈眠させ、一縷の命を繋ぎ止めるしかなかった。
存息玉葬蠱の手口も、無論邪道に属する。古月一代の僵屍化と極めて類似し、皆邪な手段で、瀕死の命を繋ぐに過ぎない。
僵屍化は死をもって生に代わろうとするもの。存息玉葬蠱は命綱であって、真の寿命延長ではない。
この世で唯一、寿命を増やす方法がある。それは方源が前世で行ったように寿蛊を消耗し、根本から自らの命数を増加させることだ。これこそ正道である。他の途には総て弊害があり、天地に認められず、止むを得ぬ策に過ぎない。
「師兄!この恥知らずの卑劣漢め!
当時、我が身を暗算した時にまさか今日のことを思い描いたか?
ハッハ!天は自ら助くる者を助く、遂にお前を見付けたぞ。今日こそ貴様の子孫は絶やし、千年の謀とを無為に帰せしめる。更に奪われし機縁を奪還する!
この日を待つこと、我れは長過ぎるほど耐えてきたのだ!!」
天鶴上人の回想が終わり、天を仰いで長嘆し、殺気がみなぎる。
しかし彼が未だ真に動き出さぬ内に、古月一代が先手を打った!
地面の血水が激流の如く噴き上がり、狼群うねる勢いに乗って、瞬く間に天を衝かんばかりとなった。
生臭い血腥い匂いが鼻を突き、粘稠な血水から、幾千幾万の血滴子がブーンと飛翔し、密集して飛び交う。
バサバサッ…
羽音の中で、無数の刀翅血蝙蝠蛊も飛び上がり、天を覆い尽くして、半空の鶴群へ襲いかかる。
鶴群はたちまち大混乱に陥った。
血滴子も刀翅血蝙蝠蛊も鉄嘴飛鶴よりもはるかに小さく、戦闘で非常に有利だった。
天鶴上人は激怒し、咆哮を挙げて跨がる飛鶴王を駆り、真っ直ぐ古月一代へ急降下した。
「早く退け!」蛊師が悲鳴を上げる。
風の音がヒュウヒュウと鳴り、万獣王の体当たりの威勢はまさに驚天動地、隕石が墜落するが如く人に畏怖の念を抱かせる。
だが突如、血の津波が天を衝き、潜んでいた血河蟒がその遮蔽に乗じて奇襲を仕掛けた。巨口を開き、無理やり鉄嘴飛鶴王の長い首を嚙み砕き、同時に長大な胴体をぐるぐると巻きつけ、地面の血溜りへと鶴王を引き摺り込もうとする。
天鶴上人は冷ややかに「フンッ」と鼻を鳴らした。血河蟒の性質を理解している彼は、血水こそがこの蛊にとって至上の回復薬であり、絶対に接触させてはならないことを知っていた。
故に心念を働かせた——飛鶴王が鉄爪を伸ばし血河蟒を食い込むように捕える。同時に翼を一羽ばたきさせて逆方向へ飛翔した。血河蟒は鉄血冷との戦闘で傷跡が累々(るいるい)と残り、力も衰えていた。飛鶴王にこう着状態のまま高々(こうこう)と持ち上げられ、漸次山寨から離れていった。
「命をよこせ!」天鶴上人が怒号し、白虹の如く身を変え、赤棺に収まる古月一代へなおも襲いかかる。
古月一代は一脚を棺から踏み出すと、ドンッという衝撃音と共に、背中に翼が広がった。この二枚の翼は幅広く力強く、蝙蝠の羽を思わせる漆黒のものだった。
僵屍蠱は天下に広く伝わる最も古典的な蛊虫体系。二転は游僵蠱、三転は毛僵蠱、四転は跳僵蠱、五轉は飛僵蠱。血鬼屍は飛僵蠱の一つ、自然飛翔自在!
古月一代の眼窩は血の炎を燃やすごとくに揺らぎ、両手を広げれば魔の如く凶悪な鉤爪となる。翼を一振るいさせたかと思うと、倏地として天を衝く。ゴォオォン!
半空で天鶴上人と激突した。
両者は互角の力で五分と五分、各距離を取り態勢を立て直すや、再び相手へ殺到した。
ドゴォオオオオ…
双方が半空で激闘し、人影が絶え間なく激突する。五轉蠱師の恐るべき威厳の前には、無数の竹楼がなぎ倒された。
戦いが片刻続くと、古月一代が一声叫ぶや、血影重重と化わって攻勢が急増し、瞬くに数倍の凌烈さを見せた。
天鶴上人の両眼に玄妙の光が迸し、飛刀斬撃の如く、仙剣鑽突の如く、血影を一つまた一つ破っていった。
古月一代は再び血霧を吐き出すと、天鶴上人は蛊虫を操り光輪防壁を形作り、血霧の侵食を阻んだ。
再び片刻が過ぎるころには、天鶴上人は老い衰え体も弱り、膂力も衰え、古月一代に次第に圧倒され、劣勢に立たされた。
「数百年経っても、まったく進歩していないな!」古月一代が嘲笑を轟かせた。
「くそったれがッ!」天鶴上人は逆上し罵倒した。古月一代がかくも強悍になるとは予想もしていなかった——血滴子も刀翅血蝙蝠蛊も、元は己の物だったのだ!
その思考がさらに彼の怒りに火をつけた。
「フン、奥の手を切る時だ」天鶴上人は心で冷やかに鼻を鳴らし、雪のように白い眉を微かに跳ね上げると、変貌が始まった——
眉尻が突如狂い茂り、二束の長眉が数十米も伸び広がる。左右から霊蛇が洞穴より現るが如く神速に伸展し、古月一代を縛り付けた。
古月一代は身悶えしたが脱せず、爪で引き裂こうとしても——この眉は見掛けは脆いが、実は精鋼の鎖に匹敵する強靭さ。一たび絡まれれば、老木が根を張る如く動きが取れなかった!
「なんと揚眉吐氣蠱だとは!」古月一代の口調が初めて変わり、驚愕と憤怒に満ちた。
この揚眉吐氣蠱が吐くのは、普通の気ではなく元気である。蛊师の空窓の真元を元気として散逸させる。だがこの蛊は珍しく、傷敵一千、自損八百の代物だ。
天鶴上人が使えば、古月一代の真元だけでなく自らの真元も消耗する。揚眉吐氣蠱は橋の如く、両者の空窓を結び、真元を相互消耗させる。修爲が高い蛊师が弱い者を凌ぐための手段だ。もし修爲が自らよりも高い者に使えば、自殺行為に等しい。
だが今の状況は、少し異なる。
天鶴上人と古月一代は共に五轉の頂点だが、古月一代は僵屍へ変貌しているため、空窓は既に死に、再び自ら真元を回復できない。天鶴上人は老い衰え寿命が少ないが、空窓には生気があり、真元を回復させる能力が残っていた。これこそが古月一代の最大の弱点を突いていたのだ!
天鶴上人の真元はなお徐々(じょじょ)に回復していくが、古月一代の空窓の真元は使えば使うほど減る一方だった。
古月一代が必死に後退しても、白眉は無限に伸び続けるように対応する。同時に天鶴上人も接近してきた。
古月一代は唸り声を挙げ、心念を走らせ血滴子と刀翅血蝙蝠蛊を招集する。白眉を断ち切ろうとしたが功を奏しなかった。白眉は鋼鉄よりも強靭で、数本切れても即座に再生した。
空窓の真元が消耗し続ける中、このままでは確実に敗北する。彼は流石の梟雄、追い詰められて覚悟を決め、戦術を転換して血滴子と刀翅血蝙蝠蛊の全てを天鶴上人へ向けた。
揚眉吐氣蠱の制御に神経を注ぐ天鶴上人は、この全方位攻撃に対し、防御光輪を激しく駆動する他なく、受動的な防御を余儀なくされた。
白き光輪がゆらゆらと危うくなると、天鶴上人の胸に不安が走った——
この調子では、古月一代の真元を枯渇させる以前に、自らの光輪が破れて殺されてしまう!