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蛊真人  作者: 魏臣栋
青茅山
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第百七十七節:兄上…どうして私にこんなことを?!

生铁蛊せいてつこ二転にてんで、石炭せきたん団子だんごのようなかたちこぶしほどのおおきさ、くろかたまりであり、表面ひょうめんには無数むすうほそかなあないている。


方源ほうげん白银真元はくぎんしんげんそそむと、生铁蛊せいてつこ浮遊ふゆうはじめ、ゆるやかに回転かいてんしながらあなからくろきりのような铁気てっき噴出ふんしゅつした。


锯齿金蜈きょしきんご方源ほうげん足元あしもとにうずくまる。暗金色あんこんじょく甲羅こうらにはきずいくつもはしり、銀縁ぎんべり鋸歯のこぎりばちていた。


しかし铁気てっきながり、それらのきずおおうと、次第しだい傷跡きずあとっていった。


黑霧铁気こくむてっき消耗しょうもうするにつれ、锯齿金蜈きょしきんご二列にれつ鋸歯のこぎりばも、肉眼にくがんれるはやさで再生さいせいしていく。


治療蛊ちりょうこ門類もんるいかれる。あるものは蛊師こし治療ちりょうし、あるものは各種かくしゅきず専用せんようであり、またあるものは蛊虫こちゅう専用せんようである。


鋸歯金蜈蚣きょしきんごきゅうにとって、生铁蛊せいてつこはその治療蛊ちりょうこである。


半时辰(はんじしん ※注1)後、生铁蛊せいてつこ次第しだいちぢみ、こぶしおおきさの石炭せきたん団子状だんごじょうから、弾丸玉(だんがんだま ※注2)の大きさに減耗げんもうし、最終的さいしゅうてき完全かんぜん消散しょうさんした。


これは消費類しょうひるいである。


しかしその犠牲ぎせいが、鋸歯金蜈蚣きょしきんごきゅう回復かいふくった。


このとき鋸歯金蜈蚣きょしきんごきゅうは、あたかも新しいように完全かんぜんよみがえっている。両列りょうれつ銀縁ぎんべり鋸歯のこぎりばすで新品同然しんぴんどうぜんで、するど冷光れいこうはなっている。暗金色あんこんしょく背甲はいこうでは、傷跡きずあと大半たいはん平癒へいゆしていた。わずか五、六道(ご、ろくどう)のあさ傷跡きずあとが、依然いぜんとして残留ざんりゅうしている。


しかしこれはもはや要害ようがいそこなわず(※注3)、数週間すうしゅうかんたなければ、これらの傷跡きずあと鋸歯金蜈蚣きょしきんごきゅう自体じたい回復力かいふくりょくによって、消失しょうしつするであろう。


ただし、もし生铁蛊せいてつこ存在そんざいしなかったならば、鋸歯金蜈蚣きょしきんごきゅう自体じたい回復力かいふくりょくだけにたよった場合ばあいすくなくとも半年以上はんとしいじょうようしてはじめて、鋸歯のこぎりば完全かんぜん再生さいせいさせることができたであろう。


鋸歯金蜈蚣きょしきんごきゅう剛強ごうきょう柔軟性じゅうなんせいけ、真元しんげん消費しょうひすくなく攻撃力こうげきりょくつよいという長所ちょうしょがあるものの、ぎたるごうれやすく、回復面かいふくめん欠陥けっかんつ。


万物ばんぶつ平衡へいこうしており、この世界せかい全方面ぜんほうめん強盛きょうせい存在そんざいしない。長所ちょうしょがあればかなら欠点けってんがある。たとえ六転ろくてん七転しちてんといった上位じょういですら、自然しぜんのこの法則ほうそくしたがっている。


「これで鋸歯金蜈蚣きょしきんごきゅう戦力せんりょく完全回復かんぜんかいふくしたとえるだろう…」


方源ほうげんばし、鋸歯金蜈蚣のつめたい甲殻こうかくかるでながら、顔色かおいろすこ蒼白そうはくだった。


かれ蒼白そうはくかおに、冷汗ひやあせかすかににじんでいる。


畜生ちくしょういまのタイミングで…」


方源はしばり、左手ひだりて無意識むいしき自身じしんはらさえた。


心神しんしん空竅くうこうとうじると、


白银真元はくぎんしんげんうみごと静寂せいじゃくで、


空竅全体くうこうぜんたい圧迫あっぱくちから充満じゅうまんしていた。


ほかすべての容赦ようしゃなくそばさえつけられ、


ただ海面かいめん上空じょうくう、空竅の中央ちゅうおう浮遊ふゆうする春秋蝉しゅんじゅうせみだけが、


に、またみどりへとうつろう絢爛けんらんたるかがやきをはなっていた。


此刻こくせい春秋蝉しゅんじゅうせみ双翅そうしすで回復かいふくしたばかりでなく、主躯幹しゅくかん光沢こうたくえた。


高所こうしょから落下らっかする物体ぶったいが、下方かほうちかづくほど速度そくどすがごとく、春秋蝉の回復速度かいふくそくど同様どうようである。初期段階しょきだんかい困難こんなん緩慢かんまん時期じきえたのち時間じかん経過けいかするほどに、その回復速度かいふくそくど加速かそくする。


ゆえに、問題もんだいしょうじた。


春秋蝉は六転ろくてんという高位こういであり、方源ほうげん三転蛊師さんてんこしぎない。彼の空竅くうこう次第しだいに春秋蝉を収容しょうようがたくなっている。


以前いぜんは春秋蝉が極度きょくど脆弱ぜいじゃくだったため、空竅の負担ふたんおもくなかった。しかしいま、春秋蝉がおもむろ回復かいふくし、六転のとしての強大きょうだい威勢いせいしめすにしたがい、方源の空竅は「小寺こでら大仏だいぶつ」のごと状態じょうたいとなった!


「この状態じょうたいつづけば、鉄家てっけ親子おやこ真相しんそうあば以前いぜんに、おれ春秋蝉しゅんじゅうせみ空竅くうこう破裂はれつさせられてんでしまうかもな!まったきっつらはち※だ…」


しん解決策かいけつさくは、みずからの修為しゅういすみやかにたかめることだ。六転蛊師ろくてんこしったとき、空竅は春秋蝉を収容しょうようする能力のうりょくる。


しかしこの方法ほうほうあまりになが時間じかんようする。方源は前世ぜんせ五百年ごひゃくねんあいだけい四百余年よんひゃくよねんついやしてようやく六転に到達とうたつしたのだ。


彼は現時点げんじてん丙等資質へいとうししつ三転修為さんてんしゅういから六転まで修行しゅぎょうするには、深刻しんこく時間じかん不足ふそくしている。


これにくわえ、一時的いちじてき解決策かいけつさくがもう一つある。


春秋蝉を空竅から排出はいしゅつし、体外たいがい養育よういくするのだ。


しかしこの措置そちも、多大ただい弊害へいがいともなう。



第一だいいちに、春秋蝉しゅんじゅうせみ戦闘蛊せんとうこでは無く(ではなく)自衛能力じえいのうりょくけるため、空竅くうこうぞうするほどの安全性あんぜんせいない


第二だいに六转蛊虫ろくてんこちゅう一旦体外いったんたいがいあらわれれば、法則ほうそく干渉かんしょうし、一定区域いっていくいきわた天変地異てんぺんちい形成けいせいする。


特定地域とくていちいき滞留時間たいりゅうじかんわずかでも長引ながびけば、蛊師強者こしきょうしゃあまあられごとせてくるだろう。


方源ほうげん現在げんざい山寨さんさい滞在たいざいしており、人多ひとおおくて言葉ことばやすく、鉄家てっけ親子おやこにも監視かんしされている。


もし春秋蝉を体外たいがいはなてば、即座そくざ外部者がいぶしゃ察知さっちされるのは必至ひっしである。


かくしてかれ苦渋くじゅうえるほかない。


春秋蝉しゅんじゅうせみ回復速度かいふくそくどは益々(ますます)はやくなっている。この状況じょうきょうつづけば、おれのこされた時間じかんすくないだろう。古月漠塵こげつ ばくじんから四万よんまん元石げんせきとど次第しだい天元宝蓮てんげんほうれんり、ここをるつもりだ。鉄家てっけ親子おやこへの対応たいおうも、成行次第なりゆきしだい※とあきらめるしかない」


方源ほうげん心中しんちゅう嘆息たんそくした。


鉄家親子の問題は先送さきおくりできるかもしれない。しかしいま、春秋蝉が猶予ゆうよあたえてはくれない。


彼は絶体絶命ぜったいぜつめいまれている。切迫せっぱくする時間じかんなかで、一分一秒いっぷんいちびょう無駄むだにすることは、すなわ生存率せいぞんりつけずることにほかならない。


蛊师こしみずからの蛊虫こちゅうによって自滅じめつする事例じれいは、けっしてまれではない。過剰かじょうちから無理矢理むりやり行使こうしした蛊师が蛊虫の反動はんどうまれていのちとすためし五万ごまんとある。とおくをさがさずとも、古月青書こげつ せいしょれい眼前がんぜんにあるのだ。」



「『紫金石しきんせき六塊ろっかい、各々(おのおの)こぶしほどおおきい。当時とうじ方源ほうげん修為しゅういで、居続いぞくけて五塊ごかい解除かいじょしたとは。何故なぜかれにそれほど多量たりょう真元しんげんったのか?』」


鉄若男てつ じゃくなん視線しせん書簡しょかん該当行がいとうぎょう釘付くぎづけになり、得意とくいげにわらった。


鉄血冷てっけつれいうなずいた:「ついにこの疑点ぎてん気付きづいたか。し、細心さいせん観察かんさつしてはじめて常人じょうじん見逃みのがてん発見はっけんできる。だがこの疑点ぎてんから、おまえはなに推測すいそくできるか?」


鉄若男は両目りょうめじ、ひそかに直感蛊ちょっかんこ駆動くどうした。


暗闇くらやみなかで、脳裏のうり閃光せんこうごと直感ちょっかんはしった。彼女かのじょ両目りょうめ見開みひらさけんだ:


直感ちょっかんげるわ!方源ほうげんすでに『酒虫さけむし』をっていたにちがいない!」


「しかし直感ちょっかんときあやまることもある。証拠しょうこにはわりないのだよ」


鉄血冷てっけつれい注意ちゅういうながした。


証拠しょうこるのはむずかしくないわ!かれ酒虫さけむしっているなら、えさあたえねばらない。給餌きゅうじしていれば、かなら痕跡こんせきのこるものよ」


鉄若男てつ じゃくなん口元くちもとおもむろにえがいた。


こう!古月方正こげつ ほうせい再訪さいほうするわ。実弟じっていたるかれが、方源ほうげんだれよりっているはずだから」


あに過去かこについてたずねるのですか?」


方正ほうせい表情ひょうじょう複雑ふくざついろかんだ。


かれいきし、回想かいそうかたはじめた:


「兄は以前いぜんからすぐれた人物じんぶつでした。幼少時ようしょうじから才気さいき発揮はっきし、数多あまたんで山寨全体さんさいぜんたい注目ちゅうもくあつめました。あのころわたし畏敬いけい敬慕けいぼねんいだいていました。こころなかで、兄はわたしけっして登攀とはん不可能ふかのう高山こうざんのようにかんじられたのです。


しかたかのぼるほどちればいたい※もの。


後日ごじつ資質大典ししつたいてん丙等資質へいとうししつ判定はんていされてから、兄は長期間ちょうきかん消沈しょうちんし、授業中じゅぎょうちゅうつね居眠いねむり、よる外出がいしゅつしてかえらず、さけおぼれる日々(ひび)をおくりました。あの瞬間しゅんかんさかいに、わたしはじめてさとったのです…あにもまた人間にんげんなのだと」



って、『酒代さかだいおぼれる』とったか?」


鉄若男てつ じゃくなん鋭敏えいびんにこの重要語じゅうようご察知さっち両目りょうめほそめた。


「はい、一時的いちじてきに兄は深酒ふかざけふけっておりました。現実げんじつあまりに残酷ざんこくだったのでしょう。自身じしん丙等へいとう実弟じってい甲等こうとうという現実げんじつれられなかったのです。立場たちばえてかんがえれば、わたしかれ心情しんじょう理解りかいできます」


方正ほうせいこたえた。


「ではたずねるが、あのときから方源ほうげん定期的ていきてきさけ購入こうにゅしているのか?」


鉄若男がかさねて質問しつもんした。


「はい。その瞬間しゅんかんから兄は『杯中之物はいちゅうのもの※』に傾倒けいとうし、れに多額たがく財貨ざいかついやしました。期間きかんは『青竹酒せいちくしゅ』に夢中むちゅうでした。当山寨とうさんさい特産物とくさんぶつで、きわめて高価こうかしゅです。同窓どうそう元石げんせき強奪ごうだつして酒代さかだいてていました。よう行為こういまこと過分かぶんで、誰一人だれひとりとしてかれきな学友がくゆうはいませんでした」


なにか?れになに問題もんだいが?」


最期さいご方正ほうせい疑問ぎもんあらわした。


おおきな問題もんだいひそんでいる。わたしいまきみあに酒虫さけむし賭石とせきたのではなく、以前いぜんから所持しょじしていたとうたがっている。あに自堕落じだらく酩酊めいていたんなる演技えんぎであり、しん目的もくてきは酒虫を入手にゅうしゅ飼育しいくしている事実じじつ隠蔽いんぺいすることにあったのだ」


鉄若男てつ じゃくなんひくおもこえ応答おうとうした。


なにだと?!」


方正は言葉ことばき、驚愕きょうがくしてせきから躍起やっきがった。


知報ちほう衝撃的しょうげきてきすぎた!


きみ先程さきほど発言はつげんで、わたし疑念ぎねんさらふかまった。あに普段ふだん何処どこさけ購入こうにゅしているのか?再調査さいちょうさ必要ひつようだ」


鉄若男もがった。彼女かのじょ秒単位びょうたんいあらそい、行動力こうどうりょく満々(まんまん)、電光石火でんこうせっかごとうごした。


「『青竹酒せいちくしゅ』は山寨全体さんさいぜんたい唯一ゆいいつ、あの『唯一無二ゆいいつむに宿屋やどや』でしか販売はんばいしていない」


「では失礼しつれいする」


鉄若男てつ じゃくなんきびすかえしてった。


って!わたしも…一緒いっしょく!」


方正ほうせい一瞬躊躇いっしゅんちゅうちょし、けた。


半时辰はんじしんのち


鉄若男が青石あおいし街路がいろあるきながら総括ながらそうかつした:


宿屋主人やどやしゅじんへの聴取ちょうしゅ明白めいはくになった。


方源ほうげん多量たりょうさけ購入こうにゅしたのは


深層目的しんそうもくてき※──酒虫さけむしへの給餌きゅうじのためだ。


賭石とせきおもむいたのは、


酒虫さけむし合理的ごうりてき衆人しゅうじん眼前がんぜん暴露ばくろするため。


れら全て(すべて)はかれ周到しゅうとう計画けいかくしたものだ」


かたわらで、古月方正こげつ ほうせい


放心状態ほうしんじょうたいあるいており、


顔面がんめんには呆然ぼうぜんとしたいろかんでいた。


彼は予想よそう出来できなかった──真実しんじつしか斯様かようなものだとは!


過去かこ一時期いちじきかれ方源ほうげん見下みくだし、自堕落じだらくだと断罪だんざいしていた。あの瞬間しゅんかんから、いにしえ高峰たかみね最早もはやよじのぼれない絶壁ぜっぺきではないかんじていた。


しかし真実しんじつは、れら全て(すべて)が方源ほうげん偽装ぎそうかれ演技えんぎかれ布石ふせきであった!


周囲しゅういものみなかれあざむかれて翻弄ほんろうされつづけていた。


そして古月方正こげつ ほうせい例外れいがいではない


ぎし日々(ひび)のあにへの軽視けいし侮蔑ぶべつは、いまながめれば、嘲笑あざわらいにちた茶番劇ちゃばんげきごときものだ。


「兄よ…おまえ心中しんちゅうで、おれなになんだ?いつわりの泥酔でいすいひとみうつおれ嘲笑あざわらいのたねか?あによ!おまえなん狡猾こうかつたましい持主もちぬしよ!その胸中きょうちゅうで、おれ冷笑れいしょうさそ幼稚ようち存在そんざいなのかッ!」


方正ほうせいこころ咆哮ほうこうした。


かれ羞恥しゅうち憤激ふんげきかれた。


自分じぶん方源ほうげんもてあそばれるあやつ人形にんぎょうごとく、とわ幼稚ようちきわまる喜劇きげきえんつづけてきたとかんじた。


かれ方源ほうげん侮蔑ぶべつ全身ぜんしんめた。


兄貴あにき何故なぜおれ斯様かようあつかうのッ!?」


鉄姑娘てつこじょう※がなければ、おれいままんされてただろう!何時いつまでおれ族内衆ぞくないしゅうあざむもりだ?!おまえ無辜むこ虐殺ぎゃくさつし、ひと草芥そうかいごとあつかう※…


詐欺さぎ虚偽きょぎ冷酷れいこく残酷ざんこく、それこそがおまえ真実しんじつ姿すがたなのかッ!?」

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