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蛊真人  作者: 魏臣栋
青茅山
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第百四十節:古月青书vs白凝冰(上)

白凝冰はくぎょうひょう氷晶ひょうしょう脱出だっしゅつだれ予想よそうよりもはやかった。


氷晶ひょうしょう最初さいしょ亀裂きれつはいり、ひろがり、つい完全かんぜん崩壊ほうかいした。


家老かろう古月青書こげつせいしょ古月薬紅こげつやっこう五人ごにんかれ包囲ほういするなか古月方正こげつほうせいとおくのおかうえ見張みはりをつづけていた。白家はくけ蠱師こしグループがあらわ次第しだいただちに警告けいこくはっする任務にんむう。


白凝冰はくぎょうひょうぞく蠱師こし殺害さつがいし、三寨盟約さんさいめいやくやぶるとは。人殺ひとごろしのむくいはてんことわりなにわけはあるか?」家老かろうつめたいわらいをこぼした。


白凝冰はくぎょうひょう返事へんじもせず、右腕みぎうで見下みおろした。


左腕ひだりうでむなしくばすが、右側みぎがわにはからかぜしかつかめない。


まゆじょ々(じょ)にしかめ、かおくらくするとともに、目尻めじり雷光らいこう宿やどった。


右腕みぎうでてるまでんだ……あのおとこ方源ほうげんとやらか」熊力ゆうりき青書せいしょらのごえから名前なまえおぼえていた。


そうつぶやくと、白凝冰はくぎょうひょう青水晶あおすいしょうのようなひとみ極限きょくげん殺意さついちた。


全身ぜんしんから三転蠱師さんてんこし気配けはいはなち――方源ほうげん予測よそく通り、みずからの修為しゅうい封印ふういんできるものは、当然とうぜんくこともできた。これまでの戦闘せんとうでは、その時間じかんりなかっただけだ。


いま三転さんてん白銀真元はくぎんしんげん空竅くうこうたし、おも真元しんげん竅壁こうへき圧迫あっぱくする。白凝冰はくぎょうひょうさとっていた――この瞬間しゅんかんからみずからが破滅はめつかっていることを。



蠱師こし空竅くうこうでは真元しんげん生成せいせいされ、ぎゃくにその真元しんげん空竅くうこう温養おんようする。


実際じっさい真元しんげん空竅くうこうない存在そんざいするかぎり、竅壁こうへきに対して温養効果おんようこうかがある。ただしこの効果こうか顕著けんちょではなく、蠱師こし自発的じはつてき真元しんげん消耗しょうもうする場合ばあいとはくらものにならない。


たとえば平穏へいおん海水かいすいでも、周囲しゅうい岩礁がんしょう侵食しんしょくする。ただその効果こうかは、なみいわつほどの明瞭めいりょうさではない。


だが北冥冰魄体ほくめいひょうはくたい場合ばあい三転さんてんたっすると――自発的じはつてき真元消耗しんげんしょうもうがなくとも、真元しんげん空竅くうこう存在そんざいするかぎり、普通ふつう蠱師こし積極的せっきょくてき消耗しょうもうして温養効果おんようこうか同等どうとう効能こうのうられる。


これこそ北冥冰魄体ほくめいひょうはくたい蠱師こし修行速度しゅぎょうそくど飛躍的ひやくてき向上こうじょうさせる奥義おうぎである。


さらにこの温養効果おんようこうかは、真元しんげん位階いかい上昇じょうしょうするほど強化きょうかされる。四転してんいたれば、真元しんげん存在そんざいするだけで空竅くうこう温養おんようし、通常つうじょう蠱師こし積極的せっきょくてき消耗しょうもうする場合ばあい数倍すうばい効果こうか発揮はっきする。


普通ふつう蠱師こし境涯きょうがいたかまるほど修行速度しゅぎょうそくど鈍化どんかする。だが十絶体じゅうぜつたいぎゃくで――のちになるほど資質ししつ強化きょうかされ、修行しゅぎょう加速かそくする。自爆じばくによる破滅はめつ瞬間しゅんかんまで。


比喩的ひゆてきえば――高所こうしょから自由落下じゆうらっかするものごとし。落下距離らっかきょりえるほど速度そくど加速かそくし、地面じめん激突げきとつしたさい衝撃しょうげき甚大じんだいとなる。


十絶体じゅうぜつたい修行しゅぎょうとは、最高点さいこうてんから落下らっかはじめるようなもの。修行速度しゅぎょうそくど増大ぞうだいするが、られるのは落下中らっかちゅうつかかがやきと――おとずれへの恐怖きょうふ流星りゅうせい地上ちじょうち、ほのおむがごとく、最輝さいき瞬間しゅんかんこそが終焉しゅうえんときとなる。



さき白凝冰はくぎょうひょうみずか白銀真元はくぎんしんげん赤鉄真元せきてつしんげん希釈きしゃくしたのは、まさにこの理由りゆうによるものだった。


いまみずからの空竅くうこうふたた白銀真元はくぎんしんげんち、白凝冰はくぎょうひょう一分一秒いっぷんいちびょうたりとも修行しゅぎょうがるのをかんじていた。


白銀真元はくぎんしんげん使つかわざるをなくさせ、霜妖蠱そうようこまで犠牲ぎせいに……方源ほうげんはどこにいる!?」殺意さつい濃厚のうこうにさせながらあおひとみ周囲しゅうい見渡みわたすが、方源ほうげん姿すがたたらない。


自爆じばくさせた霜妖蠱そうようこ三転さんてん蠱虫こちゅうだ。三度みたび失敗しっぱいて、莫大ばくだい資源しげんついやし合成ごうせい成功せいこうしたものだ。自爆じばくじつしい。


白凝冰はくぎょうひょう三転さんてん昇格しょうかくしたが、期間きかんあさい。一族いちぞく支援しえんはあったものの、資源しげんひとめできるわけもなく、三転蠱虫さんてんこちゅう二匹にひきしかたない。霜妖蠱そうようこうしなったいまのこるは藍鳥冰棺蠱らんちょうひょうかんこだけだ。


かんがえるほどくやしさがつのり、まれてからいままでこんな大損おおぞんはしたことがない!


もし方源ほうげんがここにれば、だれめようとくるったように攻撃こうげきしていただろう。


白凝冰はくぎょうひょう無視むしに、古月一族こげついちぞく家老かろう最大級さいだいきゅう屈辱くつじょくかんじた。


眼中人無がんちゅうひとなしの小童こわっぱめ!老夫ろうふ月刀斬げっとうぎりをらえ!」怒号どごうともかった。


「フン!」白凝冰はくぎょうひょう左腕ひだりうで一振ひとふりし、寒気かんきまたたく間に長身ちょうしん氷刃ひょうじん形成けいせいした。


以前いぜん凝縮ぎょうしゅくした氷刃ひょうじんは1メートルあまりだったが、いまや2メートルにたっし、刃先はさきさらするど冷気れいきはなつづけている。


挿絵(By みてみん)


ガン!


家老かろうたかかかげた両手りょうて月光げっこうはなち、氷刃ひょうじん激突げきとつして金属音きんぞくおんとどろかせた。


老人ろうじんかおおどろきのいろかび、一歩いっぽ後退こうたいすると両掌りょうてのひらわせななめにろした。


金月斬きんげつざん


彎曲わんきょくした月刃げつじんが1メートル以上いじょうび、黄金色こがねいろやいば霸気はきまとってまたた発射はっしゃされた。


金色こんじき月光げっこう白凝冰はくぎょうひょう蒼白そうはくかおらすなかかれつめたくわらい、左手ひだりて氷刃ひょうじんろした。


ガン!


月刃げつじん氷刃ひょうじん衝突しょうとつ金色きんいろやいば消滅しょうめつし、氷刃ひょうじんも粉々(こなごな)にくだけてこまかい氷片ひょうへんとなった。



「これが三転蠱師さんてんこし同士どうしたたかいか……じつつよい!氷刃ひょうじんにしろ金色こんじき月刃げつじんにしろ、おれには到底とうていふせげん!」遠方えんぽう見守みまも方正ほうせいくらませ、理解りかいれずにいた。


「まさか……二転にてん氷刃蠱ひょうじんこ老夫ろうふ三転さんてん月手刀げつしゅとう黄金月おうごんげつふせめるとは!」家老かろうき、しんがた様子ようすつぶやいた。


北冥冰魄体ほくめいひょうはくたいこおりみず関連かんれん蠱虫こちゅうたい増幅効果ぞうふくこうかをもたらす。この効果こうか蠱師こし修為しゅういたかまるほど巨大化きょだいかする。


白凝冰はくぎょうひょう三転さんてんとき二転蠱虫にてんこちゅう三転級さんてんきゅう威力いりょく使用しよう可能かのう四転してんときには四転蠱虫してんこちゅう五転ごてんみの効果こうか発揮はっきする。


先前せんぜん修為しゅうい抑制よくせいしていたさい真元回復能力しんげんかいふくのうりょくのみのこしていたが、いま抑制よくせい三転さんてんもどったことで、北冥冰魄体ほくめいひょうはくたい真価しんか顕現けんげんしたのだ。




「フン、老いぼれ。らぬことなどやまほどあるわ」白凝冰はくぎょうひょう足元あしもとめ、にした氷刃ひょうじん水平すいへいかまえると、くるったように自転じてんはじめた。


ヒュルルル……


はげしい風音かざおととも回転速度かいてんそくどす。


ガオッ!


かぜ猛獣もうじゅう咆哮ほうこうわり、二呼吸にこきゅうたぬうち五米ごメートル氷刃嵐ひょうじんあらし形成けいせいされた。


竜巻たつまきのような狂風きょうふうしろしもらし、四肢ししこごえつかせる。


げろ!」家老かろうすらこの光景こうけい正面しょうめんからめることをけ、いそいで退しりぞいた。


だがほか二転蠱師にてんこしたちは回避かいひれない。


氷刃嵐ひょうじんあらしおそきた速度そくど従来じゅうらい三倍さんばい以上いじょう――


「ぎゃあ――!」


二人ふたり男性だんせい蠱師こし不運ふうんにも氷刃嵐ひょうじんあらしまれ、悲鳴ひめい突然とつぜん途絶とだえた。かれらはまたた無数むすう肉片にくへんへときざまれ、そのいのちとした。


たすけて!」古月薬紅こげつやっこう恐怖きょうふふるえながらさけぶ――まさに氷刃嵐ひょうじんあらしまれようとする瞬間しゅんかん


青藤蠱せいとうこ


古月青書こげつせいしょてのひらからあおつるあらわれ、へびのように薬紅やっこうこしからみついた。


せようとした刹那せつな氷刃嵐ひょうじんあらし襲来しゅうらいし、薬紅やっこう丸呑まるのみにした。


ザクザクッ!


氷刃ひょうじん女蠱師おんなこしからだろくつに切断せつだん鮮血せんけつながもなく極寒ごっかん凍結とうけつし、つづ斬撃ざんげきてのひらおおきさの凍屍とうし破片はへんした。


薬紅やっこう――!」青書せいしょはこの光景こうけい目撃もくげきし、かんばかりに激怒げきどした。


薬紅姉やっこうねえ……」おかうえ方正ほうせい現実げんじつを受けれいれられず、たましいけたようにひざをつき、ほおなみだつたった。



「くそ……鋼衣蠱こういこ!」家老かろうふかいきい、全身ぜんしん黒光くろびかりがほとばしり、鋼鉄こうてつよろいまとったかのようになった。


かれ両腕りょううでかおまもり、あし大股おおまたすと、氷藍色ひょうらんしょく刃嵐はあらしぐに突撃とつげきした。


ガンガンガン!


勇敢ゆうかんにもあらしなかんだ。


数呼吸すうこきゅうみじかあいだに、氷刃ひょうじん無数むすう家老かろうからだりつけ、硬質こうしつ金属音きんぞくおんひびかせた。


つか膠着こうちゃく状態じょうたいあとあらしきゅうおさまった。白凝冰はくぎょうひょう家老かろうかいってくしている。


いぼれ、みずか死地しちもとめるとはな」白凝冰はくぎょうひょう青水晶あおすいしょうひとみさらわたる。しろころも銀髪ぎんぱつ寒風かんぷうらいでいた。


ひだり氷刃ひょうじんすでに二つにれていたが、それでも家老かろう心臓しんぞうつらぬくのに十分じゅうぶんだった。


「……ぐ」家老かろうはゆっくりとしたき、みずからの左胸ひだりむね凝視ぎょうししながら、あきらめと驚愕きょうがくじったこえらした。


白凝冰はくぎょうひょう左手ひだりてはなし、氷刃ひょうじんてると古月青書こげつせいしょあるした。家老かろうかたわせながら。


かれ背後はいごで、家老かろうかお全身ぜんしんあわ藍色あいいろしもかびがり、ドスンと地面じめんたおんで二度にどがらなくなった。



遠方えんぽうでこの光景こうけい目撃もくげきした方正ほうせい瞳孔どうこう針先はりさきのように収縮しゅうしゅくし、全身ぜんしん強烈きょうれつ恐怖きょうふおそった。


この現実げんじつかれ想定そうてい完全かんぜんえていた。


三転家老さんてんかろうがこんなに容易よういぬとは!?この白凝冰はくぎょうひょう一体いったい何者なにものなのだ!?


方源ほうげんはどこだ?えばいたみのすくないかたをやろう」白凝冰はくぎょうひょう古月青書こげつせいしょちかづく。


白凝冰はくぎょうひょう……」古月青書こげつせいしょふか嘆息たんそくらし、ひるむことなく見据みすえた。「おまえとは十数回じゅうすうかいたたかった。成長せいちょうつづけるおまえに、いまわたしおよばないことをみとめざるをない。だがこのつよさでぞく裏切うらぎらせることはできん!」


「おまえごときが?」白凝冰はくぎょうひょう嘲笑あざわらうようにわらい、とおくの方正ほうせいやるとまゆげた。「あれが方源ほうげんおとうとか?」


古月青書こげつせいしょ顔色かおいろ瞬時しゅんじわり、大股おおまたさえぎる:「かれすのはゆるさん!」


白凝冰はくぎょうひょう表情ひょうじょうけわしくなる:「おまえ面白おもしろ相手あいてだった。かしておけば人生じんせいいろどりをえてくれただろう。だがいまわたし機嫌きげん最悪さいあくだ。ほどれ。方源ほうげん逃走経路とうそうけいろおしえろ」


古月青書こげつせいしょ行動こうどう回答かいとうした。


ゆっくりとまぶたじ、またたく間に見開みひらいた。


木魅蠱もくみこ

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