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蛊真人  作者: 魏臣栋
青茅山
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第百四十二節:古月青书vs白凝冰(下)

方正ほうせいとおくでいきころして見守みまもっていた。


このたたかいは最終局面さいしゅうきょくめんむかえ、勝敗しょうはいはこの一撃いちげきにかかっている。


青書様せいしょさま頑張がんばってください!」方正ほうせいからだふるえていた。自分じぶん邪魔じゃまになるだけだとかっているため、こえげて応援おうえんするしかなかった。


そのこえとどいたのか、氷刃嵐ひょうじんあらしが徐々(じょじょ)に縮小しゅくしょうし、青書せいしょちからさえまれていった。


「くそっ……まさかおれ真元不足しんげんふそくになるとは」白凝冰はくぎょうひょういしばり回転かいてん速度そくどとすが、真元しんげん回復かいふく消費しょうひいつかず、ちようがなかった。


北冥冰魄体ほくめいひょうはくたい真元回復しんげんかいふくはやいが、三転さんてん時の回復速度かいふくそくど木魅蠱もくみこ天然元気てんねんげんき吸収きゅうしゅうくらべわずかにおとっていた。もし四転よんてんたっしていれば、回復速度かいふくそくど木魅蠱もくみこ凌駕りょうがしていただろう。


だが生死せいしたたかいに「もしも」はない。


とうがけようが、結果けっかれねばならない。


つい氷刃嵐ひょうじんあらし停止ていししたが、古月青書こげつせいしょ代償だいしょうはらっていた。


かれ両手りょうて馬車ばしゃほどの大きさだったが、ひだりにはゆび二本にほんみぎには三本さんぼんしかのこっておらず、両掌りょうてのひら氷刃ひょうじん大半たいはんけずられていた。


だが両手りょうてを徐々(じょじょ)にじていくなかあらたな樹幹じゅかんてのひらから急速きゅうそく成長せいちょうし、からはじめた。


両掌りょうて木製もくせいおり形成けいせいし、白凝冰はくぎょうひょうめた。


「くそっ……!」白凝冰はくぎょうひょう歯軋はぎしりしたが、体内たいない真元しんげん枯渇こかつしており、青書せいしょ術中じゅつちゅうおちいるしかなかった。


った!!」遠方えんぽうでこの光景こうけい目撃もくげきした方正ほうせいがってさけんだ。


おれぬのか……」白凝冰はくぎょうひょうこころ絶叫ぜっきょうし、巨掌きょしょうせまるのを凝視ぎょうしした。両掌りょうて完全かんぜんわされば、その怪力かいりき肉塊にくかいつぶされる運命うんめいだ。


しかしてのひらうごきが次第しだいにぶり、途中とちゅう完全かんぜん停止ていしした。


白凝冰はくぎょうひょう一瞬いっしゅん呆然ぼうぜんとしたのち古月青書こげつせいしょ異変いへんきたことに気付きづ狂喜きょうきした。


「くそっ……あと一歩だったのに……」古月青書こげつせいしょ胸中きょうちゅう無念むねん渦巻うずまいた。両手りょうて感覚かんかく完全かんぜんうしなわれ、もはや木塊もっかいしていた。


同時どうじ内臓ないぞうはい存在感そんざいかんうすれていく。木魅蠱もくみこちから全身ぜんしんむしばみ、かれへとかっていた。


「いや……まだわらせられん!青藤蠱せいとうこなら使つかえる!」必死ひっし精神せいしんふるて、青藤蠱せいとうこ起動きどうさせた。


おり隙間すきまからふと青蔓あおづる白凝冰はくぎょうひょうおそいかかる。


白凝冰はくぎょうひょう必死ひっし回避かいひするが、幾多いくた戦闘せんとう体力たいりょく限界げんかいおりないせま空間くうかん身動みうごきがれず、つい右足みぎあしつるからまれ転倒てんとうした。


わった……」青書せいしょ安堵あんど吐息といきらすと同時どうじに、十数本じゅうすうほん青蔓あおづる追撃ついげき開始かいし


生死せいしさかいで、白凝冰はくぎょうひょう空竅くうこう最低限さいていげん真元しんげん回復かいふくしていた。


躊躇ちゅうちょなくすべてを氷刃蠱ひょうじんこそそみ、あらたな氷刃ひょうじん形成けいせい


ひらめき、右足みぎあししば青蔓あおづるる。白凝冰はくぎょうひょうどろまみれでころがり、間一髪かんいっぱつ追撃ついげきけた。


青蔓あおづる地面じめんさると、あつ地層ちそうつらぬ土煙つちけむりう。ふたたおそいかかる青蔓あおづるを、白凝冰はくぎょうひょうあら息遣いきづかいで氷刃ひょうじんはらつづけた。


四方八方しほうはっぽうからおそいかかる青藤あおづる生死せいし紙一重かみひとえ些細ささいなミスがすなわ意味いみする状況じょうきょうで、白凝冰はくぎょうひょう天才てんさいらしい本領ほんりょう発揮はっき


恐怖きょうふ潜在能力せんざいのうりょく解放かいほうさせ、回避動作かいひどうさ洗練せんれんされた機械的きかいてきうごきに変貌へんぼう転倒てんとう危機一髪ききいっぱつ場面ばめんかえしつつも、なんとかいのちつなめた。




青蔓あおづるが次々(つぎつぎ)と氷刃ひょうじんられ、かず次第しだいっていった。


古月青書こげつせいしょ青藤蠱せいとうこ起動きどうできないわけではない。周囲しゅうい天然元気てんねんげんきがほぼ吸収きゅうしゅうくされたからだ。


外側そとがわから徐々(じょじょ)に元気げんきながんでくるが、微々(びび)たるりょうでは青藤蠱せいとうこ需要じゅようたせない。


さらわるいことに、木魅蠱もくみこちから完全かんぜん古月青書こげつせいしょ肉体にくたい侵食しんしょくし、意識いしきまでむしばはじめていた。


視界しかいかすみ、思考しこう断続的だんぞくてき途切とぎれるようになった。


息吹いぶき顔面がんめんでる。


わりか? いや……」未練みれんり、最後さいごちから白凝冰はくぎょうひょう捕捉ほそくしようとする。


もはや視覚しかくうしない――木魅蠱もくみこ眼球がんきゅう木質化もくしつかし、聴覚ちょうかくむなしい反響はんきょうしかとらえられない。


のこされたのはわずかな触覚しょっかくだけ。白凝冰はくぎょうひょう抵抗ていこう手掛てがかりに位置いち推測すいそくし、攻撃こうげきつづけた。


その努力どりょくむすび、つい白凝冰はくぎょうひょう力尽ちからつらえられる。一本いっぽんつるくびからき、かれげながらはじめた。


白凝冰はくぎょうひょうのどさえつけられ、くち必死ひっしひらいても酸素さんそはいってこない。青書せいしょ同様どうように、へとしずんでいく。



……


方源ほうげんあら息遣いきづかいをしていた。長引ながびいたたたかいが終結しゅうけつした。


地面じめんには白家はくけ蠱師こし5にん死体したい見開みひらいたまま横たわっている。


隠鱗蠱いんりんこ使つかった奇襲きしゅう月芒蠱げつぼうこ双猪巨力そうちょきょりょく優位性ゆういせいが、500ねんぶん戦闘経験せんとうけいけんによって驚異的きょういてき効果こうか発揮はっきしていた。


青書せいしょには山寨さんさい帰還きかんするとげていたが、それはたんなる口実こうじつぎなかった。


距離きょりったあと隠鱗蠱いんりんこ姿すがた山道やまみち戦場せんじょう迂回うかい蛮石ばんせき熊力ゆうりきらがたおれた場所ばしょ順番じゅんばんまわった。


蛮石ばんせきら5にん死体したいから蠱虫こちゅう回収かいしゅうし、熊力ゆうりき死亡場所しぼうばしょ到着とうちゃくしたとき、すでに死体したいえていた。ましてやかれらの蠱虫こちゅうなどのぞむべくもない。


熊林ゆうりん死体したい回収かいしゅうしたようだ。残念ざんねん……熊力ゆうりき棕熊本力蠱しゅうゆうほんりきこれたかったのに」方源ほうげん心中しんちゅうなげいた。


熊林ゆうりんかしておくのは本意ほんいではなかった。


しかし当時とうじ熊姜ゆうきょう殺害さつがいしたあと熊林ゆうりん警戒心けいかいしんきわめてつよく、殺害さつがいするには手間てまがかかる状態じょうたいだった。


そのとき白凝冰はくぎょうひょうがすぐそばにいた。方源ほうげん熊林ゆうりん内輪揉うちわもめをはじめれば、白凝冰はくぎょうひょう漁夫ぎょふあたえる結果けっかになるだろう。



「ただし棕熊本力蠱しゅうゆうほんりきこ熊力ゆうりきからだにあるとはかぎらん。かれすで一熊いっきゅうの力を養成ようせいえ、家族かぞく上納じょうのうした可能性かのうせいもあろう」


方源ほうげんらし、山道やまみち戦場せんじょう遠望えんぼうした。


青書せいしょらと白凝冰はくぎょうひょう激戦げきせん当然とうぜん巨大きょだい物音ものおとはっしており、周囲しゅうい徘徊はいかいするおおかみれや蠱師こしたちのあざむくことは不可能ふかのうだった。


方源ほうげん青書側せいしょがわ楽観視らっかんししていなかったが、木魅蠱もくみこ威力いりょく前世ぜんせでこのたことがある。白凝冰はくぎょうひょうとの竜虎りゅうこあらそいはかならこる運命うんめいだった。


かれ当然とうぜん発生はっせい機会きかいのがすまいと、周囲しゅうい待機たいきすることをえらんだ。


時折ときおり激戦げきせんおとせられた蠱師こしたちがあらわれるたび方源ほうげん狼群おおかみむれ誘導ゆうどうして足止あしどめした。


まわらない場合ばあいみずかくだした。


山道やまみち戦場音せんじょうおとはほぼんだ……勝敗しょうはいまりかけてるようだ」右耳みぎみみからびた触手しょくしゅ岩壁がんぺきり、戦場せんじょう内情ないじょうさぐっていた。


正直しょうじき古月青書こげつせいしょ活躍かつやく予想よそうえており、右腕みぎうでうしなった白凝冰はくぎょうひょう戦力低下せんりょくていか方源ほうげん想定そうてい以上いじょうだった。


しかし突然とつぜん方源ほうげん表情ひょうじょうけわしくなった。


二方向ふたほうこうから大勢おおぜい足音あしおと戦場せんじょうかっているのを感知かんちしたのだ。一方いっぽう古月山寨こげつさんさい他方たほう白家寨はくかさいからの蠱師団こしだんだった。


かくグループ二十人にじゅうにん以上いじょう規模きぼ豪電狼群ごうでんろうぐんでははばめず、方源ほうげん両方りょうほう狼群ろうぐん同時どうじ誘導ゆうどうすることは不可能ふかのうだった。


「どうやら戦況せんきょうれたようだな……両家りょうけ急派きゅうはした援軍えんぐんだ。いそいで山道やまみちはい必要ひつようがある」


方源ほうげん最接近さいせっきんし、さき山道やまみちんだ。


戦場せんじょう光景こうけいかれ予想よそう裏切うらぎらなかった。


おり隙間すきまから、白凝冰はくぎょうひょうつるられ瀕死ひんし状態じょうたいでかすかにいきをしているのを確認かくにんした。


氷肌ひょうはだ防御力ぼうぎょりょく命綱いのちづなか……残念ざんねん、おまえ相手あいておれだ」殺意さついがり、あし連打れんだして白凝冰はくぎょうひょう突進とっしんする。サッサッ!


突然とつぜん松葉まつばあめ方源ほうげんおそった。


なんと古月青書こげつせいしょ松針蠱しょうしんこ攻撃こうげきしてきたのだ。


「どういうことだ?」方源ほうげん後退こうたい松針まつばけながら、巨大樹精きょだいじゅせいした古月青書こげつせいしょ合点がてんした。「意識いしき混濁こんだく敵味方てきみかた区別くべつもつかぬ……ただ白凝冰はくぎょうひょうたお執念しゅうねんのみでうごいておる。侵入者しんにゅうしゃみな邪魔者じゃまもの見做みなすのだな」


そのとき山道やまみち反対側はんたいがわ白家はくけ蠱師こしたちの姿すがたあらわれた。


惨憺さんたんたる戦場せんじょうにした彼等かれらかお驚愕きょうがくいろかんだ。


「そこの小僧こぞう軽挙けいきょひかえた方がのためだぞ!」三転蠱師さんてんこし方源ほうげん怒鳴どなりつけた。こえには警告けいこく脅迫きょうはくめられている。


「この白凝冰はくぎょうひょう……本当ほんとううんつよいな」方源ほうげん状況じょうきょうながめながら内心ないしん冷笑れいしょうした。もはやめを機会きかいのがしたとさとる。


第一だいいち青書せいしょ意識いしき混濁こんだくし、一本いっぽん青蔓あおづるでは氷肌ひょうはだ防御ぼうぎょを持つ白凝冰はくぎょうひょうころせない。


方源ほうげん白凝冰はくぎょうひょうちかづけば、必然的ひつぜんてき青書せいしょ封鎖ふうさ突破とっぱせねばならず、かえって白凝冰はくぎょうひょう脱出だっしゅつ手助てだすけかねない。


かり強行突破きょうこうとっぱしたとしても、白家はくけ三転さんてん二転にてん精鋭蠱師せいえいこしたちがだまってているはずがない。かなら阻止そしうごくだろう。


なにより白凝冰はくぎょうひょうたおすこと自体じたいきわめて危険きけんなのだ。



白凝冰はくぎょうひょう空竅くうこうには真元しんげん回復かいふくしており、すくなくとも藍鳥冰棺蠱らんちょうひょうかんこ使用可能しようかのう状態じょうたいだ。


かり方源ほうげん白凝冰はくぎょうひょうころしたとしても、白家はくけ精鋭蠱師せいえいこしたちがだまって見逃みのがすはずがない。かならころしにるだろう。


方源ほうげん内心ないしん嘆息たんそくらした:「距離きょりとおすぎる……白凝冰はくぎょうひょうまで20以上いじょう月芒蠱げつぼうこ射程しゃていは10しかない。まして……瀕死ひんし白凝冰はくぎょうひょうのためにいのちけ、転生計画てんせいけいかくみだすのはわりわん」


そうかんがえながら数歩すうほ後退こうたいした。


この弱腰よわごしえる動作どうさに、けた白家はくけ蠱師こしたちは安堵あんどいきをついた。






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