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蛊真人  作者: 魏臣栋
青茅山
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第百三十九節 断腕

白凝冰はくぎょうひょうとはだれだ?

青茅山せいぼうざん随一ずいいつ天才てんさい、ただ一人ひとり三大家族さんだいかぞく勢力図せいりょくずえ、修行しゅぎょうはじめた当初とうしょからぐんき、ほか俊才しゅんさいたちをかすませた存在そんざいてきでさえかれ将来性しょうらいせいみとめざるをない。


だがいま、まさかかれめられ、こんなに狼狽うろたえてまわるとは。


青書せいしょたちの予想よそう完全かんぜん裏切うらぎ事態じたいだった。


さらに驚愕きょうがくしたのは、追手おって同族どうぞく方源ほうげんだという事実じじつ


かれらが方源ほうげん印象いんしょうは、むかし闘技場とうぎじょうでの姿すがたや、吞江蟾どんこうせん撃退げきたいした事件じけんまっていた。熊力ゆうりきへの自発的じはつてき降参こうさんが、まこと実力じつりょく過小評価かしょうひょうかさせる要因よういんとなっていた。


「いつの間に……方源ほうげんがこんなにつよくなっていたなんて!」


一同いちどうはこの現実げんじつを受けれいがた様子ようすだった。


……


方源ほうげんかどがる。


古月青書こげつせいしょ!」青書せいしょグループ五人ごにん姿すがたにした瞬間しゅんかん心臓しんぞうつよ鼓動こどうした。


「どうやら今回こんかいわたしけがたったようだな。白凝冰はくぎょうひょう今日きょうがおまえ命日めいにちだ」内心ないしんでそうおもいながら、こえげた。「おとうとよ!こんなところにいたのか!ちょうどい、白凝冰はくぎょうひょうめろ!こいつは熊力ゆうりきグループをころしたうえぞく古月蛮石こげつばんせきらも殺害さつがいした!極悪非道ごくあくひどうやからだ!」


「なんだって!?」


三大家族さんだいかぞく盟約めいやくむすんだはずでは」


「いや、白凝冰はくぎょうひょうならなんをやってもおどろきはしない」


「そうだったのか!道理どうり方源ほうげんえるわけだ…」


青書せいしょ五人ごにん驚愕きょうがくとも合点がてんがいった様子ようす白凝冰はくぎょうひょう狂気きょうきられ、戦闘せんとう消耗しょうもうしたすき方源ほうげんいたらしい。




「このまま白凝冰はくぎょうひょういのちきるのか?いや…いま真元しんげん霜妖蠱そうようこ自爆じばくさせられる!勝機しょうきはある!」がけうえ青書せいしょグループにはばまれ、背後はいご方源ほうげん追撃ついげきける絶体絶命ぜったいぜつめい状況じょうきょうで、白凝冰はくぎょうひょうこころさけんだ。


じつのところ、方源ほうげん方正ほうせい兄弟きょうだいには確執かくしつがあり、方正ほうせい方源ほうげん指示しじしたがうはずもなかった。

だが部外者ぶがいしゃである白凝冰はくぎょうひょうはこの事実じじつらず、瓜二うりふたつの容姿ようし決断けつだんくだした。


突然とつぜん右腕みぎうでを高々(こうこう)とかかげ、空竅くうこうかろうじて回復かいふくした全真元ぜんしんげん右手みぎててのひら宿やど霜妖蠱そうようこそそんだ。


右腕みぎうで筋肉きんにくふたた淡青色たんせいしょく氷塊ひょうかいわり、とおった氷層ひょうそうこうに白々(しろじろ)とした腕骨うでぼねかびがる。


ドーン!


爆発音ばくはつおんとも右腕みぎうで全体ぜんたい自爆じばくたちま白煙はくえんがり、凶暴きょうぼう寒気かんき渦巻うずまいた。


ガリガリッ


真夏まなつ炎天えんてんとはおもえぬせま山道やまみちで、しろしもがジリジリとひろがり――土壌どじょうおおい、樹木じゅもくむ。周囲しゅうい気温きおん急激きゅうげき低下ていかした。


右腕みぎうでごと…てた!?」方正ほうせい白凝冰はくぎょうひょう非情ひじょうさに呆然ぼうぜん


退しりぞけ!」古月青書こげつせいしょ方正ほうせいつかんで急退きゅうたい


波瀾はらんのようにせるしもれ――つかまれば致命傷ちめいしょうまぬがれない。



青書せいしょグループだけでなく、方源ほうげん例外れいがいではなかった。百歩ひゃっぽほど後退こうたいしてはじめて、氷霜ひょうそう拡大かくだいんだ。


元々(もともと)この山道やまみちしげった草木くさきかおりがただよい、木々(きぎ)がしげっていた。いまこおり世界せかいわり、樹木じゅもくこおいている。地面じめんには分厚ぶあつ氷雪ひょうせつもっていた。


方源ほうげんあつゆきみしめ、山道やまみち中心ちゅうしんあるす。


白凝冰はくぎょうひょう全身ぜんしん氷晶ひょうしょうめられているのがえた。琥珀こはくふうめられた昆虫こんちゅうのようで、直前ちょくぜん凶悪きょうあく表情ひょうじょう決意けつい凝固ぎょうこしていた。


「あいつ……自決じけつしたのか?」青書せいしょグループも到着とうちゃくし、方正ほうせいつぶやいた。


ちがう!」青書せいしょ表情ひょうじょうけわしくなる。「白凝冰はくぎょうひょうはすでに氷肌ひょうき修得しゅうとくしている。この氷晶ひょうしょうではなず、ぎゃく保護ほご装甲そうこうとなり回復時間かいふくじかんかせいでいる」


方源ほうげん白凝冰はくぎょうひょう凝視ぎょうししつつ、月刃げつじんはなった。


ザクッ


月刃げつじん白凝冰はくぎょうひょう氷晶ひょうしょうたり、硬質こうしつおとはっした。


たか三米さんメートルはば奥行おくゆ二米にメートル氷晶ひょうしょうに、あさ刃痕じんこんのこった。しかしすぐに、氷晶ひょうしょうちゅう寒気かんきひろがり、刃痕じんこん修復しゅうふくした。



方源ほうげんいまはなし真実しんじつか?」青書せいしょ視線しせんえ、方源ほうげん凝視ぎょうししながらう。


当然とうぜん熊力ゆうりきグループには熊林ゆうりん生存せいぞんしており、証言しょうげんできる。ここは長居ながいできん。詳細しょうさいあとはなすとして、いま撤退てったい先決せんけつだ」方源ほうげんうなずき、こたえた。


すで離脱りだつ意思いしかためている。


この氷晶ひょうしょう斬破ざんぱできず、かり協力きょうりょくして破壊はかいしても膨大ぼうだい時間じかん真元しんげん消耗しょうもうする。


白凝冰はくぎょうひょうこおりやぶころには、戦力せんりょく低下ていかし、かれ真元しんげん完全回復かんぜんかいふくしていれば、戦況せんきょう間違まちがいなく不利ふりだ。


撤退てったい?なぜげる必要ひつようがあるんだ?」方正ほうせいこえらげて反論はんろんする。「あいつは右腕みぎうでうしない、激戦げきせん心身しんしんともに疲弊ひへいしている。氷晶ひょうしょう破壊はかいし、ぞく信号蛊しんごくはっして仲間なかまあつめ、殲滅せんめつすべきだ!千載一遇せんざいいちぐう好機こうきだぞ!」


この言葉ことば一同いちどうこころれる。


方源ほうげん白凝冰はくぎょうひょうえるなら、我々(われわれ)だって…」数名すうめい蠱師こしかお見合みあわせ、心中しんちゅう計算けいさんはじめた。


白凝冰はくぎょうひょうころせば、我々(われわれ)は古月一族こげついちぞく英雄えいゆうだ!」「だが白家寨はくかさい報復戦争ほうふくせんそうこすのでは?いま狼潮ろうちょう最中さいちゅうだが…」


「いや、狼潮ろうちょうがあるからこそ、白家寨はくかさい苦渋くじゅうまざるをまい」


「そのとおり。んだ天才てんさい天才てんさいではない!」


数人すうにん組員くみいん議論ぎろんわし、おく功名こうみょうへの渇望かつぼうにじませていた。


じつおろかだ。北冥冰魄体ほくめいひょうはくたいおそろしさを、おまえたちが理解りかいできるものか」方源ほうげんほそめ、内心ないしん嘲笑あざわらった。みずか死地しちおもむおろものはない。


古月青書こげつせいしょ躊躇ちゅうちょきんなかった。


白凝冰はくぎょうひょうへの理解りかいは、ほかものよりたしかにふかい。


十絶体じゅうぜつたい秘密ひみつらないが、白凝冰はくぎょうひょう功名こうみょう特別とくべつ関心かんしんはない。


名利みょうり淡泊たんぱくで、かつて族長ぞくちょう古月博こげつはくから次期じき後継者こうけいしゃ指名しめいされながら、方正ほうせいのためみずからそのゆずった人物じんぶつ


まこと重視じゅうしするのは一族いちぞく利益りえき――そのこころつね家族かぞくにあってこそ。


白家寨はくかさい台頭たいとう完全かんぜん白凝冰はくぎょうひょうあってのもの。もしかれほうむれば、古月一族こげついちぞくふたた青茅山せいぼうざん随一ずいいつ家系かけいかえく!三転さんてん修為しゅういとはいえ、木魅蠱もくみこ三転蠱師さんてんこし互角ごかくたたかえる。しかも右腕みぎうで喪失そうしつしたかれは、短期たんきてきにはれるはずがない。生死せいしけた戦闘せんとうにおいて、これほどの弱点じゃくてんはない!」


そうかんがいたった瞬間しゅんかん古月青書こげつせいしょひとみ決意けついひかりともった。



方源ほうげん青書せいしょ表情ひょうじょう観察かんさつつづけ、そのうごきで決断けつだんさとった。


古月青書こげつせいしょ木魅蠱もくみこ犠牲ぎせい使つかえば、普通ふつう三転蠱師さんてんこしよりつよく、格上かくうえとのたたかいも可能かのうだ。だが北冥冰魄体ほくめいひょうはくたいを持つ白凝冰はくぎょうひょう相手あいてでは苦戦くせん必至ひっし。あいつは真元しんげん希釈きしゃくして修為しゅういおさえていたぶん氷晶ひょうしょうない制限せいげんとき)三転さんてんもど時間じかん十分じゅうぶんある。こおりやぶときには三転蠱師さんてんこしになってる可能性かのうせいきわめてたかい」


白凝冰はくぎょうひょう天賦てんぷさいめぐまれ、二転にてん修為しゅういときですら方源ほうげん外部がいぶちからりなければ対抗たいこうできなかった。


三転さんてんになれば、戦闘力せんりょくりょく数倍すうばいがる。くわえて方源ほうげん右腕みぎうで喪失そうしつ張本人ちょうほんにん――白凝冰はくぎょうひょう奔放ほんぽう性格せいかくからして、戦端せんたんひらかれればさきねらわれるにまっている。


さら古月青書こげつせいしょまえでは本音ほんねせたくなかった。まこと戦闘力せんりょくりょくさらすつもりはない。


即座そくざ離脱りだつ表明ひょうめいした方源ほうげんは、ほかもの制止せいしり、断固だんことして戦場せんじょうからはなれた。



本当ほんとうげたのか?やはり役立やくたたずだな」


「フン、った方がい。あいつが居座いすわれば連携れんけいみだれるだけ」


「ククク……最初さいしょ白凝冰はくぎょうひょうってるのときおどろいたけど、所詮しょせん方源ほうげん方源ほうげんか。闘蠱大会とうこたいかい降参こうさんした腰抜こしぬけめ!」「余計よけいことうな。各自かくじ思惑おもわくがある。すくなくとも撤退てったいまえ白凝冰はくぎょうひょう情報じょうほうおしえてくれた。とりでもどって援軍えんぐんべば十分じゅうぶんだろう」青書せいしょ方源ほうげんとおざかる背中せなかながめ、眉根まよねせた。


組長くみちょう貴方あなた寛容かんようぎます。方源ほうげんのような臆病者おくびょうものかば必要ひつようなどない」


「そうだ。方正ほうせいさんのおとうととはいえ、兄弟きょうだいとはおもえんほどがある」


わたし……もうずっと方源ほうげんとはくちいていなかった」方正ほうせいかおあからめ、あに逃亡とうぼうっていた。


方正ほうせい、おまえ退しりぞけ」古月青書こげつせいしょ突然とつぜん宣告せんこくした。


「はっ!?」方正ほうせいまたたきもせず見開みひらかれた。


「おまえぞく唯一ゆいいつ甲等こうとう天才てんさいうしなわけにはいかん。白凝冰はくぎょうひょう右腕みぎうでうしなったが、これからさきたたかいはかならずやけわしい。家族かぞくために、我々(われわれ)はねるが……おまえだけはなせぬ」


古月青書こげつせいしょ言葉ことばに、のこ四人よにんかお一斉いっせい強張こわばった。



いぞ!」ほがらかなわらごえともに、一人ひとりいた蠱師こしあらわれた。


家老大人かろうたいじん!」方正ほうせいあわてて挨拶あいさつした。古月一族こげついちぞく古参こさん家老かろうであることを認識にんしきしたのだ。


家老かろうちかづき、賞賛しょうさん眼差まなざしで古月青書こげつせいしょた。「古月博こげつはく養子ようしったものだ。家族かぞくためいのちける覚悟かくご――これこそ古月一族こげついちぞく発展はってんあかしじゃ」


方正ほうせい成長せいちょうするまでのあいだ王二おうに暗殺未遂事件あんさつみすいじけん以降いこう家族かぞくつね家老かろうけて護衛ごえいさせていた。


「だが方正ほうせいたたかわずともいが、かえ必要ひつようもない。後方支援こうほうしえんとしてていればい。白凝冰はくぎょうひょうごとき――大層たいそう家老級かろうきゅう実力じつりょくがあるとささやかれておったが」家老かろうはなわらった。「フン、所詮しょせん青二才あおにさいじゃないか。戦闘経験せんとうけいけんあさく、自傷行為じしょうこういなんぞしやがる。未熟みじゅくきわまりない!」


古月青書こげつせいしょ異論いろんはさみたかったが、家老かろう決定けってい正面しょうめんから否定ひていできずにいた。


若輩者じゃくはいしゃとして、年長者ねんちょうしゃうやまい、軽率けいそつ反論はんろんなどできぬ道理どうりだった。






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