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蛊真人  作者: 魏臣栋
青茅山
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第百三十七節:影之殇

熊力ゆうりきこぶし白凝冰はくぎょうひょうとどこうとした瞬間しゅんかん熊林ゆうりん熊姜ゆうきょうおもわず喜色きしょくかべた。


ただ一人ひとりとおくに方源ほうげんにだけふかひかりはしった。


かれ白凝冰はくぎょうひょうへの理解りかいからすれば、こんな低次元ていじげん失敗しっぱいをするはずがない。


たして次の瞬間しゅんかん白凝冰はくぎょうひょう猛然もうぜんがった。右腕みぎうで前腕ぜんわんにくとおったあわあおこおりわり、そとからもほね一本一本いっぽんいっぽん鮮明せんめいえる状態じょうたいになった。


ゆびそろえて手刀しゅとう形成けいせいし、電光石火でんこうせっかうごきで熊力ゆうりき心臓しんぞうつらぬいた!


「ぐ……っ!」熊力ゆうりき突進とっしんしていたからだ急停止きゅうていしさせた。


見開みひらき、ゆっくりとしたいてみずからのむねうたがわしげにながめた。


「どうして……?」


熊力様ゆうりきさま!」


予想外よそうがい展開てんかい熊姜ゆうきょう熊林ゆうりん混乱こんらんした。


右腕みぎうでれたと本気ほんきおもってたのか? 天真てんしんもいいとこだ!三転冰肌さんてんひょうききたえたこのうでは、防御ぼうぎょ完璧かんぺき!ずっとえんじてたのは、ある人物じんぶつへサプライズを仕掛しかけるためだ」白凝冰はくぎょうひょうはゆっくりとがり、方源ほうげんにらけながら嘲笑あざわらうようにはなった。


方源ほうげん無表情むひょうじょうでそれにおうじた。


ズブッ。


「白……凝冰はく……ぎょうひょう……」熊力ゆうりき最後さいご言葉ことばしぼす。白凝冰はくぎょうひょう氷腕ひょうわんからはなたれた冷気れいき心臓しんぞう完全凍結かんぜんとうけつさせ、生気せいきった。



卑怯者ひきょうもの!ぶっ殺すぞ!」熊林ゆうりん熊力ゆうりき直視ちょくしし、巨大きょだい悲嘆ひたんいかりの火山かざん噴火ふんかさせた。理性りせいうしな白凝冰はくぎょうひょう突進とっしんする。


熊林ゆうりんけ!」熊姜ゆうきょう即座そくざうごし、かれ進路しんろさえぎった。


組長くみちょうった…もうてきではない。おまえげろ!おれ殿しんがりつとめる!」熊姜ゆうきょう悲痛ひつうこらえてひくこえめいじた。


熊姜ゆうきょう兄貴あにき…」熊林ゆうりんはそのくぎ付けになり、目頭めがしらあかくしていた。


熊姜ゆうきょう熊林ゆうりん背後はいごばすと、あしして白凝冰はくぎょうひょうさえぎった。


影殤蠱えいしょうかこ


かれ足下あしもとかげ突如とつじょもののようにうごめき、白凝冰はくぎょうひょうかげ不気味ぶきみゆがんで連結れんけつした。


影殤蠱えいしょうかこがあれば、おれきずけば白凝冰はくぎょうひょうおなきずう!簡単かんたんにはころさせねえ!おまえわかくて才能さいのうもある…げろ!」熊姜ゆうきょう白凝冰はくぎょうひょう凝視ぎょうししながらさけんだ。


熊姜兄貴ゆうきょうあにき!」熊林ゆうりんなみだにじんだ。影殤蠱えいしょうかこ欠点けってん――距離きょりはなれるとかげ連結れんけつれることをらないわけがない。熊姜ゆうきょう言葉ことばなぐさめにぎなかった。


しかもいま熊姜ゆうきょう真元しんげんそこきかけている。遊僵蠱ゆうきょうこ駆動くどうさえ停止ていししていた。



熊林ゆうりんあし地面じめんったように微動びどうだにしなかった。かえ方源ほうげんにらみつけて怒鳴どなった。「方源ほうげん援軍えんぐんはまだなんだ!?」


方源ほうげん返事へんじせず、白凝冰はくぎょうひょう凝視ぎょうしつづけた。


白凝冰はくぎょうひょう右手みぎてひらいたりにぎったりしながら、嘲笑あざわらうようにひややかにわらった。「援軍えんぐん?ハハハ、るものならとっくにてるわ。全部ぜんぶうそだよ。影殤蠱えいしょうかこなんぞでおれしばれると本気ほんきおもってたのか?」


足下あしもとかげ軽蔑けいべつするように一瞥いちべつし、まったにかけない様子ようすだった。


方源ほうげん本当ほんとうなのか!?」熊林ゆうりんこぶしかたにぎり、からそうないきおいでいかくるった。


方源ほうげんかれ無視むしし、白凝冰はくぎょうひょうつめて口元くちもとさとわらいをかべた。「さっきのわざ結構けっこう真元しんげんっただろう?たたかつづけてきて、空竅くうこうのこってる真元しんげんはあとどれほどだ?」


熊力ゆうりき防御ぼうぎょ使つかっていた蠱虫こちゅうは、方源ほうげん白玉蠱はくぎょくこくらべるとわずかにおと程度ていどだった。だが白凝冰はくぎょうひょう防御ぼうぎょ貫通かんつうされたことから、この攻撃力こうげきりょくあきらかに二転にてん蠱虫こちゅうのものではないことがかる。


先程さきほど状況じょうきょうから、方源ほうげん白凝冰はくぎょうひょう三転さんてん霜妖蠱そうようこ使つかったと推測すいそくしていた。


この威力いりょくつよ三転さんてん蠱虫こちゅうなかでも有名ゆうめいだが、過度かど使用しようすると自身じしん損傷そんしょうさせる。関節かんせつ疾患しっかん軽微けいび症状しょうじょうで、重症じゅうしょうすれば筋肉きんにく凍結壊死とうけつえしさせるため、ほか蠱虫こちゅう併用へいようする必要ひつようがある。


白凝冰はくぎょうひょう自身じしんも「冰肌ひょうき練成れんせいした」とかたっていた通り、霜妖蠱そうようこ使用しよう最適さいてき耐性たいせいそなえていた。


ただし二転にてん真元しんげん三転さんてん蠱虫こちゅう強制駆動きょうせいくどうすれば、必然的ひつぜんてき大量たいりょう真元しんげん消費しょうひする。だが膠着状態こうちゃくじょうたい打破だはするため、この強行手段きょうこうしゅだんえらばざるをなかった。


白凝冰はくぎょうひょう表情ひょうじょうかすかにくずれた。先程さきほどわざ真元しんげん大幅おおはば減少げんしょうした事実じじつ方源ほうげん見抜みぬかれたのだ。


そのため熊力ゆうりきたおしたあと直接ちょくせつ攻撃こうげきせず言葉ことば時間稼じかんかせぎをしていた。


「その通りだ」白凝冰はくぎょうひょうほがらかにわらい、率直そっちょくみとめた。「たしかに真元しんげんのこすくない。右腕みぎうで使つかわず我慢がまんしていたのは、おまえをおびきすためだ。だがわなにはかからなかったな。フフフ……本当ほんとう勝負しょうぶはこれからだろ?」





方源ほうげんおもわず細目ほそめになった。


もし白凝冰はくぎょうひょうがこれを否定ひていすれば、積極的せっきょくてき攻撃こうげき仕掛しかける余地よちがあった。だがかれが堂々(どうどう)とみとめた態度たいどは、なに強力きょうりょくな切りきりふだめていることをしめしていた。


普通ふつう蠱師こしさん五匹ごひき蠱虫こちゅうしかたない。青書せいしょ赤山せきざんのようなものでも同様どうようだ。


だが例外れいがい存在そんざいする。


方源ほうげん場合ばあい月芒蠱げつぼうこ白玉蠱はくぎょくこ隠鱗蠱いんりんこ四味酒虫しみしゅちゅう春秋蝉しゅんじゅうせみ地聴肉耳草ちちょうにくじそう九葉生機草きゅうようせいきそう七匹しちひき所有しょゆうしている。白凝冰はくぎょうひょう白家はくけすべてをけた希望きぼう――北冥冰魄体ほくめいひょうはくたい天才てんさいだ。修行開始しゅぎょうかいし以来いらい一族いちぞく全力ぜんりょく育成いくせいされてきた。その財力ざいりょく方源ほうげん凌駕りょうがしているにちがいない。




激戦げきせんはじまってからいままで、白凝冰はくぎょうひょうすくなくとも六種類ろくしゅるいことなる蠱虫こちゅう披露ひろうしていた。方源ほうげんかれにまだ他の蠱虫こちゅう存在そんざいするとほぼ断定だんていしていた。


まさにこれらの蠱虫こちゅうが、真元しんげん不足ふそくという状況じょうきょうでも冷静れいせいさをたもたせているのだ。


じつのところ、もっと厄介やっかい相手あいて白凝冰はくぎょうひょうたぐいである。


天賦てんぷさいち、をもおそれず、にした蠱虫こちゅうかず膨大ぼうだいだ。


このみっつの要素ようそはすべて蠱師こし勝敗しょうはい左右さゆうする重要じゅうようかぎとなる。特に蠱虫こちゅう――一匹いっぴき強力きょうりょくな、あるいは特異とくい能力のうりょく蠱虫こちゅうは、絶体絶命ぜったいぜつめい状況じょうきょうでも形勢けいせい逆転ぎゃくてんさせるちからがある。


白凝冰はくぎょうひょう霜妖蠱そうようこ三転さんてん蠱虫こちゅうであり、たと方源ほうげん白玉蠱はくぎょくこ防御ぼうぎょであっても貫通かんつうできる。これが方源ほうげん直接ちょくせつ白凝冰はくぎょうひょうたたかわない理由りゆうだった。


方源ほうげん古月蛮石こげつばんせき熊力ゆうりきらを利用りようして白凝冰はくぎょうひょう実力じつりょくさぐつづけてきた。相手あいておのれれば百戦危ひゃくせんあやうからず――これがかれ戦略せんりゃく根幹こんかんだった。



天賦てんぷ比較ひかくすれば、方源ほうげん丙等へいとう白凝冰はくぎょうひょうとはつきすっぽんほどのがある。白凝冰はくぎょうひょう修行開始しゅぎょうかいしはやく、一族いちぞく全面支援ぜんめんしえんけ、所有しょゆうする蠱虫こちゅう方源ほうげん凌駕りょうがしていた。


心性しんせいめんでも、おそれない白凝冰はくぎょうひょうはほぼ完璧かんぺきちかい。


元々(もともと)、白凝冰はくぎょうひょう圧倒的あっとうてき優位ゆうい方源ほうげん劣勢れっせい――これがみとめねばならぬ現実げんじつだ。


だが戦闘せんとうたえは、つよさがかならずしも勝利しょうり意味いみせず、よわさが敗北はいぼくめないところにある。


方源ほうげん劣勢れっせいくつがえ可能性かのうせいは、あらゆる手段しゅだん駆使くしし、あらゆるちから利用りようするかいなかにかっていた。


古月蛮石こげつばんせきはじまりにぎず、熊力ゆうりきグループもわりではない」そうおもいながら、方源ほうげん突如とつじょうごいた。


月刃げつじんひらめき、くびい、血潮ちしおがる!


その瞬間しゅんかん白凝冰はくぎょうひょうひとみはりさきのように収縮しゅうしゅくし、顔色かおいろ激変げきへんした。


方源ほうげん月刃げつじん白凝冰はくぎょうひょうではなく、熊姜ゆうきょう首級しゅきゅうねたのだ。


熊姜ゆうきょう方源ほうげん裏切うらぎりを予測よそくできるはずもなく、白凝冰はくぎょうひょうへの過度かど集中しゅうちゅう命取いのちとりとなった。


真元しんげん節約せつやくのため遊僵蠱ゆうきょうこ解除かいじょしていたことが、方源ほうげん必殺ひっさつゆる結果けっかまねいた。


ズブッ!


白凝冰はくぎょうひょう顔色かおいろきゅう蒼白そうはくになり、真紅しんくいた。両耳りょうみみ鼻腔びこう、さらには目尻めじりからもながした。


激戦げきせん開始かいし以来いらい、これがもっと深刻しんこく負傷ふしょうだった。


影殤蠱えいしょうかこ


きず連結れんけつさせる効果こうかち、影殤蠱えいしょうかこ使用者しようしゃけた損傷そんしょう十分じゅうぶんいち相手あいてにも転嫁てんかする。熊姜ゆうきょう死亡しぼうしたいまかれ致命傷ちめいしょうかげ連結れんけつとおじて白凝冰はくぎょうひょう伝達でんたつしたのだ。


このしゅ直接攻撃ちょくせつこうげきは、たと水罩蠱すいしょうかこ展開てんかいしていても完全かんぜんふせれない。


方源ほうげんなにをしやがる?!」一秒後いちびょうご呆然ぼうぜんとしていた熊林ゆうりんわれかえり、血走ちばしらせてすさまじいいかりの咆哮ほうこうはなった。


方源ほうげんかれ無視むしし、白玉はくぎょくひかりつつまれながら白凝冰はくぎょうひょう直進ちょくしんした。


重傷じゅうしょうった白凝冰はくぎょうひょうからだがふらつき、意識いしき朦朧もうろうとして戦闘力せんとうりょく激減げきげんしていた。方源ほうげん襲来しゅうらい察知さっちするや、あわてて後退こうたいした。



白凝冰はくぎょうひょう生死せいし勝負しょうぶするってったんじゃねえのか!?」方源ほうげん背後はいごから執拗しつようける。


白凝冰はくぎょうひょういしばり、黙々(もくもく)とつづけた。足取あしどりはよろめきながらも、気力きりょくしぼり、方源ほうげん挑発ちょうはつ完全かんぜん無視むししていた。


覚悟かくごしているがゆえ恐怖きょうふはないものの、愚か(おろか)ではなかった。危機ききすほど、かれ心中しんちゅうぎゃく冷静れいせいさをしていく。


熊林ゆうりんはそのくしたまま、方源ほうげん追撃ついげきたすける選択せんたくをしなかった。


こころかなしみといかりでち、白凝冰はくぎょうひょううらみ、方源ほうげんにくんでいた。


はくほう二人ふたりいかけいながらやまみねえてすすんだ。


時間じかん経過けいかともに、白凝冰はくぎょうひょうきず次第しだい回復かいふくはな目尻めじりからの出血しゅっけつみ、よろめいていた足取あしどりもわずかなふらつきだけとなった。


げる途中とちゅうひそかに蠱虫こちゅう使つか治療ちりょうほどこしていたのだ。


追撃ついげきする方源ほうげん内心ないしんおどろきをかくせなかった。

「さっきまで真元しんげん枯渇こかつしてたはずなのに、このみじか時間じかんきずなおすだけ回復かいふくしたのか…北冥冰魄体ほくめいひょうはくたい十絶天資じゅうぜつてんし真元しんげん回復速度かいふくそくどものじみてる!」


認識にんしきするほど、方源ほうげん白凝冰はくぎょうひょうころ決意けついはますますかたくなった。


月芒蠱げつぼうこ


方源ほうげんるうと、洗面器せんめんきおおきい青白あおじろ月刃げつじん空気くうきつらぬき、うなりをてながら飛翔ひしょうした。


白凝冰はくぎょうひょうおときつけ必死ひっし回避かいひしたが、それでもうでかすめられた。


鮮血せんけつすが、すぐに傷口きずぐちうすこおりそうあらわ出血しゅっけつめた。


白凝冰はくぎょうひょうすで冰肌ひょうき練成れんせいしており、このはだ黒白豕蠱こくびゃくしこちから同様どうよう真元しんげん必要ひつようとしない。


だが白凝冰はくぎょうひょうこころ暗澹あんたんたる思いで一杯いっぱいだった。古傷ふるきずえぬなかあたらしいきずまでえる――あきらかに方源ほうげん持久戦じきゅうせんかれめようとしている!

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